減った後のラッキーナンバー   作:転亡

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罪悪感

「よっしゃぁ、畳み掛けるぞ!!サイナ、アシストいけるか?」

 

可能(任せろ):左頭部の注意を引き付けます。」

 

「いいね、エムル、ドデカイのかませ!」

 

「なんでサンラクサンはこんなめんどくさい頼みを引き受けたですわ…!【マジックエッジ】!!」

 

深夜3時。俺たちが何をやっているかって?おつかい(猛獣狩り)だよ。

皮薄ロールプレイヤーことイムロンからの頼みで俺…サンラクとサイナ、そしてエムルは新大陸で狩りをしていた。討伐対象?ドラクルス・ディノサーベラスだけど?

 

「まぁそう言うなってエムル。ヴォーパル魂はどんどん上がってるだろ?」

 

「それはもうバチバチにアガってますわ!!」

 

うむうむ。水晶郡蠍程ではないが、こいつら一体一体も結構強いのだ。そらヴォーパル魂も上がりますわ。

 

「よーし、これで残り一体だ。最後気合い入れるぞー。」

 

了解(ラジャー)

 

「ちゃっちゃと終わらせて取っておいた人参食べたいですわ…」

 

そのセリフはヴォーパル魂的にとても相応しくない気がするんだが…。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

えーとりあえず現状をわかりやすく説明するとだ、

 

・最後のドラクルス・ディノサーベラスを探していたらエグゾーディナリーモンスターの"死闘の傷(スカーデッド)"に遭遇した。

 

・「一応は同種なんだしいっか」ということで喧嘩を売った

 

・傷ごとに対応した攻撃を与えなければいけないんだがこれがウザすぎた。遠距離はともかく、近接対応の傷を調べようと凸ったら身震いで吹き飛ばされた。食いしばりの恩恵ってすげぇよな。

 

「だぁーっ、くそったれ!!」

 

攻撃ができないからこっちにヘイトが向かねぇんだよ!

"皇金世代(ゴールデンエイジ)"との戦闘の際はサイナが誇るクラスⅷ武装があったお陰で勝てたがあのときは最初だけとはいえ俺がヘイトを買っていたからこそ撃てたようなもんだ。つまり今回の場合、ヘイトが買えない=決定打に欠けるということなのだ。

 

「クッソがぁ………」

 

「サンラクサン!この怪物ほんとに倒せるですわ!?」

 

「いつも言ってんだろ!死ぬまで殴れば死ぬんだよ!」

 

戦闘に置いての基本をエムルにぶつけ、攻撃を仕掛けようとする。するとそこへサイナがとある忠告をしに来た。

 

「忠告:長期戦になった場合、個体名称:エムルの魔力が尽きる可能性が大です。」

 

「なるほど。」

 

エムルの魔力が尽きる、つまりこの戦闘に勝たなければエムルはただの置き物にしかならなくなるし、転移もできなくなってしまう。要は高確率で強制ソロサバゲーとなるわけだ。新大陸でソロのサバゲーとか一種の処刑だろ。

 

「それはまずいな…おいエムル!悪いけど先に帰ってろ、このままだとお前死ぬぞ!」

 

「な、何言ってるですわ!?ワタシだって強くなってーーー」

 

え?なんで急に黙ってーーー

 

契約者(マスター)!!!」

 

サイナの声に反応して後ろを振り向くとそこには迫りくる死闘の傷(スカーデッド)の顎。

いやまて、さっきまで俺のことは眼中になかっただろお前?!と思いながら避けようとするが、やつの顎は巨大すぎた。畜生が。どう考えても足の一本は確実に持っていかれると確信したその瞬間、

 

横から猛スピードで何かがが突撃してきた。それが何だったのかを認識しようとした先には

 

下半身を完全に食い千切られ、胸部にたった一つの、されど、完全な致命傷を負わせた牙を受けたサイナの姿があった。

 

 

 

「サイナァァァァァァァァァ!!!!!!」

 

「サイナサン!!!」

 

馬鹿かあいつ!?なんで庇った?!

