不遇=弱いって誰が決めた?   作:よく酔うエンジン

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 今日は、戦闘回なのでいつもより長めです。

 オリストーリー要素が出て来ますので…


 ああ…早く対人戦書きてえ…トリオン兵と戦わせるだけじゃあやっぱり限界あるって…


”シロウサギ野郎”という異変

 防衛任務というのは、基本的に一人でやることはない。

 一人で近界民と戦うとなると、緊急脱出機構があるとは言え万が一の事態に陥ったら危険だからだ。

 いや、一人でやることはできるにはできるんだろうが、やるにはそれ相応の実力が必要になるし、それをボーダー本部に認められなければならない。まあ、新入りがそんな実力あるわけないので、どんなに人脈がなかろうと部隊に入っていなければ誰かと組んでやらなければいけない。

 

 

「諏訪さーん!すいません!遅れました!」

 

「おう、ようやく来たか!武治」

 

「神立君が遅れるって珍しいね、何かあった?」

 

 

 で、今日も僕は防衛任務だ。雨上がりの空の下、全力で走ってきた。

 この砕けた口調で話しかけてきてくれた二人は、“諏訪洸太郎”さんと“堤大地”さんだ。

 ちなみに、僕は今防衛任務の集合時間に遅れかけた。理由は、先日寺島さんからエスクードのことについて学んだ僕は、エスクードを訓練室で練習して、どうこいつの強みを活かそうかと考えて夢中になっていたせいで時間を忘れていたからだ。

 

 彼らとは、寺島さんからの紹介で任務を一緒にさせてもらった時からよく一緒に防衛任務をしている。諏訪さんと寺島さんは同年齢の18歳であり、隊員とエンジニアの間柄にも関わらず、結構仲がいい。で、諏訪さんが防衛任務の時に、トリオン兵達のガードを崩したり、自分らが攻撃するときにトリオン兵を抑えられる前衛が欲しいと言った時に、僕が紹介されたのだ。

 トリオン兵の動きを抑えるのは、レイガストの防御で耐え続ければいいので僕の得意分野だし、ガードを崩すのはスラスターでそうにでもなる。僕というレイガスト使いはうってつけな人材だったと言うわけだ。

 

 初めて会った時は、諏訪さんの容姿に死ぬほどビビった。なにせ、金髪ツーブロックで、口が割と荒っぽかったので、不良の類いなんじゃないのかって思ったからだ。でも、その考えは、数分後になくなった。

 話してみたら普通に面倒見の良い兄貴分みたいな性格だったし、彼も読書家で、好きな本の話で盛り上がったので、すぐに意気投合したのだ。

 

 堤さんは、諏訪さんの一つ下で、最近入ったらしい。坊主頭と、糸目が特徴的な人で、この人とも割とすぐ打ち解けた。諏訪さんと話している時に、僕が時代小説の話を口に出したら、堤さんがよく時代小説を読む人間だったらしく、好きな時代小説に関して話しているうちに仲良くなった。

 やっぱ共通の趣味って強いよ。

 

そして、僕が密かに気に入っている点が、二人ともあるのだ。まあ、それは後で話そう。

 

 

「いやあ…最近入れたばかりのトリガーの練習していたらつい夢中になっちゃって…」

 

「まあ、集合時間にはギリで間に合っているから、責めるつもりはねーよ」

 

『えー…神立がトリガー変えるって意外だね…何入れたの?遂にレイガストに固執することから抜けた?』

 

 

 のんびりした口調で、通信先から話しかけてきたのは、“小佐野瑠衣”と言う、僕の同級生のオペレーターだ。毛先が跳ねたショートヘアが特徴的な少女で、芸能事務所に所属しており、ファンションモデルをしていると言う、中々すごい人だ。この3人の中では、初対面の時に唯一一方的に顔を知っていた人だ…というのも、コンビニで漫画を漁っているときに、雑誌コーナーにあったファッション雑誌の表紙に載っていたのをたまたま覚えていただけだし、向こうは僕のことをもちろん知らなかったが。ちなみに、彼女も読書家だ。

 

