今僕は1人の老人の前に立ち、口論を行なっている。
目の前に立つ長い白髪に彫りの深い老人…ユーブスタクハイト・フォン・アインツベルン…通称アハト翁…が不機嫌そうに僕を睨みつける。
「さて…衛宮切嗣よ…今はまだ聖杯戦争の真っ只中のはず…何用にて此方へと帰還した? 貴様に与えたセイバーはどうした? そして…あの男は一体…」
「御当主殿…先ずは貴方に聞きたい事がある…聖杯についてだ…」
「質問しているのは此方なのだが、まぁ、良かろう…して聖杯に何か不備でもあったのか?」
不愉快そうに眉を顰めながら僕を睨みつけるアハト翁の様子に苛立ちを覚えるが…まだ表に出すわけにはいかない…
「不備なんてもんじゃ無い! 前回の第三次聖杯戦争においてあんた達アインツベルンが犯した重大なルール違反…神霊の召喚…『
「どこでそれを知った…」
先程までの苛立ちながらも、余裕の態度を見せていたアハト翁の様子が豹変する。
「間桐…いや…アンタならマキリっと言った方がわかりやすいか? マキリ・ゾォルケン殿の提示してくれた資料にあった! あんな物を解き放てば最悪世界が滅ぶぞ!!」
「だからどうした?駒の分際でいきがるな! 貴様は駒は駒らしく聖杯戦争に勝利し、我がアインツベルンに聖杯を齎せば良いのだ! そのために貴様には態々最高傑作たる『
この老人は何を言っている!? あんな危険物が完成して解き放たれたらアインツベルンだってタダじゃ済まないんだぞ!?
「巫山戯るな! アンタは自分が何をしようとしているのか理解しているのか!事はアインツベルンだけの問題では済まなくなるんだぞ!?」
「それが何だ!? 聖杯さえ降臨すればその大いなる奇跡を用いて、その程度の雑事などどうとでもなるわ!」
ダメだコイツ…早く何とかしないと…最早押し問答をしている時間など無い…実力行使に出ようとしたその時、
「やれやれ…やけに喧しいと思えば…貴様ら何を喚いておる?」
声の主の方に向けば、そこにはいつの間にか…この部屋に英雄王が入っていた…何故か僕の娘のイリヤを肩車しながら…
衛宮切嗣 side out
「英雄王!」
「英雄王だと!?」
現れた男の正体を知ったアハト翁は驚愕を隠さずにいる。
「騒がしいぞ雑種…王の御前である、鎮まれ」
「しずまれ〜」
静かだが、有無を言わせぬ圧力が2人に襲いかかり、自然と互いに口を噤まざるを得ない。
あとイリヤたん可愛い(by 衛宮切嗣)
「さて、道化よ…この様な雑事にいつまで時間をかけるつもりだ?」
「問題無い、すぐ終わらせるさ…」
この時僕は懐に切り札とも呼べる『起源弾』を装填済みのコンテンダーを忍ばせていた。無論いつでも発射可能であり、どのタイミングでジジイの腐った頭を吹き飛ばそうとすら考えていたんだ。
「衛宮切嗣…貴様が聖杯を取るつもりが無いのならば、その気にさせてやろう!」
アハト翁が突如イリヤに向かって手を翳し、呪文を唱えるが…
「?」
イリヤスフィールは不思議そうにきょとんとした表情を見せる。
「何故だ!? 何故イリヤスフィールの心臓が止まらない!?」
何も起こる事は無く、ただ虚しくアハト翁の怒声だけが響く。
「フハハハハッ! この阿呆が! 貴様如き出来損ないの人形の浅知恵なぞ、我には丸ッとお見通しよ!」
「どういう事なんだ?」
狼狽え困惑するアハト翁と対照的に爆笑する英雄王の姿に、理解が追いつけず衛宮切嗣は困惑する。
「要は貴様の裏切り及び人形の盗難防止に、あの出来損ないはこの小娘の心臓に細工していたのさ」
「は?」
仮にも自分の孫娘なんだぞ!?
