今回は王さま視点ですが意外な人物が登場します。
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「んふ〜」
我から受け取った腕輪から反射される陽の光に満足そうな笑みを浮かべるアイ。
「キレ〜」
嬉しそうに腕輪を何度も陽に当てるアイを見やり。
「当然であろう 何せ嘗て幼少期の我に献上された逸品であるからな!」
腕輪の由来を教えてやる。
「献上?コレって高いの?」
腕輪の価値が気になったのか不思議そうな表情で聞いてくるアイ。
「ふん、お前が気にする様な事では無い。まぁ現代の価値で考えればいくら金を積まれても買うことは不可能であろうな」
そんな彼女に価値を答えてやる。
そもそも神代の時代の金と宝石だ、当然幾ら金を積もうとも買える物ではなく、
どう軽く見積もっても国宝クラス、魔術師が見れば触媒としては最上位。
所謂殺してでも奪うという選択肢が出てもおかしくは無い。
腕輪の価値を聞いた彼女は、あまりの高価値にアタフタと狼狽える。
「だから気にするなと言うておるだろうが、キサマは直接我から下賜された喜びを噛み締めるが良い!」
狼狽えるアイに我から財を下賜されるという奇跡を喜べと伝えてやる。
「かし?それって貸してくれるってこと?」
しかしながらやはりまだ幼子たるアイは、どうやら下賜の意味を間違えている様だ。
「阿呆、下賜というのは我の様な身分の高い者が下の者に褒美を与える事を下賜と言うのだ!それに我が一度やると言った以上ソレは既にお前の物だ!」
我はヤレヤレと言った顔でアイを見やりながら言ってやる。
「ありがとう!王さま!」
すると腕輪が自分のものである事に満足したのか、嬉しそうにアイは笑う。
「フンッ! わかったなら良い! それよりもそろそろ日暮れが近いがお前は帰らんでも大丈夫なのか?」
我が連れ回していたのが原因だが、流石に日が暮れてきた以上は返さなければならぬな。
『今』はな・・・
「どうしよう・・・私学校サボっちゃったからお母さんにまた殴られる」
アイは学校をサボった事で母親に殴られる事に気づきガタガタと震える。
そんなアイの頭に我は手を乗せてやる。
「案ずるなもとより我がお前を此処に留まらせたのが原因故に、我に任せるが良かろう」
殴られる事に対する恐怖を取り払ってやるために我は優しくアイの頭を撫でてやる。
そして我はアイの小さな手に引かれて家への道を歩く。
「王さま!こっちだよ!」
明るく振る舞ってこそはいるが我にはその笑顔が『嘘』である事が一目でわかる。
ある程度歳を経た人間が嘘をつくのは、社会というコミニュティの中で、自分以外のその他大勢の人間との軋轢や孤立する事による不利益を避けるためだ。
謂わば生存戦略とでも言おう、ソレを我は嗤いこそすれ否定はせん!