 僕を除いたこの3人で、最年長の諏訪さんを隊長とした“諏訪隊”を結成して、任務によく当たっている。正隊員は、本部所属のオペレーターと組めば、オペレーター含め、最大5人の特定の隊を結成することが許可されている。で、まあ僕はその隊に、天涯孤独のソロの身なので良くお邪魔させていただいているということだ。

 

 

「いや別にレイガストは抜かしてねえよ、新しく“エスクード”ってトリガー加えただけだわ」

 

「エスクード?なんだそのトリガー。堤、おサノ、知ってるか?」

 

『全然知らーん』

 

「…確か、古いトリガーでそんな名前のトリガーあったような…」

 

 

 小佐野とはタメ語で話している。同年代だし、異性だけどあんま喋っていて緊張しないからだ。ちなみに、普通なら変なテンションじゃない限り、異性と年上には敬語を使うようにしている。

 

 にしても、エスクードの名前を出したが、全員全然知らないようだ。堤さんが辛うじて存在を知っているようだが、どういうトリガーかどうかは知らないみたいだな。

 このトリガー、レイガストレベルに認知度が低いらしい。良いねえ、良い感じに不遇じゃんやっぱりキミ。

 

 

「まあ、詳細は近界民が来るのを待ちながらでも話しますよ…にしても、雨上がりとかテンション下がるなあ…」

 

「良いじゃねえか別にそんくらい。雨降ってる時にやるよりかはマシだろ」

 

「いやまあそう言われたらそうなんですけど…」

 

 

 野球の時もそうだが、雨上がりのすぐ後で、外で何かするのは何か気分が上がらない。さっきも軽く触れたが、ついさっき雨が降っていたばっかで、ちょうど今さっき雨が止んだばかりなのだ。雨上がり後すぐなので、水溜りがチラホラ今日の防衛任務の場所にも存在し、土もグッショグショだ。場所によっては結構ぬかるんでいる。この土質が僕は嫌いだった。

 

 

「にしても、お前も隊員じゃねえのに、随分とウチに馴染んじまったな。お前がよかったらウチに入らないか?防御力の高い前衛のお前が入るのはウチとしても大歓迎なんだが」

 

『もう結構な数、任務一緒にしてるからね〜歓迎するよー?』

 

「いやあ…まだ隊は考えてないんですよね…まず自分の実力を高めたいというかなんというか…」

 

「でも、神立君普通に隊でもやっていける強さ持っていると思うけどね」

 

 

 エスクードについて話しながら雑談していると、諏訪さんから勧誘を受けたが断っておく。

 別に諏訪隊が悪いとかなんて思ってないのだが、僕自身もう少しソロで活動して人脈を広げたいし、もう少し実力をあげてからどこかの隊にお邪魔したいと思っている。

 

 

「にしても、壁を生やすトリガーなあ…俺らとしたら、遮蔽物としちゃ頼もしいが、こっちからの射線も切れちまうってのがなあ…」

 

「そうですよね…こっち側からの視線が途切れないのならすごく強いと思うけど、使い道がむずそうだな…」

 

「…まあ、今の所、諏訪さんたちがピンチになったら生やすくらいに留めますよ。まだ練習中ですし。本当に扱いが簡単に見えて割と難しいんですよねこのトリガー」

 

 

 銃撃戦中に、通信もなしに勝手に生やしたら、射程持ちの諏訪さんや堤さんにとって、迷惑をかけてしまうのは明らかだからな…

 

 

『文句言ってないでそろそろ準備したほうがいいよー。もうそろそろ門が開く予定時間だし』

 

「諏訪、了解。だとよ、堤、神立」

 

「堤、了解」

 

「神立、了解…」

 

 

 そう言って、諏訪さんと堤さんはあるトリガーを実装する。それは、“散弾銃”型の弾トリガー射出用トリガーだった。

 

 ボーダーの弾トリガー使いには、大まかに分けて二つ種類がある。

 一つは、出水のように、弾トリガーのキューブを直接出現させ、キューブを分割。そして、ある程度弾を散らしたり調節したりしつつ弾幕を貼って中距離攻撃を行う“射手”。

 もう一つは、諏訪さんや堤さんといった、弾トリガーを撃ち出すための銃火器をトリオンで生成して、射程と射撃精度を高めて中距離攻撃を行う“銃手”だ。

 

