不遇=弱いって誰が決めた?   作:よく酔うエンジン

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通算UAが7000回突破だと…!?7000回も見てもらったって事なのか…!本当に感謝!

お気に入り登録してくれた方、しおり登録してくれた方、感想を下さった方、本当にありがとうございます!

今回はシリアス目です。ちなみにみなさんお気づきでしょうけど、この話ではシリアス回だろうとバトル回だろうと必ず一つはギャグを入れるようにしています。


”サイドエフェクト”という使命

「いや〜…割とあそこのオムライスうまかったな…ガトーショコラもそんなに食うわけでもないのに普通にうまかった…」

 

 

 結局あの後、断れずに喫茶店に飯を食いに行ったのだが、片桐が言っていたガトーショコラとかめちゃくちゃうまかった。ガトーショコラとか最近全く…て言うかスイーツ自体全然食っていなかったけどうまかった。

 

 他に頼んだオムライスとかも、ふっくらした卵がまあなんとも絶妙に甘く美味しかった。割とロッカールームの時に思っていた事がなんか失礼になってきた。

 

 で、腹を満たした後は、そのままボーダーに向かってランク戦でも適当にしようと、ランク戦ブースに行こうとした時だった。

 

 

『B級隊員、神立武治様。開発室にまでお越しください』

 

 

 …背筋が凍った感覚がした。トリオン体に換装していたことで、脳内に直接お呼び出しがかかったのだ。教室とかで放送を聞くときに、“まあ、自分は関係ないだろ”って思っていたら名前が呼ばれて世界が一瞬止まるようなあの感覚。あれが発生した。

 え…?僕なんかやらかしたか…?と思ったが、一瞬で思い当たる節を思い出した

 

 

(あのトリオン兵か…!)

 

 

 諏訪隊と共に遭遇し、東隊が撃退した例のイレギュラーなトリオン兵。他のトリオン兵に比べて圧倒的に強く、高い学習能力や知能を兼ね備えた正真正銘の異常個体。あいつのことだろうと踏んで、僕は開発室に向かった。

 

 

◆◇◆◇

 

 

「おお、ようやく来おったな!神立!」

 

「ご無沙汰しています。鬼怒田さん」

 

 

 開発室には、開発室の室長である、ふくよかな体格が特徴的な“鬼怒田本吉”さんがいた。初めて知り合ったのは、確か入隊したばっかの時に、訓練室で夜遅くまでレイガストの練習をしていて、ヒャッハーしていたところを鬼怒田さんに見つかって、早く帰るように叱られた頃からだったと思う。

 その後から、よく目をつけられて、訓練室に残っているところを見つけられたら“今度は早く帰るんだぞ!貴様!次は反省文を書かせるからな!”なんて言われたりもしていたっけな…

 

 めちゃくちゃ高圧的で口が悪かったので、すっげえ嫌な人だな…って当時は思ったのだが、近界を繋ぐ(ゲート)を本部付近に誘導させるシステムの開発だったり、基地の仮想訓練空間とか基礎防衛システムの構築、基本的なトリガーの開発など今のボーダーには欠かせないシステムを数多く作ってきた人なので、正直偉そうにできる実績はあるすごい人だ。

 そのことを寺島さんから聞いた時は、その悪いイメージを払拭してよくトリガーに関して質問に行ったりしたっけな…まあいいや、本題に戻そう。

 

 

「今日呼び出したのは他でもない、お前が倒したイレギュラートリオン兵についてだ。解析が進んだことで様々なことが判明したのだ。本来ならお前のような一介のB級隊員に伝える必要もないのだが、東君からの推薦や日頃の貴様の態度から見て上層部が伝えてもいいと判断した!ありがたく聞けぃ!」

 

「うす、了解です」

 

 

 高圧的だけど、まあ言っていることは正しいので文句は言わない。どうやら、諏訪隊と東隊はもうこの話を午前中に聞いているらしく、午後に来た僕でラストらしい。この人偉そうだけど全然悪い人ではないしな…じゃないと、僕の質問なんか忙しくていちいち無視してるだろうに、逐一答えてくれるし、時間がない時は空いている時間を伝えて“その時間に来い”なんていうような人だし…また話が逸れた。

 

 

