お互いに個室に入って、指定されたブースの番号に連絡をかける。だが、その際に、あるものを見てクソ驚いた。これが、影浦先輩の部屋番号に表示されているポイント…まあ、要は、影浦先輩が所持している個人ポイントなのだが。
347 スコーピオン
『6962』
これは、つまり、今10月だから、あの人9月に入隊してからこのポイントを貯めたというのだ…参考までに言うと、僕の個人ポイントは『7324』である。僕の場合は、5月入隊で、夏休みとかを挟んでこのポイントである…まあ、僕も防衛任務入れまくっていて、出水と新人王争いをするまでランク戦そんなしていなかったというのもあるが…この人は一ヶ月でこれほどのポイントを貯めたということになる…
普通に考えても猛者だ。入隊時に多分僕と同じである程度のポイント加算をもらっているのだろうが、それでもこのスピードはやばい…僕以上…かどうかはわからんが、只者ではないことの証明には十分だった。
『ルールはどうします?』
『そうだな…じゃあ、5本先取でどうだ?』
『5本っすね』
相手が使うトリガーはスコーピオン…何というか、“らしい”。あの風貌で、弾トリガーはなんか使ってなさそうだなーって思ったのだが、まさにイメージピッタシの武器を使っているようだった。
『そういえばよ、表記されているお前の武器の“レイガスト”ってのはなんだ?新型トリガーか?』
『…ソノトオリデス…最近開発された奴です…』
…君、知られてなさすぎじゃない?え?影浦先輩、同期にレイガスト使っているやついなかったんですか?そんなに不人気なの?このトリガー…もう可哀想になってきた…
そんなことを考えていると、転送が開始される。
よく見る市街地が、目の前に広がって、目の前にこちらを見据える影浦先輩が現れる。距離は数m…佇まいだけ見ても他のスコーピオン使いとは違う…
『個人ランク戦 5本先取勝負 開始』
その声が鳴った瞬間だった…
(…はい?)
『戦闘体活動限界』
そして、目線がどんどん落ちていく…これは…
(え…?体の感覚がない…やら…れた…?)
何をされたのかわからないまま、一本目は影浦先輩に取られる事になった。
◆◇◆◇
…まて、あ…ありのまま、今起こった事を話すぜ!「僕は戦闘準備をして、スラスターで踏み込もうとしたのだが、ものの数秒もかからずに首をかき切られた…!」
どういうことだ…首を切られたと確認できたのも、トリオン体の再生を待つ間に今の試合を端末で確認できたからだ…それまで何をされたのか本当にわからなかった…確認できたのは、影浦先輩がまるで何かを薙ぎ払うかのような動作をした後に、映像には黄色い線が見えている…何だこれ…?弧月か…?にしては持ち手がない…
『二戦目、開始』
「うっ…!?」
色々考えていると、試合開始の合図が無情にも聞こえてしまい、今度は、首をまた数秒でかき切られないように、試合開始とほぼ同時に体勢を大きく変えて前屈みになる。その瞬間、影浦先輩から黄色く輝くトリオンブレードが目に見えた。
「やっぱ、そんじょそこらの雑魚どもとは違って、もう同じ手には引っ掛からねえよなぁ!」
「…これは…!」
2回目を見て分かった。あれは、
基本、攻撃手トリガーでは、ランク戦開始時の間合いで攻撃を当てるのは難しい…いや、レイガスト投擲だったり、弧月の専用オプショントリガーである、トリオンを消費して刀身を拡張する“旋空”というトリガーを使えば攻撃はできるんだが、レイガスト投げも旋空弧月も、発生時間が多少かかるため、初手から当てるのは難しいのだ…で、スコーピオンには、そういう遠距離攻撃も基本ないので、初手からある程度離れた距離で攻撃してくることなどないだろうと踏んでいたせいで、思いっきり油断していたので、思いっきり狩られてしまった…まあ、今度は“首”には攻撃されなかったのだが…
