異世界転生を果たした男子高校生の主人公。しかし、身体は幼女で、与えられたスキルは『即死』。意味も分からず『魔王Death!』と叫んでみたら……。

 襲いかかってくる魔王軍に奴隷の悪魔。面白さてんこ盛りにした短編です。




 続きが気になる方は評価、感想など、お願いします(*'ω'*)

 頑張って長編にします- ̗̀ ( ˶'ᵕ'˶) ̖'-'


1 / 1
俺TUEEE?

「うっひょーっ! これが異世界!? やったぁ!」

 

 男子高校生の涼風(すずかぜ) (あお)は広い草原でそよ風に吹かれながらガッツポーズを見せる。

 

 不慮の事故で亡くなった蒼であったが、女神の計らいで夢にまで見た異世界転生を果たしたのだった。

 

「ステータスウィンドウ!」

 

 蒼がこぶしを青空につき上げながら叫ぶと、青い画面が空中に現れる。

 

「キターーーー!」

 

 蒼は絶叫した。

 

 ステータスが整然と並んでいる画面、それはまさに異世界転生が成功した証拠でもあった。

 

 蒼は真っ先に【スキル】の欄を探す。異世界での生き方を決めるのは【スキル】であり、いい【スキル】であればハーレム作って一生面白おかしく生きられるというのが異世界の相場だったのだ。

 

「めっがみ様~、なにくれたのかなぁ……、え?」

 

 蒼は凍り付く。そこに書かれていたのは――――。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

スキル:即死(Death)

    指定した対象を殺します

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 という物騒な【スキル】だった。

 

 え……? 何……これ?

 

 戸惑う蒼。こんなスキル聞いたこともないし、対象の指定方法も分からなかったのだ。

 

「じゃあ何? 魔王Death(デス)! って言ったら魔王死んだりするの? 何なのこのスキル……」

 

 口をとがらせて眉間を寄せ、ため息をついたその時だった。

 

 いきなり頭の中に電子音が鳴り響く。

 

 ピロローン! ピロローン! ピロローン! ピロローン! 

 

 そして新たな画面が空中に次々と湧いてくる。

 

『レベルアップしました』『レベルアップしました』『レベルアップしました』『レベルアップしました』

 

 はぁ!?

 

 蒼はあんぐりと口を開け、次々と折り重なっていく画面を呆然と眺めていた。

 

「ま、まさか……。もしかして本当に!?」

 

『偉業達成!:世界を闇の力から救いました。称号【救世主】を獲得しました。』

『信じがたい功績!:レベル差998を跳ね返し、勝利しました。称号【ジャイアントキリング】を獲得しました。』

 

 これはつまり、魔王を倒してしまったということだろう。ただ、『魔王Death!』と、言っただけで魔王は死に、自分に膨大な経験値が加算されているようだった。

 

「いやいやいや、ちょっと待ってよぉ……」

 

 いつまでも鳴りやまないレベルアップの効果音に蒼は頭を抱え途方に暮れた。転生直後に一言言葉を発しただけで世界を救ってしまった。ゲームだったら超クソゲーである。一体女神は何を考えてこんなスキルを付与したのだろうか?

 

 はぁぁぁぁ……、えぇっ!?

 

 深いため息をついて自分の手を見た蒼は、ビックリして二度見してしまった。なんと、それはモミジのようなプニプニの幼児の手だったのだ。

 

 ま、まさか!?

 

 慌てて自分の身体を見回してがく然とする蒼。

 

 そう、蒼は白いワンピースを着た金髪の幼女だったのだ。

 

「な、何これ!? め、女神様、頼むよぉ……」

 

 ひざから崩れ落ちた蒼は、これからどう生きていっていいのか皆目見当もつかず途方に暮れる。

 

「ハーレムは……? ねぇ、女神様ぁ……?」

 

 その頃、女神は神殿で腹を抱えて笑っていた。

 

「はーっはっはっは! あー、可笑(おか)しい! 見た? 今の顔」

 

 この幼女の身体は先日亡くなった公爵令嬢のものだった。金髪碧眼の類まれなる可愛さはまさに芸術品。あまりにも惜しいので、身体だけでも再生し、蒼の転生に使わせてもらったのだ。もちろん公爵令嬢も、土の中で骨となるよりはと快諾してくれている。

 

「さーて、蒼ちゃん、君の快進撃はこれからよぉ」

 

 女神はチェストナットブラウンの少しカールした長い髪を揺らしながら、愛おしそうに蒼の様子を見入った。

 

 蒼はそんなことなど露知らず、澄み通る青空にぽっかりと浮かぶ白い雲をぼーっと眺めながら、草原を渡るそよ風にただ身をゆだねた。 

 

 

      ◇

 

 

「確かに『最強にしてくれ』と頼んだし、実際最強なんだろうけど……。コレジャナイ……」

 

 蒼は肩を落とし、うなだれる。

 

「可愛い女の子たちとパーティを組んで、ハーレムで愛を育みながら魔王を倒す、それが異世界の醍醐味なんだよ。分かってねーな、あの女神は……」

 

 蒼はパンとひざを叩き、ため息をつく。幼女ではハーレムなど築きようがない。魔王も倒してしまったし、一体これから何を目標にしたらいいのだろうか?