 両方とも装弾数と威力が使い手のトリオン量に左右されるとはいえ、射程を持って攻撃できるトリガーだ。話せば長くなるので今は言わないが、それぞれにメリットデメリットが存在し、隊員の火力を底上げする存在だ。

 

銃手トリガーには、色々種類がある。片手で簡単に取り回しが可能で、通常の射手よりも射程が20%上がる“拳銃型”型、若干重くなる代わりに、射程が20%ほど同じく上昇し、連写が可能になった“突撃銃”型が、基本的に人気で、ほとんどの隊員が使用している。まあ、“優遇”武器というわけだ。しかし、諏訪さん達が使うのは、“散弾銃”型という、ほとんどの人が使っていない“不遇”トリガーだ。

 さっき言った僕が彼らを密かに気に入っているのは、不遇トリガーを使っている人間だからということだ。まあ、本人たちは僕みたいに不遇だから使っているんじゃなくて、ちゃんと考えがあって使っているんだろうが、まあいい。

 

 この銃は、弾の散る角度を細かく調節でき、瞬間火力が高いのだが、射撃時のラグが大きくて不遇扱いを受けている。諏訪さんが、ガードの高い前衛を欲しがっているのも、そのラグの大きさの弱点をカバーして撃ちやすくするようにしたいからだ。

 何せ、前で誰かが止めてくれれば、ラグが大きくても散弾銃の威力の高さと面攻撃力の強さでどうにかなるからな。

 

 

(ゲート)発生、誘導誤差は6.78ねー』

 

「おお、結構な数出てきましたね…」

 

 

 門が開いて、近界民がゾロゾロ出てくる。モールモッドと、多分バンダー…かな?が、そこそこの数居る。

 

 防衛任務をするならいつも通りの光景…の、はずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 当時の僕は全く知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後に、これがあんな大きな事件の“序章”だということを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい待て!?おサノ!?本当に誘導誤差それだけか!?」

 

 

 あれ?確かに予定地点よりめちゃくちゃ遠いところにいるんですけど…トリオン兵…まあ、いいや。

 

 

『え?あれ?本当だ…でも数値がこう示しているんだけど」

 

「遠くても変わらないし、いつも通り抑えに行きます。止めたら射撃よろしくお願いします…」

 

「おう、任せとけ…って!おいちょっと待て!神立!」

 

「ふえっ!?」

 

 

 レイガストを実装して駆け出そうとしたら、トリオン体の服を引っ張られて諏訪さんに止められた。トリオン体は換装すれば筋力も増強するので、割と強い力で引っ張られて、結構驚いてしまい、情けない声をあげてしまった。

 

 

「な…なんですか諏訪さん…びっくりするんでやめてください…」

 

『急だね諏訪さん。どったの?』

 

「よく見ろ。あいつら、なんか様子がおかしい」

 

「はい…?」

 

 

 僕は慌ててトリオン兵達を確認する。見たところ、普通のモールモッドが3体、バンダーが4体いる。特におかしいところなんてないと思うが…って、あれ?

 

 

「トリオン兵が…()()()()()()…?」

 

「ああ、それにトリオン兵どもの目が()()。一個に固まってから全く動いていねえ」

 

 

 基本、トリオン兵は、標的を探し回るために周りをちらほらと歩き始める。その目的は、邪魔する人間を排除するモノであったり、一般人を捕獲して、トリオンを回収しようとするモノであったり様々だ。

 しかし、今回出てきた奴らは、モールモッドがバンダーを覆い囲って守る様に陣形をとって、全く動いていない。本来、「こちら側」の世界に来るトリオン兵は勝手に動き回って、連携を取ることは少ない…いや、ある程度役割を果たすため自然に連携を取ること自体はあるのだが、あんなにきっちり陣形を組むなんてことはまずない。

 しかも弱点部分である剥き出しになった目がいつもの黄色と違って“赤い”のだ。

 よく見ればバンダーのアンテナ部分の、耳のような突起も異様に長いし、モールモッドの装甲も少し色が違う。

 

