王さまから見たアイはどう見えるのか?
「キレイ・・・」
そんな小さな呟きに反応して、声の主がいるであろう場所へと振り向く。
そしてそこにいたのは、
小学生くらいの少女であった。
見た目は髪は伸び放題で服はヨレヨレで一部ほつれており穴も空いているお世辞にも綺麗とは言えない格好ではあったが、
何故か髪の間から覗く瞳に興味が湧き自然と目が行く。
「ほぅ・・・我が玉体の美を理解するとは・・・小娘にしてはわかっておるではないか」
幼いながら良いものを理解出来る事に賞賛を贈る。
すると少女は、
「小娘じゃないよ! 私にだって名前くらいあるもん!」
小娘と呼んだ事に腹を立てたのか、小さな身体に見合わぬ大きな声で反論してくる。
ほぅ・・・見知らぬ男に・・・ましてや成人しているであろう我相手に自分の意思を伝えられるとは中々に悪く無い。
「ふむ・・・それはすまなんだ」
その姿に敬意を表し謝罪をくれてやる。
そして、
「ならばお前の名を教えてはくれまいか?」
我はこの少女の名を聞く。
すると少女は少し戸惑う姿をみせながらも、
「星野・・・アイです」
名前を名乗る。
ホシノアイ・・・つまりは星の愛か・・・星に愛された少女とはまた大層な名だと思いながらも何故かしっくりくるなと思い、髪の隙間から見える瞳から目を離さないでいた。
「ふむ・・・星の愛かなるほどな」
何故か我は気づいた時には既に少女・・・アイの頭へと手を伸ばしていた。
そしてそんな我の行動に怯えを見せた姿から、やはりこの少女は日常的に虐待を受けている事が察せられる。
だからこそ我はそこで敢えて手を引かずに優しく頭の上に手を乗せ、髪を撫でてやる。
手入れがされていないであろう髪は多少ゴワついてこそはいたが素の髪質は良いのだろうか触り心地そのものは悪くない。
「あれ?」
そして予想していたであろう痛みが来ない事に驚いたのかアイは不思議そうな表情を見せる。
「我が意味も無く童を殴るかたわけ」
そんな姿を見せるコヤツの日常に幾許かの悲しみを抱きながら、アイの髪をかき分ける。
「なるほど・・・コレが星の瞳か・・・」
長い前髪がかき分けられた事によりその顔が顕になる。
その顔は痩せてこそいるが造形は整っており、将来美人になる事が容易に予想できる。
そして何よりも我の興味をひいた瞳を覗いた時に、我は過去のオレの残した最期の言葉の意味を悟る。
星の瞳を見つけ護り愛せか・・・
タイトルがあるとしたら差し詰め・・・星の子とかか?
その瞳は美しい星の姿を宿し、その奥には何かを求めるかの様に輝きを放つ事に気づき我はその星を覗く。
そんな星の瞳を前に我は・・・
「美しいな・・・」
気づけばたった一言呟いていた。
そして気がついたその時に我はこの輝きを・・・我の星を宝と認めていたのだ。
英雄王ギルガメッシュの特徴というか悪癖とも呼べる事だが己の審美眼に適うものがあれば何を賭しても自らの手中に納めようとするコレクター気質とでも呼べば良いのか?がある。
そして我の中のソレに今火がついたのだ!
アイの瞳は見た目こそは我を魅了する程の美しい星を宿してはいるが、決して魔眼の様な機能は無い。
純粋にコヤツの魅力と瞳から感じる意思・・・コヤツの置かれている境遇から察するに純粋に自分を見て欲しい!愛して欲しい!1人になる事に対する怯えといったところであろう。
哀れにすら思える境遇の中でも諦めきれずに怯えながらも踠き、求めるその姿はオレには好ましく写る。
諦めが人を殺す。
誰が言ったかは忘れたがこのセリフは気に入っている。
人が持つ神には無い強さ、それは心という不安定かつ形の無いもの。
しかし時には神の定めた運命とやらをも超える力となる時がある。
英雄王の記憶の中の月の聖杯戦争にてその強き意思の力で運命を覆したマスターを思い出す。
コヤツがそこまでいけるかはわからんが折角の原石を磨かないのは惜しい。
そんな事を考えていた時だった。
「あ・・・あの」
ジッと見つめられている事に照れているのか顔を赤らめながら口ごもるその姿に我は済まない事をしたなと思う。
何故なら我自身が宝そのものと呼べる究極の存在であり、幼子とはいえそんな我にジッと見つめられてしまっては顔を赤く染めるのも仕方なかろう。
やはり我は罪作りな男よなッ!
そしてそんな事を考えていた時に、
キュルゥゥゥッ!と小さいがしっかりと自己主張をする腹の音が鳴る。
「うぅぅぁ」
そして先ほどよりもさらに顔を赤く染めるアイの姿を見て我は、
「フ・・・フハハハッ!」
堪えきれずに笑ってしまう!
