天に輝くは黄金の北極星   作:帝月

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台風凄かったですね

そのせいで仕事ががががッ!

私はね…バカの一つ覚えみたいに毎日残業ばかりさせなくても良いと思うの

いや…ホント…マジで…

作者頑張ってます!


『汝 王たるかや?』

騎士王の抱く願いを聞いたランスロットを除くほぼ全員が、まるでチベットスナギツネの様な微妙な顔を見せる。

 

「……?」

 

突然の変わり様に困惑を隠せない騎士王は…まるで迷子の子供の様に周りを見回す。

 

「王…」

 

ただランスロットだけは、悔いるように…嘆くかの様に口を噤む。

 

「えぇと騎士王? そのブリテンとかいう国が滅んだというのは貴様の時代の話であろう? 貴様の治世であったのであろう?」

 

まるで信じられないものを見たかの様に征服王は、目を丸くさせながら騎士王に尋ねる、それはまるで悪い冗談でも言っているのかと聞き直しているかのように。

 

「そうだ、だからこそ私は許せない…だからこそ悔やむのだ。 あの結末を変えたいのだ! 他でも無い私の責であるが故に…ッ!」

 

「ハッ! ハハッ! ハハハハハハハハッ!」

 

沈痛な面持ちな騎士王とは対照的に、その愚かしさに対してアーチャーは大笑いする。

 

「やれやれ…」

 

若い時代の我ならばそこの阿呆の様に、一蹴しバカ笑いをしていたのであろうが…ここまで来るとあまりにも痛々しくて見るに耐えんな。

 

「王さま…何であっちの王さまは、あの人の事を笑っているの?」

 

いつの間にか我の背後に引っ付いていたアイが問う。

 

「簡単な事だ…小娘が阿呆な事を言いおったからだ」

 

願いが叶った時に何が起こるのかを全く考えておらんなアヤツは…最早願いでは無く妄想の類であるな。

 

「何で? やり直したいって思ったらダメなの?」

 

えぇい! その様に泣きそうな顔をするでないわ!

 

「思う事は悪いとは言わん…だがな…『王』たる者がそれを口に、ましてや願うという事は愚かの極みでしかない…それこそが…所詮は敷かれたレールの上を走る事しか出来ん小娘の限界よ」

 

本当の意味であの小娘は『王』という存在が、どの様なものであるか理解しておるのか?

 

「わからないよ…もし…やり直せるなら…皆んなそれを選ぶんじゃないの?」

 

まぁ…一般人であるならばそう考えてもおかしくは無いであろうが、

 

「そうさな…例えばの話だ、アイよ…もしお前が過去をやり直し、母親と幸せに暮らせる世界に出来るとしたらお前はその未来を選ぶか?」

 

「お母さんと…仲良く暮らせる…」

 

母を失ってからまだ日は浅く、幼さ故に未だに愛情に飢えている此奴には少々意地の悪い問いであるな。

 

「ああ…だがもしその世界を選べば我とお前は出逢わないか、もしくは今の様な関係になる事は無いであろう」

 

我の発言にアイは強い衝撃を受けた。

 

「私がもし…やり直したら王さまとは逢えないの!? 何で!?」

 

逢えなかった世界の自分を想像したのか、アイは悲しみと恐怖を宿した表情を浮かべる。

 

「我とアイがあの時あの場所で出逢ったのは『運命』だ。 故に過去の改変が成った時点で世界が変わり運命も変わる」

 

そもそもアイがあの場所に現れたのは、母親の虐待によって満足な食事を与えられていなかった故に空腹を誤魔化すため水を飲もうと行動した事によってアイと我があの場所で出逢ったのだ。

 

水面(みなも)に石を投げ入れた時に浮かぶ波紋があるであろう? その波紋はたとえ同じ大きさの石を投げ入れたとしても全く同じものにはならん、それと同じく…例え過去の自分の行動を全てトレースしたとしても、そもそもやり直しをしている時点で過去が変わっておる故に、必ず何かしらの変化が起こり同じにはならん」

 

仮にあの雑種が良き母であったならば、アイは今のアイとは違う存在となっており、我が見出した輝きを宿しているかはわからん…また…あの場所で出逢う事も無くなり、母親に捨てられないのならば関わる事自体が無かったであろうな。

