減った後のラッキーナンバー   作:転亡

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書きたい内容が多すぎて文字数6000オーバー......。アンタばかぁ?(幻聴)
家族にお願いイベントとか釣りイベントとかもユザパって尚これです。文才のない私を許して......。


無意識な悩みと自然な喜びを鍋に詰めて(樹海の動物たちをスパイスに)

サイナが来てから一週間と少しが経った。

が、初日からいろいろと大変だった......。

まず最初に両親にサイナをうちに置かせてくれと全力で頼んだ。それはもう必死に、なんなら土下座までしたぞ俺。ちなみに瑠美に頼んでサイナにはその場から離れてもらっていたのでその姿は見られていない。つーか恥すぎて見られたかねーよ。

次の日はこれから家でしてもらうことをサイナに一通り教え、モノレールの乗り方も教えた。俺がいないときにメンテナンスに行かなきゃいけないときが困るからな。

そこから先は大丈夫だった。最初は戸惑ったりしていたものの、任された仕事ややるべきことをしっかりとこなしてくれた。

正直学校に行っている間はあいつのことが心配で落ち着かなかったが意外と早く馴染めたようで少し安心した。

この頃は瑠美の着せ替え人形と化しているサイナだがなんだかんだ楽しそうにしている。受け入れてもらえたようで俺としては非常に嬉しい。

ここまでこっちの世界でのサイナのことを話してきた俺だが、じゃああいつがあっち(シャンフロ)と縁を切ったのかというとそういうわけではない。あいつもちゃんとログインできるのである。

ちなみに今日は父に連れられて釣りに行くらしい。最初は両親ともに介入する気はなかったのだが陽務家の血の影響だろうか、次の日からは二人とも自分の趣味の世界に引きずり込もうとしてた。もう慣れたとはいえ朝から虫の話はやめてくれよ母さん......。

 

「それじゃあ行ってきまーす」

 

「「いってらっしゃーい」」

 

俺が外出の挨拶をすると両親から返事が返ってくる。これまではこれで終わりだったが今はもう一つ声がある。

 

「いってらっしゃいませ契約―(マス―)......楽郎さ......ん」

 

サイナだ。こいつ、なぜか学校がある日は毎日玄関まで見送りに来るのである。正直大丈夫なのだが本人がしたくてしているようなので止めはしなかった。だが何だろう、少し恥ずかしい。

 

「まだ言い慣れてないのかよ」

 

「すみません......」

 

まぁ急に呼び方変わったら戸惑うもんね、うん。でも契約者(マスター)呼びも「様」呼びも現代日本じゃなかなか異常だからね。召し使いを雇うような家なら違和感はないんだがあいにくとうちはそういう家庭じゃないんだ。

 

「まぁいいよ。行ってきます、サイナ。お前も気をつけろよ」

 

「はい、楽郎さんも気をつけて」

 

そうして家を出る。サイナが釣りに行くのは2度目なのだが前回は散々だったらしい。釣果ではなく状況が、だ。具体的には漁港で珍しがられてたくさんの人に囲まれ混沌(カオス)となり、そこで父がサイナの正体をバラしそうになって危うくユートピア社との約束が破られそうになったり、網からうまく跳ねだして逃げようとした魚を捕まえようとして危うく海に落ちかけた父を必死に支えたりと、まぁ聞いただけでもとんでもない話ばかりだ。ちなみに釣果はアカダイとノドグロが一匹ずつとその他が八匹だったそうだ。俺の初めて(五匹)とは比べ物にもならねぇな!乱数の女神に愛されてるのか?

......ダメだ。朝から乱数の女神とエンカするとか不運すぎる。今日はついてなさそうだ......また乱数関係のこと(ついてなさそうって)考えちまった。あれ?無限乱数の女神?なんてこったい、世界の終わりは今日だったのか......!!

 

「ら、らくろう君!!」

 

「んえ?あぁ、玲さん、おはよう」

 

「は、はい!おはようございます!」

 

馬鹿なことを考えていると玲さんが朝から元気に挨拶をしてくれた。ある廃人曰くどんな時でも常に元気でいることがゲームでも高パフォーマンスを出す秘訣なのだそうだ。流石玲さん、シャンフロに向ける熱意がすごいぜ......!

 

「そ、そういえばこの頃あまりシャンフロにログインしていなかったみたいですけど何かあったんですか?」

 

おっと暗に怒られてないかこれ?流石シャンフロ廃人、シャンフロに向ける熱意がエンジョイ勢とは一味も二味も違うぜ......!