 

 蒼は改めてステータスウィンドウを眺める。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

Lv.100 アオ 三歳 女性

種族 :ヒューマン

職業 :無職

スキル:即死(Death)

    指定した対象を殺します

称号 :救世主、ジャイアントキリング

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 いつの間にかレベルが100になっていた。レベル1がレベル999を倒せば一気にそのくらいは行くのだろう。

 

 試しに蒼はピョンと跳び上がってみる。

 

 すると、幼女にもかかわらず、まるでトランポリンのように宙高く舞い上がってしまった。その異常な跳躍力に焦ってバランスを崩し、思いっきり頭から落ちてしまう蒼。

 

 痛ってぇ!

 

 だが、かなりの勢いで落ちたにもかかわらず怪我一つなかった。レベル100の身体能力や防御力というのは実は相当に強いのではないだろうか? 冒険者としても上級クラスかもしれない。

 

 一瞬、冒険者になろうかとも思ったが、幼女じゃきっと受け入れてくれないし、パーティも組みようがなかった。

 

「ふぅ……。さて、どうするかな……」

 

 蒼はもう一度ピョンと跳び上がって周りの様子を眺めてみる。

 

 しかし、目新しいものは何もない。しばらく草原が続いた先は森になっていて、遠くに山が見えるだけ。こんな大自然の中でどうやって生きていけばいいのだろう?

 

 と、その時だった。にわかに空が掻き曇り、青空はあっという間に暗雲の渦へと塗りつぶされていく。ゴロゴロゴロと雷鳴すら響き始めた。

 

 蒼が怪訝(けげん)そうにその暗雲を見上げていると、急に真紅に輝く巨大な円が空に描かれた。

 

「な、なんだ、あれは……?」

 

 嫌な予感に蒼は顔をしかめ、思わず後ずさる。

 

 巨大な円の中に六芒星が描かれ、ルーン文字が書き加えられていく。魔法陣だ。

 

 蒼は本能的に極めてヤバい事態が進行していることを悟る。やっぱり魔王なんて殺してはならなかったのだ。冷汗がブワッと湧きだして手がブルブルと震えてしまう。

 

 直後、鮮烈な赤い閃光が天と地を覆いつくしたとおもうと、ピシャーン! という激しい落雷の衝撃音が草原に響き渡り、蒼は吹き飛ばされてもんどりうって転がった。

 

 うわぁ!

 

 よろよろと体を起こすと、ドヤドヤと大勢の気配がする。

 

 へっ!?

 

 慌てて草の間から様子をうかがって蒼は目を疑った。何とそこにはおどろおどろしい魔物の集団が現われていたのだ。黒い翼を背負ったイケメンを先頭に、ヤギの顔をした悪魔やらフードをかぶったドクロなどの幹部がずらっと並び、その背後には目を赤く光らせる巨大なクマの魔物たちなどの軍勢が広がっている。魔王軍の一個師団が転送されてきたのではないだろうか?

 

 辺りは魔物たちの放つ紫色の(すす)のような微粒子が立ち上り、生命力を吸い取られていくような邪悪な雰囲気に満ちていく。

 

 あわわわわ……。

 

 蒼は魔王軍の放つ圧倒的な魔気に当てられて、思わずペタリとへたり込んでしまった。まさに死の軍団が目の前に展開している。なぜ今こんな軍隊がここに現れたか? と言えば魔王を倒してしまった自分を探しに来たに違いない。一体どうやってバレてしまったのかは分からないが逃げねば!

