文才があったらいつかやってみたいこと。
実況:志岐小夜子(異性が苦手な引きこもり)
解説:香取葉子(リアクション芸人)/辻新之助(対女性耐性皆無のイケメン)
のメンバーでランク戦実況。
うーん、放送事故かな?
ボーダーには、“個人ランク戦”と呼ばれる制度がある。
ボーダー内で行われている一対一の模擬戦であり、勝敗によって所持トリガーの持ち点を奪い合うのだ。これは、所謂“レート制”と言う奴であり、防衛任務がない奴は基本的にここに入り浸って自分の腕前を上げていくものだ。
このシステムは、訓練生(C級隊員)が正隊員(B級隊員)に上がるためにも重要なシステムだ。B級隊員になるには、各々が所持している戦闘用トリガーに設定されたポイントを『4000』まであげる必要がある。スタートは基本『1000』で、僕や出水は最速で『4000』ポイントを同期の中で貯めた人間だ。僅差で出水の方が早かったけど…何せ、こっちトリガーレイガストにチェンジしたし。
B級隊員にならないと、防衛任務にすらつくことができないので、入った当初はみんながみんなポイントをあげようとする。で、そのポイントを上げる方法が「週二回の合同訓練でいい成績を残す」か、「個人ランク戦でポイントを奪い合う」の二つだ。合同訓練はポイント獲得の効率が悪いので、基本みんな個人ランク戦に入り浸る。
「…やっぱ、レイガスト使ってる奴全然いねえなあ…」
開発室の解析を待つ中で、今日はある約束があって、個人ランク戦ブースに来てみれば、絶賛模擬戦中のモニターに映し出される隊員たちが使用しているトリガーの中に、レイガストの影はなかった。
しばらく待つと、『1000』ポイント代のやつが一人ようやく使っているのが目に見えたが、動きがぎこちなく、敵の使用する弾トリガーに押されてしまっている。C級隊員は、基本ひとつしかトリガーを使えないのが辛い。専用のオプショントリガーでさえも使えないので、単純な地力が勝負を決めることが多いのだが、慣れていないと防御重視のレイガストじゃスラスターなしだと勝つのはきついだろう。
「あーっ…やっぱ…やっぱレイガストって難しいよ…重いから攻めにくいし…」
「だな…俺も最初レイガスト使ってたけど、弧月やスコーピオンと比べるとレイガストって中途半端で弱い様に感じてしまう…性能だけ見れば、弧月より重く、切れ味悪いというな…俺は弾トリガー使うようにしてから、勝率が上がったのだが、君も変えてみたらどうだ?」
「そうするかな…やっぱ、弧月とか使いやすいらしいし…レイガスト本当に使いにくいよ、最新のトリガーっていうから選んだけど攻めにくいもん」
さっき弧月と戦っていたレイガスト使いが結局あのまま押し負けてしまい、付近の訓練生からこんな会話が聞こえてきた。
正直、武器のせいにするなよ…と思う。レイガストがシンプルな弧月とかと比べれば人を選ぶトリガーなのは重々承知している。性能を引き出せないなら変えた方がいいだろう。それは僕も賛成だ。ただ、問題なのはレイガストの性能を使い手すらちゃんと把握していないことや使い方を間違えていることだ。それは普通に使い手の問題だと思う。レイガストにも弧月やスコーピオンにはない強みというのが明確にあるのだ。
戦いというのはいかに“相手に自分の強みを押し付けるか”だと個人的には思っている。
強みすら詳しく知らないで使っているとか何を考えているのだろうか。
例を挙げれば、今負けたレイガスト使いは、盾モードを一才使用していなかったのだ。もしかしたら盾モードの存在すら認知していないのかもしれない。それに、今聞こえた訓練生の話的にも、レイガストを攻めに使っているように聞こえたが、それは使い方が違う。個人の意見だが、レイガストはスラスターがないC級隊員なら防御重視、カウンター狙いで立ち回るのが一番いいのだ。