「忘れたか道化? 魔術の徒とは基本的に外道であるのだぞ? 特にお前とかな」
言われてみればそうだった…あとその言葉はやめてくれ…僕に効く。
「殺す」
ただ一言殺意を持って衛宮切嗣から殺害予告が発せられる。
「まぁ待て、幼子の前で教育に悪い…それよりも我にいい考えがある」
「大概そういうのはハズレ何だが?」
まぁ…流石にイリヤの前で虐殺はやめておこう。 このジジイ…後で鉄の処女かファラリスの雄牛か近代拷問にでもかけよう…
「なぁに、貴様の嫁と娘の代わりにするだけだ…要はお前が聖杯だという事だな」
そう言うと、英雄王は徐に指を弾き軽快な音を鳴らす。
「ふざけるなよ貴様ら! 我がアインツべべべべべべべべ!くぁwせdrftgyふじこlp!」
なんと、突然目の前の老人がまるでゲームのバグでも起きたかの様に可笑しな言動を見せる。
「な、何だ!?」
「なぁに…先程暇つぶしがてら散策を行っておってな、その時に魔術によって作られた人工知能…すなわちそこの人形の本体となる物を見つけて細工を施してやったまでよ」
「細工?」
「アレは霊地の地脈から魔力を得て起動している故に、遠隔バビロンにて繋がりを切ってやった」
我の『
無論ただ電源を切ったわけではなく、増幅系宝具などを使って魔力を暴走からのオーバーフローさせてやった上で霊地からの魔力供給だけで無く、予備電源となるものまで全てを契約破棄系宝具と魔力の繋がりを断つ系の宝具で破壊してやったまでよ。
わかりやすく言うなら、フル稼働しているパソコンをバックアップも取らずに対応出来る電圧以上の電圧によってオーバーロードを起こした上でブレーカーごと落とした様なものだな。
その結果…
「イ〜ト〜マキマキ…イ〜ト〜マキマキ…ヒ〜テ…ヒ〜テ…トントントン…」
何故か突然糸巻きの歌を歌い始めたかと思いきや、
「ゆうて いみや おうきむ こうほ りいゆ うじとり やまあ きらぺ ぺぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺぺ ぺぺ もょもと」
某大作RPGの呪文を唱えたりと、
「グガガガガガガガガッ! ガオ!ガイガ! ピーガガガガガガッ! トゥールルルルルルルッ!」
そのまま頭で高速回転しながらのブレイクダンスを踊る世にも奇妙なジジイの出来上がりである。
「どうするんだコレ?」
「そろそろ目障り故に黙らせるか」
老耄の頭上にゲートを開き、
「グゲッ!」
巨大な黄金の塊を落とす。 無論普通の人間ならば即死するが、無駄に頑丈に作られた人形故に頭から血を流しつつも気を失う程度で済む。
「さて…帰るか」
宝物庫から適当な縄を取り出して簀巻きにし動きを封ずる。 まぁ、先のゲームバグの様な挙動の時点で抵抗は出来んだろうが念のためというやつよ。
「キリツグ〜ッ!」
我の肩車から降りた女童が一目散に己の父親の元へと走り寄り、
「イリヤ〜!!」
あの鉄面皮が突如弛み、両手を広げてキャッチの姿勢を取っておる。
「えへへ〜」
両手を広げた衛宮切嗣の両腕の中にすっぽりと収まり、花が咲くかの様な笑顔で嬉しそうに甘える女童の姿は癒される。
「あぁ…イリヤ…」
「キリツグ…お仕事は終わったの? お母様は?」
「ごめんよイリヤ、お仕事はまだかかるんだ。 でもこれからパパと一緒にアイリの所へ行こう」
「うん! イリヤずっと良い子にしてたんだよ!」
「イリヤは賢いね」
う〜む…あのド外道が人の親をやっている姿に少々違和感が拭えんな。
「さて、つまらぬ事はさっさと片付けるに限る」
遠隔操作にて、宝物庫のゲートを開き老耄人形の本体の人工知能を回収し、要件を粗方終わらした事を確認する。
「もう用はない故に、貴様ら帰るぞ」
「わかった」
「お出掛け〜!」
女童の荷物を世話役の人形共に手早く纏めさせ、纏めたソレを我が宝物庫へと放り込み、
「では行くぞ」
簀巻きにした老耄人形を引き摺りながら外へと移動する。
「お〜!」
初めて城の外への外出故にか、テンションの高い女童が機嫌良さげに片手を上げながら声を出す。
何故か我の肩車にてな…
気に入ったのか? 不敬ではあるが、子供とはそういうもの故に我はあえてスルーしてやるが…
「おのれ英雄王おのれ英雄王おのれ英雄王おのれ英雄王おのれ英雄王おのれ英雄王おのれ英雄王おのれ英雄王おのれ英雄王おのれ英雄王おのれ英雄王おのれ英雄王…」
まるで親の仇でも見るかの様に嫉妬と憎悪に満ちた目にて、射殺さんばかりに我を睨み続ける道化が少々鬱陶しい。
宝物庫より『
「わ〜! すごいすごい! 早〜い!」
無邪気に冬木市までの空の旅を楽しむ女童…
それは良いのだが何故我の膝の上に乗る?
「待て落ち着くんだ僕…まだ慌てる様な時間じゃない…ステイステイ…何故僕の膝に乗ってくれないんだイリヤ…」
何やら
『
日が落ちかけ夕闇に包まれつつある白亜の城、アインツベルン城の中庭に降り立つと、
「イリヤッ!!」
我らの帰還に気づいたのか複数の人影が現れ、その中から母親であるアイリスフィールがイリヤ目掛けて走り寄る。
「お母様!!」
母親の存在に気づいたイリヤもまた一目散に駆け寄る。
「イリヤッ! イリヤ! 嗚呼! 私の宝物…また…逢えた…」
イリヤを抱き留めたアイリスフィールは涙と嗚咽混じりに何度も娘の名を呼び、もう二度と離さないとばかりに強く抱きしめる。
「お母様! イリヤずっと良い子にしてたよ! お母様とキリツグが帰って来るのをずっと待っていたんだからね!」
容姿の整った親子の感動の再会に、
「よかったわねアイリさん」
感化されたのか涙ぐむ葵と、側に黙って立つ雁夜の姿。
やれやれ、こういう時に気の利いた事が出来んのかヘタレめ。
あと言峰よ…そこのヘタレを貴様が嗤えるのか?