 

「過去の積み重ねによって現在へと至り、そしてやがて現在での行動が未来へ繋がる…過去をやり直すというのはな…一見良さそうに見えるが、言うてしまえば在るべき未来を否定し、消し去る行為でもある」

 

現代でわかりやすく例えるならば、マルチエンディングのRPGをやり直す様なものか? 己の行動によって分岐する故に二度と同じ事を選べない一方通行のストーリー。

 

まぁ…これが人生はクソゲーだと謂われる由縁やも知れぬな。

 

ゲームならばいくらでもやり直しは効くが、これは現実だ…やり直すというのは、積み重ねた過去を消し去り関わった人間を、己の行動によって起きた物事全てを否定するという事。

 

「アイよ…お前は未来において…我と出逢う世界を捨ててもなお母親を選ぶか?」

 

両方得るなどと言う都合の良い選択肢などは存在せんのだ。

 

「わ、私は…お母さんに逢えるなら逢いたい…でも…そのせいで王さまと離れたく無い…選べないよぉ…」

 

幼い心は選択を拒むかの様に大粒の涙を流し、アイは我の背中にて声を殺して泣く。

 

「意地の悪い問いであったな…赦せ…」

 

ふとアーチャー達を見やれば、我がアイの相手をしているうちに話が進んでいる様だ。

 

「何が可笑しい!」

 

親の仇でも見るかのように鋭い目つきでアーチャーを睨む騎士王、それとは対照的に腹を抱えてバカ面で大笑いのアーチャー。

 

「自ら王を名乗り…ククッ! 皆から王と讃えられてッ…ヒヒ…そんな輩が“悔やむ”だと? ハッ! これが笑わずにいられるか!? フハハハッ! 傑作だ!」

 

箍が外れたかの様にバカ笑いをアーチャーは人目も憚らず続ける。

 

「ちょっと待て、よりにもよって自らが歴史に刻んだ行いを否定するのか?」

 

騎士王の願いに信じられないものを見るかの如く、先程酒と飯で騒いでいた姿とは打って変わって神妙な面持ちで征服王は騎士王を見つめる。

 

「そうとも、何故訝る? 何故笑う? 王として身命を捧げた故国が滅んだのだ…それを悼むのが何故可笑しい?」

 

「ブハッ!おいおい聞いたからライダー! この騎士王とか名乗る小娘はッ…よりにとよって! ヒハハハハハハッ! 『故国に身命を捧げたのだとさ!』」

 

「…………」

 

未だバカ笑いを続ける若造と、押し黙りどこか憐れみの目で騎士王を見つめる征服王と温度差が酷いものだ。

 

「笑われる筋合いがどこにある? 王たる者ならば身を挺して治める国の繁栄を願う筈!」

 

国の繁栄を願うのは確かに国を治める者としては正しい…だがな…騎士王よ…お前は『王』という存在に対する理解が間違っておる。

 

「いいや違う…王が捧げるのでは無い…国が、民草がその身命を捧げるのだ…断じてその逆ではない」

 

「何をッ! それは暴君の治世ではないか! 貴様らこそ王の風上にも置けぬ外道だぞ!」

 

「然り…我等は暴君であるが故に英雄だ、だが自らの治世を、その結末を悔やむ王がいるとしたらそれはただの暗君だ。 暴君よりもなお始末が悪い」

 

「貴様とて…世継ぎを葬られ築き上げた帝国は三つに引き裂かれて終わったはずだ! その結末に何の悔いもないと言うのか? 今一度やり直せたらとは思わないのか?」

 

信じられないとでも言うかの様に征服王を鋭い目つきで睨む騎士王であるが。

 

「ない」

 

その返答は見事なまでの一刀両断であった。

 

「余の決断、余に付き従った臣下達の生き様の果てに辿り着いた結末であるならばその滅びは必定だ…悼みもしよう、涙も流そう、だが決して悔やみはしない」

 

「そんな…」

 

「ましてそれを覆すなど! そんな愚行は余と共に時代を築いた全ての人間に対する侮辱である!」

 