 

「いや、実はリアルで少しあってね......。それに毎日追われてたって感じだよ」

 

「そうなんですか......。もし何か力になれることがありましたら手伝います、よ?」

 

優しいなぁ玲さん。自分はゲームで忙しいだろうに他人にまで手を差し伸べるなんて......。

 

「ありがとう。でもようやく一段落したところだから大丈夫だよ、玲さん」

 

「ふひゃあ」

 

またバグった......。まぁ手を差し伸べてくれるのは嬉しいんだが内容が内容なので最悪玲さんが危険に陥るかもしれない。斎賀家を相手にして勝てる気がしないので予め地雷は避けておくのだ。

 

「あ、ついたね」

 

「え......あ、本当ですね。それではまた」

 

「うん、また」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

そして放課後。

いつもだったらそのまま帰るのだが今日に関してはいつも通り(・・・・・)というわけにはいかなさそうだ。

なにせ、

 

「お疲れ様です契-(マー)、ゴホン、楽郎さん。迎えに来ました」

 

「あぁ、うん......」

 

こいつ(サイナ)が迎えに来たのだから。

いや、別に来ちゃいけないとは言ってないけどさ、一応お前有名人(シャンフロ内)だからな?気ままに外歩いたら危ないからな?

 

「どうしたんだお前、こんなところで」

 

「仙次さ、んから「今日の夕食はみんなで食べるから早く帰ってくるよう言ってくれ」と伝えられたのですぐ来た次第です」

 

「父さんが?」

 

つーかこいつまた「様」って言いそうになったな。まぁいい、見逃してやるか。

 

「―ぇあ......」

 

ん?

 

「ら、楽郎、くん、その方は、いった、い?」

 

あ、やば。

よりによって玲さん(シャンフロプレイヤー)にサイナを見られてしまった。いや、今のサイナは髪を黒く染めて後ろで纏めているうえに眼鏡をかけているのでちょっとやそっとのことではばれないだろうが、サイナの正体がばれていなくても関わりを持たれるといつばれるか分かったものじゃない。ましてや相手は廃人(玲さん)、一挙一動でも油断すればばれかねない。くっ、どうすれば......。

その時だった。

 

「初めまして。ワタシは楽郎さんの親戚の陽務 美依奈(みいな)といいます。よろしくお願いします」

 

そういうとサイナはペコリ、と玲さんに向けて頭を下げた。

いや待て、ちょっと待て。なんだよ「陽務 美依奈」って。そんな設定俺聞いてないんだけど?!

 

「そ、そうなんですね。わ、私は斎賀 玲と申します。恐縮ながら、楽郎さんと友人関係を結ばせてもらっています。む、結ぶ......け、けっこ......?!」

 

うーん、もはや数えるのも億劫となってきたぞ玲さんのバグり集。そしてサイナよ、顔は笑っているのにまとっている雰囲気が熱を帯びているように感じるのはなぜだ?なんというか、宿敵を相手にした主人公みたいな感じなんだが、向こう(シャンフロ)で何かあったか?

 

「それではまた。楽郎、さん。早く行きましょう。仙次さんが待っています」

 

「え、あぁ。それじゃあ玲さん、また明日!」

 

「は、はい!」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「おいコラ」

 

「はい?」

 

「さっきのあれなんだよ、陽務 美依奈って」

 

「317が3()1()7()ならば3()1()7()とも呼べるのでは、と思いまして。漢字も考えてきたんですよ?」

 

そういう問題じゃねぇんだよなぁ......。だがサイナの外での呼び方について悩んでいたのも事実だ。仕方がない、サイナの案を採用しよう。

 

「おい美依奈」

 

「......」

 

―――ぺチン!!

 

「ひょわっ!?いきなり何をするんですか楽郎さん!!」

 

おっ、今回はちゃんといえてる。

 

「今呼んだのに反応しなかったからだよ!!自分で考えた名前なんだからちゃんと自覚しろ!」

 

「むぅ......」

 

返事がなかったので少し強めにデコピンをした。この先が思いやられるなぁ。正直不安でしかないが、まぁ何とかやっていくしかないだろう。

 

「わかりました。でも楽郎さん」

 

「ん?」

 

「誰もいないときは、ちゃんと「サイナ」と呼んでください」

 

「......そりゃまたなぜ?」

 

「呼ばれ慣れているから、というのもありますが、やはりこの名前は私にとって一番大事なものなんです。エルマでもなく317という番号でもない。「ワタシ」という「個」を証明してくれる一番のもの、それが「サイナ」なんです」