 

「諏訪さん…なんですかあれ……」

 

「俺にもわかんねえ。ただ、あのまま考えなしに突っ込んだらやべえ気がすんだよ」

 

 

 普通に奴らの違和感に気がついてなかった…数ヶ月とはいえ、これが経験の差なのか…こういう差を見せつけられると、まだ隊に入れる程実力がないなと実感してしまう。なんて思っていたら、事態が変わった。

 

 

「…」

 

「諏訪さん、あのバンダー、こっち見てきてません?」

 

 

 堤さんが指摘したその瞬間だった。

 全てのバンダーがこちらに向き、寸分のたがいもなく一斉に目が輝きだした…!

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!伏せろ!堤!神立!」

 

「エスクード!!」

 

 

 諏訪さんが異変を察して、僕らに伏せるように命じる。一瞬諏訪さんよりも反応が遅れた僕も状況を察知し、エスクードを僕らの目の前に出現させる。

 

 

ドガァァァン!!

 

 

 バンダーの目から放たれた閃光は、一直線にこちらに向けて突き進み、エスクードにぶち当たった。耳を擘く爆撃音が聞こえ、凄まじい閃光が辺りを包み、エスクードが粉々になる。

 シールドを構えつつ伏せて防御体制に入っていた僕らに目立った損傷はなかったが、エスクードが衝撃で壊された分漏れ出した砲撃は、僕らのシールドにも届いていたし、エスクードの防御力がなければやられていたと、肌で感じる威力だった。

 

 

「バンダーが…一斉に射撃してくるなんて…」

 

「明らかに普通じゃねえなオイ…どういうことだ?これは…」

 

 

 バンダーも、言ってしまえば本来は“バカ”だ。とりあえず見つけた敵にバカスカ撃ちまくる知能しかないトリオン兵のはずなのに、砲撃を一箇所に集中して、同時に撃ってきたのだ。

 明らかに普通とは違う“意思”を感じる。

 それに、同時にたとえ撃ってきたのだとしても、威力がおかしい。普通のバンダーよりも高い気がする。いや、高い。

 

 

「このシロウサギ野郎が…クソ、こっからじゃ散弾銃が届かねえ…」

 

「近づこうにもこの砲撃じゃ難しいし、モールモッドが邪魔だ…あいつら、多分バンダーを守るように陣取っているな…」

 

 

 シロウサギ…確かに、基本バンダーって装甲白いから、赤い目と頭部の長いツノと合わせて、確かにシロウサギだ…じゃなくて!

 本来なら、バラバラにどうせ行動するので各個連携して撃破していくつもりだったが、これじゃ話は違う。下手に前に出たらさっきの一斉砲撃で消し炭にされかれない。唯一のまともな射程持ちの諏訪さん達の散弾銃も、この距離じゃ遠すぎてまともな威力は出ないだろう。

 しかも、近づけたとしても、近くのモールモッドがこちらを処理しに動くはずだ。おそらく、モールモッドが離れていかないのは、バンダーの護衛で、近づく人間を排除する役割なのだろう。バンダーと連携されて襲いかかってこられたら割とマジでひとたまりないかもしれない。

 

 

「おサノ!本部に連絡入れろ!様子が変だ!一旦距離を取るぞ!」

 

 

 バッグワームを着て一旦トリオン兵から捉えられないように距離を取る。諏訪さんがそう命令を出す…が

 

 

「ちょっと待ってください、諏訪さん」

 

「あん?」

 

「あのトリオン兵、陣形作りながら町に向かってません?」

 

 

 …何てこった…本部に連絡入れるだのあーダーこーだしていたら、街に被害が及ぶ可能性が出て来てしまった。何で動かないままじゃないんだよ…こうなったら…!

