博麗大結界が壊れたあの日から~東京project~ 作:冬希
今年の中秋の名月は9/8と言われていますので、今回は9/8という設定にします。
主人公は永夜組です。
3節では最終回となります。
9月8日(水) この日は、月がよく見えるという、「中秋の名月」である
夜の公園。
もう蝉はあまり泣いていない。
静かな公園の夜は、なんだか幻想的な空気が漂っていた。
ーー。静かな公園に一つの足音。
ピンクの長い耳はないが、いつもの見慣れた制服はある。
ーー鈴仙•優曇華院•イナバである。
そして、もう一つの足音。
服の色は暗闇と同化し、よくわからない。
「お師匠様。ご無沙汰しています」
鈴仙は一礼した。
「あら、ウドンゲ。お久しぶりね。ところで姫をみなかったかしら?」
お師匠様こと、永琳は聞いた。
「ーーいえ、みていません」
少し黙ったあと、そういった。
「まあ、きっと来るわね」
永琳はそういい、月を見る。
「うふふ。懐かしいわね」
永琳は笑った。
「はい」
鈴仙が返事を返した時に、二人の影が見えた。
影といっても、月明かりに照らされた影で、とても淡かったが、二人いるというのは見て取れた。
「あれは姫だわ。そして、もう一方は…」
と、永琳は黙ってしまった。
「お師匠様?どうなさいました?」
「…あれは、間違いないわ。妹紅よ」
鈴仙はフリーズしてしまった。
フリーズが解かれるのに十秒はかかった。
「珍しいこともあるんですね」
鈴仙は驚きを隠せないが、それとは永琳は対照的だった。
「まあ、予想通りね」
「え…?」
鈴仙は、視線で聞き返した。
「ウドンゲ。覚えてるかしら?霊夢たちが月へいったこと」
「はい。覚えてますが…それとはどのような関係が…?」
儚月抄の話である。
「これはあくまでも私の推測よ。あの二人はどちらかが欠けないと、お互いの良さは気づかない。離れてみないと気づかないものって、結構あるものよ」
と、突然永琳は語り出す。
「それはどのような意味で…」
鈴仙には訳がわからなかった。
「つまりね、いつもは喧嘩している二人だけど、やはり離れると寂しくなるのよ。あなただって、月の親友と別れて地上に戻ってきたとき、寂しかったでしょ?」
鈴仙は頷く。
「霊夢たちが乗ったロケットが月へ放たれたとき。妹紅は大慌てで永遠亭へやってきたのよ。それが頷ける証拠よ。やはり、お互いはお互いに、なくてはならない存在ね」
永琳はそう語った。
「なんなら、なぜ殺し合うのですか?」
鈴仙は聞いた。
「それは私にもわからないけど、彼女たちは不死だからこそ、欲しているものがあるの。わかるかしら?」
永琳は問う
「…いえ。わかりません」
鈴仙は首を振る。
「…言い方を変えるわ。あなたは確実に経験するけど、私を含めてあの二人は決して経験しないものは?」
これはすぐに答えられた。
「ーー「死ぬこと」ですか?」
「ええ。正解よ。彼女たちは死にはするけど、すぐに蘇生してしまう。言い方が少し悪いけど、彼女たちは「死を経験してみたい」のよ」
永琳はそう説明すると、二人の元へ向かおうとした。
でも、すぐその足は止まった。
先には一人の影。
ーー上白沢慧音である。
「慧音も来たのね」
永琳は言った。
「ああ。みんな、集まると思ったからな」
その右手には、大きな袋がぶら下げてある。
「ウドンゲ。あの二人を呼んできて」と、その袋を見た
「は、はい」
といい、二人の元へ駆けていった。
「それは月見団子ね」
永琳は袋を見て言った
「ああ。せっかくの月見だから月見団子ぐらいは持っていこうと思った。」と、慧音は言った
「…悪いわね。こちらは何も用意してないのに」
永琳は詫びる。