ボーダーができたばかりの組織だからって言うのもあるだろうし、レイガストが最近できたばかりだからあまり認知されていないのかもしれないが、普通ある程度の使い方はボーダー側から説明されるものじゃないのだろうか。
ボーダーの訓練生に対する扱いは良くも悪くも放任主義だ。入隊式の後は、“訓練生はとりあえず所持ポイントを『4000』ポイントまで上げてね〜話はそれからな〜”みたいな感じで、ボーダー側は個々人の面倒を見ない。
まあ、普通に考えてボーダー自体が民間組織だし、人が少ない中で、数十人…いや数百人?詳しくは知らんが、大量にいる訓練生を、それぞれ面倒見ろなんて言う方が無理な話なのだろう。だが、いくらなんでも放任主義がひどいと思う。
で、まあ面倒見てもらえないC級隊員達はどうやって強くなって正隊員になるのかというと、正隊員達の個人ランク戦を参考にして自分の技術として取り入れたり、同レベルの隊員達と競い合い、何が悪かったか、なにが良かったかの反省を繰り返したりすることで強くなっていく。人によっては正隊員の弟子になって色々教えてもらうっていう手もあるだろうが。
個人ランク戦ブースには、各々の戦闘がリアルタイムで映し出される巨大モニターが設置されているのも、いろんな人の戦い方を参考にできるようにするためだ。これは別になんの文句もないのだが、レイガストだけはもう一つ新たな問題が生じる。
そう…レイガストは“不遇”というだけあって、正隊員が誰も使っていないのだ。
一応、支部とかに使っている人はいるらしいが、それでも数は少ないのだ。それだとどうなるのかというと、C級隊員達は、レイガストの使い方とかを自分より強い人から学びにくくなってしまうのだ。使っているところさえ見ないから参考にするもクソもない。それがやばい。
(正隊員のランク戦見ても、誰一人として使ってないもん…)
ボーダー側から説明も詳しくないし、先輩が誰も使っていない。いざ触ってみれば他のトリガーと性質が違う。流行るはずがないのだ。普通に考えて。
と言うのも、正隊員に全く使い手が増えないということは、ある意味仕方のないことだった。正隊員は、今まで弧月やらスコーピオンやらで自分なりの闘い方と言うのを身につけてきたので、急にぽっと出のレイガストが出てきても使う気にならないのだ。多分、ゲームの、アプデで新しいキャラが入ったのでお試しで使う…みたいな感覚でレイガストに触れはしたのだろうが、弧月とスコーピオンを足して二で割ったような中途半端な性能のレイガストはあまり使う気にはならなかっただろう。盾モードの存在も、他トリガーのシールドで十分だって思われたらそれでおしまいだし。しかも、レイガストのおかげでシールドが強化される始末。もう目も当てられない。
正隊員で新しくレイガストに転向する人は少ない…ならC級隊員はどうか。
さっきも言った通り正隊員で使ってる人を見かけないので、上手い人の戦い方も元がないから参考にできないし、実際ある程度慣れないと使いにくい。そんなトリガーはまずC級じゃ流行らない。正隊員が使わないからC級も使わない。そんな状況が続いている。
そう言うわけで、レイガスト使いは最新トリガーにも関わらずどんどん減っていっている。ただ、僕としては、お気に入りの武器であるレイガストが埋もれてしまい、不遇の烙印を押されるのは嫌だった。自分が気に入っているからと言うのもあるが、武器のちゃんとした性能や使い方を知らずに不遇扱いされるのは、普通に納得がいかない。じゃあどうすればいいのか、それは簡単だ。
(個人ランク戦で見せつけてやればいい…!)