「嫌らしいっすね…影浦先輩…首じゃなくて今度は初めから足狙いですか…」
「まあな…初手首狙いは一回こっきりでもう通用しなくなってあたりめえだからな。2度同じ所を狙ったら回避できるのなんざバカにでもわかる」
向こうはこっちの反応を予測して僕の下半身に向けて鞭のスコーピオンの斬撃を放っていた。また首狙いで来ると思っていた僕は、大きく屈むだけで足を全く動かしていなかったせいで、足への攻撃に全く反応できなかった。
おかげさまで、左足に大きな傷ができて、バランスが保ちにくくなっている…まだ足がついているだけ怪我の功名なのだろうが、正直もう不利だ。
「さあ…楽しもうぜ!」
「おっと…!」
向こうから容赦の無い斬撃が襲いかかる。仕組みが分かれば防げる。初めからレイガストの盾モードにしていたので、襲いかかる無数の斬撃に的確に盾をぶつけて攻撃を相殺する…
(クッソ…リーチが違いすぎるな…)
対出水戦の時に散々言ったと思うが、戦いにおいて、リーチの差というのは、場合によってワンサイドゲームが成立するほど重要なファクターだ。向こうはそんじょそこらの弾トリガー使いに比べて、圧倒的な回転率と攻撃力でこちらに攻撃を放ってくる…正直むちゃくちゃやりにくい…射手相手なら、射出後の後隙を狙って詰めるとか、銃手相手なら横移動を駆使して詰めるとか、色々やり方はあるのだが、相手はまるで違う。
射手のような1発1発が広範囲高火力で隙のでかい攻撃を放ってくるという訳でもなければ、銃手のように、真っ直ぐ長距離に飛ばす、隙の無い攻撃を行ってくるという訳でもなく、変幻自在にしなる、予測不可能の攻撃を高回転率で隙無く放ってきているのだ…しかも、攻撃手用トリガーを使っているせいで、火力もやばいと来た…流石に弾トリガー相手に比べれば射程は短いが、いつもと違う対処の仕方をしないといけないのでめちゃくちゃやりにくい。
(隙がないなら詰めるしか無いけど、正直この回転率で攻撃を放ってくるっていうのなら…詰める隙がねえ…)
何とか防いでいるが、足の傷のせいで上手く踏み込めないし、このまま防ぎ続けていたらレイガストが破られてしまう…となると…どうするか…
(隙を…作ればいい…!)
「スラスター…
伸びるスコーピオンが伸び切った瞬間…スラスターを起動、ただ、このまま踏み込むと、再度くる斬撃にスラスターによる推進力に逆らえずに回避できないで対応できずもろに喰らう危険性が高いので…狙うは…
「へっ…!そうくるか…!」
(このまま…!)
スコーピオンは、変幻自在な変形機構と、その軽さに目が行きがちだが、弱点として“脆い”ということを忘れてはならない。横に大きく伸びているスコーピオンに、縦のスラスターの推進力を伴った振りおろしを耐えられるわけがない。
そして、スラスターを途中で解除して、そのまま一気に間合いを詰める。足がの傷のせいでいつもより近づきにくいが、もうこのまま近づいていくしかない。
向こうの武器は破壊したので、武器を実装し直すまでの隙ができる…この隙に一気に詰める!
「ふっ…!」
「チッ…!!」
横一文字にレイガストを振り回すが、向こうも中々反応が良い。胸に1発大きな斬撃を入れたものの、向こうにバックステップで避けられてしまった。
くそ…ここで決めるつもりだったけど、向こうの反応がかなり早い…まるで、どこに攻撃が飛んできているのか分かっているようだった…
「さあ…続きだ!」
「ぐっ!?」
レイガストのブレードモードで、飛んでくる鞭状のスコーピオンに受け太刀を行って耐えるが、バックステップで避けられた分大きく距離を取られてしまった…不味いな、これだとまた同じパターンだ…こっちが不利になりかねない…と思った時だった。
「おらあ!どうした!」
(なっ…!?)