「王さま…お帰りなさい」
「やっと帰って来たのね!」
桜と凛…そしてアイが我の元へと歩いて来るが、
「王さまお帰りなさい…」
アイの表情は表面上こそ取り繕ってはいるが、ただじっとアイリスフィールとイリヤを見つめるその目には暗い色が宿り、どこか心ここに在らずといった感じだ。
ふむ、仕方のない奴よ…
「出迎えご苦労女童共よ、さて…積もる話もある故にさっさと屋敷に入れ」
抱き合う親子達と外野共に告げ、屋敷内部への移動を命じる。
何? 空気を読め? たわけ、今は時間との勝負故その様なものに拘っている余裕なぞ無いわ。
「あの…王さま? その…縛られたのは…」
どこか気まずそうにギルガメッシュが引き摺る『ソレ』についてアイリスフィールが尋ねると、
「生贄」
ギルガメッシュはただ一言簡潔に言い放つ。
「え?」
「アイリ…実はね…」
衛宮切嗣がアイリスフィールにこれまでの事を耳打ちすると、
「そう…それなら仕方ないわね」
アッサリと納得した様子を見せる。 やはり母は強しだな。
そして屋敷内へと移動し、
「さて…時間が無い故に面倒事はさっさと終わらせるぞ」
「はい」
「?」
覚悟を決めた様な表情のアイリスフィールとは対照的に自分が何をされるのかを理解していないのか、ただ不思議そうな表情のイリヤと対照的である。
「簡単に言えば、貴様の中の『聖杯』をこの老耄に移し替えた上で、さらに貴様らの身体を作り替えるという事だ」
「私達の身体を…ですか?」
「貴様も気づいておるでおろう? 貴様の身体は英霊の魂を溜め込み、聖杯へ送るための『器』であるが、器に魂が焚べられる度に完成へと近づき…やがては人の形すら無くなり『聖杯』そのものへと変貌するという事を…そして、貴様の娘であるこやつは既に改造を施され短い時間しか生きられぬという事もな」
「ッ!」
「喜べ、そこの道化の懇願により貴様らの憂いは消える。 まぁ…その代わりに貴様ら一族の悲願はここで潰えるがな」
「覚悟の上です…陛下…どうか、我らをお助けください…陛下から賜った御恩は必ずやお返しします!」
「よろしい…ならば、さっさと始めるぞ」
「英雄王…僕の妻と娘を頼む!」
「ふん…」
我は老耄人形を引き摺りながら、アイリスフィールとイリヤの両名を空き部屋へと連れて行き、我が自慢の宝物庫から必要な宝具、そして『聖杯』を用いて2人の改造を進める。
本来であるならばキャスタークラスの仕事であるが、我の宝物庫に不可能など無い! 故にキャスターの真似事も可能というわけよ!
別室にて部屋の中を落ち着かなそうにウロウロと、まるで落ち着きのない犬の様に彷徨く衛宮切嗣。
時間にすれば1時間も経っていないくらいであるが、それでも本人からすれざ何時間も経っているかの様に感じられるのだろう。
部屋の中には衛宮切嗣と雁夜…そして護衛のランスロットに言峰といった男性陣が待機しており、部屋の中には重い空気が漂う。
誰も一言も発さず、情報収集のために点けられたテレビからニュースキャスターの報道の声だけが木霊する。
女性陣は別室にて待機しているため、なんとも言えない威圧感漂う空間と化している。
あまりの空気の重さに内心耐えかねている雁夜は、心の中で英雄王の作業が少しでも早く終わる事だけを願っていると…
「終わったぞ」
突如扉が開かれ現れたのは、待望の英雄王…そしてその後ろから2人の人影…アイリスフィールとイリヤの姿が現れる。
「キリツグ」
「アイリ…イリヤ…」
「えへへ…ただいま」
喜びに動かされるままに2人を衛宮切嗣が抱きしめる。
「英雄王…終わったのか?」
「ふっ…当然であろう。 この我を誰だと思っておるのだ?」
「そうか…」
安堵したその時…
ゾクリッ!っと禍々しい魔力を感知する。 そしてそれと連動するかの様に…
『突然ですが速報です! 冬木大橋近辺の河岸にて未確認生命体が現れたとの連絡が!』
やはり始まったか…やれやれ忙しない奴らよ。
どうやら時間との勝負には勝ったが…奴らの行動の方が早かった様だな。
新たな戦いの火蓋が切って落とされる。
遅くなりました。
仕事が忙しすぎて体調がヤヴァイです…
13時間拘束からの土曜出勤は本当にキツい…
皆様も体調には気をつけてください。
昼夜逆転生活になると体調崩します!
おや?時臣の様子が…
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全力でBボタン連打ぁッ!
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おめでとう!時臣は『 』に進化した!
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神砂嵐