 

 蒼はそーっと後ろを向くとソロリソロリと這いながら逃げ出した。

 

「そこな小娘、どこへ行く?」

 

 気がつくと目の前にイケメンが立っている。テレポートでもしたのだろうか? 頭からは角を生やし、背中の巨大な漆黒の翼をゆったりと動かしながら、炎を揺らめかせる真紅の瞳で静かに蒼を見つめていた。

 

「ひぃぃぃ! お、お家に帰らないと……」

 

 蒼はあまりの恐怖におしっこを漏らしそうになるのを必死に我慢し、出まかせを言った。

 

「家……? それよりここで怪しい者を見なかったか? きっと魔導士のたぐいだと思うが……?」

 

 イケメンは体中から紫色に煌めく微粒子をふわぁと噴き上げながら蒼の顔をのぞきこむ。その表情には冷徹なマスクの裏に秘められた果てしのない憎悪が透けて見えた。

 

「ま、魔導士? あたしよく分からない……わ」

 

 蒼は必死に無能な幼女を装う。

 

 イケメンは小首をかしげ、鋭い(まなこ)で蒼を貫いた。その瞳には見た者の命を分解してしまうようなすさまじい魔力を感じる。

 

 や、やばい、殺される……。

 

 蒼は半べそをかきながら後ずさりした。レベル100の身体能力があったとしてもこんな上級魔族には全く歯が立たないことは本能的に分かってしまう。

 

 イケメンは指先で空間を切り裂き、巨大な大鎌を取り出すと無表情のまま振り上げた。

 

「……。まぁいい。死んでおけ」

 

 いたいけな幼女を問答無用で殺そうとするイケメン。さすが上級魔族である。しかし、転生早々殺されるわけにもいかない。

 

「ダメDeath(デス)!」

 

 蒼は両手をイケメンの方に向け叫ぶ。

 

 イケメンは一瞬神秘的な紫色の閃光に覆われ、次の瞬間、まるで糸の切れた操り人形のように力なく、静かにその場に崩れ落ちた。

 

 蒼は半ば無意識に即死スキルを使ったのだった。

 

 ザワっと魔王軍の面々が色めき立つ。イケメンは魔王軍四天王の一角を担う最強の悪魔、ルシファーだった。それが幼女に瞬殺された。それはあってはならないことだったのだ。

 

「ル、ルシファー様ぁぁ!」「あぁぁぁ! 殺せぇぇぇ!!」

 

 ヤギ頭の魔人が二股の槍を構えて蒼めがけてすさまじい速度で突っ込んでくる。フードをかぶったドクロは呪文を唱え、空中に黄金色の魔法陣を展開した。

 

「ひぃぃぃ! 恐いDeath(デス)!」

 

 蒼は魔王軍の方に向かって両手を向けて叫ぶ。直後、魔王軍全体が紫色の閃光に覆われる。

 

 バタバタバタ……。

 

 次々と地面に倒れる音が草原に響き渡っていく……。

 

 草原には再び静寂が訪れた。

 

 へ……?

 

 蒼はそっと目を開けて驚いた。数千はいた魔王軍の軍勢は全て地面に倒れ伏せ、草原は死体で埋め尽くされていたのだ。

 

 

 ピロローン! ピロローン! ピロローン! ピロローン! 

 

 頭の中に鳴り響く電子音、そして空中に次々と湧いてくる画面。

 

『レベルアップしました』『レベルアップしました』『レベルアップしました』『レベルアップしました』

 

 こ、これは……。

 

 蒼は改めて即死スキルの滅茶苦茶な力に唖然とする。単に「Death(デス)」と、言っただけでいとも簡単に魔王軍をせん滅できてしまったのだ。

 

『信じがたい功績!:5438もの敵を一度に殺しました。称号【殺戮王】を獲得しました。』

 

 蒼はまた新たな称号を獲得してしまったことに頭を抱える。殺すつもりも無いのにどんどん殺してしまう現実に心がついて行かない。これは何かの罰ゲームなのか?

 

 やがて倒れた魔物たちは次々と消えていき、後には美しく輝く大きな宝石のような魔石が残されていった。魔物は倒すと消えて魔石になるようだ。

 

 はふぅ……。

 

 魔王軍によって踏み荒らされた草原には無数の魔石が散乱し、美しく輝いている。それはまるで宝石がちりばめられた大地のように美しかったが、蒼には殺されてしまった者の無念の輝きに思えて首を振り、思わずため息をついた。

 

 しばらくうつむいていた蒼だったが、いつまでもここにはいられない。この大量殺戮を検知して第二陣が来てしまうかもしれないのだ。

 

 どっこいしょ……。

 

 蒼はゆっくりと立ち上がる。

 

 ひ、ひぃぃぃ!