何と、向こうから近づいてきた…向こうからわざわざリーチというアドバンテージを潰して近づいてきてくれたのだ…正直意味がわからない…わざわざ近づくメリットが最初に僕にはないように思えた。
「舐めてもらっちゃ…困りますよ!」
「ハン!遠くからチクチクやっててもつまらねえだけだろうが!」
近づいてきた影浦先輩にレイガストの斬撃を繰り出すものの、向こうに紙一重で回避される…この人、どんな反射神経してやがる…!マジで野生動物かよ…!レイガストが他のブレードより重いせいで遅いとはいえ、ここまで予測されて回避されるものなのか!?
「悪いな…」
「なっ…!?」
「接近戦じゃ、
『トリオン供給器官破損』
レイガストの斬撃を回避され、懐に入り込まれて、胸をスコーピオンで突き刺されたことで、心臓付近のトリオン供給器官を破壊されてしまったことで、再度負けてしまった。
レイガストは、重さという弱点のせいで、どうしても一撃重視になってしまうという弱点がある。要は、軽々しく振りまわしまくって手数で攻めることが不可能だということだ。大して、スコーピオンはめちゃくちゃ軽いので、一瞬の隙さえあれば、間合いさえ詰めていれば簡単に突き刺せる。だとしても…対スコーピオン対面でここまで一方的に回避されてやられるとは…向こうはやっぱり強い。
◆◇◆◇
『三戦目、開始』
不味いな…これで2対0だ…このままだとワンサイドゲームになりかねない。
「どうしたぁ!?新人王!!テメエの実力はこんなもんじゃねえだろ!」
「うっへえ…しっかり容赦ないな…!」
再度鞭型のスコーピオンの斬撃が飛んできて、回避するが、このままだと負けてしまう…正直、ただのインファイトではこちらが不利だ。スコーピオンの軽さだと、向こうのほうが早いからだ…いや、これだけだと全然不利ではないのだが、向こうは反射神経がいいのか、めちゃくちゃ回避がうまい。一撃重視で、手数で攻めれないレイガストにとって、一撃を避けられるというのは、インファイトというシビアな世界では
(いや…こうなれば…初見殺しで相手の意表をついてやるしかない…!)
こっちには明らかに有利な点がある…それは“エスクード”の存在を知られていないことだ。こっちの手札が知られていないのは、明らかにこちらが有利な点だ。ただ、問題は、その手札をいつ切るかということ…
(耐え続けていればジリ貧になってこっちが負けてしまう…一撃…一撃を当てるんだ…!また伸び切った瞬間に…エスクードを使って…)
レイガストの耐久度を気にしつつ、向こうの体勢と、スコーピオンの様子を観察しながらひたすら耐える…この距離…単純にスラスターで詰めてもやられかねないからな…ある程度意表を突くにはどうするべきか…いや、意表をついて攻撃するんじゃない…意識を逸させればいけるか…
(…ここ!)
「エスクード!」
そう言って、僕が手をついてエスクードを起動…狙うは…
「っ…!?なんだぁ!?」
(スラスター…
影浦先輩の後方に、背中に向けて斜めに射出したことで、影浦先輩が前に少しだけ押し出される…いや、押し出したのにあれくらいしか動いていないということは、どうやら向こうはエスクードが映える前にもう反応していたらしい…反射神経バケモノすぎるでしょ…だが、これで影浦先輩の意識が後方に逸れた。
「もらったあ!!」
「うおっ!?」
向こうが、後方に意識が逸れていたせいで回避ができず、スコーピオンで受けてくる。スコーピオンも、めちゃくちゃ小さくして、皿状の形にすれば、力が分散されてある程度の一撃でも貧弱とはいえ耐えることは可能だ…この状況、受けに特化した形状のスコーピオンと、レイガストの疑似的な鍔迫り合い状態になっている…のだが、この状況非常に不味い。
受け太刀をされた瞬間に本来なら距離を取るべきだったのだが、スラスターの推進力による慣性が体に残っているせいで、体重が完全に前に傾いてしまっているせいで、横にも後ろにも距離を取れない…!