B級に上がりたてとはいえ、僕が個人ランク戦で活躍すれば、僕の真似をして使い始める人が増えるだろう。正直、お気に入りの武器だから使い手が増えて欲しいなんて単純な理由だけじゃない。格ゲーとかと一緒で、使い手が多ければ多いほど武器の新たな可能性が開拓される確率が上がるのだ。
一人の想像力や探究力じゃ、武器の可能性を開拓するのにはどうしても限界が来る。だからこそレイガスト使いの人口は増やしたいのだ。
本当なら正隊員相手に戦いまくってレイガストの良さを布教したいのだが、今日は“先約”がある。
「よう出水、待った?」
僕は、個人ランク戦ブースでモニターを眺めながら座る出水に話しかけた。
「おっ、ようやく来たか。そんな待ってないから安心しろ」
「そうか、それなら良かった」
…なんか、これ初デートの彼氏と彼女の会話のテンプレみたいでやだぁ…まあ、そんなことは置いといて。
「白黒つけようじゃないか…!弾トリガーvsレイガスト…!どっちが強いか…!」
「なーんでお前はそんなに弾トリガー嫌っているのか知らねえが、“新人王”を取るにはお前は絶対避けれない壁だからな…」
そう、今日は出水とガチランク戦をする約束をしていたのだ。僕と出水は、前に言ったと思うが同性同年代の同期であり、訓練生時代で僕と出水が突出して優秀だった。で、訓練生時代からよく二人でランク戦をしまくって戦っていたので、ライバルと言っても過言ではない人間だった。
出水は弾トリガーに関してなら文字通りの“天才”だ。
僕の場合は数ヶ月とはいえ近所の道場に通わされていたり、野球によって重いものをぶん回すのにふさわしい筋肉がある程度出来上がっていたから同期の中でも強かった。
しかし、出水の場合は、弾トリガーをボーダー入隊試験に受かって初めて弾トリガーに触れたのにも関わらず(むしろ前に弾トリガー撃つような経験があったならば、それはそれでやばい)、ぶっちぎりのトリオンコントロールと射撃技術、射程管理を行って射手として訓練生時代はほぼトップになっていたと言っても過言ではない男だ。
出水に憧れてレイガストから弾トリガーに転向した人間も数知れず…負けるわけにはいかない相手だった。
それに、“新人王”の選抜は、今日の夜に行われる。“新人王”とは、新入隊員の中で、その
で、僕的には新人王になることで、みんなに知られるため、レイガスト使いの良いアピールになるし、人脈も広げやすくなるだろうと踏んで狙っている。出水も、自分を先輩にアピールしたりして、隊に入れてもらうことなどを考えているので、新人王という称号はわかりやすいので狙っている。
つまり、お互い新人王の称号は欲しいのだ。そして、今までこれを巡って、戦って来たのだ。まあ、ただ単に同性同学年の同期に負けたくない一心でやっていたら、いつの間にか新人王を勝ち取ったやつの方が強い…みたいになっててこうなったのもあるのだが。
で、今現在僕と出水のポイントは、こんな感じになっている。
神立武治▼
レイガスト 『7115』
出水公平▼
アステロイド 『7123』
僅差で出水の方が勝っているが、出水は僕に昨日こんなことを持ちかけてきた。
“新人王になるのは、今のポイント的にどう足掻いても俺かお前だけだろうから、明日一戦だけして新人王を決めようぜ…”と!
昨日の夜に、他の同期の隊員のポイントを確認したのだが、僕と出水の次にポイントの高い人間は『5823』だったので、多分時間的に僕らに追いつくのは無理なのだ。で、今日の一戦で、負けた方は今日一日ポイントを稼がないというルールだ。まあ要は負けた方今日ランク戦禁止ってこと…つまり、新人王を譲ると言うことだ。何せ、ライバルがこれ以上ポイントが伸びないのなら、一戦でもランク戦すれば新人王が取れるのだ。
僕も出水も防衛任務をよく入れていたとはいえ、結構上位の相手と戦って、ポイントを荒稼ぎしていたので、他の人と比べると、上昇率が違う。レート戦のいいところだ、強い奴ほど勝てば美味い。このまま何もしなくても、出水が新人王になるし、それを防ぐため、僅差だけど僕と出水のポイント合戦が発生する。勝ち負けは置いておいて、相当僅差で決着がつくと思うと、負けても勝ってもなんか心残りがある。このまま普通にポイントだけで競ったら、出水が新人王を獲得してもおかしくないからな…出水はそれくらい強い。だが、この一戦で勝てば、僕が新人王になれる。
「今までって確か、28戦してお互い14勝ずつだったよな…ここで勝ったやつが、新人王の座を取ると言っても過言じゃねえから、ガチの勝者ってことになるな…」
「まあ、そう言うことだ。お前に勝ち越して初めて新人王の座が輝くってもんだ。お前とは男として決着つけねえとだしな!」
たかが一勝、されど一勝。“ごちゃごちゃ最後までポイント稼ぎをするのではなく、最後に一戦やって気持ちよく終わろうぜ”と言われて、こいついい奴なのか、ただのバトルに持論を持ったバトルジャンキーなのかよくわからなくなったが、もちろん受けて立つことにした。だってこっちの方が楽だし、勝てたら気持ちよくて終わるし負けたら潔く諦めがつくからだ。
「じゃあ、俺は312番室が空いてるから入るわ。神立は?」
「ん〜…じゃあ221番室で」
お互い別れて、それぞれの部屋に入る。さあ、最後の新人王を巡る戦いと行こうじゃないか…!