 

「......」

 

「名付け親はあなたですよ?契約者(マスター)。ならその名前は大事にしてください」

 

そう言ってサイナは微笑む。ちょっと寂しげに、でもその眼には俺に訴えかけるような光を宿して。

 

「......わーったよ。二人きりの時だけだぞ」

 

「ふふふ、ありがとうございます、楽郎さん」

 

この後は二人で互いの今日について話し合った。学校の先生に対する愚痴。今日釣れた魚について。学校関連で瑠美のテスト勉強に付き合わねばと言えば、自分も手伝いたいが今日の夕食は自分も手伝わなければいけないので無理だという話が出てき、それに驚いて聞き返せば今日のおかずの内、一品だけはサイナが作るという驚きの返答が帰ってきて期待半分、不安半分になったり。他にも会話は続いた。だが楽しい時間というのはすぎるのも早いもので、気づけば家に着いていた。

 

「そういえば楽郎さん」

 

「ん?」

 

「言い忘れていましたが、ワタシのためにここまでしてくださってありがとうございました」

 

どうしたこいつ。急に改まって。

 

「別にいいよ。俺がしたことなんて運営にメールした(お前の親に頼んだ)だけだし」

 

そういってサイナの方を振り向いてみればしっかりと俺を見つめている。そういえばこの頃よくサイナと向き合うことが多くなったな。なんでだろ。

 

「ですが、」

 

「それにさ、俺はお前に世話になってばかりなんだよ、サイナ」

 

黄金のマグマ、”皇金世代(ゴールデンエイジ)”との戦闘、ウィンプのこと、オルケストラ戦、言い出せばきりがない。

 

「その度に俺はお前の世話になった。俺がなしてきたことの大半はお前がいてこそなんだよ」

 

だからありがとうと告げる。いつものお世辞の感謝ではなく本心からの感謝を。

 

「......ふふっ」

 

「なんだよ、」

 

「いえ、意外と律儀なんだな、と」

 

ロマンチック発言の時といい、今回といい、俺は今までどんな目で見られてたんだろうな?

 

「まぁいいや。それよりもう寒いから家に入ろうぜ?お前も料理しなきゃいけないんだし」

 

「そうですね、入りましょうか」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

そして夕食。日曜日以外で夕食を一緒に食べるとか何年ぶりだ?

母さんが料理を運んでくる中でサイナはまだ作業をしていた。とはいえ何かを入れて味見をするを繰り返しているのでもう仕上げの段階なのだろう。

そして三分後。

 

「お待たせしました」

 

「おう、ってこれは......」

 

「わぁ!!」

 

サイナが両手で抱えてきたのは鍋だった。今日は結構冷え込んでいたからとても嬉しいな。具材は何を使ってるんだ?

 

「では、どうぞお召し上がりください」

 

そういってサイナがふたを開ける。それと同時に一気に吹き上げてくる湯気。それが晴れた先にあったのは、

 

「みぞれ鍋か」

 

「はい。永華様から、みぞれ鍋は使う調味料が少ないから鍋料理の中でもお勧めだと教わりましたので」

 

普通は最初の料理に鍋を作ろうとはしないと思うんだが......。だが作ったのだ。ならば食べるしかないだろう。

 

「ほら楽郎。早く食べなさい」

 

「え?なんで?」

 

なぜかサイナが慌てだしたが母さんは意に介さずに続けた。

 

「サイナちゃんがね、最初は楽郎に食べてほしいって言ってたのよ」

 

「..................はい」

 

............。

あー、うん。分かった、たまにはそういうのもいいだろう。

 

「わかった、じゃあお先に食べさせていただきますよ、っと」

 

あ、これ二種類の魚使ってるんだ。結構珍しい鍋なんじゃないのか、これ。

 

「いただきます......」

 

まず最初に一切れ、大根おろしと一緒に食べる。

よくスープを切り身になじませて、大根おろしはあまり多くのせないようにして......口に放り込む。

 

「............」

 

「どう?お兄ちゃん?」

 

「......」

 

瑠美からの質問を流し、咀嚼しながら飲み込む。そして俺は不安げに俺の様子を眺めているサイナの方を向く。

 

「サイナ、」

 

「は、はい」

 

「この鍋、使ってる魚はブリとキンメダイか?......めっちゃ美味い」

 

そう言った瞬間、わかりやすくサイナの顔が明るくなる。

 

「よ、よかった......。まだ沢山あるので遠慮せずに食べてください」

 