「今回お前が倒したイレギュラーのトリオン兵…結論から言うと、お前や東君が言っていた“意思”を持っていた。という話だが…あれのいう通りだという可能性が濃厚だとわかった」

 

「…!マジですか…!?」

 

「ああ、これを見てもらった方が早いだろう」

 

 

 そう言って、開発室に備え付けられたモニターにモールモッドの断面図が2枚写し出される。1枚目は普通のモールモッド…2枚目が僕が戦ったイレギュラーな奴だろう。

 

 

「まず右側の写真のモールモッドの断面のこの部分を見て欲しいんだが、この弱点の目の部分の上部にあるのが、トリオン兵の基本的な頭脳だ」

 

「…割と小さいんすね」

 

「まあ、トリガーを使った人工知能と使わない場合の人工知能はまるで別物だからな…この形のモノが、基本的にはどのトリオン兵にも入っている。多少役割によって形は微妙に異なるが、基本的にはこの形だ…で、2枚目の同じ部分を見るんだ」

 

「全く形が違うじゃないか…と」

 

「そういうことだ」

 

 

 示された場所を見ると、サイズどころか形から大幅に違う。元のモールモッドは円形に近い形なのに、このトリオン兵のモノはどっちかっていうと角ばっている。

 

 

「で…?形が違うことが意思を持っている持っていないの証明になるんですか?」

 

「いや、さっきも言った通り、可能性が濃厚…というだけだ。機械に出力させてみても、思考パターンが従来のものとまるで違うから、賢いとは言い切れるのだが、意思があるとは言い切れんくてな…」

 

「成る程」

 

 

 まあ、そこは開発室の仕事次第だな…ただ、まあやっぱり賢いというのは間違いなかったようだ。脳機関からもう形が違うとはなあ…

 

 

「意思云々に関してはそんな程度だ…そして次に運動性能に関してだ」

 

「あのモールモッド、明らかにブレードの速さとかが普通に比べて異様に速かったし、足も死ぬほど速かったんだよな…で、そっちはどんな感じなんですか?」

 

「…お前が倒したモールモッドの運動能力は、結論から言うと、理論上()()()()()()()()()と同じだ」

 

 

 …は?

 

 

「いやいや!鬼怒田さん!マジであのトリオン兵死ぬほど強かったんですよ!?普通のブレードと比べて段違いに速かったんです!防衛記録見てください!おかしさがわかりますって!」

 

 

 僕は思わず鬼怒田さんに訴えようとする…というか、訴えたが、すぐさま追加の説明が鬼怒田さんから入る。

 

 

「早まるな!バカもん!あくまで“理論上”という話だ…ワシらもお前の戦闘記録も既に視聴済みだし、トリオンが普通よりも大きく注ぎ込まれているだとか色々予想は立てていたのだが…調べてもこいつの身体機能は理論上普通のモールモッドと同じとしか出んかったのだ!」

 

 

 …どういうことだ…?身体機能は従来の奴らと変わりないにも関わらず爆発的な運動能力をはっきしていた…?え?普通に考えて変じゃないか!?

 

 

「ますます訳がわからない…!え?要はいつものモールモッドと変わらない点は頭の部分だけってことになりますよね!?それだと」

 

「そうなるな」

 

「え…じゃあ、その頭が運動能力を引き上げていた…とか?」

 

「ワシらも当初はそう思ったのだが、今のところそういう機能は全くもって検知されていないのだ…まだまだ詳しく解析する必要があるのだが、今のところ文字通りワシらにも理解できんのだ…」

 

 

 ええ…どうなっているんだ…?開発室による解析でも全くわからないなんて…ありえないだろ普通…!ていうか…

 

 

「なんでそんな中途半端な状態で僕にわざわざ報告してきたんですか!?普通なら全部しっかり解析終わってから話すモノじゃないんですか!?こういうのって…!」

 

 

 その点がめちゃくちゃ気になっていた。さっきから鬼怒田さんの言い方的に、まだ解析する余地は残っているのにわかっている事実だけを伝えにきた感じだ。別にまとめて話した方が手間も少なくて済むはずだろうに…!

 

 

「ああ…確かに、今の穴だらけの説明を聞けばそう思ってしまうのも無理はないな…」

 

「そうですよ…鬼怒田さんただでさえ忙しいのなら、結果が完璧に出てから纏めて話せばいいものを…!」

 

「なんでこうしたかというとな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迅からの助言があったのだ」

 

 

 …は?迅?

