今回は少し箸休めみたいな形で読んでいただけたら嬉しいです!
感想や高評価をいただけると励みになります!
今回はあのキャラ達が登場!
アイを連れて、待たせていた車へと乗り込み運転手に我は行きつけの店へ向かう様に告げる。
「愛導醒よいつもの居酒屋へと向かえ」
車を運転する薄ピンクがかった紫の長髪を纏めた長身の女、来威舵 愛導醒(ライダ・メドゥサ)に行き先を告げる。
「畏まりました」
彼女は静かに返事を返して車を目的地へと走らせる。
この女の運転技術は高く、大概の乗り物を乗りこなせるので重宝している。
まぁ、少しばかりロリコン、ショタコンの気があるのが問題ではあるが、優秀な人材である事に変わりは無い。
暫く車を走らせると、住宅地から少し離れた場所に木造平屋の建物の入り口には暖簾が掛かっており、暖簾には『居酒屋笑みヤン』と書かれていた。
この店は我が出資した店の一つで有る。
ここの店主はとある料亭で若くして板長候補に成る程の腕前を持っていたが、
同期の人間達に疎まれ足の引っ張り合いに巻き込まれた事に嫌気が刺して辞めた事を聞きつけた我が全額出資して建てた店だから融通が効くのだ。
そして全員を連れ立って、勝手知ったる我が家とばかりに暖簾を潜り、店内へと入る。
「来てやったぞ店主、早う持て成すが良い」
我の声を聞いたのか、店内から紫がかった長髪の儚気な少女が現れる。
「いらっしゃいませ、本日も奥の席のご利用でよろしいでしょうか?」
店員、いやこの店の若女将の『衛宮 桜』がいつもの席を利用するかを確認されるが、今宵は少しばかり事情がある為、
「いや、今日はカウンター席で良い」
いつもは利用しないカウンター席を選ぶ事とする。
ちなみにだがこの女将は店主の元いた料亭の娘であったが、店主が辞めた後を追いかけ、押し掛け女房になった猛者で有る。
「珍しいですね、王さまが奥の席を使わないのは」
我が常連である為かいつもの席を使わぬ事を珍しがる。
「何、少々事情が有る故にな」
珍しがる桜を他所に人数を言い、席へ案内する様に伝えると、
「お前も食事に舌鼓を打つが良い」
運転手にも食事を摂る様に伝え、桜の案内に従いカウンターへと足を運ぶ
「感謝します」
軽く会釈を返して、我らから少し離れた先に着き、素知らぬ顔でメニューを広げる運転手に苦笑しつつ我らも席へと着く。
「やれやれ、せめて来る時は連絡の一つも欲しいものだな社長」
席へ着くや開口一番に苦言を漏らす白髪に褐色肌の男、『衛宮 士郎』に対し、
「たわけ、我がいつ来るか等我の自由よ、貴様らは最大限の持て成しをすれば良いのだ」
知った事かと返事を返してやる。
「ふむ、相変わらずだな君は・・・ところでそこのお嬢さんは君の娘さんか?」
わかっているであろうが敢えて我を揶揄う様にアイを見ながら我に質問を返す衛宮に、
「ふん、少々混み合った事情が有る故に詮索は止めよ」
我の雰囲気から何かを悟ったのか、特に返事を返さずに了解したとだけ返事を返し調理場から人数分の冷水を取り出し、我らの前に置いてから黙る。
「おい、店主耳を貸せ」
店主を呼び寄せ、アイの現状を伝え白米を出さない様に伝える。
いづれは克服しなければならないが今位は良いだろう。
「随分と優しいのだな、少女趣味にでも目覚めたのか?」
はっ倒すぞキサマッ!
店主のセリフに怒りを覚えつつも、我は一枚のカードを切る。
「ハッ! キサマがそれを言うか、小学生にしか見えぬ義姉にこの間喰われたクセに!」
そう、コイツの義姉は見た目はどう見てもアイ位の年にしか見えぬ少女の姿で、そんな義姉に一服盛られて、朝チュンしやがったのだ。
「ナッ!? 何故それを!?」
まさか己の痴態を知られているとは、露ほども思っていなかったのか、面白い程に狼狽えるその姿に愉悦を感じる。
「お前の義母が嬉しそうに言っておったわ!」
頭を抱えて蹲る店主の姿を見てより一層愉悦を感じる。
コイツの義母とは会社の取り先の女社長なので、個人的にちょっとした付き合いがある為、たまに会って話す事がある。
まぁ、その大半が旦那との惚気と娘自慢なワケだがな。
「アナタ?」
そしてそんな店主を、貼り付けたかの様な笑みで睨む桜の姿に、店主だけで無く、何故か隅でメドゥサも震えている。
もしや此奴義姉以外にも手を出しているのか?
そして何故か我も恐怖を感じる・・・黒聖杯、捕食、う・・・頭がッ!
何故か存在しない筈の記憶が頭を過ぎる、コレ以上はマズイな。
「えぇいッ! 夫婦喧嘩は夜にヤレぃッ! さっさと注文を取れ!」
我の一喝に桜はすみませんと謝るが、店主を見る目と口の動きから察するに、店主は今夜喰われるな。
コレ以上続けても精神的によろしく無いので強引に終わらせる。
「了解した、地獄に堕ちろ社長」
恨めしそうに我を見る店主だが、キサマが言い出した事であろうが!