誰もが我の様に生きれるわけでは無い事ぐらいは理解しておる。
アイは・・・この幼子は本来ならば、まだ身に付けなくても良いであろう『嘘』を既に身につけてしまっている。
それはおそらく自分の身を守る為であり、周囲に合わせれば少なくとも、弾かれ孤立する事による不利益からは身を守れるだろう。
『心』を代償にな。
このまま仮面を被り続ければやがては『嘘』で自分の『心』を覆い本心を理解できなくなりただの人形、それも欠陥品の人形としての人生を歩むかもしれん。
コヤツは演技が上手い、ソレは一種の才能であろう。
そして人を惹きつける才もある。
だがソレを発揮するのが舞台の上ならば問題は無い、しかし今は本来必要ないのだ。
「アイ・・・お前にとってこの世界は辛いか?」
気がつけば我はふとアイにお前の生きる世界は窮屈か?と尋ねていた。
「う〜ん、よくわからないけど楽しくはないかな? あっ!でも王さまとお話しをしていた時は楽しかったかも!」
最初に見せた笑顔からは『嘘』が見えたが我と話をしていたくだりで見せた笑顔に『嘘』は無かった。
「そうか・・・まぁ当然よな! 王たる我と共に過ごす事の出来る己が幸福を感じるが良いわ!」
嬉しい事を言ってくれるものだ。
「あ・・・着いちゃった」
アイと歩きながらたわいの無い話をしていると、アイが自分の家に着いた事に残念な様子を見せる。
「ふむ・・・この粗末な荒屋がお前の家か?」
案内された場所を見やると、そこには築約50年超えと予想できる木造アパートが見える。
今時まだこの様な物件があるものだと逆に感心する。
「うん・・・あっ・・・お母さん」
アイの視線の先にはアイに母親と呼ばれた妙齢の女が憤怒の形相を浮かべながら待ち構えていた。
ふむ、確かに顔の造形具合などはアイと似通っており、美人と呼べはするだろう。
その顔を怒りで歪めていなければな。
アイの表情は母親に会えた喜びでは無く恐怖に引き攣っている。
普通ならば幼子が親に会えた時は笑みの一つでも浮かべるものだが、アイの表情からもはや普段の扱いがどう言うものかが見える。
「アイ・・・アンタ何学校サボってんの? 誰のおかげで学校に通えてるかわかってんの!? 担任から連絡が来たわよ!アンタのせいで恥をかいたでしょう!」
母親はアイの姿を見るや否やアイに詰め寄り怒涛の勢いでアイを責める。
どうやら我の姿は眼中にあらず、またアイの事を心配している素振りも無いようだ。
「答えなさい!」
そして腕を振り上げアイに手を振り下ろそうとする。
「ひぅッ!」
アイは恐怖に駆られ腕で顔を庇って殴られる事に耐えるために身体を強張らせる。
だがそんな無礼な真似を我が許すハズも無く。
「誰の許しを得て我のモノに狼藉を働こうとするのだ雑種?」
母親・・・いやもう此奴は雑種で良いな。
雑種の腕を掴みアイに振り下ろされるハズであったそれを掴む。
「ハァッ! アンタ何よ!てか雑種って失礼ね!」
自分の思い通りにいかなかった事に腹を立て雑種は我を睨みつける。
ほぅ、雑種の分際で見上げるべき存在たる我を睨むか。
「まぁ良い、だが自分の子を問答無用で殴るのは感心せんな」
雑種の無礼な態度に殺意が湧くが、まぁ今はまだ処すべきでは無いな。
そう思いつつも我は雑種の腕を掴む手に力を入れる。
「ヒギィッ! 痛い!痛い! 何なのよ離しなさいよ!」
すると雑種は汚い悲鳴を上げながら離せと叫ぶ。
感謝して欲しい物だな、全てのクラスの統合のせいか、ステータスも一部が統合されて軒並み上がっているために、
筋力A相当に上昇した我の力ならばこの様な細腕など捥ぎ取る事も可能であるが故に加減してやっているのだからな!
我の寛大な心に涙を流して這い蹲り感謝するが良い!
「王さまッ! わ、私は大丈夫だからッ! お母さんの手を離してあげて!」
たとえ人間性がゴミであっても大切な母親だと思っているのか、アイが涙ながらに我に雑種を解放するように願う。
「ふむ・・・お前が望むなら仕方がない アイに感謝するのだな雑種」
幼子に望まれては仕方ない故に、仕方なく、本当に仕方なく雑種の腕を解放してやる。
本当ならばこのまま腕を捥いでやっても良かったのだがな、それを望ま無かった娘に感謝するが良いわ!