 

 

「迅って…あの、“迅悠一”さんからですか?」

 

「そうだ…ワシとしても纏めて話すつもりだったのだがな…他ならぬ迅からの助言ならば、聞かぬわけにはいかんだろうと上層部は判断したのだ」

 

 

 “迅悠一”…あの人、まだボーダーにいてくれてたのか…!この人は、僕の知る限りで色々な意味で“すごい人間”だ。

 

 

 彼には、ある特殊な“サイドエフェクト”が存在する。

 

 

 英語だと、ただの“副作用”という意味に取られかねないが、ボーダーでは別のことを指す。サイドエフェクトとは、超感覚的な特殊能力の総称…とでもいうべきものだろうか。トリオン能力が高い人間には、稀にそのトリオンが脳や感覚器官、身体機能に影響を及ぼして超人的な感覚をもたらされた者がいる。その超感覚を総称してサイドエフェクトと呼び、迅さんはそのサイドエフェクトを持つ人間の一人というわけだ。

 

 彼は、そのサイドエフェクトによって“目の前の人間の少し先の未来を見る”事ができる唯一無二の人間なのだ。

 

 

「正直、奴のサイドエフェクトが言うには、『神立に中途半端でもいいから早めに話せば最悪の未来の一つは回避できる』と言う話だったのでな…こう呼び出させてもらったわけだ…」

 

「……」

 

 

 あの人、最上さんや、“あの頃”いた皆様方をなくしているだろうに…まだ、ボーダーに身をおいて戦ってくれているだなんて…“あの話”を聞いてもうてっきりやめているんだと思ったが…まさかまだいてくれていたとは…って、待てよ?最悪の未来?

 

 

「ちょっと待ってください鬼怒田さん…なんですか?最悪の未来って…」

 

「…今のお前にとっては驚くべきような内容だろうが、心して聞いてくれ」

 

 

 鬼怒田さんの顔がさっきよりも険しくなった…これはマジな話なのだろう。一体どんな爆弾発言が飛んでくるんやら…

 

 

 

 

 

 

 

 

「迅によれば…近いうちにかなり大きな“侵攻”がまた発生するとのことだ」

 

「なっ…!?」

 

 

 予想以上にやばい話だった。一年前に大規模な侵攻が起きたと言うのに…まさか…また来るっていうのか…!?

 

 

「これを見てほしい」

 

 

 驚いて口が動いていない僕に向けて、鬼怒田さんがまた再度別のモノをモニターに写す。それは、僕が見せたモールモッドの弱点部分…要は、目の写真だった。

 

 

「目の部分の、上側を見ろ。この黒い丸が何かわかるか…?」

 

「いや…なんですか…?これ」

 

「これは、簡単に言えばトリオンでできた“カメラ”だ」

 

 

 …はい!?トリオンでできたカメラ…!?カメラってあの写真撮るときとかに使うカメラか…?なんでそんなものが…?まさか…

 

 

「これ…『こちら側』の世界の情報収集用に近界民が送ってきたとか、そういう話じゃないですよね…?」

 

「…いや、残念ながらそれで合っているぞ、神立。まあ、確定でそういう訳ではないだろうが、おそらくそうだ。向こう側の近界民どもが情報収集で送ってきたのだろうな…とワシら上層部は判断している」

 

 

 …なんと…!って、ちょっと待て…それ、今までの話を考えると…

 

 

「…このモールモッドをわざわざ捨て駒の情報収集用に出してこれるようなやばい近界民が近いうちに攻めてくるってこと…ですか?」

 

「そういうことになるな」

 

 

 …なんということだ…唯一近接戦で戦ったからこそわかる。あんな奴らが大量に出てくるような国と戦ったら、いくらボーダーといえどひとたまりもないって…いや、僕以上の強さを誇る正隊員なんておそらくボーダー内にA級を筆頭にたくさんいるはずだ。しかし、戦いは個々の実力だけではなく数も重要なファクター…個々がいつもよりも強い兵士を大量に送ってくる国など明らかにやばくないか…?僕より強い人間も数で押されかねない…!