 

 

「不味いな…こうなったら意地でもあいつら倒すしかねえな…」

 

「エスクード」

 

 

 僕は、“ある形”で数個壁を作り出す。この環境なら…いけるかもしれない

 

 

「ちょっと危険だけど…ここでやりましょうあいつら。放置してたら何しでかすかわかりませんし」

 

「…いけるのか?神立」

 

「はい、考えがあります」

 

 

 僕は、“地面”を触りながら、ニヤリと気持ち悪い笑みを浮かべた。

 

 

◆◇◆◇

 

 

 この作戦、正直言って作戦というにはかなりお粗末なものに近かった。というのも、仕事が大半僕にかかっているし、僕がやらかせば終わりの作戦だ。

 諏訪さん達から反対されたが、押し通した。“正直、ベイルアウトさえあれば万が一の時は撤退できるのだから、試させて欲しい“という言葉で無理やり納得させてしまった。そんなことまでした理由は、エスクードが初めて活躍できるかもしれないからだ。無論、街がヤバいからってのもあるけど…警戒区域外の街には一応家族もいる訳だし、食い止めなければならない。我が儘を押し通させるとか、僕、本当は隊に向いていないのかもしれない。

 だが、成功すれば安全に奴らを処理できる可能性が高いのは違いなかった。

 

 

『前方、第二射来るよ!』

 

「了解!エスクード!」

 

 

 エスクードを目の前に二重に生成して、砲撃を防ぐ。一枚だけ貼ってエスクードが粉々になったんだ。2枚貼ればなんとかなるだろうという考えだった。

 大きな音をたて、1枚目のエスクードが粉々になるけど、2枚目はヒビが入るだけで済んだ。よし、防げるな。

 

 

「小佐野、そのまま射撃が来そうになったら逐一報告してくれ、走るのに集中するから、マジでなんも見えてないって思って」

 

『りょーかい。意地でも見逃さないよ』

 

 

 ありがたい。僕は、レイガストを構えもせず、トリオン兵の固まりに向けて走り出す。レイガストは前から言っている通り、普通に重い。実体化したら重りをつけて走る様なものなので、手ぶらでひたすら走る。

 野球をやっているので足の速さはこれでも平均よりかは上だ。でも、長距離走は死ぬほど苦手だ。運動部=長距離走れるとか思わないで欲しい。こちとら冬の体育の授業が来るたび落ち込むレベルで体力がないんだよ。しかし、トリオン体で体力も強化されているので、距離が離れていても十分走りきれる。ただ、雨降った後のぐしょ濡れな地面なので、正直走りにくい。

 遮蔽物の一つでもあればいいのだが、周りに遮蔽物はない。完全に荒野みたいな場所だった。なので、遮蔽物を作り出せるエスクードはこの場面じゃ頼りになる存在だった。

 あいつらは、砲撃をした後にクールタイムがある。そのクールタイムのうちに、最速であいつらに近づく。そして、また砲撃が飛んできたら防いで走ればいい。これが第一段階だ。

 

 

『眼球部分の熱源の温度上昇確認!またくるよ!』

 

「くっそ!エスクード!」

 

 

 もう一撃…いや、正確には4発同時射撃だから四撃?が僕に向けて一直線に放たれるが、再度2枚のエスクードを出して防ぐ。これならなんとかなる…!と思った瞬間だった。

 

 

「おいおいまじかよ…!」

 

 

 今度は、バンダーが小刻みに小さな威力で砲撃を連射してきやがった!エスクードで逐一防いでたら足が完全に止まってしまう。本当にこいつらトリオン兵か!?やけに頭が良くないか!?

 

 

「う…おおお!!」

 

 

 こうなれば仕方ない。レイガストを実装して、盾モードにしながら走る。シールドと違ってこいつは展開しながら走っても耐久力が減ったりすることはない。さすがレイガストだ。

 だが、重いものを持ちながら走るので、普通にスピードが落ちてしまう。

 まるで、爆撃の雨を潜って走る戦場の兵士だ。ひとまず、レイガストを正面に構えつつ近づこうとする…が

 

 

「ぐっ…」

 

 

 レイガストに着弾して、その威力に足が止まってしまう。小刻みに撃ってようやく普通のバンダーぐらいの火力か…!なんなんだまじでこのトリオン兵は…!