「滅びの華を誉れとするのは武人だけ、救済こそ民の祈りだ」

 

「解せんなぁ…王による救済? そんなものに意味があるというのか?」

 

「それこそが王たる者の本懐だ! 正しき統制、正しき治世、全ての民が待ち望むものだろう!」

 

正しさか…わかっておるのか騎士王よ…貴様の謳う正しさの先にあるのはディストピアである事を…

 

「王…」

 

騎士王の言動にランスロットは歯が砕けんばかりに食いしばる。

 

「セイバー…」

 

同じく騎士であり戦士でもあるランサーも騎士王の歪さを理解する。

 

「で 王たる貴様は『正しさ』の奴隷か?」

 

「それでいい…理想に殉じてこそ王だ。 人は王の姿を通して法と秩序の在り方を知る…王が体現するものは王と共に滅ぶ様な惨いものであってはならない…より尊く不滅なるものだ」

 

「そんな生き方はヒトでは無い」

 

「そうとも…王たらんとするならばヒトの生き方など望めない。 たかだか我が身の可愛さのあまり聖杯を求めるという貴様には決して我が王道は解るまい…飽くなき欲望を満たすためだけに覇王となった貴様には」

 

「無欲な王なぞ飾り物にも劣るわい!!」

 

今までは冷静に騎士王の言動を受け止めていた征服王であるが、遂に耐え切れずに怒号を飛ばす。

 

「キャアッ!」

 

「ひぅっ!」

 

「あぅっ!」

 

その迫力に幼子達が反応し、悲鳴を漏らしてしまう。

 

「落ち着け、怖ければ我の背中にそのままくっ付いておけ」

 

「うん…」

 

征服王の怒号に怯んだアイを背中に張り付かせ、桜達を見やると2人とも互いに抱きつき合って震え、母親である葵がそんな2人を抱きしめていた。

 

「騎士王よ『理想に殉じる』と言ったな…なるほど…往年の貴様は清廉にして潔白な聖者であっただろう、さぞや高貴で侵しがたい姿であった事であろう…だが殉教などという茨の道に誰が憧れる? 焦がれる程の夢を見る? 聖者は民草を慰撫できても導く事は出来ぬ。 確たる欲望のカタチを示してこそ極限の栄華を謳ってこそ民を! 国を導けるのだ」

 

一息つくように杯を煽り飲み干す。

 

「王とは誰よりも強欲に、誰よりも豪笑し、誰よりも激怒する…清濁含めてヒトの臨界を極めたるもの…そう在るからこそ臣下は王を羨望し王に魅せられる…一人一人の民草の心に『我もまた王たらん』と憧憬の火が灯る」

 

「そんな治世の…一体何処に正義がある」

 

正義だと? アホらしい…そんなものをこの場で語るなたわけが。

 

「無いさ…王道に正義は不要…だからこそ悔恨もない…騎士どもの誉れたる王よ、確かに貴様が掲げた正義と理想は一度(ひとたび)国を救い臣民を救済したやもしれぬ…それは貴様の名を伝説に刻むだけの偉業であった事だろう…だがな…ただ救われただけの連中がどういう末路を辿ったか…それを知らぬ貴様ではあるまい」

 

「何…だと?」

 

「貴様は臣下を“救う”ばかりで“導く”事をしなかった、『王の欲』のカタチを示す事も無く道を見失った臣下を捨て置き、ただ1人で澄まし顔のまま小綺麗なな理想とやらを想い焦がれていただけよ…故に貴様は生粋の王では無い、己の為では無く人の為の王という偶像に縛られていただけな小娘にすぎん」

 

「私は…」

 

征服王の言葉に言い返せない騎士王が苦悩し、その端正な顔を歪ませる。

 

そしてアーチャーがそれをニヤニヤと鑑賞している。

 

「アーチャー、何故私を見る?」

 

アーチャーが次に発する台詞に予想がついた我は直様アイコンタクトで雁夜と葵に子供らの耳を塞ぐ様に指示を出し、我もまたアイの耳を塞ぐ。

 

「王さま? 何も聞こえないよ?」

 

お前が聞く価値も無い故に聞くな、教育に悪い。

 