 

 

「それ…いつ来るんです…!?何の国が…ていうか、何で!?」

 

「落ち着け!それは流石にワシでもわからん!迅もぼんやりとしかわからんと言っておったし、詳しいことはワシより迅にでも聞いてこい!また別のものが見えているかもしれんしな!」

 

 

 …それは確かにそうだ…ていうか、今思えばさっきから説明してくれているのも鬼怒田さんということ自体が謎だった。だって、トリオン兵の解説など他のエンジニアや、それこそ僕と仲の良い寺島さんとかで十分なはずだし、わざわざ忙しい室長自ら説明に来るなんてものすごい違和感がある。だが、そんな重要な情報を言うのなら、確かにこういう偉い人しか知らないだろうし、他の情報漏洩させる訳にはいかないからわざわざ鬼怒田さんが話に来てくれたのだろう。

 一年前に侵攻が起きたばかりだというのに、再度大規模なモノが発生すると世間にうっかり知られて仕舞えばまたパニックになりかねないしな…情報を知るものは最小限にって訳か…

 

 

「だが…全くどの国が攻めてくるのか検討がつかないという訳でもないのだ」

 

「…はい?」

 

 

 “国”…というのは、まあ向こうの世界にも、大小さまざまな国家が存在するのだ。で、その多くは恒常的な資源不足に悩まされており、トリガーを利用した戦争行為に明け暮れている所がほとんどだ。「こちら側」の世界に度々小規模でも侵攻してくるのは、その資源…ていうか、“トリオン”を確保するため、というのがでかい。

 向こうの世界は、僕らが当たり前のように使っている電気やらそういうライフラインが全てトリガーで賄われていると言って良い。で、生活するにはそれはもう莫大なトリオンが必要になる訳だから、どの国もトリオン確保のために「こちら側」の世界である“玄界(ミデン)”に侵攻してきている訳だ。

 玄界(ミデン)というのは、近界民から見たこちら側の世界の呼称の仕方で、その、玄界(ミデン)は、土地、人工ともに近界とは比較にならないほど膨大なのにも関わらず、トリガー技術が発達していない国に見える訳なので、優先して侵攻にきている。何せ、トリオンを生成しているのに使っていない人間が山ほどいるだからな…まあ、話を戻そう。

 

 今、鬼怒田さんは“検討がつかない訳ではない”といった。

 

 

「つまり…どの国が攻めてくるかある程度はわかるってことですか…?」

 

「…その国だという根拠はあるのだが、仮にその国だとすれば、色々おかしいことになるのだ」

 

 

 鬼怒田さんが、また機器を操作してモニターにある写真を映し出す。夜景が綺麗な街の写真だ…だが、建物の外見を見れば、それが「こちら側」の世界のものでないことはすぐにわかった。

 

 

「この国は、暗夜国家“ニュクス”と言う国でな…昔、ボーダーが遠征に出たことのある国だ…この写真もその遠征時に撮ったものだ」

 

「へえ…」

 

 

 聞いたことのない国だ…遠征時にも行ったことある国なあ…“今”のボーダーになってからも遠征は行われているんだな。

 

 

「意思があるように動き回るモールモッドはここで遠征時に観測されている。モールモッドの回路系もこの国が運用していたものと変わりない。記録によれば、この国以外でこのタイプのモールモッドやバンダーを運用している国はないからな」

 

 

 …え?じゃあその国確定でいいのでは…?

 

 

「だがな…おかしなことに、この国は数ヶ月前に“滅んだ”はずなのだ」

 

 

 …はい?え?滅んだ?

待って?頭の整理が追いつかなくなってきた…今日何回驚いているんだ…?俺…つまり、滅んだはずの国が戦争仕掛けてこようとしているってことか!?