「うぅぅ アイッ!アンタのせいよッ!」
娘に助けられたというのに感謝の一つも述べずにアイを怒鳴る。
何処までもこの雑種は我を落胆させてくれるな。
「ハァ〜もう良い・・・雑種、お前は黙れ」
そんな雑種の対応が面倒になった我は指を突き出して、
「アイが学校に行かなかったのは我のせいだ」
強力な暗示を雑種に掛ける。
「アイが・・・学校に行かなかったのはアンタのせい・・・」
暗示が掛かった事で何処かボンヤリとした雰囲気で我と同じセリフを雑種は呟く。
「アイは悪くない」
「アイは悪くない」
アイが不思議そうな表情を浮かべながら我の方を見ているか、今はそれに構わず雑種に暗示を掛けるのを続ける。
「だからアイを叱らない」
「はい・・・アイを叱らない」
虚な表情を浮かべながら我と同じセリフを繰り返す事に暗示がしっかりと掛かった事を確信する。
「起きろ」
強い口調で雑種の意識を起こす。
「はっ! あれ?」
何が起きたのか理解出来ていない様で驚愕の表情で周りを見る雑種。
「すまなんだな。休暇でコッチに来て迷っている時にコヤツに案内を頼んでな、それで学校を休ませるハメとなったのだ」
記憶が曖昧な内に咄嗟に考えた作り話で記憶の上書きを行う。
不思議そうな顔をするアイだが何も喋らない様子を見るに我が何をしているのか理解しているようだ。
ふむ、空気が読めるのを褒めてやろう。
「え? えぇそうですか?」
雑種は我の作り話にキョトンとしながら答える。
「ふむ・・・コレは詫びだ」
作り話に信憑性とインパクトを加える為に雑種に我はある物を渡す。
「え? こ・・・これは!?」
唐突に渡された物を見て雑種は慌ててる。
「何 コヤツの事で心配させたせめてもの詫びよ」
我はポケットから掌に収まる程の研磨済みのルビーを雑種へ渡したのだ。
「いえ心配なんてしてませんわよ 学校から連絡があって手間取らされた事で腹が立っただけですし」
この雑種のセリフに元から無かった興味は流星の如き勢いで冥界まで落ちた事を感じる。
いっその事本当に冥界まで身体ごと叩き落としてやろうか?
そんな事を考えた時何故か、『ゴミを捨てられると困るのだわ』という何処ぞの女主人の声が聞こえた気がするが、幻聴か?
そしてアイを見やると、最早悲壮を通り越して能面のような、もはや感情を削ぎ落としたかの様な表情を貼り付けていた。
もはやここまで来ると不憫で仕方が無いぞ!
「アイ・・・我は此処で一度帰る事とするが何か我に助けて欲しい時はお前にやった腕輪に助けてと念じるが良いさすれば我に通じよう、後コレは我の連絡先だ持っておけ」
我は湧き上がる感情を堪えながら、アイに一枚のカードを渡す。
そこには書かれているのは我が経営するバビロニアカンパニーという会社名と住所、そして我直通の電話番号である。
まぁそんなものは必要無くなるかもしれんがな。
雑種の事はさて置き、再びアイの方を見やるとわかりやすいくらいに落ち込んだ表情を見せて項垂れていた。
「ふん、その様な顔をするで無いわ。心配せんでもすぐに再び目見える事となる」
そう言ってまたアイの頭に手をやり撫でてやる。
それによって表情が嬉しそうなものに変化する。
「ではまたな」
そんなアイを背に我はこの場から立ち去る。
「さよならー! 王さま!」
アイの声に右腕を上げて応えてやりながら我は移動する。
そしてそこから暫くして我は予め取っていた、我がバビロニアグループ系列の最高級ホテルの、ロイヤルスウィートルームのベットで足を伸ばしながらスマホで連絡を取っていた。
「あぁ、そうだ、おそらく直ぐにでも行動する事になるだろう。故に準備をしておけ『シドゥリ』」
まさかのシドゥリさんの登場!
彼女の正体はまた後日!
ちなみに王さまの筋力に関しては元ネタの神話の中にあったエルキドゥとの闘いの中でお互いに組み合って力比べの様な状態となった時に地割れなどが発生したという記実から取りました。
なおZERO時代の王さまは筋力Bだったと思います。
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