「残念だったな」
「がっ…くそっ…」
『トリオン供給器官破損』
スコーピオンは、
案の定、影浦先輩の腹からスコーピオンが伸びてきて、僕の胸に突き刺さる。不味い、これだと完全試合が成立しかねない。
◆◇◆◇
「おいおい、なんだあのトリガー…後ろから板が生えてきたぞ?」
「エスクードっていう壁生やすトリガーですよ…まあ、トリオン消費と自由度が無さすぎてめちゃくちゃ不人気なんですけどね…」
「へえ…にしても、お前悠長におしゃべりしている暇あるのか?このままだと一勝もできないで終わるぜ?」
『四戦目、開始』
「わかっていますよ…エスクード!」
試合開始の合図と同時に、影浦先輩の目の前に大量のエスクードを乱雑に生やす。一撃を確実に当てるために、一度ある手段を使おうと思う。
「ヤロウ…!」
「悪いな影浦先輩…こっちは我慢が大好きでね…!」
目の前に大量の壁が生えてきたことで、先輩の表情が明らかに曇った。まあ、明らかに邪魔だよな、こんな壁…普通なら、壁の破壊か、別ルートから攻めようと向こうも考えるはず…なのだが。
「変な小細工してるんじゃねえっ!」
「ウッソだろ!?」
壁同士の隙間をまるで蛇のようにすり抜けつつ鞭状の斬撃が飛んできた…ふっざけんな、遮蔽物無視で射程を押し付けられるとか完全に攻撃手殺しじゃん!
こうなると話は別だ。今度は乱雑に生やすのではなく、隙間が発生しないように生やす。最初のエスクードでトリオンが無駄になってしまったが、もうこの際追い込まれているのでどうでもいい。
(スコーピオンだけだとこの間隔通せねえな…この邪魔な壁をぶった斬らないと無理だな…!ウゼエことしやがって…!)
影浦先輩がスコーピオンをエスクードで発生させた壁に向けて振るう…が、1発だけの斬撃では、傷はできたものの、大破はせず壁としての機能を残したままだった。
(ッチ…硬えな…雑に振っても斬り裂けねえ…一枚一枚をしっかり勢いつけて斬らねえと壊せねえな…!)
1発目は耐えてくれたが、2発目の斬撃には流石に耐えられなかったようだ。出現させたエスクードが次々に切断されていく…勿論、破壊されたらまた生やしていくだけだ。向こうは、鞭状にしなる性質を利用して、壁と壁の隙間を縫って僕に攻撃を届かせようと画策しているみたいだが、そうはさせない。いくらでもエスクードを生やして耐久してやる。
(まだだ…壁の破壊に完全に意識が向くまで待つんだ…)
狙うのは、影浦先輩の意識が完全に壁の破壊に向けられる瞬間…今の影浦先輩の動きは、“壁を壊しつつ、隙が出来次第こちらにスコーピオンを飛ばす”というものだろうが、それだとダメだ…それは、僕の方に本質的には意識が向いているからだ…狙うのは、僕のことを完全に意識から外して、厄介な壁を先に排除しようと思った瞬間…トリオンの消費がこのままだとものすごい事になっていくだろうが、もうそれは必要経費だ…
言っちゃ悪いが、多分あの人死ぬほど短期だろうし、こういう忍耐勝負なら、防御主体で戦うせいで耐える事に慣れている僕の土俵だ…待ち続けてやる…いくらでもな…!
「チッ…斬っても斬っても生えてきやがる…」
…多分、もうそろそろだな…向こうのストレスが溜まってきた頃だろう…
「クソがっ!いい加減出てこい!」
(はっや…)
とはいえ、たまに壁の間を抜けて鞭状のスコーピオンが襲いかかってくるのが怖い…迂闊にレイガストの盾モードを解除できないったらありゃしない…ストレスが溜まってきていようと、しっかりこちらに攻撃を届かせてくるあたり、やっぱりこの人強敵だ…
「壁が邪魔だ!クソがっ!」
(今だっ…!)