 

 

「この国は数ヶ月前に『こちら側』の世界付近で、別の国に滅ぼされたのが観測されているのだ…だから、本来この国が攻めてくるなどありえないことなのだ…」

 

「え…何というか、滅ぼされて住む場所がなくなったから、こっちに止む無く来る…とかではなく?」

 

「もしそうするのならば、わざわざここに来ようとせんわい…この国とはもう距離的にかなり離れておるからな…」

 

 

 そう鬼怒田さんが言うと、画面が切り替わる。それは、ニュクスが合ったであろう場所と、こちら側の世界の距離などを示した位置関係を表す地図だった。

 

 

「どんなに高性能だろうと、この距離を横断するのならば尋常ではない程のトリオンが必要になる。いくらワシらがトリガー後進国で、襲いやすいとは言え、移動中に、最短距離でこちら側の世界で行く際に存在する敵対国家に襲われてもおかしくないからな…他の国に逃げる方が現実的だ」

 

「成る程…」

 

 

 そうなると…不可解な点が多すぎるな…まあ、「こちら側」の世界なら弱いから逃げてきてもどうにかなるだろう感があって無理を承知で来た…みたいなのもあるのかもしれないが…どうなんだろうか

 

 

「他にも、あのトリオン兵共が出た時に発生した計器の異常やら、戦力やら、ほとんど何もわかっておらんようなものなのだ…大方、話すべきことは話し終えたと思うが、どうだ?」

 

「まあ…理解は…しました」

 

「納得はしてないな?」

 

「まあ…」

 

 

 正直、思考が追いついていない。何つーことだマジで…予想以上の大事になってきたな…!

 

 

「この事は開発室や上層部で引き続き調査する。くれぐれもこの件は内密に頼むぞ…?」

 

「あ…はい…えっと、これ知っているのって上層部の人と迅さん以外だと誰がいるんですか?」

 

「東君と、うちのエンジニア数名が把握しているはずだ」

 

 

 うへえ…マジのマジな極秘情報じゃねえか…迅さん…なんでこんなモノ僕に伝えることが最悪の未来を回避できるって言うんだ…?

 

 

「もう話す事はない。用がないのならさっさと帰ってくれ。解析に回らないとだからな…」

 

「あ…はい」

 

 

 僕はクルリと回って開発室から出ようとする。

 正直に言って、今日言われた事は本当に内容が内容なだけに頭の整理が追いついていない…。もし出来るのなら、迅さんに会って聞かないとだな…でも、あの人どこにいるのかわからないんだよなあ…いや、“玉狛支部”に高確率でいるんだろうけど…あそこは…

 

 

「おお、言い忘れておった!神立!」

 

「あ!はい!なんですか!?」

 

 

 急に呼ばれたのでびっくりして振り返る。

 

 

「新人王取得…よくやった!さすがワシがよくトリガーについて教えていただけある!」

 

「…はい!ありがとうございます」

 

 

 僕は慌てて頭を下げる…侵攻云々とか今は置いておいてこれだけ言わせてくれ…やっぱ、この人いい人だ…わざわざ偉そうに聞こえるが…褒めてくれるなんて…やっぱ、ボーダーっていい人多すぎるよ…

 

 

◆◇◆◇

 

 

 結局、あの後、話の内容が気になったので、ボーダー本部内部を歩き回って迅さんを探したのだが、案の定見つからなかった。

 で、いつの間にかもう5時を回っていたので帰らざるをいけなかった。これ以上残っていると、鬼怒田さんに何を言われるかわかったもんじゃないからな…

 

 

(別に迅さんは明日見つければいいだろうな…近頃くるってことは、さすがに明日は来ないって事だろうし…もし明日に来るって言うのなら迅さんが見えてなきゃおかしいし、本部ももっと大騒ぎしてておかしくないからな…)

 

 

 そう思いながら、日が沈みかかった街を歩く。この時期になるとかなーり寒くなってくる。ちょっと前まで夏だったから、寒さに身体が慣れていないだけかもしれないが、正直この寒さは秋だろうと人を殺せるレベルだ…

 

 

(…無意識に来てしまったな…)

 

 

 寒さに耐えながら歩くボーダーからの帰り道、僕は、家に帰らずに少し遠回りをしてしまった。本当なら、もっと心の整理がついてからくるべき場所…でも、なんか今“そこ”に行った方がいい気がして、ある場所にきた…と言うよりかは、()()()()が見える場所に来てしまった…とでも言うべきか。

 

 

(…変わっていないな…あそこも…)

 

 

 僕が来たのは、ある河川にかかった橋の上…ここからは、ある建物が見える。

そこそこ大きくてどこか古臭い、河川のど真ん中にたった水流観測施設のような三階建てくらいの建物…“玉狛支部”だ。

 

