減った後のラッキーナンバー   作:転亡

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テスト、文化祭、大会......
全て乗り越えてきたぞこん畜生!!
というわけでひっさびさに更新です。遅くなって申し訳ありません。


※注:この話は、百合ではありません。

来鷹大学機械工学部。

今ここで災害とでもいうべき事態が起きていた。

 

「な、何だね君たちは?!」

 

「あんたがここの学長か?うちのトップがあんたに見せてほしいものがあるっていうんだ。」

 

「言葉遣いに気をつけろ新人。すみません、無礼な態度を......。」

 

ここの学長室に三人の男がいる。一人は学長、残り二人は黒いスーツに身を包んだ男たちだ。

 

「むぅ......。そ、それで、いったい何の用でしょうか?」

 

「突然の訪問になってしまいすみません。我々、ユートピア社の者でして、今回は我らのトップからそちらへの要望を届けに参りました。」

 

そう言ってカバンから封筒を取り出すスーツの男。

その封筒には「継久理創世」の名。

その名を見た瞬間、学長は息をのんだ。それもそうだ、その名はこの学園にいる者にとってはあまりに有名であり、そして今は世界にまで広がりつつあるのだから。

 

「わかりました。ここで確認しても?」

 

「えぇ。構いませんよ。」

 

了解を得て中身を確認する学長。どんな内容が書かれているのか、最悪の場合自分の立場まで脅かされるのではないかと恐る恐る開いた手紙の内容は、

 

ーーー私と同期の卒業生の名簿を送って欲しいーーー

 

というものであった。厳密には内密にしてほしいだの、送付先はこのメールアドレスにだのと、他にもこまごました内容が書かれていたが今回は省略する。

思ったよりも大きくない頼み事(とは言え個人情報に関することなので割と大きいのだが)にあっけにとられる学長。内容をすべて理解したころには安堵によって人前だというのに思いっきり脱力したほどである。

 

「なるほど、内容は理解しました。ですが私個人では決めかねません。お時間をいただきたいとあちらに伝えてもらってもよろしいでしょうか?」

 

「わかりました。本日はお忙しい中、突然の訪問に部下の無礼と、配慮に欠けたことをしてしまい申し訳ございませんでした。」

 

「いえいえ。それでは。」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「……貴方のような人が、急にボクを呼び出してなんのようですか?」

 

「昔の事を思い出してね、貴方に頼み事がしたいの」

 

広いとは言えない一室。そこにあるのは2つのソファと木で出来た細かな細工を施してある豪華な机。そこで対面しながら話す男と女。

女の名は継久理創世。今をときめくシャングリラ・フロンティアの「世界」を担う天才である。

そして目の前に座る男。別に太りすぎているというわけでもなく、かと言って痩せ過ぎというわけではない。顔はどちらかと言えば整っている方だと言えるだろう。

だが、異様な点がその男にはあった。

厳密には男自体に異様な点はないのだが、ある意味では異様であった。

それこそが、

 

「相変わらずのクオリティね、そのロボット(・・・・)。名前は確か……」

 

「ヴィーナスです。以後お見知りおきを。」

 

「あら、喋れたの。前よりもアップグレードしてるのね。」

 

それこそが、この異常にリアルなメイドロボであった。

 

「やはり貴方に頼んで正解だったわね。こんなにリアルなロボットを造れるんだもの」

 

「早く要件を言ってくれないかな。ボクと彼女(ハニー)の時間が削られていくのは嬉しくないんだ。」

 

イカれてらぁ……、というセリフを創世はギリギリで抑えた。この人物こそがいま自分たちの問題を解決してくれる可能性があるため、機嫌を損ねるのは不味いのである。

 

「単刀直入に言うわ。貴方にとあるアンドロイドを造って欲しいの。」

 

「……それはあなたの企業からの頼みというふうに捉えてもいいのかい?」

 

もちろん、と答える創世。他にも仕事を頼むのは今回のみで、これは特別ケースであるということ、報酬は少なくとも数千万円は約束するなどといったことを懇切丁寧に説明する。

 

「……いいのかい?どう考えても君たちの方にはメリットが無いように思えるんだけど」

 

「今の私達に必要なのは数千万の金より一機のアンドロイドなの。そのためにはあなたのその狂気的な技術が必要なのよ。『メイド工学部』さん?」

 

「懐かしい呼び名だ……。いいでしょう。その仕事、承りましたよ。」

 

