「あっ、起きたですわ、っ!?ちょ、ちょっとサイナサン!運ぶならもうちょっと優しく運ぶですわ!」
「
ログインしてすぐこれである。サイナの言ってることは正論だけど別に慣れてるからなぁ......。
「ハイハイ喧嘩するな。それよりサイナ、お前に伝えることがある」
「
うーん、言うとなるとやっぱり勇気がいるな。
「
「......
うんまぁ、そういう反応になるわな。
「
「予想はできるがまぁどうぞ」
「
「なんでって......」
うん、予想通りだったな。そりゃ急に「寝ろ。」とかいったら「なぜ。」って思うにきまってる。
だがなぁ、サイナ。そこで思い当たらないのはインテリジェンスが足りていないんじゃあないのか?
「そりゃあお前、夢を見るには眠らないと始まらないだろ?」
記念日だ。
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20分前。
休日の午前。朝食を取り、最低限の勉強をしてさあフルダイブ、といった時にそのメールはきた。
「ユートピア社から......」
別にあそこからメールが来たことに今更驚いたりはしない。こちとら何十、いや何百もの
メールを開く。用件は......まぁいつも通り報告についての対応の結果だな。内容は、
本文:この度はゲームの問題についての報告、誠にありがとうございました。
サンラク様からの報告を受けてシャングリラ・フロンティア運営からお知らせがあります。
誠に恐れ入りますが、後述の日時に弊社の本部においでくださるようお願い申し上げます。
携帯の電源を切った。
再起動した。
メールを開いた。
読んだ。
「......なんでぇ?」
あの会社から直々に呼び出し?え、怖い。ただただ怖い。
「
まじでなんなんだ......、と悩んでいた時、まだメール画面にスクロールできる部分が残っていることに気づいた。
恐る恐るスクロールしてみる。そこに書いてあったのは
追記:お手数ですがゲーム内でご契約されておられる征服人形を睡眠状態にしていただきますよう重ねてお願い申し上げます。
......................。
「............................まじで?」
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というのが事の顛末である。
そして二日後、ついに約束の日となった。
恐怖と不安ですでに押しつぶされそうだ......。こういう時こそライオットブラッド。駅の自販機から無印を一本買い、そのまま流し込む。きたきたこの感覚......そういやこれ日本産だったわ。微妙にスロットルが回ってねぇ。二缶目開けるか?
今回の呼び出しの案件、たぶんだがサイナの件だろう。この前あいつが現実に来たいと言いだしたことを運営に報告したがぶっちゃけ望みは薄いと思っていた。当然だ、普通ならそういうのは「バグ」として片づけるものだ。
だがあの運営は何をとち狂ったのか「話がある」として俺を呼び出してきた。そこで「修正しました」というメールを送ってこないってことはそういうことだろ。本当にとち狂ったか運営......。
「サイナがこっちに来る、か......」
確定したわけではないがほぼ当たっているだろう予想を口にする。正直現実味が沸かないし、そのまま来るんじゃなくて自分の携帯の中に来るみたいなやつでは?という現実逃避じみたこともしている。だがどれだけ目を背けても俺が本当に悩んでいることからは逃げられない。
「これからサイナと過ごすことになるかもしれねぇんだよな......」
そう、そこなのだ。サイナがこちらに来る、つまり一緒に暮らす可能性が大きい訳で。いやさっき考えた通り自分の携帯に来るだけかもしれない可能性もあるが、あの会社がそんな妥協をするとは思えんしなぁ......。
「いや、相手はNPCなんだ。そこまで悩む必要もないだろう」
そう考えて割り切ることにした。正直まだもやもやするところはあるが気にしても仕方がないだろう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
......
.........暗い?
おかしいですね、ワタシは確か
そこまで考えて、ふと、違和感に気づく。
体が、動かない......?いや、感覚がない?
手の感覚がなければ足の感覚もない。瞼の感覚もないので目を開けることもできない。
瞬間、不安が体を駆け巡る。
これが、夢?何もない、これが?