どっと疲れが出たが、置いてけぼりにしていたアイとシドゥリに声を掛けて、我も席に座る。
「店主、こやつ、アイにはたまごふわふわを目の前で作ってやれ」
我の指示に従って店主はアイの目の前で材料である、卵と出汁そして三つ葉を用意し調理に取り掛かる。
「アイよ、見ているが良い、中々見えるものでは無いぞ」
店主の腕前は見事なもので一瞬で卵を皿に割り入れ、黄身と白身を分け、卵の白身をメレンゲ状にしてから黄身と混ぜ合わせ、小さな土鍋に入れた出汁の上に混ぜ合わせたものを乗せて蓋を乗せて蒸す。
そして少し待ってから土鍋の蓋を開けると、
「わ〜ッ! スゴイッ!」
大量の湯気のあと現れたのは何やらフワフワとしたものに三葉が載せられたもの、しかし出汁の香りが鼻腔を擽り食欲を湧かせる。
珍しいものを見た事でアイが嬉しそうに声を上げる。
我はそれを下の出汁ごと皿に取り分け、先ず我から食す事でアイにこの料理は食べても大丈夫で有る事を教える。
この子は母親の虐待によって一部の食事に拒否反応が出ている、特に白米はガラス片を混ぜられた事でトラウマになっており、今はまだ見るだけで身体が震えるくらいだ。
「さぁ、食すが良い」
我の言葉に従って嬉しそうに木匙で卵を掬い口へ運ぶ。
「あふっ!」
出来立て熱々であるので、口をはふはふ言わせながらも一心不乱に食べるアイの姿にほっこりとする。
「うぅ・・・美味しいよぉ・・・」
気づけばアイは涙を流しながら食べていた、その様子は痛々しく、再度あの雑種がどれだけ非道な事を行なっていたのかがわかる。
「大丈夫、ゆっくり食べて良いのですよ」
泣きじゃくるアイをシドゥリが優しく撫でてあやす、気がつけば、たまごふわふわをほぼ一人で平らげ、デザートの豆乳アイスも食したアイが船を漕ぎ始める。
やはり今迄の境遇故に食が細いのだろう。
同年代の子供よりも小柄で痩せている姿は何処か痛ましさを感じる。
「シドゥリ、我は勘定を済ませる故に、お前は先に戻れ」
シドゥリに命じて、アイを抱き抱えさせて先に車へ戻らせる。
「おい店主、今日見た事は他言無用であるぞ」
自分でもらしく無い事は承知しているので、拡めるなと釘を刺す。
「何の事だ? 私は何も見ていないぞ?」
そんな心境を知ってから知らずか店主は惚けた様に答える。
まぁ良い。
「ふん、邪魔したな」
勘定を払い、我も車へと戻る事とする。
「またのご来店をお待ちしております」
女将に見送られながら車の中へと入り、ホテルへ向かう様に命じる。
眠るアイを抱き上げたシドゥリが我に問う。
「王、アイさんの事ですが、これからどうなさいますか?」
アイとはまだ今日出会ったばかりであるが、我の中では此奴は既に庇護対象として見ている。
今の状態に我自身驚いてはいるが悪くは無い、前世の残悔を含めても既に手放す気は無い。
「無論引き取りマトモな生活をさせてやるつもりよ」
他人から見れば不思議に思うだろう、この我ともあろうものが小娘一人にここまで執着するのだからな。
「王の御心のままに」
シドゥリは我の決定に違を唱える事なく従う、此奴もアイの事が気に入った様である。
「全ては母親の出方次第であるな」
あの女の事だ、アイを引き取って一人で育てるとは考え難い、金の問題で済むならばその程度の端金くらい払ってやろう。
その日は予約していたホテルで泊まり、翌日には会社と住居のある都心へと帰り我は仕事に向かう。
アイの事はシドゥリに任せたので、我一人で全ての書類を捌く事となる。
まぁ 少々シンドイが何とでもなるな。
そんな事を考えつつ数日間の間仕事をこなしていると、
「王、今よろしいでしょうか?」
突如シドゥリからスマホ経由で連絡が入る。
どうやら山南から連絡が来て、アイの母親の事で進展があった様だ。
話を聞くと、あの女は近所のスーパーなどの商店で万引きを行なっていた様で、
今回の児童虐待で捕まって、テレビを初めとした情報媒体で知られた為に、監視カメラの映像などの証拠から、窃盗罪で逮捕された様だ。
あの雑種の怪我も治り、ある程度の事情聴取も取り終えた為今回面会を許された。
ただ窃盗罪については既に和解が済んでいる様で3〜4週間ぐらいの拘留の後に罰金を支払う事で釈放されるらしい。
正直気は進まぬが、アレでも母親だ、今一度アイと合わせ話をする必要があるだろう。
我はシドゥリにスケジュールの調整を命じて、面会日を決める事にした。
そして数週間後にアイを連れて母親に会いに行く事となる。
ただ・・・この判断が後にアイの心を大きく傷つけてしまう事になるのを我がゆるしてしまった事に苦悩するのはまた後日の話だ。
禍福は糾える縄の如しとは言うがこの判断が正解だったのかは未だにわからん。
今回はアンソロジーや衛宮さんの今日のごはんの様に緩く書きました。
次回はアイに試練が訪れます。
そして・・・王さまブチギレ案件まで・・・あと・・・
次の投稿も頑張ります!
感想や高評価をいただけると励みになります!