 

 

『距離100!頑張れ!神立!』

 

「神立!キツイなら緊急脱出しろ!もうすぐ応援も来る!」

 

 

 くっそ…ようやくここまできたか…あと40は縮めないと…!それに、ここまで来たんだ、緊急脱出する気はない…!だが、ここにきて奴らの砲撃が厚くなる。近距離だから、撃ってから反応しても間に合わないので、常時盾を構えないといけない…

 そして、近い分射撃が正確になってしまうので、かなりの精度で僕に向けて撃ってくる。で、その砲撃を受け止めるには、足を止めないといけない…このままだとここで棒立ちになって耐えるだけ耐えてジリ貧になって押し負けてしまう。どうすれば…

 

 

(いや違う…ここに来て…だろ…!やったことないし、思いつきだがやるしかない“エスクード”!!)

 

 

 地面にまるでクラウチングスタートの様な体勢になった手を当てて、一か八かでエスクードを展開。展開させたのは、“僕の足裏”の地面だ。

 

 

(いっけえええ!!)

 

 

 僕の足の裏の地面から、エスクードが斜めに勢いよく生えてくる。そして、その勢いよく出てきたエスクードの勢いを生かして、前に向けて斜めに大きくジャンプする。こうするしか距離を詰める方法はない…!

 

 

『何それ!ナイスジャンプ!距離50だよ!』

 

「ぶぼぼ…!了解…!」

 

 

 すごい前のめりになって飛んだので、着地をミスったが、予定よりいい距離にこれた。ここならいけるはずだ。僕は、レイガストの盾モードを解除して、体勢を立て直し、大きく振りかぶる。

 

 

「野球部舐めるなよ…!」

 

 

 寺島さん直伝…

 

 

「スラスター…起動(オン)!」

 

 

 申し訳程度に存在するレイガストの変形機能を駆使して、ダガー状にレイガストを圧縮した僕は、スラスターによる推進力と共にぶん投げる。狙いは…“モールモッド”だ!

 

 

「…!」

 

 一直線に弱点目掛けて進むダガー状のレイガストを、モールモッドが、まさか自分に飛んでくるとは思っていなかったようで、反応できずに目に喰らい、一匹が機能停止する。

 

 

「…!」

 

「……」

 

 

 残ったモールモッドがこちらに振り向いてくる。第一関門突破だ。

僕は、レイガストの実体化を解除して、モールモッドにぶっ刺さったままのレイガストを一旦トリガーホルダーにしまう。そして、再度実体化して手元に戻し、盾モードにして構える。

 

 

「こいよ…僕は一人だぜ…?」

 

 

 僕はレイガストを構えて不敵に笑う。言葉が通じたのかどうか知らないが、まるでそれに呼応するかの様に残りの二匹のモールモッドがこちらに駆け出してくる。

 …速い。こいつらもやっぱりいつもと違う。かなりの速さだ。だが、これで第二関門突破だ。

 

 

「…!」

 

(さあ…そのまま離れてこっちに来い…!)

 

 

 モールモッドは二体とも、完全に僕を殺しにきている。バックステップで距離を取りつつも、防御で振り下ろされる鎌を防ぎながら、丁寧に、慎重にバンダー共から引き剥がす。

 バンダーは、僕に向けてもう砲撃は撃てない。なぜなら、味方であるモールモッドが、射線上に被ってしまっているからだ。僕は、そうなるようにさっきから立ち回っている。やはり、こいつら賢い…普通なら撃ってきてもおかしくないのに…だからこそ…

 

 

(慎重に…距離をとれ…『あともう少しで殺せる…』って思わせれるように…こっちに夢中にさせろ…!)

 

 

 バンダーから引き剥がされていると感じて、戻られたら作戦失敗だ。こちらに注意を引きつけ、戻らせない様にする。あえて少し隙を晒したりして、あと一歩で…もう一歩で…と思わせて、釘付けにしろ…!