「いやなに…苦悩するお前の顔が見物だったといだけさ、まるで褥で花を散らされる処女の様な顔だった…実に我好みだ」

 

やはり聞く価値もない戯言であった。

 

「貴様ッ!」

 

「やれやれ…べらべらと無駄な話をいつまで続けるつもりだ?」

 

流石に飽きてきたぞ。

 

「貴様…」

 

「無駄な話だと?」

 

「何が違う? 王という存在を履き違えた小娘相手に、高説を垂れ流す事が無駄以外の何だというのだ?」

 

「英雄王ッ! 貴様も私の願いを笑うか!?」

 

「囀るな小娘…確かに王たる者が国の繁栄を願うのは間違いでは無い…」

 

「ならば!」

 

「王を名乗る貴様が聖杯などと言う玩具に国の行く末を託し、あまつさえ…やり直すだと! その様な妄言を吐く事自体が間違いであると気づけ!」

 

「ッ!!」

 

我の言動に驚愕する騎士王だが、我はそれを知った事かとばかりに話を続ける。

 

「『王』とは人間達の頂点に立つ絶対君臨者の名、王の持つ力は人を意のままに従わせる程に強力だ、民草は王に縋り、王は縋られる、…それ故にその立場は『重く』それに伴う責任と重圧が伴う」

 

「だからこそ私は…」

 

「違うな、貴様は王の重積に耐えきれず投げ出そうとしているに過ぎん!」

 

「何故ですか!?」

 

「王とはただの統治者に在らず! 高みの玉座から人間達を動かし、国を守り、文明を発達させる! 預かった民たちの身命を礎としてな。故にその責務には最期まで見守る義務が発生する」

 

「それがたとえその先にあるのが、無惨な滅びしか無くてもですか…」

 

「然りッ! 民を愛し、国を治め、後継者へと受け継がせる。それは所謂理想の王というやつだろう。しかし、真に優れた王であればこそ知っている事がある。それは…いつかは滅ぶ運命にあるということだ。どれほど栄華を極めようとも、法を作り、どれほどに人を戒めようとも、それは繁栄の影に常に潜んでいる、何故なら繁栄と滅びは表裏一体であるからだ。だからこそ受け入れる他あるまい。全ての民の身命は王の手元にあるのだ。故に王がいつまでも滅びを認めず民たちの身命を手放さないなど、それこそ暴君に他ならない」

 

「それは…」

 

「騎士王よ良い加減に気づけ、貴様の願いは最期が気に入らんから何もかもを捨てて、自分の思い通りにしようと癇癪を起こす子供と何ら変わらんという事にな」

 

「私は子供ではありません!」

 

「何が違う? 現に貴様は都合の悪い部分を無かった事にし、積み上げた歴史を消し、貴様に仕えた配下の想いすら踏み躙ろうとしておるではないか」

 

「貴方に何がわかる! 内乱が終わることなく続き、土地は痩せ、民草は疲弊し、蛮族共が絶え間なく攻め入って来るあの時代の何がわかる!」

 

「たとえそうであったとしてもやり直す事など出来るか!」

 

「ッ!」

 

「騎士王よ…貴様は国の救済と言ったが、真に救済したいのは国か? 民か? それとも貴様自身か?」

 

「国の救済こそが民の救済に繋がるハズ!」

 

「たわけ、国などそこに住まう民がいなければ空虚な箱にすぎん…事実我がかつて不死を求める旅から帰還した時にウルクに残っていたのは僅かな民のみ…かつての繁栄の姿など何処にも無く…それでも尚、我の帰還を信じ待ち続けていた民がおらねばウルクは滅んでいた…そして我の帰還を知った民達が再び集まり国となった」

 

「ッ!」

 

「それと気になる事だがな、貴様は故国に救済をと言っておるが、どうやって救うつもりなのだ?」

 

「私は聖杯を手に入れ故国の救済を…」

 

やはり小娘か…我は『国を救う過程』を聞いたのであって手段など聞いておらんのだがな。

 

「お前は阿呆か? いや聖杯その物を理解しておらんだけか…」

 

「何を言っている? 聖杯は『万能』の願望器、だからこそ私は…」

 

