タイヨーアライズ:幻解の女王   作:だぶるすたぁ

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テレビジョン

 簡易的な報告を投げてからクアラルンプールに戻ると、まだ詳細報も投げていないのにもかかわらず本部からの返信が届いていた。

 

「なになに? ビデオ会議? 『全員でのご参加をお願いします』?」

 

 タカサゴが文面を読みながらそう反応している。何だかとてつもなくめんどくさい予感がする。

 

「そのビデオ会議、相手方は誰なの?」

「ゴルフェちゃん」

「ルドルフ!? 『終わった』わね……」

 

 あ、ダメだこれ。オリオンも何かを察しているけれど、間違いなくその通りに面倒くさいやつだ。いくらあれだけ大型とはいえ、たかがクィムガンの発生を1件鎮めただけでわざわざトップが出てくるわけがない。

 非常に嫌な予感を抱えながら、その指定された時間を待つ間に対応の戦略を練る。練ろうとした。

 ……しかし、残念ながら悲しいほどに持っている情報が少ない訳で。

 

「何だったんだろうね、あのクィムガン」

「前にどこかで出たけれど、対応しきれずに逃がしちゃった、とかだったりするのかしら」

「北から南下してきたってことは、ベトナム辺りか?」

「ありそう。あの火炎放射だってベトナムっぽい火炎放射だったし」

 

 結局、俺達が迎撃する前に何かあったのだろうな、そしてそれは恐らく北の南シナ海の方でだろうなという、事前に話をまとめたところでどうにもならない情報だけしか俺達の手札は増えなかった。

 

 ★

 

『突然のご連絡、申し訳ございません。皆様お揃いのようですね』

「本当だよ。コアマちゃん引き取っていきなりこんなの必要なことになるとは思わなかったよ?」

 

 通話がが始まるなり、タカサゴはすぐにそう苦言を呈した。しかしルドルフはそれすらも想定済みといった感じで、落ち着いて返答した。

 

『えぇ。こちらも必要になるとは考えておりませんでした』

「……とは?」

『結論から話しましょう。これはこちらでの推定ではありますが、先ほどのクィムガンは現在()()()()()()()()()()()()ものと考えられます』

 

 俺はその言葉の意味をすぐには理解できなかった。休眠状態とは?

 似たような言葉の感じの概念にはぱっと思いつくもので保留状態と呼ばれるものがある。これは乗り物が解体されてその魂が切り離された時に成ることができずに、その魂だけがその場に漂って残ってしまう状態のことだ。クィムガンはこの保留状態の魂に何らかの作用が働いて発生すると考えられており、つまりはクィムガンの前身とも言える状態である。

 だが、今回のそれは明らかに違うものだろう。

 

 そして、何よりも。

 

「倒せて、ないってこと?」

 

 同じことを考えていたのだろう、俺の内心を代弁するようにタカサゴが呟いた。

 

『端的に言えば、その蓋然性が高いと判断されます。ですので、心苦しいのですがタンゴ14においては引き続き当該クィムガンの監視と警戒にあたっていただきたいと考えています』

 

 そう言ってルドルフは頭を下げた。

 正直、あの炎の相手をもう一度したいかといえば、したくはないという答えになる。まぁそもそもだいたいのクィムガンなんてみんなそんなものではあるが……。

 そんな中で、沈黙を保っていたオリオンが恐る恐る口を開いた。

 

「……ねぇ。ルドルフがそう考えるのには理由があるのよね?」

『一週間ほど前にベトナム南中部のビンディン省沿岸で発生し、対応にあたっていたクィムガン。それと今回そちらから報告していただいたものの特徴が著しく一致しているのですよ』

「ベトナム……あのクィムガンの一報は北から南下していたというものだった。そこも矛盾はないわね。とすると……?」

 

 オリオンはツーッと上から下に向けて空中をなぞるような動きをした。そしてみるみる顔が青くなっていって……。

 

()()()()()()()()

 

 その名を挙げた声は、震えきっていた。そこで何が起こることを考えているのかは言われなくともわかりきっていた。

 

『私としてもそれを危惧していますわ。そしてもう1つ、こちらから共有しておかなくてはならないことがあります。ベトナムでの対応では、当該クィムガンが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()しました』

 

 あぁ、これ自体は確かによく行われる判断だ。さっきのクィムガンで俺達もそうした。

 だがしかし。ここであえてルドルフがそれを言うというのは、それが()()()()()()を意味しているのは明らかだ。

 

「確かに俺達は、海中に沈んでいくクィムガンそのものが鎮まるのを確認はしていなかった」

「沈んだんじゃないよ。()()()()()。それで火も消して」

 

 あのクィムガンは、海の中でなお活動し続けていた。それでベトナムでも逃げて、アナンバスでもまた逃げた。俺達はそれにまんまと引っかかってしまったのだ。

 このままではシンガポール海峡まであのクィムガンの到達を許してしまう。あの海峡が火の海となるのが海上輸送において重大な障害となるのは、どんな素人だってすぐにわかることだ。

 俺達は誰から言うまでもなくお互いの目を合わせたあと、コクリと頷いた。

 

「ゴルフェちゃん。要件は分かったよ。タンゴ14は当該クィムガンの監視(ワッチ)を引き受けます」

『助かりますわ。沿岸各国の当局からの情報によると、南シナ海南部海域は現在進行系でクィムガンの発生頻度が上がってきているようです。ですからこちらからも数週間以内には追加の要員を派遣しますので、それまでの間は……』

「いや、ちゃんと最後までやるよ。あのクィムガン、私の目からしてもちょっと気になるところもあるからね」

『わかりました。タカサゴ、リオ、そしてコアマ。どうかお気をつけて。()()()()()()()()()()()()()()――明確な根拠があるわけではありませんが、そのような感じがしておりますから』

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