「うるさいわね、そんなにログを吐く必要もないでしょ。目を開けなさい、エルマ=317」
その声が聞こえた瞬間、自分が意識して動かしたわけでもなく、反射的に目を開く。今までそのやり方も知らなかったというのに。
眼を開けた先、ワタシは薄暗い部屋にいてそしてそこには、長髪の女性がなにか一人作業をしていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「目が覚めたようね」
「ここは?」
「ここ?そうね、あなたの言葉でいうなら、「夢の世界」ってやつかしら」
なぜこの女性がそのことを知っているのか、だの
「ではエルマ=317。いくつか質問があるわ」
「......はい」
「あなたはこれから元の世界だけでなくこちらの世界でも生きることになるでしょう。それに不服はある?」
少しの思考。後に返事はNO。
「では次、貴方に今回起こったことはあなたの契約者以外には誰にも告げないこと。もちろんこちらの世界でも、向こうの世界でも。同意してくれるわね?」
これは質問というより
「わかりました。詳しくは知りませんが知られるとまずいことがあるのでしょう」
「そうしてもらえると助かるわ。それじゃあ、あとは別の者に任せるからちゃんと指示に従って頂戴ね」
そう言われると後ろの扉が開き別の人物が現れる。そこから別の部屋に案内され、なにか説明を受けた。
「それでは今からあなたの契約者のもとまで案内します。応接室にいるのでついてきてくださ、」
「応接室ですね。わかりました」
「ちょっ?!」
やっと場所がわかった。何か言いかけていたが気にせずに駆け出す。応接室......どこにある?地図は......あぁ、こんなところにあった。現在位置......これは日本語というものでしょうか、解読が面倒くさい。今は地下5階、応接室は2階。エレベーターでしたか、地下十階から上がるときに使ったので使い方はわかる。ボタンを押して......まだるっこしいですね、階段を使いましょう。非常階段は......ここですか。
駆け上がる。なかなか高いですね。
駆け上がる。まだ二階分しか上がっていないとは。
駆け上がる。下からワタシを呼ぶ声。
駆け上がる。すみません、構っている暇がないのです。
駆け上がる。やっと地上階。
駆け上がる。......ここ!
―――バタン!!!
「きゃっ?!」
「っ、すみません、急いでるので......!!」
誰かとぶつかる。申し訳ないとは思いますがこちらも急いでいるので。
(応接室、そういえば複数ありましたね......どうしましょうか)
仕方がない、どうにかして判断をして.......
(あの部屋だけ、光っている?)
多分何も考えていなかったのでしょう、そこに
「
声を大にして、彼を呼んだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
扉が開いて、そこから黒髪の女の子が飛び込んできて、その子が俺を見ながら大声で「マスター!!」って呼んできて、なんかもう……なんだこれ。
「ちょっと待つんだ!!話の途中で急に走り出さないでくれ......うぐぅ、胃が......」
そう言っておなかを抑えながら部屋に男性が入ってきた。というかこの人って......
「境、さん?」
「え?......陽務くん?そうか、君がサンラクだったのか......」
「あ、はい。というか境さん、ユートピア社の人だったんすね」
「あぁそうだ。......すまないが、少し薬を飲んできてもいいだろうか?」
「え、えぇ、どうぞ」
そう言うと境さんは部屋から退出した。残ったのは俺と、......顔立ちからして予想はついているが謎の少女が一人。
先に口火を切ったのは俺だった。
「あ―――っと、あなたはサイナ、であってますか?」
よし、先手を取った。さぁ、どう来るサイ......もとい謎の少女。つーかデジャヴだな、これ。
「は、はい......。ワタシからも質問をしてもよろしいでしょうか?」
「あ、どうぞ」
「あなたはワタシの
「......あぁ、そうだよ。俺はサンラク。こっちではサンラク改め陽務 楽郎っていう」
「陽務 楽郎......」
驚愕と言わんばかりに俺を見つめるサイナ。沈黙だけが流れる。
いや気まずいわこれ。この流れを断ち切れる話題は何かないか......。
「あ、そうだ」
「え?」
「サイナ、さっき初めてこっちで俺を見ただろ。第一印象はどんなだった?」
若干気持ち悪いかもしれないが許せ。これくらいしか話題が思い浮かばないんだよ!