「たわけ…聖杯は『万能』であっても『全能』では無い。 更に言えばこの冬木における聖杯は魔術儀式で生み出した贋作…故に恐らくだが世界や歴史の改変はほぼ不可能であるぞ」

 

「「出鱈目を言うな!?」」

 

我の言葉に反応したのは騎士王だけで無く、騎士王のマスターである衛宮切嗣も反応する。

 

どうやらいつの間にか腕は縛られた状態ではあるが呪縛からは解放された様だ。

 

「待って! 何の確証があってそんな事を言い切れるの!?」

 

聖杯の器であり、御三家の一角であるアインツベルンの女が講義する。

 

「簡単な事だ…貴様ら御三家の内、遠坂とアインツベルン、そしてもう1人おるであろう」

 

「まさか…」

 

「ゾォルケン! 聖杯に関わった者として貴様から説明してやれ!」

 

我が無駄にコイツを連れて来た訳があるまい、そろそろコイツにも役に立ってもらうぞ。

 

「御意!」

 

我の命令に従い、ゾォルケンが現れる。

 

「まさか…そんな…嘘…貴方…ゾォルケンなの?」

 

「フッ…その様子ではどうやら私の事を覚えて…いや…『彼女』の記憶を引き継いでおる様だな」

 

ゾォルケンがアイリスフィールを見る目は、どこか懐かしいものを見る様であった。

 

「外法により魂を腐らせながら長く生きていたのだ、王によって救われ今の姿を取り戻した」

 

「まさか…」

 

アイリスフィールは何かに勘付く。

 

「それよりも私から説明させていただこう…まず聖杯についてだが、騎士王よ、製作者の1人として言わしてもらうのであれば…王の言う通りたとえ聖杯が『万全』であったとしても不可能だ、何故なら我らが造りし聖杯は本来の用途である根源への道を開けるもの、聖杯を模した故に願望器としての側面も持つが…本物と違い叶えられる願いに限界がある」

 

「待って! 万全ならってまるで今の聖杯に何か不備があるみたいな言い方は何なの!?」

 

聖杯に関しては譲れないものがあるのか、ゾォルケンの発言に強く言葉を返す。

 

「何じゃアハトの奴から何も聞いておらんのか? 前回の第三次聖杯戦争においてアインツベルンの犯した最大の禁忌、神霊の召喚…名を『この世全ての悪(アンリマユ)』」

 

「そんな…お爺様…何故よりにもよってゾロアスター教の悪神何て…」

 

まさかの真実にアイリスフィールは驚愕と絶望に打ちひしがれ膝をつく。

 

「ちょっと待てよ! 証拠はあるのか!?」

 

今まで沈黙を保ち続けていたウェイバーは信じられないとばかりに声を荒げる。

 

「当然! 証拠はここにある、何ならお前達も見るが良い」

 

ゾォルケンの取り出した資料が魔術師達に配られ、確認した魔術師達は一堂に驚愕する。

 

「おい坊主、それに書かれている内容は何だ?」

 

魔術師では無い征服王からすれば内容を理解出来ない故に己のマスターに問う。

 

「聖杯の概要と前回の聖杯戦争で起きた事件だ…マジか…さっきの爺さんの言う通りアインツベルンの反則で呼び出された存在が聖杯を歪めたんだ」

 

「つまりどう言う事だ?」

 

「あらゆる願いが反転した状態で叶ってしまうんだよ! お前が望んでいる受肉をしたら、殺意と破壊衝動に犯された征服王が誕生してしまうんだよ!」

 

「ふぅむ…それは困るなぁ…」

 

「お前なぁ…何を呑気に…」

 

本来であるならばとんでも無い大事件であるはずだが、当の本人は多少の困り顔こそ見せれどそこまで気にしていない様子を見せる。

 

「何、贋作がダメなら本物を使えば良いだけであろう?」

 

「本物…お前まさか!?」

 

あっけらかんと言い放つ征服王に対しウェイバーだけでは無くこの場にいた雁夜を除くマスター全員が反応する。

 

「此処におるではないか、この世の財宝全てを持つと豪語する男が!」

 

全員の目が我とアーチャーに集中する。

 

「フン…不敬であるぞ雑種ども」

 