「おう。瑠美、お前も食べてみろよ」

 

そう促すと瑠美どころか親まで一気に鍋をつぎはじめた。

そして口に運ぶたびに称賛の言葉がサイナへとんでいく。その言葉を聞くたびにサイナの顔が明るく笑顔になっていく。

今思えばこいつも相当柔らかくなったもんだな。

初対面ではクソムカつくぐらいに悪態だったのに今では細かなことにも感謝をするようになった。表情も硬かったのにこの頃はよく笑うようになった。なんだか微笑ましいな。

つーかこいつしれっと皆と話してるけど食ってねぇじゃん。

 

「おいサイナ。お前も食えよ」

 

「いえ、ワタシは食べなくても大丈夫なので」

 

「そうじゃねぇよ、みんなで食ったほうが美味いに決まってんだろ?」

 

「......わかりました。では楽郎さん、横に失礼します」

 

「ん。ほらよ」

 

サイナの分をつぎ分けて渡す。受け取ったサイナは切り身を一切れつまむと口の中に放り込んだ。つーかずっとスルーしてたけどこいつ箸の扱い上手いな......。

 

「どうだ?」

 

「味はさっき味見したばかりなので変わりませんが......なぜでしょうね、先ほどより美味しく感じます」

 

「だろ?」

 

そしてそのまま食事を続ける。空っぽになった俺のお椀にサイナがまた鍋をついでくれたり、逆に俺がサイナについであげたりというのを繰り返していると、ふと瑠美がこんなことを言い出した。

 

「......なんだか二人とも新婚の夫婦みたい」

 

「「がふぅっ!!??!?!?!??!!」」

 

俺とサイナが同時にむせる。待て、こいつ今なんて言った!?

 

「おまっ、急に何言いだすんだ?!」

 

「そ、そうですよ瑠美様、ワタシたちは断じてそのような関係では......!!!」

 

ほら見ろ、サイナも呼び方が「様」付けになっちまうくらい混乱してるじゃねーか!!

 

「いやでも二人ともどっちかのお椀が空になってたら食べるのも中断してついであげてるじゃん。どう見ても新婚さんだよ」

 

うぐっ......。確かに結構世話を焼いてしまったがまさかそんな風にみられるとは思っていなかった......。

 

「お父さんは別にいいと思うぞ!」

 

「あら、そういうことなら今の内からいろいろ準備したほうがいいかしら?サイナさん、うちの子をよろしくお願いしますね?」

 

「え、あ、その......」

 

「馬鹿なことサイナに言わないでくれる?!あーもう、ごちそうさまでした!!」

 

そう言い放って食器を流しにぶち込んで二階に上がる。サイナと夫婦?何言ってるんだ相手はNPCでしかも種族まで違うんだぞ。夫婦とかそんな......。

 

(髪を一つに束ねながらエプロンをつけて料理をするサイナの姿の回想。なお多少美化。)

 

「~~~~~~~~っ!!!」

 

いやいやいやいやいや。あいつはアンドロイドで自分は人間。種族が違うんだってば......!だが......いや、「だが」じゃねーよ。あーもうちくしょう!!!

 

「ゲームで切り替えよう......ロボが出てこないやつを......」

 

そういって取り出したのは「アニマルファイト・オンライン」。野生の世界に機械なんてものはないからな。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

瑠美さんからの言葉がまだ残っている。

 

”......なんだか二人とも新婚の夫婦みたい”

 

「~~~~~~~~っ!!!」

 

顔を覆ってしまいたかった。まさかあんなことを言われるとは思っていませんでした。契約者(マスター)がフォローしてくれていなかったらもっと酷いことになったかもしれません。

でも、それでも。

夫婦みたい、つまりそれは契約者(マスター)の隣にいても遜色ないと言ってもらえたみたいで。

 

「......ふふっ」

 

そういう風に思うと自然と笑みがこぼれてしまうんです。

もっと頑張ろう。契約者(マスター)のために。認めてもらえるように。




以下、蛇足

其の一
「そういやお前もの食えるの?」
「もちろん。食べたものをエネルギー源としています」
「バイオ燃料って二酸化炭素を排出する気が......」
「それなら人間も同じですね。滅ぼしますか?」
「リアルミナゴロシやめーや」

其の二
「つーかタラって、今回北まで行ったのか?」
「はい。仙次さんが「今日は少し遠出するか!」と仰っていまして。ですがまさかあそこまで遠くに出るとは......」
「よく俺の下校時刻に間に合ったな......」
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