 

 

『頑張れ神立!目標地点までもう近いぞ!』

 

 

 小佐野の声が聞こえる。あと少しだ、踏ん張れ僕…

 

 右…左…右ときて…上…

 鎌を振るスピードも普通より速い。一歩間違えれば普通に斬られかねない。二匹いる分、前の出水とやった防衛任務の時よりきつい。

 ていうか、懐に入り込んで弱点を狙いにいけない。もう防御で手一杯だ…こいつ、普通のモールモッドの数倍は強いと言っても過言じゃない。

 

 

「…!」

 

「がっ!?」

 

 

 まずい、利き手の右手が吹っ飛ばされた…!吹っ飛ばされたのはあくまでトリオン体の腕だが、レイガストの防御の予測を掻い潜って、振り下ろされた鎌に右腕が捉えられてしまった。ていうかこいつ…

 

 

(左の鎌でフェイント入れてきやがった…!)

 

 

 一体どれだけこいつは知能があるんだ…!

 痛覚はない…漏れ出ているのは血ではなくトリオンだ…だが、両手でもう防御することはできない。元々不利だったのに、唯一の強みもほぼ失ったよようなものだ。これは非常にまずい。

 

 

「…!!」

 

「…遠慮なしかよっ!」

 

 

 シールドバッシュの要領で鎌をなんとか片手で弾き飛ばすも、片手だけのせいで、力は全くこもっておらず、のけぞらせることさえも出来なかった。クソ…ここでレイガストの重さが響く…重いからうまく片手で振り回せない…吹き飛ばされたのが左腕ならどうにかなったのに…

 

 

 

 

 

 あと少し…もう少し…!エスクードがあるあの場所まで…!

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ…!?」

 

 

 やばい、鎌を抑えきれずに胸に一撃をもらってしまった。胸からもトリオンが漏れ出す。やばい、もうエスクード数枚とかしか出せないトリオン量になっている気がする。これだと、今後のことを考えるとスラスターでも使ったらやばいかもしれない。

 ダメだ、防御中心じゃなくて、回避中心でいこう。じゃないと本当にやられかねない。でも、距離を離しすぎると諦めてバンダーの元へ帰ってしまう可能性がある。それに、モールモッドとの距離が離れ、射線が通るようになったらこっちに砲撃が飛んできかねない。だから、離れすぎるわけにはいかない。

 

 

「上…!右…くそったれが…!」

 

 

 ひたすらかわして、レイガストで防げるものは防いで距離をとる…あと、もう少しのはずなんだ…!いけ!やれ!ふんばれぇぇぇ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『目標地点到達!みんな!出番!』

 

 

(…ついにきたか…!)

 

 

 僕は、レイガストで振り下ろされた鎌を防ぐ。

 

 

 …重い、片手な分余計に…だが、僕は瞬時にレイガストを離し、捨て身の覚悟で懐に突っ込む。そして、その鎌を()()()

 

 

「動けなくなる気分を味わいな!エスクード!」

 

 

瞬間、モールモッドの()()()()()()()()()()()()()

 

 

「…!」

 

 

 腹から頑丈な壁…いや、“板”が出現し、地面に突き刺さる。

 前に寺島さんから聞いた通りだ。空中以外ならどこにでもはやせる…!例え()()()()()()()()だろうと!

 

 

「…!…!」

 

 

 自分の腹から生えたエスクードが地面に深々と刺さったせいで身動きが取れなくなったから、自分の鎌を振り回して脱出を試みる…が、まあ無理だろう。

 ()()()()()()()()()()()()()()にあんなに勢いよく、深く突き刺さったのだから。縦長な盾が生えるように調整したエスクードなので、鎌を振り回すどころか、地面から少し高く突き上げられて、足がもう付かなくなってしまっている。しかも、モールモッドは構造上、腹に鎌が届かないから、エスクードを切り裂くことは不可能だ。

 真下にエスクードを出して吹っ飛ばしても良かったかもしれない…いや、それして失敗したら、ただ高く飛ばして距離を取らせてしまうからダメだわ。

 

 

「お前もだよ…!このイレギュラーが!」

 

「…!?」

 

 

 味方が突き上げられて動けなくなっている姿に困惑しているモールモッドにも手を伸ばす。そして、同じようにエスクードを生やす。地面に突き刺されて、その勢いで少し宙に浮かんだまま放置され、鎌をジタバタ振り回して腹にある地面と自分をつなぐエスクードを斬ろうとするが、もう遅いだろう。

 

 これで、モールモッドの串刺し刑。一丁…いや、二丁上がりだ!

