個性『無効』のヒーローアカデミア   作:toreha

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5話

勝負を終えて路地裏から表通りに戻るために歩を進める。

通りに出る手前で、胡散臭そうな男がダルそうに壁に寄りかかりながらタバコを吸っている。

 

丸メガネのサングラス、上の前歯に欠損あり。パッと見一般人には見えないが、武術をやっている感じでもない。中身までは分からんがあちこちのポケットが膨らんでいる。ヤクザ?それともさっきの男の仲間か?

 

変形とは言え渋川大回転(命名適当)も決まり、心から満足のゆく勝負を終えたばかりの今、戦意高揚がちと過ぎる。

次の勝負に備え、足を止め急ぎ気を静める。

 

「よぉ、坊主。途中からだけど見てたぜ。強ぇなお前。おっと、攻撃するのはやめてくれ?確かに俺は怪しい者だが、お前さんの敵じゃあない。」

 

そう言いながら男は両手を上げる。敵意を見せてくる様子はない。が、この手の胡散臭い奴は食わせ者の場合が多い。基本信用に値しない。儂知ってる

 

「堅気ではないな?今の儂は少々荒ぶっておる。おかしな真似をしたら即座に潰すぞ?」

「おいおいそう警戒しないでくれよ、俺はただ話をしに来ただけだ。さっきの奴の事知りたくないか?他にも聞きたいことがあれば、今回は特別に無料で教えるぜ?」

 

確かに気にならないと言えば嘘になる。少し話を聞いてみてもいいかも知れん。なんかあったら力尽くで何とかなるじゃろう。一応飛び道具には注意する

 

「ふむ。お主何者じゃ?なにゆえ儂に話しかけた?」

「おぉ、おぉ。普通の会話。ありがたいねぇ。俺の名前は義爛。色々やっちゃあいるが、まぁ人材の仲介業者だとでも思ってくれればいい。坊主に話しかけたのは単純に興味を持ったからだ。

気づいてるかは分からんが、お前がさっき倒したやつはヤクザでもゴロツキでもない。ヴィランだ。しかも日本有数の『ネームド』だぞ。ヒーロー殺しステインって言ってな、今まで何人ものヒーローを殺したり病院送りにしてる凶悪ヴィランだ。

そんな奴を倒しちまったんだぜ?興味を持つなって方が無理ってもんだ」

 

「なるほどのぅ。ただ者ではないと思うておったが、そんな奴じゃったのか。で、お前はあ奴の仲間か?かたき討ちでもするつもりか?」

「だから敵じゃねえっての。たまたまあいつが近くにいるって情報が入ってな、念のため探ってたんだよ。そしたらお前たちが戦ってた。ホントにそれだけだぜ、俺とあいつは繋がってない。これは誓ってもいい」

 

ここまでの話に嘘はない・・・ように思える。自信はない

しかしそんな危険な奴じゃったのかあ奴は。闘いたい鬱憤が溜まりすぎて自分を見失っておったゆえ構わず勝負を吹っ掛けたが、冷静に考えるとかなり危ない橋やったやも知れん。もう少し慎重に行動すべきだったと反省する

そうなると『前田光世方式』も考え物か?

 

「じゃあ、今度はこっちが聞かせてくれ。なんであいつとやりあった?復讐か?それともヒーローでも目指してるのか?」

「・・・あ奴が強かったからじゃ」

「・・・・・・はぁ?」

「自分でもおかしな事を言うとるのは分かっとる。分かってほしいとも思わん。とにかく強者と闘いたかった。それで目に入ったのがあ奴じゃった。ただそれだけじゃよ。」

「・・・本当にそんな理由でやりあったのか?」

「それ以上もそれ以下もありゃせんわい」

 

男から浮ついた空気が消える。タバコを捨て、さらに話を続ける。

 

「なぁ坊主、今の世の中生きづらかったりしないか?」

「ふむ、おおむね満足はしとるよ。闘う相手が少ない事を除けばの」

「そういうのを生きづらいって言うんじゃねえのか?さっき言ったように俺は人材仲介業者だ。誰に遠慮する事もなく強い奴と闘える場所をお前に用意できるぜ?」

「・・・犯罪には手を貸さんぞ・・・。」

 

殺気を出して相手をにらむ。男に浮ついた空気が戻ってくる。

 

「・・・なるほどな、まだそこまで行ってねぇのか。だがな、いずれ我慢出来なくなるような時が来るかもしれないぜ?そしたらお前はどうする?