今まで、壁の隙間を狙っていた影浦先輩が、あの鞭状のスコーピオンでエスクードを薙ぎ払い始めた…チャンスだ。この時を待っていた!
(スラスター
ダガー状に変形させたレイガスト構えて、大きく振りかぶる…そう、前にモールモッドとの戦いでやったレイガスト投擲だ…
肝心の影浦先輩は、壁を薙ぎ払うかのようにしてズバズバとあの長いスコーピオンで切り裂いていく…
しかし、僕の目の前にはエスクードで生やした壁が大量に生えている…影浦先輩のことも壁で視界が遮られて見えないし、こちらの射線も壁に遮られてしまっている…普通に考えれば、この状況で投げるのはアホだ…目標も視認できていないのに、武器を捨てるようなもんだからな…
だからなんだ?
「いっけえええ!!!」
スラスターの推進力を乗せたダガー状のレイガストが、一直線に僕の前を進む…
(っ…!?なんだ…!?)
慌てて向こうもシールドを貼っているが、ダガー状のレイガストが、壁を貫通した後、勢いそのままに影浦先輩のシールドまで突き破って、もろに体に刺さる。
あの速さで反応してシールド貼れるとか化け物かよ…と、思ったのだが、レイガストが貫通した事によってできた穴から見るに、影浦先輩にしっかり突き刺さってくれたらしい…
『戦闘体活動限界』
正直、ほとんど賭けだった。今回はピンポイントに当たってくれたからいいものの、殆ど位置を先読みしたレイガスト投擲だったのだから…要は、外れる可能性が多分にあったということだ。ただ、向こうの鞭状のスコーピオンがうねっている様子から予測して飛ばしただけ…動き回りながらエスクードを斬られまくっていたら、文字通りレイガストは明後日の方向へ飛んでいっていた事だろう…
ただまあ、これで3対1だ…でも、この賭けに勝利してようやく一勝…やばいな、これ僕真面目に負けるかもしれん。
◆◇◆◇
「面白え戦い方するな…神立。さっきからしてやられてばっかだぜ」
「変なスコーピオンの使い方してるのと、先輩メチャクチャ反射神経すごいせいで、真正面からやり合いに行っても勝てないんですもん…意表をつく戦い方じゃないと無理に決まっているでしょう?ていうか、勝ち越しているのに、嫌味ですか?」
「へっ…まあ、ただ反射神経がいいって訳じゃねえんだけどな…」
「…サイドエフェクト…ですよね、流石にこの反射神経…」
「流石にここまで戦えばわかるか?まあそういうことだ」
…で、詳しくは言わないと…まあ、戦闘向きのサイドエフェクトなんざ、そりゃ短期間であれだけポイントを貯めれるわけだ…しかもあの鞭状のスコーピオンがあれば射程の暴力で同じ攻撃手用のトリガー相手にでも有利に戦えるし…何だこの人、ボーダーで戦うために生まれたのか?
まあいいや。さて…なんのサイドエフェクトだ…?