 

 脇の方から悲鳴が聞こえた。それはピンクの髪に二本の角を生やした若い女の悪魔だった。背中からはコウモリのような黒い羽根を生やし、胸を強調した赤いボディスーツを着ている。悪魔は腰が抜けたようにへたり込み、蒼に恐怖を感じてガタガタと震えながら涙を流していた。

 

 どうやら一人殺し損ねていたらしい。可哀想ではあるが、目撃者を生かしておいてはマズい。

 

「ごめんな」

 

 蒼は顔をしかめながら彼女に右手を伸ばす。

 

「ひぃぃぃ! 待って! 待ってください! 私、奴隷になります! あなた様の言うこと、何でも聞きます。だから殺さないでぇぇぇ!」

 

 悪魔は手をワタワタと振りながら必死に叫んだ。

 

「奴隷……?」

 

 蒼は首をかしげた。そんなやり方があるなんて日本人だった自分には想像もつかなかったのだ。

 

 自分はこの世界のことを何も知らない。何でも言うことを聞いてくれる味方がいるのであればそれは確かに役に立ちそうだ。

 

「そうです、奴隷の契約をすれば私はあなた様のことを裏切れません。必ずやお役に立ちます!」

 

 泣いて懇願する彼女をしばらく見つめる蒼。澄み通る赤い瞳に透き通るような白い肌。かなりの美形だったし、胸も大きく、男だったらイチコロだろうなとつい思ってしまう。

 

「ふぅん、じゃあ試しにやってみてよ。変な事しようとしたらすぐに殺すからね?」

 

 蒼は幼児のプニプニの腕を組み、可愛い目でギロリと悪魔をにらんだ。

 

「や、やたっ! ありがとうございますぅ。変な事なんてしませんよ。私、こう見えても真面目な悪魔なんですぅ」

 

 悪魔はパァッと明るい笑顔で飛び起きると、嬉しそうにくるっと回った。

 

 悪魔に真面目という概念があること自体よく分からなかったが、蒼はその嬉しそうな姿を見て、殺さずに済むなら確かにそっちの方が良いかもしれないと思いなおす。

 

「では、契約を始めますねっ!」

 

 悪魔はナイフを取り出すと左手の甲に刃を突き立て、シュッシュッと斬り始めた。

 

「お、おい、それは……?」

 

 焦る蒼の前に悪魔はすっと左手を差し出す。その甲には六芒星型の傷が刻まれ、血が滲んでいる。

 

「では、ご主人様はこの星の真ん中に血を一滴お願いします」

 

 悪魔は小首をかしげニッコリと笑う。

 

「血!?」

 

「一滴でいいんですって、ほら、早くぅ」

 

 悪魔は小刀の柄を蒼に差し出した。

 

 蒼は渋い顔で受け取ると薬指の腹に刃を突き立てる。

 

 つぅ……。

 

 プクッと膨らんできた血の球を、蒼は悪魔の左手の星の真ん中に擦りつける。直後、二人は一瞬黄金色の輝きに包まれ、蒼の前に青い画面が開いた。

 

『ムーシュを奴隷にしますか? Yes/No』

 

 どうやらこの悪魔はムーシュと言うらしい。蒼はYesに指を重ねる。すると、今度はムーシュのステータス画面が開いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

Lv.69 ムーシュ 18歳 女性

種族 :魔族

職業 :奴隷(所有者:アオ)

スキル:魅了

    指定した対象を操ります

称号 :堕天使の理解者

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 ムーシュからの話を総合すると、彼女は下級魔族の家に生まれ、ルシファーの秘書の一人として魔王城で働いていたそうだ。しかし、スキルが『魅了』のため、実務上はあまり役に立たないダメ悪魔ポジションで辛かったらしい。そういう意味で今回の契約はチャンスと考えているそうだ。

 

「では、ご主人様、魔王城に行きましょう!」

 

 ムーシュはキラキラと真紅の瞳を輝かせながら言った。

 

「は!? なんで魔王城なんだよ?」

 

「え? だって、ご主人様が魔王倒したんだから次期魔王はご主人様ですよ?」

 

 ムーシュは不思議そうに言う。

 

「いやいやいや! 僕は人間、魔王なんてやらないよ!」

 

「あ、じゃあ人間界を制覇するんですね! じゃあ皇帝ぶっ殺しましょーー!」

 

 ムーシュはノリノリで右手を突き上げた。

 

「ちょ、ちょっとまって! なんで君は頂点を狙いたがるの?」

 

「だって、ご主人様世界最強ですよね?」

 

 ムーシュは真紅の瞳を輝かせながら蒼の顔をのぞきこむ。

 

「いや、まあ、そうだけど、強いからってテッペン狙わなくてもいいの!」

 

「えーー……」

 

 ムーシュつまらなそうに口を尖らせた。

 

 ムーシュには野望があった。今まで自分を散々馬鹿にしてきた親戚、同僚どもを優越的立場からアゴでこき使ってやりたいのだ。

 