◆◇◆◇
個人ランク戦は、まずそれぞれが番号で区分けされた個室に入り、個室にある端末から、番号で対戦相手を指名して戦うシステムだ。端末の対戦相手の一覧には、部屋番号の横に各々が所持するポイントが書かれており、端末で“312”番を探す。
『ルールはどうする?』
『そうだな…一本勝負だとすぐ終わるだろうから、3本先取でどうだ?』
『すぐ終わるってのは、オレが神立にすぐに勝つってことか?』
『んなわけ』
出水の冗談を軽く流しつつ、端末を操作してルールを設定する。
とりあえず、3本先取で戦うことになった。そして、312番を選択し、勝負を申し込む。向こうからすぐに返事が来て、仮想空間に転送される。
ボーダーのランク戦は、B級ランク戦だろうと個人ランク戦だろうと仮想空間内で行われる。転送装置によって、市街地風の仮想空間に転送され、その数m先に同時に出水が転送される。
「悪いな…こっちは今までと違うぜ?」
「その顔…ハッタリじゃなくてマジみてえだな…ま、こっちもこっちで負ける気はないけどな」
お互いに軽く口を交わす。そんなに緊張はしていない。ボディコンディションはパーフェクトだ。この勝負で先に3本勝利したものが、今期の新人王になる。
『個人ランク戦 3本先取勝負 開始』
機械音声によって、戦いの火蓋が切って落とされた。
◆◇◆◇
開始と同時に僕ら二人ともそれぞれの動きを見せる。
「スラスター…
こっちは戦闘開始と同時にスラスターを起動。数mの間合いを一気に詰める…が、それは出水も想定済みだ。
「ま!初手はそうくるよな…!
(流石にもう効かないか…)
今まで何度も同じ戦術…初手スラスター起動からの袈裟斬りは。もう大きく斜め後ろにステップを取ると言う対策で向こうも対処していた。スラスターは莫大な推進力を生み出すが、それはあくまで正面方向のみだ。最初から来ると分かってしまえば、すぐに横に避ければ簡単に回避されてしまう欠点を持っていた。
前から言っているが、対弾トリガー相手なら、射程ゲーになるので、最初に射程を思いっきり詰めれるのなら詰めるに越したことはない。しかし、今まで出水相手にこれを何度もやって来ているのでそう上手くは決まらない。
お返しと言わんばかりに飛んできたのは、後方に下がった出水が戦闘開始時に作っていた125発のアステロイド弾だ。
(両防御!)