 あそこは、ボーダーの支部の一つであるが、本部の出張所的な役割であるはずの他の支部とは異なり、本部とは別の理念を掲げていることもあって、ボーダー本部に所属している人間にとってはどこか毛色が違う浮いた場所だ。あそこに…いつもなら、迅さんがいる…が、もう夜遅いし、“心の整理”がついていないので、訪れるのはまた今度にしようと思った時だった。

 

 

「よう!武治!もう学生は帰る時間だぜ?何やっているんだ?そこで」

 

「…あなただって一応学生でしょうが…」

 

 

…どうやら、もう僕がここにくることは()()()()()みたいだ…

 

 

「数ヶ月ぶりっすね…迅さん」

 

「数ヶ月ぶりっつっても…いや、最後にあったの5月前だしそのくらいか…ま、久しぶりだな」

 

 

 僕が探そうとしていた人物である迅悠一さんが、目の前にもう現れたのだから。

 

 

「ぼんち揚食う?」

 

「いつも食ってますよね…それ…夕食前なんで遠慮しときます」

 

「そうか…」

 

 

 どこか寂しそうな表情で僕の隣にやってくる。寂しそう…っつっても、僕は彼の心なんて理解できなくて当たり前なんだけどな…

 

 

「いいよな…この景色…俺気に入ってるんだよね〜…ウチの基地がいい感じに川と月にマッチしていい感じの風景ができるから」

 

「…言われてみれば…いや?そうなのか…?」

 

 

 いい風景なのかどうかはよくわからんが、まあいいや。

 

 

「それで…?ボーダーに()()()最近調子はどうだ?聞いたぜ?新人王とったんだってな」

 

「…まあ、昔と比べて、色々変わったな…って思いますよ」

 

 

 特に行動指針とか…僕が知っている人達もどこか変わってしまったような気がするし…迅さんは…いい意味でも悪い意味でもさほど変わっていないように見える…まあ、元の迅さんと比べればあれだけど…

 

 

「ま、武治的には結構変わってるよな…今のボーダー…で、今ここに来たのって、俺になんか色々聞きたいからだろ?」

 

「自分で来ておいて…まあ、そうですね」

 

 

 っていうか、僕が今のボーダーに入ろうって考えたのは、他でもない迅さんが僕に勧めてきたからだろうに…まあ、それは置いておこう。僕は、彼が視た未来を知りたくてここにきた。僕にだけわざわざ言いにくるように上層部を説得させるなんて…普通に考えておかしいもんな…

 

 

「まず、迅さんが見た最悪の未来って何なんです…?僕にピンポイントで機密情報伝えさせるとか普通に考えておかしいですもん」

 

「遠慮なく聞いてくるなあ…」

 

「そりゃ、昔馴染みな訳ですし…」

 

「…まあ、簡単に言えば、ボーダーが滅んで、全員が死ぬ未来…だな」

 

「…それもう回避できたんですか?」

 

「いんや…それがさ…未来ってもんは難しくてねえ…ちょっとのきっかけですぐに、簡単に未来ってもんは切り替わる…俺が今回できたのは、あくまでその可能性を減らせただけだよ」

 

「…そうですか…向こうに関しては何もわかっていないんですか…?」

 

「んー…本当に何もわからないって感じだな…マジでうっすら侵攻の未来が見えるだけで、詳細な情報は何一つ見えないったらありゃしない…」

 

 

 ただ強いて言うのなら…と、迅さんがぼんち揚を頬張りながら真剣そうな表情でこっちに言ってくる。

 

 

「…お前が作る“繋がり”が大きく未来を変えそうに視えた」

 

「…何ですかそれ…繋がりって、何の繋がりですか?人同士の繋がりなんて言いませんよね?僕友達少ないんですよ?」

 

「言ってて悲しく何ないのかそれ…まあ、正解」

 

 

 …カナシイデス。友達も…彼女もホシイ…

 

 

「何でそんなものがいい未来につながるんです…?ただでさえ()()()()()()()()()()()()()()僕が、人の繋がりを大切にできるなんて思います?」

 

「自虐すんなよ…逆に、()()()()はお前がそういう人との繋がりを大事にしていたからこそ、最悪の結末を回避できたんだろうが」

 

 

 …どう言うことだか…

 