「ああ。構わないよ」
と言うも、慧音は特定の人影を見ると…
「もこたーん!」
「だからもこたんやめぃ!」
輝夜も便乗して…
「もこたん」
と、笑いながら言う。
「だからやめろってそれ!」
妹紅の叫びは月夜に響いていった。
「慧音が月見団子を持ってきてくれたわ。あそこのテーブルでいただきましょう」
と、公園のベンチに腰掛けた。
そして、月見団子の入ったパックを開き、テーブルの上に展開する。
「ありがとうな。慧音」
「ああ。いつも仲良くしてもらってるお礼だ」
慧音は、そこは律儀である。
時はゆっくりと進む。
時折涼しい風が吹く。
「こちらの世界は安全ね」
永琳は口を開いた。
「ええ。人間を襲う妖怪がいませんしね」
鈴仙はそういった。
「でも、こちらではそもそも、『妖怪』という概念が全くないのが残念だな」
と、慧音は言った。
いままで異変をおこしてきたのは、吸血鬼、亡霊、鬼、宇宙人、閻魔と死に神(?)、神様、天人、仙人とやらは現実世界では幻想となり、人々の脳内にそのような概念はない。
そもそも、忘れられた存在が集まるのが幻想郷なんだから。
「こちらの世界の常識と、幻想郷の常識は真逆なんだな」
と、妹紅は団子を口にした
「あら、私は童話になってたわよ。なんか月に帰っててちょっと笑ってしまったわ。そこに妹紅の表記はなかったわよ」
月に帰ったかぐや姫が世話をしてくれた人に不死になる薬を渡した。それを偽物ととっかえたのが妹紅で、それを興味半分で飲んで不死になったのが妹紅なので、物語には出てこない。
「あらら…姫はまた微妙なことになってますわね」
永琳はそういった
「ええ。『そのあと、かぐや姫は地上征服をたくらみ、地上に舞い戻ってきました』なんてことになってるかと思ったわ」
輝夜は笑ってそういった
「こっちの世界では、「童話」というのは子供向けの本のことだ。そんな物語は子供には向かないだろうな」
慧音はちゃっかり子供の勉強をしているので、多少の知識は心得ている。
「わ、わかってるわ!じょ、冗談よ!」
あたふたした感じで輝夜はそう付け足した
「はいはい、わかりました」
慧音は少々呆れ混じりに言った。
時刻が遅くなってきた。
月も少しずつ遠い西の空へ沈み始める。
「さて、そろそろ終わりますか。これ以上遅くなっては明日からに響くわ。睡眠不足は心にも体にも悪いわ」
と、永琳は言い、帰るよう言った。
「ああ。そうだな。私も帰るようするよ」
と、慧音はゴミをかき集め、公園のゴミ箱に捨てた。
「さあ、帰ろうか。妹紅」
「だな」
慧音と妹紅は一緒に帰る。
そして、永琳、鈴仙、輝夜は…
「わたしたちも帰りましょう」
鈴仙が切り出した。
「ええ。自ら帰れと言ったのに、自らが帰らないのは一番駄目よね。姫。月が惜しいのは分かりますが帰りますよ」
と、月を見つめる輝夜の目にも、月が光輝いていた。
「…いえ、今はそっとしておきましょう。帰るわよ。ウドンゲ」
何かを察した永琳は、そっとしておくことにした。
「…はい。お師匠様」
輝夜はこのあと、もうしばらくは動かなかった。
最後なんだか微妙な感じで終わってますが、シリアスにまとめようとするとああしてしまう癖です。
さて。この話で第3章は終了です。
次回は第4節に入ります。
~順番通りで見て下さっていることを願っての次回予告~
第4章「鬼怒川温泉旅旅情」。
偶然にとりが出した懸賞にあたってしまったにとり一家のほのぼのしたいのに出来ない(?)旅。
ちなみに、題名は東方二次音楽界隈では大人気の「IOSYS」様の「月見湯温泉恋旅情」をもじりました。
だからこの話で3節を終わらせました。
お楽しみに。