『5戦目、開始』
「面白くなってきたなあ!!」
「エスクードっ!」
試合開始と同時に鞭状のスコーピオンが飛んでくるが、エスクードを生やして防御する。多分だが、さっきの壁貫通レイガスト投擲はもう通じないだろう…さっきはシールドで防御してくれたおかげで、全く動いていなかったから当てることができたが、あれは別に横に回避すれば何なく回避できるからだ。
レイガスト投擲のあのスピードに反応して、シールドを貼れていたということは、影浦先輩は攻撃が来る前に反応していたと言っても過言ではない。多分だが、反射神経を強化している“特殊体質”のサイドエフェクトとかなのだろう…感情がどうこう悟られていた節があったので、相手の感情がなんとなくわかるサイドエフェクトかと思ったのだが、二戦目での回避とかも、尋常でない反応速度だったので、おそらくそうだ…あの一撃、普通ならもろに入っていておかしくなかったのに、胸にキズを作るだけで済ますとかおかしい…じゃないと、さっきから見せているあの反応速度に納得がいかない。
(…くそ…にしても攻撃が激しい…)
エスクードを生やしつつ防御に回るが、さっきより攻撃が激しい…壁を斬るコツでも掴まれてしまったのだろうか…さっきよりも尋常じゃないスピードでエスクードがぶった斬られていっている…
(このまま耐えたらこっちのトリオンが切れかねない…とはいえ、攻めの択がもう殆ど無いんだよな…レイガスト投擲はもう見せてしまったし、スラスターで突っ込もうにもあのやばい反射神経で先に受けに回られて、攻撃の後隙を狙われかねない…やばい、他に攻める手段は…)
唯一の希望だった、初見殺しで殺すというのも、超人的な反射神経で対応されて仕舞えばどうしようもない…何せ、不意打ちが意味を為さないって事だからな…これ、僕本格的に詰んでいる気がする。
「神立!どうしたぁ!受けだけじゃあ俺には勝てねーぞ!」
「じゃあ攻撃の手を緩めてもらってもいいですかね…!」
たまにレイガストの防御をすり抜けて、蛇のような一撃が弱点に飛んでくるのでマジで冷や汗モノだ…ただ耐えているだけじゃダメだ…何か…何か行動に移さないと…!
「エスクードっ!」
そう考えた僕は、地面に手をついて、エスクードを自分の足元の地面に起動。エスクードカタパルトで空を飛ぶ。おそらく、ある程度の高さにまで飛んでくれば、あのスコーピオンは届かない…
「へっ…そう来たか…!」
(スラスター起動!)
そして、スラスターの推進力で横方向に大きく移動する。このまま何もしなければただ重力に従って落ちて八つ裂きにされるだけなので、スラスターを使って別ベクトルから攻める作戦に出た。
スラスターによる推進力で、僕は空中を横にそのまま移動して、MAP内の家の屋根の上に乗る。
狙うは、前に出水との戦いで見せた、エスクード付属の垂直落下斬りだ。
「エスクード!」
「っ!?壁が…!?」
エスクードを、影浦先輩を囲うように出現させる…そして、それと同時にエスクードカタパルトで空を大きく飛んであの時と同じようにする…正直、囲むのに使ったあのエスクードは簡単に破壊されるだろうが、十分な隙だ…この一撃だけは外さない…と、思ったのだが。
「クッソ!面倒臭いことしやがって!」
「え!?」
空中で視認したのは、影浦先輩が、鞭状のスコーピオンをまるでフックショットのように使用して、付近の一軒家にスコーピオンの先を突き刺して脱出していた瞬間だった。要は、何事もなかったかのように脱出して屋根の上に乗っかったのだ…
重力に従って落下する僕×屋根の上に乗って武器を構える影浦先輩=
答えは明白だった。
「がっ!?」
『戦闘体活動限界』
正解は、避けられず、防げずにスコーピオンを伸ばされて体をぶった斬られることだ…機械音声が僕の敗北を告げて、向こうのスコアが4勝となって、完全に追い込まれてしまった。
どうしよう…出水の時よりも追い込まれたんだけど…いや、あの時はライバル対決だから追い込まれてやばかったけど、今はただの野良試合だから別に負けてもいいじゃんって思うじゃん…?
(やばい…新人王とか言っておいてこんな大差つけられて負けるとか…)
新人王の名に相応しくない敗北をすれば、出水にも申し訳ないし、めちゃくちゃ恥ずかしい…にしても、これどうしよう…リーチもインファイトも不意打ちもダメ…
あれ?これ僕本格的に詰んでる?
影浦先輩、普通に初見殺し要素多いと思うんですよね…攻撃する場所わかるとか、受け太刀に向いてないスコーピオンとはいえ回避でどうとでもなるし、マンティスで射程外から一方的に攻撃できるし…
感想、評価お待ちしています!
エスクードって救済できていると思う?
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できてるだろ…
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いや、まだまだだな…!