かくして契約は成立した。それはここにはいない人形(ヒトガタ)の運命を決める契約である。だがそれを知るものはいないのだ。

 

 

 

 

 

「ちなみに納期は1ヶ月よ」

 

「はい?????」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

起きたらまだサイナに膝枕されていた。なんてことはなく、俺は普通にベッドから起き上がる。昨日の膝の感触がまだ少しだけ残っていた。

 

「つーかインベントリアに居ねぇんだけど」

 

脱走兵には重い罰を!!とは言わないがせめてどこに行くかは書いておくなりしておけよ。ホウ(報告)レン(連絡)ソウ(相談)の徹底は大事だ。特にFPSではこれのあるあなしで連携の質が大きく変わる。ガセ報告やまともに観察せずに相手の体力を報告するトンデモプレイヤーも居るには居るが。

 

「つーかマジでどこに行った……?」

 

まさか、「俺がいないときには戦闘をするな」って言ったのがフラグに……?!

 

「サイナ……惜しいやつを亡くしちまった……!」

 

文句(オイコラ):勝手に破壊(死亡扱い)するな。契約者(マスター)にはデリカシーというものがないのですか?」

 

そう聞こえたあとには頭に衝撃。後ろを振り返れば不機嫌な顔をしたサイナが俺の頭にチョップをかましていた。

 

「その前にお前どこに行くかくらいちゃんと報告しろよ。わりと心配したんだぞ」

 

報告。これ大事。

 

「で、どこに行ってたんだ?」

 

「そ、それは......」

 

おっと?サイナが言いよどむとは。まさか俺の予想通りといったところか?

 

「まぁ、どこに行ってもいいけど危ないことだけはするなよ」

 

「謝罪:次からは報告を徹底するようにします......」

 

つーかここ(ラビッツ)から他の場所に行ったってことは少なくともエムルかディアレ(転移要員)が手伝ってるだろ。そいつらに聞けばいいか。おっとぉ、エムル。いいところに来たじゃあないか。大丈夫。ちょっと話を聞かせてほしいんだけどさぁ。

 

「おいエムル。サイナを連れてどこに行っていた?」

 

「ふぇ?!な、何の話ですわ?!」

 

「あ、そう。お前じゃないならディアレか他の奴か。じゃそっちに聞いてくるか......。」

 

「ちょ、ちょっと待つですわ。ちゃんと話すから待つですわ、早まるのはよくないですわ!!」

 

最初から話せやこんにゃろう。

エムル曰く、サイナに頼まれて新大陸の「事務所(ドールフロント)」へ行ったこと。そこで他の征服人形達に新大陸産の人参をたくさんごちそうしてもらったこと。その間、サイナはどこかに言っていたが特に目立った傷も無かった為、そのまま帰ったこと。といったことが俺がいない間に起きていたことらしい。

とりあえずその征服人形達絶対に買収なりされていただろだの、俺だけじゃなくてNPC(サイナ)にまで転移要員扱いされていいのかエムル……だのと、言いたいことはいろいろあるが

 

「じゃああいつがどこに言っていたのかはわかんないのか」

 

「はいな。着いたあとに少し他のお人形の人と話していたのは見たけど、そこから先は知らないですわ」

 

「そっかー」

 

「ほーひへはひほひへはいほひほっへほひっはふへふはー!!ひふひんへふはー!!」

 

誤魔化そうとしたくせに何が理不尽だ、甘んじて受け取れバカヤロー。おーよく伸びるモフモフだ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

2時間前

他の征服人形達にエムルを任せたサイナはすぐさま「事務所(ドールフロント)」を出ると目的の場所へ向かった。

目的地はここではない。普通ならば目的地へと転移して貰えばよいのだが、それをしなかったのは単純にエムルについてきてほしくなかったからだ。

樹海を走るサイナ。自分の契約者ほどではなくてもブースターを使えば十分な速度が出る。

そして今、目指している場所は「リヴァイアサン」。

その目的はとてもくだらない、しかし、本人にとってはとても重要なものである。

 

 

 

『あれ?お久しぶりですね!えーと、サンラク様の征服人形の……』

 

「応答:サイナです」

 

『そうでした、サイナさん!今日はサンラク様は居ないんですか?』

 

肯定(えぇ):契約者(マスター)は寝ています。今日は当機(ワタシ)1人で来ました」

 

それって征服人形としてどうなんですかねぇ……、と苦笑を浮かべる「勇魚」。だが当のサイナは知ったことではないとコーヒーを淹れ始めた。

 