本当はレイガストに頼りたかったが、レイガストをわざわざ盾モードにして防ぐとなると、盾モードにするタイムラグでこちらがやられかねない。なので、瞬時に行ったのはメインもサブも両方とも“シールド”を展開して行う完全防御体制である“両防御”だ。優遇トリガーだからと言って、使わないなんて舐めプで出水には勝てない。使えるもんは何でも使ってやる。男同士のライバル対決。勝って絞めなきゃ気が済まん。
激しい弾幕が襲いかかってくるも、まだこの程度ではシールドは破られない。
今回、この勝負には、僕には切り札がある。それは“エスクード”の存在だ。
エスクードを入れたのはつい最近であり、出水はおそらく僕がエスクードを入れて来ていることを知らない…ていうか、エスクード自体知らないかも知れないと言うことだ。
このトリガーは、対射程持ち相手では無類の力を発揮する。何せ、強固な遮蔽物を簡単に作れるトリガーなど、射線が切れるので、安全に移動できることにより距離も格段に詰めやすくなるからだ。今まで28回も戦って来たので、僕の戦術は完全に対応される可能性高い…なので…
「出し惜しみはしない…!エスクード!」
瞬間、光の線が地面を這って伸び、壁が僕と出水の間に数枚出現する。
「うお!?なんだそりゃ!?」
「敵に教えるかよっ!」
僕はレイガストを盾モードにして、出現させたエスクード伝いに隠れながら距離を詰めていく。わざわざ盾モードにしたのには理由がある。にしてもやっぱり知らなかったな…こいつが不人気で助かった。
「何のトリガーか知らんが、炙り出してやる!
それは、相手も遮蔽物に対抗できるトリガーを持っているからだ。出水が上方向に放ったトリガーは、“
「っ…とぉ…!」
ハウンドが追尾対象である自分を発見し、空中で折れ曲がって僕にまるで雨の如く降り注いでくるが、こちらはレイガストの盾モードがある。上に構えて防御しながらそのまま移動の足は緩めない。目標は再度スラスターで詰めれるところまで…今はまだ早い。
「ならこれだ!
そう来たか…今度は、出水はエスクードを破壊する気のようだ。放って来たのは
「しまった…!黒煙が…!」
(くっそ…やらかした…神立がどこにいるか見えねえ…!ここは建物にでも登って状況を把握するべきだったか…!)
(スラスター…起動!)
チャンスだ…この一本、確実に取ってやる。勝負というのは勢いが大事だ。出し惜しみはしない。
「げっ…!?」
(げっ…!?)
スラスターで突っ込むが、向こうは突っ込んでくる対策なのか知らないが、もうすでに弾トリガーを展開していた。この距離…スラスターをたとえ横に避けようと後ろに避けようと、すぐさま第二手に繋げられる距離…!
「
慌てて撃ってくるが、この場面で
「遅い…!」
「うおおっ!?それアリかよっ!?」
『戦闘体活動限界』
おそらく、黒煙で相手が見えないので、対象を自動で追尾して発見してくれる
まあ、そんな話は置いておいて、僕は、そのまま反応しきれなかった出水を袈裟斬りにした。これで一本だ。
◆◇◆◇
「おいおい!?なんだあのトリガー!壁が生えてきたぞ!?」
「まあ、不遇故知らなかったのがお前の敗因よ…まあ、このa『二戦目、開始』…おい」
冷酷な機械音はこっちの会話を待ってくれないらしい。もうすこしくらい会話させてくれよ…一本先取したんだから、少しくらい挑発させてよ…相手の冷静さを欠かせた方が、シビアな弾トリガー相手の時はやりやすいのに…
「エスクード!」
再度僕は壁を展開する。流石に初手スラスターはもう通じないのは最初でわかっているのでしない。ハウンドが飛んでくるなら防げばいいし、メテオラが飛んでくるのならまた生やせばいい。仮想空間では、一度戦闘が終わればトリオンは回復するので、トリオンの残量を心配する必要はないのだ。
だが、何か奇妙だ…
(あれ…?弾が飛んでこない…?)
初手でなるべく弾を出して近づかせにくくすればいいものの、一向に飛んでくることがなかった。エスクードを出してだんだんと近づいているが、一向に弾丸が飛んでこない。これだと僕が悠々と近づく隙を与えるだけになると思うのだが…
(…?あ、来た来た)
そう思ったら、ハウンドが飛んできた。考えすぎだったようだ。にしても、このままこの戦術で行けば、出水はこっちの防御を突破するのに苦労することになるだろう。射線を防ぐ頑丈な壁が味方になった僕に、弾トリガーは敵ではない。上に撃ってきたし、曲がっているので、これはハウンドだろうな…なんか遅い気もするがまあいいか。
一先ず、レイガストを上に構えて凌ごうとする。あのバンダーのおかげで弾丸の雨を動くのは慣れさせられたんだよ。舐めんな。
だが、完全に予想できなかった事態が起きた。
その弾が、レイガストに着弾した瞬間
(!!?)
