あれから三日が過ぎた。俺はその間シャンフロにはログインせず、ほかのゲームをプレイしていた。だが不思議なことにこの三日間のプレイはあまりに酷すぎるものだった。ネフホロではルストどころかスーパー玉男にすら負ける始末。危牧では
確実にモチベーションがガタ落ちしている。リアルでも同様だ。原因は何だ?いや、理由はわかっている。わかっているのだけどもそれを素直に認めることができないのだ。
「......見舞いに行くかぁ。」
アンドリューに言われたことを思い出した俺はシャンフロにログインした。
セーブ地点はベヒーモスに変更していたのですぐにラボへ向かった。
俺の調子がおかしくなっている理由、それは恐らくこの前俺を庇って下半身を失う大怪我をしたサイナが原因だろう。ただ、俺がNPCの怪我でここまで動じるのか?とも思っている。だが事実、今の俺は自分からあいつの見舞いに来たというのに鼓動が早くなっているのが嫌というほどわかる。
ええい、しっかりしろ
「リセット完了......。よっしゃ、行くぞ......!」
顔をパンパンと叩いて気合を入れ、ドアをノックする。
「よう。サイナに会いに来たんだが、もしかして面会謝絶中か?」
「サンラクか。来るのが遅いのではないか?」
「悪いな、ちと用事があったもんで」
「ずっと寝ていたくせに何を言う。」
うん。まぁこっちの世界じゃそう見えるわな。でもそれを言う必要もないだろう。
「まぁ悪かったよ。それであいつは?治ったのか?」
「完全に修理......いや、治癒ができたわけじゃないのだが状態は安定している」
「それを聞いて安心した。じゃあ案内してくれ」
そう言って案内してもらったのは一つの部屋。上のほうには「
「サイナよ。君の契約者が見舞いに来たぞ!」
「......わかりました。
「おう。ありがとな、サイナのためにいろいろと」
「あぁ。いってらっしゃい........
ちょっと待て、エルマ=317と二人きり?待て許さんぞもどれ、ワタシも一緒に行」
外でアンドリューがなにか叫んでいた気がするが気にせず鍵をかけた。患者がいるんだ。静かにできないならば入らないでもらおう。
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「サイナ、体の調子は?」
部屋に入って開口一番の言葉は挨拶を飛ばして相手の身を気遣ったものとなった。
「ええ。コアの損傷が元通りになったので状態は安定しています。ただ、下半身の欠損が中途半端なところで起きているので...。」
そう言われてベッドに半身を起き上がらせているサイナをみてみると胸に食い込んでいた牙は取り除かれていたが下半身はまだ欠損したままだった。
「そうか......。」
「......」
「......」
いや待て、俺コミュ力なさすぎないか?
相手はNPCだぞ。リアルより話しかけやすいだろ!
考えろ。何か、何かいい話題は....!
「......
「あっはい。」
くっ、先手を打たれたか...!いやこんな会話に先手とかあるのはラブクロックだけだわ。
「疑問:
「へ?夢?」
想像の斜め上を行く質問に思わず聞き返してしまった。
「
「あぁ、なるほど。」
夢か......。さてどう答えるべきか。
「そうだな、例えば自分が一号人類みたいに不死じゃなくなったけど、代わりにモンスターはいない世界になっていたり、神代の技術がいくつかよみがえった世界になっていたり、そんな夢を見るな。」
「
それはーーー
「......夢の中に行っちまうんだよ。だから二度と帰ってこない。それだけだ。」
嘘は言ってない。言ってないんだが、なぜだ?こうももやもやするのは。
「
「おい待て、どういう意味だ。」
俺だってロマンチックなセリフの一つや二つ言うわ。まぁ今回に関してはロマンチックでもなんでもない答えだだと思うけど。
そのあと、少しだけ雑談をしてサイナは体の治療に行った。なぜか部屋から出てきた瞬間にアンドリューから大音量で怒鳴られたのだが何故かはわからない。
「次からは見舞いの品ももってきたほうがいいな。」
そう考えた俺は気は進まないが参考にはなる
訂正、何言われるか分かったもんじゃないので秋津茜や玲さんあたりに聞いた。その時に玲さんがいつもより数ランク上のバグり方をしたことを追記する。
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サンラクが去った後のこと、サイナはメンテナスルームの準備が終わるまでの間、アンドリュー・ジッタードールと話をしていた。
「....