 

「ま…今のお前を見て、二つ未来が見えるんだ…誰とも積極的に関わっていないような未来のお前と、積極的に関わっているお前…どっちかっていうと、積極的に関わっているお前の方が少し幸せそうな顔に見えるんだよ」

 

「…そりゃ、人と積極的に関わって、友達に囲まれていれば幸せな顔になるもんでしょう?まあ、人それぞれかもしれませんけど」

 

「まあな…だから、“強いて”って言ったんだよ。それに、これ確定した未来でもないし…死ぬほどぼんやりしているからお前の顔しか見えないもん」

 

「…そうですか」

 

 人に積極的に関わる…なあ…まあ、それがどう未来に関わるのか知らないけど…ていうか、侵攻どうこうが人と積極的に関わることで変わるのだろうか。

 

 

「ま、気楽に流してくれよ…別にお前が未来を変えるわけじゃないんだし、まだ侵攻は先になりそうだし」

 

「…未来、見続けて疲れないんですか?」

 

「ん?全然?女の子のお尻を揉むのにも使えるし、誰かを煽れるのにも使えるし、本当に感謝しかしていないよこの能力」

 

 

 …僕、疲れないのかどうか聞いただけなのに、わざわざ感謝しているかどうか答えるんですか…?まあ、そこは深く言及しないでおこう。

 

 

「…ありがとうございます。じゃ、僕夕飯家族が作っているので帰りますね」

 

「あれ、マジか…読み逃したなあ…夕飯作ってなきゃ普通にウチで食わないかどうか誘おうと思っていたのに…小南とか飛び跳ねて喜んだだろうからな」

 

「飛び跳ねるかどうかは別にして、まだ会えないっすよ…迷惑かけた人間がそう簡単に戻れませんよ…これでも小心者なんで」

 

「おいおい…その点に関しては俺が保証するぜ…?みんな歓迎してくれると思うぞ…?」

 

「…根拠は?」

 

「…俺のサイドエフェクトがそう言っている」

 

 

 顔の横にキラーンと星が光っていそうなドヤ顔でそんなことを言ってきた。んー…でも、やっぱりまだ行きにくいな

 …にしても…サイドエフェクトってのは羨ましいように見えて難儀なものだな…まるで、運命が“これがお前の使命だ”って勝手に決めつけてきて、それをどうこうせざるを得ないようにさせてくるようなもんだから。サイドエフェクトって、欲しくて手に入るものではないわけだし…

 

 

「…そうですか。まあ、僕は帰りますよ」

 

「ああ、引き止めて悪かったな…」

 

「いやいいですよ…元々話を聞きたかったのは僕でしたし」

 

 

 そう言って、僕は帰路についた。正直、侵攻がどうこうとか今でも頭の中で整理が追いつかない。いきなりスケールがでかい話に放り込まれてしまったような感覚だ…

 

 

 まあ、別にやる事は変わらない…人との繋がりを増やすべきだって言うのなら増やす。あとは自己鍛錬…それくらいしか僕にできる事はないわけだし…

 こう言うのは、下手に気にしないで、脳の片隅に置いて置くのがいいんだ…やれることをやって、天命を待てばいい…迅さんの見る未来は別に確定しているわけではないのだから…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちなみに、これほとんど確定している未来だけど、武治多分高校卒業しても彼女できないみたい。俺のサイドエフェクトがそう言っている」

 

「………はぁ!!!??」

 

 

 近界云々が過去一どうでも良くなった瞬間だった。




まあ、主人公が元は旧ボーダーとなんか関わりがあるやつだって言うことがわかった回でした。

主人公が一丁前に遠征の存在知ってたりしてるのもそのせいです。

ちなみに、実質的な序章はこれで終わりのつもりです。ざっくりだとは思いますがこの神立武治がどういう男かなんとなく把握したと思うのでw


-主人公…なんかはっちゃけるのか真面目なのかはっきりしてくれない?
-…文才がないから諦めてくれ。こいつは思考の切り替えができる男ってことで…

感想、評価、いつでもお待ちしております。

シールドを貫通することで有名な鉛弾がありますが、あれってレイガストの盾モード貫通すると思います?描写がなくてどうも…

  • するんじゃね?
  • いやー…実体化してるししないのでは?
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