腕に予想以上の衝撃が走る。本来、爆発するのは、
ハウンドに見せかけたメテオラ…?
いや、それは絶対ない。空で弾トリガーが曲がったのを僕は確かに見た。これはハウンド…のはずなのに…!
「ハロー神立くーん」
「…!?」
僕と出水の目が合った。
そこに、相手の視界を妨げるはずのエスクードはなかった。なんで…?てか、エスクードは…って、そうか、簡単だ。今のハウンド(?)の絨毯爆撃で全部吹っ飛ばされたのか…!
さっき有利に働いてくれたメテオラの黒煙が、今度はこちらへの煙幕として機能してしまっていたのも大きい。爆発の考察もしていたせいで、完全に周りの状況を煙幕のせいで把握できなかった。エスクードが破壊されたり倒れたりする音ひとつでも聞こえればよかったものの、爆発の音声で全く聴こえていなかった。
「じゃ、今度はこっちの番だぜ…?喰らいな!!」
「やっば…!!」
慌ててレイガストを正面に構え直すが、ここで僕はミスを犯した。
僕は、この場合さっきと同じ両防御を行うべきだった。僕は、慌てすぎて気がついていなかった。二つ、あることに。相手の弾丸が
「がっ…!!??ああっ!!?」
トリオン量の多い出水が放つ爆発をまともに受けたレイガストの耐久力が減って
『戦闘体活動限界』
それらに気が付けなかった僕は、レイガストによる防御をそのまま貫かれ、弾丸がダイレクトに僕の体を襲った。2本目の勝負、制したのは出水だった。
◆◇◆◇
「おいおいなんだあのトリガーはって顔してるな?」
「そりゃそうだろ…!爆発するハウンドなんざ聞いたことないぞ…」
「そっちが早々に知らないカード切ってくるわけだからな…こっちも切らせてもらっただけだ」
…やられた…ていうか、勝負を仕掛けて来たのは元はと言えば向こうだ…こっちに簡単に…とはいかないが、高確率で勝てる何かを持って来ていると今思えば普通に考えられた。クッソ、まじであの爆発するハウンドはなんだ?新型トリガーか…?
『三戦目、開始』
「っ!」
今度は迂闊に突っ込まない。相手の出方を伺う本来のカウンタースタイルに回る。よくわからない相手になら、これが一番有効だ…相手も新型トリガーを使うと言うのなら、他に何か仕組んでいてもおかしくないからだ。流石にあの一本だけで勝負を仕掛けてくるとは思えない。何せ、初見殺しの一戦意外安定して勝てる見込みはないからだ。他に何かあると思ってもおかしくはなかった。
メインは盾モードのレイガストに、サブはエスクードにして、完全なる防御体制に入る。
「…受けでこられたら、もうこっちから動くしかねえじゃねえか」
彼は好戦的な笑みを浮かべて、キューブを展開する。初っ端から両攻撃かよ…?隙を晒すつもりか…?機を見て仕掛けてやる…
「悪いか…?お互いよくわからんトリガー使っているんだし、慎重になって当然だろう?」
「へえ…まあ、オレはお前のそのトリガー、トリオンで実体のある壁を作り出して、メテオラも効くってわかったけど、そっちは何もわからないままだろ?それでお互いよくわからんってのは違くねえか?」
…図星だ。ていうか、お前何であんなにすぐ攻略できるようになってるんだよエスクード…こっちは得体が知れなくて今びびっているのに、お前もう次の試合で対策して来たわけだし…ていうか、一向に弾トリガーを自分の周囲に浮かべるだけで撃ってこないのは何でだ…?分割もしていないし…ていうか、弾トリガーのキューブ同士が繋がっているように見えるのは気のせいか…?