『ところで今日はなんの用ですか?』

 

応答(その):「勇魚」に話というか、相談といいますか……」

 

『私、ですか?』

 

自分を指差してキョトン、とする「勇魚」。だがその視線の先にいる赤らんでいる顔を隠すようにコーヒーを飲むサイナの姿を見てなにか(・・・)を感じ取った。

 

『ほ、ほうほう。いいでしょう。この「勇魚」、サイナさんのためにちからになろうじゃあありませんか!』

 

感謝(ありがとうございます):できれば、どうかこのことは誰にも言わずに......」

 

『わかりました、二人だけの秘密です!』

 

片や恥ずかしがりつつも相談相手ができたことをうれしく思うヒトガタ(人形)、片や二人だけの秘密という「隠し事」にワクワクするヒトガタ(ホログラム)。気持ちが高揚した二人は互いに笑いあった。

 

『それで、いったいどういう相談なんですか?』

 

サイナの前に座る「勇魚」。話を聞こうと身構えた「勇魚」であったが

 

解答(じ、実は):......ま、契約者(マスター)と一緒にいるとこの頃、その、妙に体が熱くなるというか、思考が鈍るというか、とにかく、へ、変になるんです......「勇魚」?大丈夫でしょうか?」

 

『............えぇ、えぇ。大丈夫です。そう、大丈夫。ノープロブレムです』

 

目をつむり、両肘を机の上において手を組む(ゲンドウポーズ)「勇魚」。冷静に思考しているように見せているが、その実は

 

(サイナさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!?私知ってる、知ってますよその感情!!でもあえて言いません!言いませんけど!!それってつまりそういうこと(・・・・・・)ですよね?!)

 

かつてないほどにテンションが上がっていた。

 

(いやいや、決めつけるのにはまだ早計というものです......)

 

一応、念のため、万が一のために、と質問をした。

 

『......なるほど?ちなみに聞きますけど、サイナさんはサンラク様のことをどう思っているんですか?』

 

契約者(マスター)を?」

 

『はい!例えば、「頼りになる」だとか、「少し心配だ」とか、「意外と気配りできる人だなー」とか、あとは......か、かっこいい、とか......』

 

自分で聞いておきながら「勇魚」は質問の中身を誤ったと思った。始めから三つ目までの質問はまだしも、最後の「かっこいい」だけは絶対にないと気づいたからだ。なにせ見た目が半裸と何かの被り物という、「かっこいい」とは無縁のものである。サンラクに対しての期待値が最大である「勇魚」にとってもアレ(・・)をかっこいいと形容するのは少し、というよりだいぶ無理があるというものだった。

 

それに対してサイナの返答は

 

応答(そうですね):確かにどんな危険なところでもすぐに突撃する姿は危なっかしく感じますが、そういう時は大抵楽しそうにしていますし、毎回高確率で死んでいるとはいえ普通の開拓者と比べれば規格外の結果をたたき出すような人なので頼りになる方だとは思っています。気配りという点では......たまにデリカシーのない発言をすることはありますが、悩みや困っていることがあれば真剣に対応してくれますから、なんだかんだ優しい方だと持っています」

 

かっこいいかはわかりませんが、といったん言葉を区切り、そして問いへの答えを出した。

 

「少なくとも、困難にも怯えずに挑んでいくような人がかっこ悪いことはないと、当機(ワタシ)は思います。そして誰が何と言おうと、「この人がワタシの契約者(マスター)だ」と胸を張って言えるような方だと、当機(ワタシ)は断言できます」

 

「勇魚」を見据えながらはっきりと、そして優しい笑みを浮かべながら断言するサイナ。その姿は話し始めたころと比べて自分の気持ちの整理ができたとでもいうようなものであった。

そこまで聞いた「勇魚」はサイナがサンラクに抱いている感情についての疑惑が確信に変わったのを感じた。

 

(まぁ、とは言え本当の感情、というよりその感情がなんなのかがわかっていないんでしょうけど)

 

もうここで教えてしまったほうがいいのでは、と「勇魚」は思考する。自分の気持ちははっきりさせた。あとはその段階で抱いた感情に名前を付ければ彼女(サイナ)も次の行動が起こせるだろう、と。

 

(まぁ野暮ですしまだしませんけど)

 

ならば代わりに、と「勇魚」は次の問いを発した。

 

『もう一つ聞いてもいいですか?』

 

承諾(どうぞ)当機(ワタシ)が答えられるものであれば何なりと」

 

『では、』

 

ーーーサンラクさんと、どうしたいですか?