 蒼が魔王になれば側近である自分は魔界ナンバー2なのだ。倍返しだ! ムーシュはそんなことを夢想していたが、このままでは野望は潰えてしまう。なんとか蒼に野心を持たせねばならない。ムーシュはギリッと奥歯を鳴らした。

 

 しかし、よく考えれば世界最強は周りが放っておかない。否が応でも荒波にもまれたらテッペンを目指さざるを得ない、いや、自分がそこへ誘導すればいいではないか。ムーシュはポンと手を打つと、にやける顔を蒼に気づかれないように急いでそっぽを向いた。

 

 

        ◇

 

 

「そんなことより、のど乾いたんだけど、なんかちょうだい」

 

 蒼はムーシュに可愛いモミジのような手を差し出した。

 

「えっ!?」

 

 いきなり真っ赤になるムーシュ。

 

 蒼が戸惑っていると、ムーシュは豊満な胸を押さえ、うつむいて言った。

 

「申し訳ありません。この胸は形だけは立派……なのですが……、おっぱいは出ないのです……」

 

 蒼はボッと顔を赤くする。

 

「な、何を言ってんだ! 母乳じゃないよ! 水だよ水! 水くらい持ってるだろ!」

 

 そう叫んで蒼はムーシュのお尻をペシペシ叩いた。

 

「あぁっ! ごめんなさい! 水ですね、すぐにお持ちしますぅぅぅ」

 

 蒼はふんと鼻を鳴らすと腕を組み、荷物を漁るムーシュをにらんだ。いくら幼女姿とは言え母乳はひどい。もし母乳が出る身体だったら吸わせるつもりだったのだろうか?

 

 ここで蒼の妄想が暴走してしまう。

 

『えっ……? 吸わせる?』

 

 蒼は変なことを想像して再度顔を赤くする。

 

 いかんいかん!

 

 蒼は首を振って煩悩を振り払った。

 

 

         ◇

 

 

 ムーシュに魔石を拾い集めさせ、蒼はそれをボーっと見ながら皮袋に入った水を飲んだ。

 

 さすがに五千個もの魔石を全部集めるのは大変そうなので、幹部を中心に数百個ほどにする。ルシファーの魔石が一番大きく、おにぎりくらいの巨大サファイアのようであり、青く美しく輝いていた。

 

「さて、それじゃ近くの街まで案内してよ」

 

 蒼は立ち上がり、お尻をパンパンとはたく。

 

「えっ!? 人間の街ですか?」

 

「そこで魔石換金して美味しいものでも食べようよ」

 

「いいですけど……、私、人間の街なんて行ったことないから分からないですよ?」

 

「かーーっ! 役に立たんなぁ……」

 

 蒼は思わず宙を仰ぐ。

 

「だから魔王城にしましょうって!」

 

「それだけはヤダ!」

 

 蒼は腕を組んでキッとムーシュをにらんだ。

 

「むぅ……。しょうがないですねぇ。じゃあひとっ飛び行ってみますか」

 

 ムーシュはそう言うと蒼をひょいと抱き上げて両腕で抱きしめた。豊満なふくらみに包まれてしまう蒼。

 

「お、おい、ちょ、ちょっと!」

 

 柔らかな温かさに真っ赤になってもがく蒼。

 

「危ないですよ! しっかりつかまってて!」

 

 ムーシュはそう言うと黒いコウモリのような巨大な翼を広げ、バサバサっとはばたかせると一気に飛び上がった。

 

「うわぁ!」

 

 ぐんぐんと高度を上げていくムーシュ。

 

 蒼は視界の端でどんどんと小さくなっていく草原を見て青くなる。こんなところから落ちたら即死である。

 

 ひぃ!

 

 蒼は恥ずかしさなどどこへやら、必死にムーシュにしがみついた。

 

 ムーシュは何やら呪文を唱えると、全身が紫色の光を帯び始める。

 

「ご主人様、王都まで一気に行きますよぉ、それーっ!」

 

 直後、激しい光に包まれたムーシュと蒼は、爆発的な加速を得て一気にすっ飛んでいく。

 

「ひょえぇぇぇ!」「きゃははは!」

 

 蒼の悲鳴と、ムーシュの笑い声が大空に響き渡っていく。

 

 こうして世界最強の幼女と、お気楽悪魔の珍道中が始まったのだった。果たして二人の旅は何を見せてくれるのか?

 

 二人は広大な森の上空を爆音を上げながらカッ飛んでいった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 蒼とムーシュの珍道中が気になる方は評価、感想など、お願いします(*'ω'*)

 

 頑張って続き書きます- ̗̀ ( ˶'ᵕ'˶) ̖'-'


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。