 

「くそっ、とりあえずインベントリアに格納を…」

 

だが、あのクソッタレな三つ首の竜はそれを許さなかった。次はお前だと言わんばかりに俺に対して攻撃を仕掛けてくる。

 

「このっ…ふざけやがって………」

 

こうなりゃ仕方がない。こいつの討伐よりもサイナの安全のほうが重要だ。

 

「エムル!!ゲートを開け!サイナをラビッツに運んでくれ!!」

 

「こっ、ここでは無理ですわぁ!ゲートを作るための壁がないですわぁ!」

 

「なら俺がこいつをっ…引き付けておいて…やる!お前はサイナを運んでくれ…!!プレイヤー、あーいや…開拓者を見つけたら助けてもらえ!」

 

「はっ、はいなぁ!!」

 

悪質プレイヤーに殺されるのではという考えもよぎったが、これがおそらく一番いい策だろう。

というか本当に硬すぎるし全然怯みもしない。そのうえ3つの首を器用に使いこなして攻撃を連続して行ってきやがる。お陰でウインドウの操作すら許されない。こんなやつに勝ったのかすげぇな緋色の傷(スカーレッド)

 

「ちくしょうめが…っ!」

 

さっさと死んでラビッツに戻ったほうがいいか?いや、時間稼ぎをしている以上それは不味い。

 

「クソっ………オラァ!!くたばれ!」

 

終わったあとはあいつを治さなきゃ。どこへ?あぁベヒーモスにか。

そもそもあいつはあれだけの傷を負ってまだ生きてるのか?くそっ、ウィンドウを開けないせいで確認すらできねぇ…!

 

「俺が悪かったから………絶対に死なないでくれよ、サイナ…!!」

 

頼むから死ぬんじゃねぇ。お前とはそこそこ一緒に冒険してるからまぁまぁ愛着湧いてんだよ。

それ以前にだ、俺と違ってお前は死んだらおしまいなんだ、サイナ。

お前の代わりはいないんだよ。だから頼む。生きててくれ…!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「サ、サンラクサン!?帰ってきたですわ!?」

 

「エムル、サイナはどこに!?」

 

「こ、こっちの部屋ですわ!サンラクサンの部屋に連れて行ってほしいって言ってたけど、流石に不味いと思って…」

 

「そうか、ナイス判断だ。」

 

エムルの案内された部屋に行くと、そこには最後に俺が見たときと同じ状況のサイナがベッドに横たわっていた。

 

「HP……7………。不味いな。おいエムル、ファスティア繋いでくれ。サイナをベヒーモスに連れていく。」

 

「はいなっ」

 

「マス、ター………」

 

「悪い、あんだけしてもらったのに負けちまった。」

 

「は、は…まった、く………仕方がない、人、です、ね。マスターは…」

 

そう言ってサイナは弱々しく笑う。そうだ。こんな状態になってまで俺に繋いでくれたのに負けてしまった、その事実が許せない。罪悪感が体を駆け巡るのがわかる。

 

「今からベヒーモスに行く。悪いけどもうちょっと我慢してくれよ。」

 

謝罪(申し訳ありません):こんな不甲斐ない姿を………」

 

「いい、むしろ謝るべきなのは俺の方だ。調子に乗ってお前たちのことを考えれていなかった。すまん」

 

「そん、な、ま、すた」

 

「喋るな。安静にしてろ。」

 

「ッ…了解(わかりました):………」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「本当に悪い」

 

そう言って俺は頭を下げた。その先にはサイナの、征服人形(コンキスタドール)の生みの親、アンドリュー・ジッタードールがいた。

 

「いや、君が謝る必要はない、サンラクよ。征服人形(コンキスタドール)の役割には契約者の守護というものもある。彼女は役目を果たしただけだ。とはいえ、ここまで酷い状態というのはなかなか苦しいものだがね」