 

それはほぼ反則といってもいいであろう問いだった。そしてサイナも、この問いに対しての答えは既に出しているものの、いざ他人に話すとなると恥ずかしいというものであった。

「勇魚」が誰もいない場所()に転移してくれていたとはいえ、不安になって周りを確認するサイナ。誰もいないことを確かめると、ゆっくりと口を開いた。

 

当機(ワタシ)は、契約者(マスター)と共に歩んでいきたいです。契約者(マスター)に受けた恩を返しながら、役に立ち続けたいです。そして......これはあくまでも当機(ワタシ)の我儘ですが、彼が許してくれるのならば、当機(ワタシ)契約者(マスター)の......「一番」になりたいです」

 

最後は少し恥じらいを見せながら答えるサイナ。その様子はまるで想い人に対するそれで、だから「勇魚」はいたずらついでに「解答」を教えるのだ。

 

『フフフ、まるで恋する乙女ですね、サイナさん?』

 

驚愕(ごふっ?!):」

 

いきなりの爆弾発言に驚きむせるサイナ。そんなサイナを「勇魚」は微笑ましく眺めた。

 

『大丈夫ですよ。私もその昔、とある人に恋をしていましたから』

 

だから恥じることはない、と告げる。だがサイナはそれどころではなかった。

 

困惑(な......):恋?当機(ワタシ)契約者(マスター)に......?」

 

そこでふと、サイナは自分が契約者(サンラク)の隣にいる姿を想像する。さらにそこから手をつないだり、抱きしめられたり、......どんどんとエスカレートする妄想に比例するようにサイナの顔が赤くなっていく。『おーい、戻ってきてくださーい』という「勇魚」の言葉がなければとてつもないところにまで妄想が及んでいたであろう。

慌てて思考を戻すサイナ。そして一つ咳ばらいをすると、

 

否定(ノン):そう否定(ノン)です。確かに当機(ワタシ)契約者(マスター)と共に在ることを望みましたがそれはあくまでも支え続けたいという理由であって。ええ、ええ。断じて恋愛感情があるというわけではないのです」

 

即座に否定(逃亡)をし、

 

『じゃあ他の方がサンラク様と恋仲になってもいいんですね?』

 

「......................」

 

『否定しないということはいいんですね!』

 

「反論:別に肯定もしていませんが」

 

即座に否定(現実を直視)させられた。

 

 

『じゃあ想像してみましょうか!目をつむってー、貴方の契約者が他の方と並んで楽しそうにしている姿を想像してみましょう!』

 

しれっと悪質すぎることをさせる「勇魚」。普段は愛想よく接する「勇魚」だが、その本質は結構邪悪なのである。

 

『今どんな気持ちですか?』

 

応答(別に):何とも思っていませんが」

 

『せめて手が震えていなければもう少し説得力があったんですけどねー。じゃあ、本音をどうぞ!!』

 

「......黙秘権を使用します」

 

素直になったほうがいいですよー、と呟く「勇魚」。それを聞き流しこのままでは分が悪いと感じたサイナはエムルとの待ち合わせ(今まで忘れていたこと)を大義名分に「リヴァイアサン」から退出する。

だがその胸の内には、今まで理解ができていなかった感情の正体が強くくすぶっていた。

 

 




サイナが想像した女性一覧
・ペンシルゴン
容姿、カリスマ、そして契約者との関係的に一番の脅威。というかペンシルゴンというより「リリエル=217が契約を結んでいる」やつがつきあう、ということが許せない。
何も関係ないのにとばっちり喰らうニーナちゃん......。
・秋津茜
活発さ、陽気さ、純粋さ、すべてが光っているせいで身内の中で唯一契約者がまともな対応をしている特別な奴、という認識。ペンシルゴンほどではないが十分警戒。
・エムル
自分より先に契約者の相棒になっていたというディスアドバンテージがあるため、侮れない。とはいえ兎だし......とか軽く考えていたら人化するのを思い出して警戒度が一気に跳ね上がった。
・ウィンプ
こいつにだけは負けん。絶対に。
・サイガ-0
装備のせいで想い人を取られるかの心配以前に危険な目に合わないかが心配。
NPCからですら恋敵と思われないヒロインちゃん......。
おまけ
・カッツォ
男らしいけど見た目は完全に女なので一応警戒。そういえばあの方を探している金髪の女性がいましたね。案内したほうがいいでしょうか?(悪意0)
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