「鬱陶しい」

 

ある者は興味を、ある者は憎悪を、ある者は希望を宿した視線を持って2人を見つめる。

 

「故に今一度余はここに宣言する! 2人の英雄王よ! 貴様らの宝物庫全てを根刮ぎ奪ってくれようぞ!」

 

「フッ…大言壮語を吐きよるわ…軍勢を持たぬ貴様如きが我が宝物庫を荒らすなど笑わせてくれる」

 

「いつ余が『軍勢』を持たぬと言った? ならばその目に焼き付けるが良い!」

 

征服王の言葉と共に、突如砂が舞い始め…

 

「騎士王、そして2人の英雄王よ今宵の宴の最後の問いだ…そも、王とは孤高なるや否や?」

 

征服王の問いに対し、

 

「フッ…」

 

「アホらしい…」

 

「王たらば…孤高であるしかない」

 

三者三様の答えを出す。

 

「ハッハッハッハッ! ダメだな!! 全くもって解っておらん!! そんな貴様らにはやはり余が今ここで其の王たる者の姿を見せつけてやらねばなるまいて!!!」

 

征服王の咆哮に呼応するかの様に周囲の風景に変化が起こる。

 

「これは…固有結界ッ!?」

 

「そんな馬鹿な…魔術師でも無いのに心象風景の具現化ですって!?」

 

魔法に近い大魔術、担い手の少ない大禁術。

 

「もちろん違う、余1人で出来る事ではないさ。 これはかつて我が軍勢が駆け抜けた大地、余と苦楽を共にした勇者達が等しく心に焼き付けた景色だ。 この世界、この景観をカタチに出来るのはこれが我ら全員の心象であるからさ」

 

気がつけば辺りは障害物の存在しない砂漠へと変化し、それと同時に何処からか武具を装備した兵士達が現れる。

 

「わぁ〜人がいっぱい…」

 

「ウソ…本当にこれ固有結界なの…」

 

「人がいっぱいで怖いです」

 

突然の乱入者に子供達が恐怖し、

 

「こいつら…一騎一騎がサーヴァントだ!」

 

マスターであるウェイバーは現れた乱入者達全てがサーヴァントである事に気づき、驚愕を隠せないでいる。

 

「見よ! 我が無双の軍勢を!!」

 

誇らしげに、自慢げに大声を上げ賞賛する。

 

「肉体は滅びその魂は英霊として『世界』に召し上げられ、それでもなお余に忠義する伝説の勇者達! 時空を超えて我が召喚に応じる永遠の朋友達! 彼らとの絆こそ我が至宝! 我が王道! イスカンダルたる余が誇る最強の宝具『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』なり!!!」

 

我を除くマスターとサーヴァント達がその強大な軍勢に畏怖する。

 

「王とはッ! 誰よりも鮮烈に生き諸人を魅せる姿を指す言葉! 全ての勇者の羨望を束ねその道標として立つ者こそが『王』!! 故にッ!」

 

一頭の優れた体躯を持ち、美しい黒毛の巨馬に跨った征服王が剣を掲げ吠える!

 

「王は孤高にあらず! その偉志は全ての臣民の志の総算たるが故に!」

 

「「「「然り! 然り! 然り!!!」」」」

 

戦士達が構えた各々の武具を地面に叩きつけ、打ち鳴らす事で金属音が辺りに響き渡る。

 

「成る程な…いかに雑種ばかりでもあれだけの数を束ねれば王と息巻く様にもなるか、征服王…やはりお前という奴は目障りだ」

 

「フン…言っておれ、どの道余と貴様らとは直々に決着をつける羽目になろうて」

 

「だがまぁ…その前にやる事をやらねばな」




次回予告

対峙する黄金の双王

真なる王はこの世に2人と要らぬ故に互いに武器を突きつける

そして幼き歌姫は歌う

ただ1人の王のためだけに

次回『アナタに捧ぐ旋律(ウタ)』

少女は詠う…輝ける王のためだけに…

ただ1人のために旋律(ウタ)を捧ぐ

おや?時臣の様子が…

  • 全力でBボタン連打ぁッ!
  • おめでとう!時臣は『 』に進化した!
  • 神砂嵐
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