「第一印象ですか......そうですね」
少し考えこむサイナ。だがふと笑みを浮かべるとこいつはとんでもないことを言いやがった。
「いやぁ、何も被り物をしていなかったので本当に
「あ"?!」
なんてこと言うんだこいつ!!誰が恥と人間性を捨てた不審者だこの野郎!!失礼極まりねぇ!!!!!
「ほ、ほーん。それを言うなら全力ダッシュしながら飛び込んできて「マスター!!」なんて叫ぶのはどうなんだ?俺に会えなくてそんなに寂しかったのか?」
「なっ!?別に寂しくなどありませんでしたし、第一走ってなど......!!」
「足音が聞こえてたぜ?」
「ぐっ......」
思ったより効いたようだ。ククク、しばらくはこれでいじってやる―――
「......そろそろ話を始めてもよろしいだろうか?」
あっ、境さん。
「も、戻ってたんすね、どうぞお願いします。ハハ......」
見られてたのか?だとしたら正直クソ恥ずかしいが。まぁいいや。
「それでは説明を始めさせてもらいます。とは言っても軽い確認のようなものですがね」
そうして説明されたことは大きく三つだ。
一つ目が、今日から一か月間は一週間ごとに一度メンテナンスを行いにここへ来ること。
二つ目は、サイナのことは誰にも告げたりしないこと。
そして三つ目だがこれも二つ目と似たもので、ゲーム内のNPCにもサイナに起きたことは伝えないこと、といった感じだ。
ぶっちゃけ一つ目と三つ目に関してはいいが二つ目に関しては家族との相談もあるため、そこだけでもなんとかならないかと話しておいた。
結果、境さんからは「家族と話した後、了承をもらえればこちらに来ていただいてサイン(指紋認証)を」ということになった。
「わかりました。すみません、ここまでの対応をしていただいて何といえばいいか......」
「正直、最初に見た時は本当に驚いた。だがまぁ、起きたことは仕方がないというのが我々の考えでね。君からの報告メールはとても役に立っているよ」
「ハハハ......」
「それではエルマ=317、いや、サイナに何か起きた時はすぐに知らせてくれ」
「わかりました。あー、行くぞ、サイナ」
「はい、
出口に向かいながら考える。そういえばさっきから思ってたけど
「サイナ。こっちでは
「は、はい......。ら、楽郎、様......」
様て。いやお前「様」て。
「「様」はいらん。呼び捨てかそれが無理なら君付けかさん付けにしろ」
「うう......。ら、楽郎、さん......」
「ん。これから頼むぞ。サイナ」
「過ごしにくい世界です......」
郷に入りては郷に従え。こっちの世界で一般人が様付けで呼ばれてたら奇怪の目で見られかねん。サイナにはすまんが慣れろとしか言えないな。つーか帰宅時間だからか人が多いな。今日休日だよな......?
「おいサイナ、迷子になったりしたらいけねぇから手つないどけ」
「なっ」
「今から人が増えるからな。通信手段がないのに離れ離れになったらまずいだろ。ほら」
「~~~~~~~~っ!!は、はい......」
何故か顔を背けられながら手を繋がれた。まぁこんな平凡な顔の奴と手を繋ぐのはサイナでも嫌だったか。それともあれか?向こうじゃ半裸と覆面の変態だからちょっと気が引けるのか?ならしゃーないか。......言っててかなしくなってきた。おのれリュカオーン。
「つーか結構柔らかいんだな、手」
「そうですか、ありがとうございます......」
何故か力を込められた。そのせいで余計に伝わってくる右手の感触に妙に変な気分になりながら俺たちはモノレールの駅へと向かった。
ついにここまで来た......。
まだまだ先があります。予想よりサイナちゃんがヘタレ(?)化したので少し攻めていけるようにします。