フハハッ!我を魅了するだけでは飽き足らず笑わせもするか!?
ますます欲しくなったぞッ!
「フ・・・フハハハッ! 何だ腹が減っているのか?」
口を開けて笑う我をアイは顔を赤くしながら睨む。
せめてもの抵抗なのかムスーっと頬を膨れさせながら我を睨むその姿には何故か庇護欲が湧き上がる。
あぁ・・・アレだ・・・飼い主に構ってもらえなくて拗ねているネコの姿のようだな。
「スマンスマン 何・・・先ほどまでは顔を強張らせていたのに腹を鳴らしたからついな」
まだ笑い続ける我を涙目で睨むアイに、
「フフッ 詫びといっては何だが」
虚空へと手を伸ばし、
「エッ!?」
驚くアイを他所に『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』から此処に来る前に買っておいたパンの入った紙袋を取り出す。
「なに 我も朝飯がまだだった故にな 詫び代わりにお前も付き合え」
と言って袋の中から良い匂いのするパンを取り出して驚いているアイに差し出す。
「お兄さんって魔法使いなの!?」
宝物庫から取り出すその姿が魔法に見えたのか我を魔法使いなのかと聞くアイに対して、
「フンッ あの様なものどもと一緒にするな」
我は鼻を鳴らしながら否定する。
魔法使いにマトモなヤツなどおらんのだからあんなのと一緒にされるのは我に対する侮辱に等しいわ!
そして未だにアイに自分の名を名乗っていない事を思い出し、
「聞け小娘ッ! 我が名はギルガメッシュッ! 世界最古の英雄にして王! 英雄王ギルガメッシュッ!」
声を張り上げながら自分の名前を伝える。
「えっと・・・ギリがナッシュ?」
のだが・・・頓珍漢な回答に対して我は、
「ギルガメッシュだッ! たわけッ!」
つい大きな声で怒鳴ってしまう。
「ひぅッ! ごめんなさいッ! 殴らないでッ!」
そしてアイは我が怒鳴った事で殴られるのかと身体を震えさせて目をギュッと瞑る。
「あ〜なに・・・言い辛いのならば王さまでもかまわんぞ?」
流石にその姿を見せられては我にも罪悪感というものが存在する故に言い易いであろう呼び名で呼ぶ事を許可する。
またその際に頭を撫でて落ち着かせる事も忘れずに行う。
「王さま?」
オドオドしながらも我に合っているか確認するかの様にアイは復唱する。
「それで良い」
そんな姿に笑顔を向けてやり、
「まぁ・・・なんだ・・・とりあえずは腹拵えをせんか?」
紙袋を渡してやりパンを選ばせて食事をとる事にする。
「いただきます・・・」
アイは気になっていたのかシュークリームを手に取り小さな口へと運ぶ。
「ッ!」
初めて食べたのか瞳を一段と輝かせながら食べるその姿に我は、
「そうか」
優しく頭を撫でてやりながら微笑む。
そして食事を終え、そこからはたわいの無い話から始めながらアイの置かれている境遇を聞き出す。
「ふむ・・・アイ・・・お前は凄いぞ・・・我が直々に褒めてやる!」
一度たりとも褒められず、暴力に晒されているその心はどれだけ傷ついたのだろうか?
そして生きる上で必須な食事を与えないどころかガラス片をぶち撒けるだと?もはやそんなものは母親とは呼べぬわ!
湧き上がる怒りをアイにはわからぬ様に表情を隠して、アイの強さを賞賛してやる。
「え?・・・あの・・・その・・・私・・・初めて人に・・・褒められた?」
今まで褒められた事が無いのか戸惑うその姿にまたもや庇護欲を誘われる。
しかし・・・強引にでも奪ってやりたいがそうもいかぬ、少し考える時間が必要だな。
だがアイの身の安全も考えるならば・・・
我は再び宝物庫に手を入れ、とある物を取り出しアイにくれてやる。
「アイよ・・・お前にコレをやろう」
それは純金で出来たバングルに魔除けの呪文が刻まれ、その中央に丁寧に磨かれた球体の大粒のラピスラズリが嵌め込まれた素人目にも解る程の見事な一品であった。
「わぁッ! キレイッ!」
幼子とは言えやはり女故に装飾品に興味があるのだろう。
もしくは初めて誰かから贈り物をもらった事に驚いているのやも知れんが。
ラピスラズリには治癒と浄化、そして魔除けや災難を避ける力がありコレは名こそは無いが宝具と化しているので英霊相手でも無ければアイを害する事は出来んだろう。
悪意には災難を与え、持ち主には幸運と癒しを与えるコレがあれば少なくとも直ぐにアイを害する事は出来まい。
何とか更新
王さまのキャラこれで大丈夫かなと思いながら書いてます
楽しんでいただけると嬉しいです!
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