 

「...治るまで何日かかる?」

 

「ふむ...今回の場合は傷が深いうえに状態も非常によろしくない。慎重にならざるを得ないからな...。まぁざっと二週間といったところかな。」

 

二週間か。結構かかるんだな。

 

「ありがとう、これからはこうならないよう気を付ける。」

 

「あぁ、そうしてくれ。それにしても...くくくっ」

 

「なんだ?」

 

「いや、君が修理と言わず治すといったことが印象的でね...フフフ、彼女たちをモノ扱いしないことに感謝するよ。」

 

あぁ、そんなことか。

 

「別に、そんなこと今に始まったことじゃないからな。」

 

「それもそうか。君は最初に征服人形(コンキスタドール)をここに導いた人物だったからね。」

 

「それじゃあ、二週間後にここに戻ってくるから、サイナをよろしく頼む。」

 

「まかせなさい、あぁあと、時々見舞いに来なさい。この娘をこんなことにしてしまったという罪悪感があるのなら、そのくらいはしたほうがいいと思うぞ?」

 

見舞い、か。確かに仲間が入院するんだからそのくらいはするべきだな。

 

「...わかった。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

からだは、勝手に動いた。

 

本来なら、もっと他の方法があっただろう。

 

敵の目を狙って撃つ、インベントリ内のキープアウトなどを使って契約者(マスター)を引っ張る...損害が少しでも少なくなる方法は他にもいろいろあったはずだ。

 

それなのに、ワタシが選んだのは、自分の身の危険を顧みずに契約者(マスター)を突き飛ばすことだった。

 

敵の攻撃から逃れた契約者(マスター)を確認した次の瞬間には、下半身の感覚がなくなった。

 

そして追い打ちをかけるように全身から急に(エネルギー)が抜けていく。否、回らなくなったというべきか。

 

恐らく(コア)に攻撃が当たったのでしょう。まだ機能は停止していませんが、あまり長くはもたないといったところでしょうか。

 

思い出すのは皇金世代(ゴールデンエイジ)との戦い。正確にはその前の水晶群蠍(クリスタル・スコーピオン)との戦いだが、あの時も誰かをかばって大きな損傷を負ってしまった。

 

ーーーこれが走馬灯というものでしょうか?最後に思い出される光景がこれというのはあまりに酷くないでしょうか。

 

もう先は短いだろうと思った。それは少しずつ、しかし確実に弱っていっている感覚から確信していた。

 

死ぬのならせめてあの人に看取られながら死にたい。

 

そう思い、奇跡的に無事だった腕をあの致命兎(ヴォーパルバニー)、エムルにのばしながら、ワタシをあの人の部屋に運んでほしいと頼んだ。

 

しかし、あの兎はそれをよしとしなかった。今は休んであの人が帰ってくるのを待とう。と。

 

違うのだ。ワタシにはその時間すら許されないのだ。あの人がここに来るまでに死んでしまったら?多分あの人は勝っても負けても死んで戻ってくるのだろう。ならば、あの人の部屋にいたほうがいい。

 

それを伝えられないことが悔しい。こんな弱気な自分が腹立たしい。そして何より、

 

こんなところで終わるのがとても悲しい。

 

死にたくない。まだ終わらせたくない。

 

まだ物語を紡ぎたい。

 

意識が遠のいていく。

 

だめだ、だめだ...。まだ、まだーーー

 

「--------------」

 

かすむ視界に何かが移る。何を言っているのかはわからない。ただ一つ推測できることがあるとすれば、

その存在が、私の命を、繋いでくれた存在だということだ。

 

 





普段はpixivで小説を書いている者です。名前は変えています。
息抜きでシャンフロの二次小説書きました。一応サンサイにしようとしています。息抜きで連載物書くとか馬鹿でしょ自分...
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