 

 

 

 

 

「今です!二人とも!」

 

「おう!ナイスファイトだ!あとは任せろ!」

 

「ここからは俺たちの仕事だ!」

 

 

 僕が大きく奴らから離れると、僕が作戦開始する前に生やしていたエスクードの影に隠れていた諏訪さん達が飛び出し、散弾銃を撃ち下ろす。

 凄まじい音が鳴り響き、銃弾の雨がモールモッドに降り注いだ。そして、身動きが取れないモールモッド達が蜂の巣にされ、両方とも機能停止する。

 

 僕がさっき作ったのは簡易的なエスクードによる高台だ。まず、壁状に普通にエスクードを生やしたあと、その後ろに斜めにエスクードを生やすことで、壁付きの坂を作り出す。あとは、その後ろにバックワームを着て隠れてもらえれば、バンダーどもから捕捉されないし、攻撃するときは身を隠しながら坂を登って上から撃ち下ろす形で射撃できるのだ。これが僕が前に考えた“簡易型射撃台”だ…!

 

 

「…!」

 

 

 仲間の危機に気がついて、諏訪さん達を補足したバンダーが、射線上に邪魔はなくなったのでこちらを砲撃してくる…が、無駄だ

 

 

「エスクード!」

 

「おっと!シロウサギ野郎の砲撃か!あぶねえな!」

 

 

 僕がエスクードで射線を防ぎ、諏訪さん達が坂を降りて簡易型射撃台に隠れる。これにより、僕らはノーダメージだ。だが、そろそろトリオン量がやばい。

 

 

「神立!まだいけるか!?」

 

「勿論…!わがまま言わせてもらったからには最後までやらせてもらいますよ…!」

 

 

 強がりだ。トリオン量に余裕がないし、バンダーの砲撃を片手で防げる余裕なんてない。でも、我が儘を言った身として、最後までとことんやらせてもらおう。

 

 そして、残りのバンダーを倒しに行こうとした瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドン!

 

 

 

 

 

 

 

 

と、大きな音が後方から響き、一直線状に高速に光がバンダーの目に伸びていく…!

 

そして、その光が“着弾”して、バンダーの内一体が機能停止した。

慌てて後ろを振り向くと、何とも頼もしい援軍が来ていた。

 

 

『東隊。現着した。これより諏訪隊と共に、イレギュラートリオン兵の掃討に当たる』

 

通信で、脳内に言葉が響きわたる。

 

「あら、もうバンダーだけなのね。急いで来る必要なかったかしら…?」

 

「あれがイレギュラーか?にしては目が赤いだけで何も違いがないように見えるが…」

 

「そうとも限りませんよ、加古さん、二宮さん」

 

 

本部現最強の部隊、『東隊』が来ていたからだ。

 

こうして、後に大きな事件の始まりだとわかる、イレギュラーなトリオン兵たちとの戦闘は、東隊の活躍によって終わることになる。

 




 諏訪さんって同期が目立っててパッとしない時たまにあるけど、洞察力高いし人のことよく見てるからなんかかっこいいよね。ただ強いだけのキャラとは違うかっこよさがある。

 トリオン兵相手にエスクード使ったのって確か、とりまるが最初の方で使った時くらいだよね…

 というわけで、まあ彼は、エスクードをまるで例の建築FPSの様な簡易的な射撃台を作ったり、トリオン兵から生やすことで、地面に突き刺して移動不可能にするという荒技で使いました。これでエスクードもちょっとは救済できた…よな?


-このイレギュラーとか言ってる奴ら何?
-この後のストーリーで判明します。

-誘導誤差の話は何?
-それも後ほど判明します



感想、評価お待ちしております。

文字数今8000文字超えるくらいなのですが、序章が終わるあたりには少し減らすつもりです。大丈夫ですか?

  • 大丈夫!
  • いや、変えない方が良い。
  • 何言ってんだ、むしろ増やせよ
  • 俺に質問をするな(どうでもいい)
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