「ふむ、言ってみなさいエルマ=317よ。私が答えられる限りは答えようじゃあないか。それが私ーーー」
「アンサーコード・トーカーtypeジッタードールの役目だから、ですよね。」
「......そうだ。」
自分が造った
「
「なるほど、だが残念ながら私はそちらのほうに関してはあまり博識ではないのでね。だが
その存在にすぐには思い至らなかったサイナであったが次に現れた人物を見て納得する。
「象牙......」
「久しぶりですね。エルマ=317。ええ、話はすべて聞いていましたよ。」
それはこの「ベヒーモス」の案内人にして支配人。そしてこの
「......疑問:ならば答えてもらえますか。契約者は、二号人類は、この世界から消えた後に、どこへ行くのですか?」
しかし、象牙の答えはサイナを満足させるものではなかった。
「エルマ=317よ。それは私が関わるところではないのです。母とは、親とは子を育てるもの。そして子はいつか独り立ちし親の元を離れます。自立した子に対してまで色々するのは野暮というもの。だから私は彼らの行く末に関しては、ただ未来がうまくいくよう願うだけにとどめているのです。」
要は知らないということではないか、とサイナは憤慨した。長々と話しているのも知らないことを言い訳しているようでさらに腹が立つ。
はらわたが煮えくり返る思いではあるが、それを抑えながら次の質問を投げかけた。
「疑問:ならば、
「......いいえ。無理でしょうね。」
はっきりと、「象牙」は答えた。
「断言できる理由が、なにか、あるのでしょうか。」
「いいえ。常識的に考えてみて無理だろう、という推測ですよ。」
その言葉が発せられた瞬間、サイナの顔から表情が抜け落ちた。それを見たアンドリューはホログラムであるはずなのに鳥肌が立ったような錯覚を覚えた。
しかし、それに気づかずか、それとも気づいたうえでか、「象牙」は更に口を開けて話を続けた。
「そこまで聞くのはあなたの契約者に関するからですか?そうであるならば一つあなたに言わないといけないことがあります。」
「何を、」
「先ほども言った通り、子はいつか巣立つのです。そしてそこまで親が首を突っ込むのは野暮なこと。
その言葉に対してサイナはピクリと反応した。
妨げ?なぜ、契約者は、サンラクはワタシを必要としている。妨げなどではない。彼はワタシを
「違う、
「それこそ断言できる理由はあるのですか?」
「それは.....っ」
言葉に詰まる。いざ理由を説明しようとしてもそれが全て自分の推測でしかないことに至り、何も言えなくなってしまう。
「彼ら二号人類をそこまで思ってくれるというのはとてもうれしいことです。ですが、過保護はいけません。何度も言いますが彼らはいずれこの世界から巣立つ。その時は優しく見送るのが一番なのです。」
サイナは「象牙」の発する説明の一つ一つが自分を飲み込んでいく気がした。それに耐えきれなくなった
「そんなことはできないのです!!ワタシは、
自分がこんな疑問を持つ理由の
上半身しか残っていない体で叫んだせいか、サイナは視界に不調を感じベッドに倒れこんだ。その様子を見たアンドリューは、すでに準備が終わっていたメンテナンスルームへサイナを運ぶと「象牙」に一言「言い過ぎだ。」と言って後に続いた。
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悔しい。
悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい。
そして、怖くて、悲しい。
メンテナンスが終わった後、ワタシはずっとずっと泣いていた。オルケストラの時とは違う、嫌な気持ちばかりが詰まった涙だった。
彼がいなくなってしまう原因が、自分のせいだったら、と思うと、怖かった。
そもそもあんな疑問を持ってしまったのはあの
それは、二号人類について書かれていたもの。コアの修復が終わった後に、暇つぶしにとアンドリュー・ジッタードールが持ってきてくれた書物のうちの一つであった。
どうせならと思い読み進めていると、ふと目に入った項目があったのだ。
「二号人類の、生態......」
二号人類の補佐を目的としている以上、我々は彼らのことについてたいていのことは知っている。
しかし、何の気の迷いかは知らないがその項目を開いてしまった。
その中にあった気になること、それがこの二つ。
二号人類は寝ている間に夢を見る。(ただし、これに関しては一号人類の中にも見る者はいるらしい)
二号人類は基本的に不死身だが稀に突如消滅する者がいる。これは前に進むという「意思」が薄れることが原因である。
夢。それは征服人形にとって無縁のもの。
そして突如として消滅する開拓者。これもまぁ、ワタシにとっては無縁のものだと思っていた。なにせ自分の契約者は好奇心の塊のような人物だ。そこに未知があれば、たとえ確実な死が待っていたとしても、彼が止まる理由にはならないから。
だが、気になってしまった。夢とはどんなものなのか。消滅した開拓者はどうなるのか、どこかへ行くのか、行くのならどこへ行くのか。
二つ目の質問に関しては聞く意味があまりないことはわかっていた。なにせ死んだ後のことを聞くようなものだ。答えられるわけがない。
それなのに、
普段の契約者からは想像できないようなロマンチックな答えに笑ってしまったが、契約者の顔はなぜか寂しい目をしていた。
その目が引っかかって、言われるがままに「象牙」に問うてみればこのざまである。
(......
間違いなく寝ると断言できる。あの人は何かに行き詰った時には大体寝ているからだ。
そう考えたワタシは
しばらくこうしていよう。このワタシのインテリジェンスを持ってしても思考が混濁しているのだ。休んだ方が良いに決まっている。
そうしてワタシは意識を沈めていった。
恋愛ものなのか不安になってきたけどプロットはちゃんと恋愛もので安心した。
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