で、だ。もしそうなったら迷わず俺に連絡しろ。悪いようにはしない。俺は仕事の出来る男で通ってるんだ」

 

男がポケットから電話番号だけが書かれた紙を出して渡してくる

「そうならんようにきちんと自制するわい」

と言いつつも、これはまだ見ぬ強者への特急券。捨てるのは惜しい。と思い素直にしまう

 

「まぁいいさ。時間取らせちまって悪かったな。じゃあ俺は退散するぜ。ステインの野郎が起きてくると面倒だからな」

 

そう言って男はその場を立ち去る

 

「ちょっと待ってはもらえんか」

「ん、どうした?」

 

それを儂が引きとめる。どうしても聞きたいことがあった

 

「つかぬことを聞くが、今の世に地下闘技場はないのか?」

「・・・地下闘技場?・・・ファイトクラブの事か?」

 

「ほぅっ!あるのかっ!?ファイトクラブというのか?どこにあるんじゃ?儂でも行けるんか?教えてもらえんかのぉ、さっき無料というとったじゃろう?儂あんまり金は持ってないんじゃ、ケチケチせずに教えてはもらえんかのぉ」

「落ち着けっ、子どもかっ!?・・・あぁ子どもか、喋り方と見た目のギャップが激しすぎて調子が狂うぜ・・・」

 

男は一息つき、懐に手を入れかけ言い訳するようにまくしたてる

 

「いいかっ、今から出すものは武器じゃないライターだ。最初に言ったように俺はお前の敵じゃない。間違っても攻撃するなよ?わかったな!」

 

そう言って男は懐から拳銃を出し、それで新しいタバコに火をつける。聞いておいて良かったわい。聞かされておらなんだら、拳銃が見えた瞬間に手首と指を折りにいっとった

 

「フゥ~・・・。で、ファイトクラブな。まあ昔ほど多くはねぇが今もしっかりやってるぜ。そうだな、この近辺でやってる所は2か所だ。一つは大学生がやってるサークルの延長みたいなやつだ。個性使って暴れたい学生が夜な夜な集まって騒いでやがる。まぁストレス発散みたいなもんで規模はそんなにでかくねぇ。

もう一つはヤクザがやってる昔から続いてるでかいやつだ。こっちは真っ昼間っからやっててな、東京と大阪を持ち周りでやってて今は東京に来てる。なんでもアリ、無いのはルールだけって言うガチガチのファイトクラブだ」

 

「おおぉっ!・・・・・・それは一般的にマズいやつではないのか?」

「非合法だ、当たり前だろ?個性使ってやりあってる時点で犯罪なんだぜ?生きにくいったら無ぇよな」

 

よくよく考えると、地下闘技場の時点でアウトだったわい。

今もあるか分からんが決闘罪じゃ。なんなら死人も出とる

 

「ううむ、しかし真剣勝負には魅かれるのぉ」

「なんだ?身バレでも心配してるのか?あぁ、まだ学生だもんな。そこは安心しろ。真剣勝負ってことはヤクザの方だろ?こっちはいわゆるショービジネスだ、運営がしっかりしてる。さらに選手、観客、運営と全員仮面をつけてるから身バレの心配はほとんどねぇ。警察のガサ入れにだけは注意が必要だが、今んとこ情報が洩れてる様子はねぇし、あってもどさくさに紛れて逃げちまえばいい。簡単だろ」

 

「一応っ!一応、場所だけは教えてもらえんか。行くとは限らん!行くとは限らんが、知っておいた方がいい気がする・・・」

「くっくっくっく、あいよ、ちょっと待ってろ。・・・・・・・・・・・ほれ、場所と紹介状みたいなもんを書いといた。好きに使いな」

 

「うむ、行くとは限らんが受け取らせてもらう。かたじけない」

「俺は仕事ができる男だからな、じゃあ今度こそ行くぜ?」

「義爛殿、世話になった。感謝する。」

「おう感謝しろ。その代わり我慢できなくなったら必ず連絡よこせ。それでチャラにしてやる」

 

そう言いながら義爛は雑踏の中に消えていった

 

 

家に帰って、もらったメモを見ながら思案する

現代の地下闘技場、ファイトクラブ。なんともそそられる

いったいどんな猛者が集まっているのか、どんな勝負が繰り広げられているのか。トーナメントとかはあったりするんじゃろうか

なんでもありと言う事は武器もありなんじゃろうか。ファイトクラブというくらいだから飛び道具はないじゃろう。ならばどう対応する?刃ならばこう、刺突ならばこう、長物ならばこうと頭の中でシミュレーションを重ねる。いかん、顔がにやける

 

一回だけ。一回だけ行ってみよう。

このまま延々と妄想を重ねるのは体に良くない。一回だけ行ってすっきりさせよう

 

そうして儂は貰ったメモを大事に机にしまった

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