「まあ、御託はこれくらいにして、いかせてもらうぜ…あの壁トリガーと合わせたら、お前の防御を掻い潜るのは時間もかかるし、カウンター狙われてそっちの思う壺だからな…正直、壁がなくても継戦能力と防御力だけ言えばお前A級レベルっつっても過言じゃねえしな…」
…トリオンコントロールと弾トリガーに関しては、ランク戦でA級にも勝ったことあるお前が何言ってるんだか…!って、待てよ…?まさか、今まで攻撃しないで話しかけてきてたのって時間稼ぎが狙いか?あのトリガーは使うのに時間がかかるのか…?まさか…あの合体しているように見えるのって…何か…嫌な気がする…!
「スラスター…」
僕は、レイガストを盾モードからダガー状にして、前にやった投擲の準備をしようとする…が、やはり僕の予想は当たっていたみたいだ。
「やっぱ気づいたか…まあ、もう遅いけど」
…狡いな…!あの言い方と顔的に狙いは時間稼ぎだ…防御体制に初めから入った僕が悪いとはいえ、まんまと時間稼ぎにはめられた!…って、待て?今、キューブとキューブが一つにならなかったか…!?マジで合体しやがったって言うのか!?
「アステロイド+アステロイド…」
「起動…!」
させるか…!何か聞こえた気がするが、僕は聞こえていなかった。完全に小声だったし、完全に相手の動きを阻止すること、そのために全力で投げるよう体に命令するために頭が働いていたからだ。出水の弾トリガーが飛んでくる前にレイガストを投擲して撃破を狙う…が。
「残念、もう少し近けりゃ当たったかもだがな…!」
向こうはそれをも読んでいた。投げ始めるときには、すでに足を曲げており、レイガストが出水に向かって解き放たれた際にはもうすでに彼は空中にいた。ここでジャンプの選択肢を取るのは、相手にとっても好都合。何せ、空中なら僕はエスクードを生やせない。
「喰らいな!
「エスクード!シールド!」
合体したように見えたキューブが分割され、弾幕が形成されて僕に襲いかかる。レイガストを今から実装を解除して手元に戻して盾モードを展開している暇はない。やるならエスクードによる防御とあの弾…おそらく、弾トリガー同士の性能を掛け合わせた合体攻撃といっても過言ではないだろう。さっき爆発したのは、おそらくハウンドとメテオラが組み合わさったものなのだろう…クソ、今度は何が合体したのかわからない…さっき出水がなんかいっていたのを聞き逃すべきではなかったかも知れない。
エスクードを2枚展開して、両防御を自分をシールドで覆うように行う。これで何が飛んできても大丈夫なはずだ…!
だが、その予想は大きく外れた…
ボボボボボボ!!
「なっ…!?」
(エスクード2枚を貫通して…薄く貼っていたとはいえシールドまで…!?)
想像以上の貫通力で、腹を貫かれた。
『戦闘体活動限界』
機械音声がそう聞こえた…と言うことは、2本目を相手に取られたと言うこと…つまり…
「これで、リーチだな?」
「やられたわ…!」
向こうがあと一勝で勝ちということ…こっちは手の内“ほぼ”バレたようなものなのに、向こうはまだよくわからない。何これ…笑うほどピンチなんだけど。
-A級以上とかいってるけど、出水って二宮さんとか加古さんに勝ったの?
-いや、原作時にはもう脱退しているだろうA級隊員に勝ったと言うことで…
-徹甲弾ってこんな威力高いっけ?
-まあ、昔だから、シールドも当時性能原作に比べて悪いだろうし…
アンケートの結果なんですけど、割と文字数を増やして欲しい方がいてびっくりしました(みんな長さにうんざりしていると思っていた。)とりあえず、基本は減らしつつ、戦闘回では増える感じの予定でやって行こうかなって思っています。
感想、評価お待ちしています!
文字数今8000文字超えるくらいなのですが、序章が終わるあたりには少し減らすつもりです。大丈夫ですか?
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大丈夫!
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いや、変えない方が良い。
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何言ってんだ、むしろ増やせよ
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俺に質問をするな(どうでもいい)