タイヨーアライズ:幻解の女王   作:だぶるすたぁ

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メテオバーン

 タカサゴの作戦。それは列の中からリベットをいくつか抜いておいて、そしてその裂け目の近くへと集中して攻撃を加えることにより負荷を集中させ、その列のリベットをすべて破断させて構造破壊を引き起こす、というものだ。極めて近くまで近接していたとしてもかえってそこが死角となり、あまり攻撃を受けることのないこのクィムガンだからこそできる作戦だといえる。

 ……とは、言っても。

 

「で、そのリベットはどうやって抜いたんだ?」

「どうやって、って。強めの酸で周りを溶かして……」

「それは俺達じゃできねぇぞ?」

 

 タカサゴは医療系に明るく、単純な酸や塩基どころか合成の簡単な薬剤ならばその場で作ってしまえる力を持つ。だがそれはタカサゴだからで、俺達にはそんなことはできない。

 しかし、ならば強引に……という訳にもまたいくまい。それはもちろん、リベットというのが外すことを考えずに外れないことだけを考えたものだからだ。簡単に抜けるわけがない。

 

「……そっか。じゃあ酸はダメだね」

「ぜんぶタカサゴがやるって言うならそれでも」

「やだ」

 

 だがここで、またしても想定外の案が飛び込んできた。

 

「リベットを全て外せばいいのだな」

 

 リゼである。クィムガンの火炎放射すらも焼き尽くした彼女がまだ熱を持ちながらも堂々と合流を済ませていた。

 

「……なんとなくわかる気がするけど一応聞くね。どうやって?」

「焼く」

「だろうね、知ってたよ」

 

 案の定、リゼは想像通りの答えを返してきた。そもそもリベットというのは熱した状態で変形させることにより嵌め殺す部品だ。再び熱すれば形を変えることは難しくはない。

 こうなると暑すぎて近づけない事を考えたらもうぜんぶリゼひとりでいいような気さえしてくるのだが、そうも簡単にはいかない理由もある。

 

「なぁリゼ。()()()()()()

「……焼き切るくらいなら問題はないはずだ」

「一応曳く準備はしておくからな」

 

 こう俺が声をかけたのは、リゼのこの技が単に威力や熱量が高いだけではないからだ。

 まず、ものすごく単純な話ではあるのだが、熱というのはエネルギーである。そんな高エネルギーを無から生み出すことができるのなら、今ごろ発電所というものは無用の長物になっているだろう。

 

 簡単に言えば、リゼは長い時間本気を出し続けることができない。並のクィムガン相手ならばどう考えたってオーバーキルなその出力の制御だって、かろうじてオンオフを繰り返してPMWに似たような制御ができる程度。何もなければ無補給で数十日は航続ができるのに、そのすたみなを僅か10分で使い果たしてしまう……それが彼女の技なのだ。

 しかも運が悪いことに、リゼの技は大半が周囲を巻き込む爆熱を伴うので団体行動には不向きだ。かと言ってヴィオのような単独行動ができるかと言えば、技を使いすぎればガス欠で自力航行不能にまでなってしまうのが目に見えている。これではあまりにも非現実的だ。

 

 結果、彼女はほとんど現場に出ることはできなくなっていた。本土で研修担当に回されているというのには、もちろん彼女が面倒見のよさを持ち備えているというプル型の側面も大いにあったのだが、そういったプッシュ型の側面もあるのである。

 

「……まぁ、できるならいっか」

 

 そしてタカサゴは彼女がリベットを抜いたところまで俺達を案内してくれた。見た感じだと、縦に1列のうち連続した5つが既に抜かれている。

 タカサゴがそこを指差すと、リゼは静かに頷いた、

 

「それじゃライズちゃん、頼むよ」

「あぁ。《胸揺らし弾むペン》」

 

 リゼの手の中にあらわれたのは、巨大な万年筆。しかしただの万年筆ではなく、そのペン先からは炎が上がっているのが見える。その炎こそが、この万年筆のインクなのだ。

 そのペン先がクィムガンの外板を撫で、筆跡が燃え上がる。赤赤とした光がまっすぐ、リベットの両側に一本ずつ描かれた。こうなってしまえば、垂直に強い力を当てるだけでリベットは抜けてしまうだろう。

 その、強い力が得られれば、という話もあるのだが、どうやらそこはあまり心配する必要はないようだった。

 

「リオちゃん、よろしく!」

「左が奥でいいのよね?」

「うん、そう」

「なら……行くわよ、《メテオシャワー・ファイナルカノン》!」

 

 リゼが太陽ならば、オリオンは星だった。彼女が左手を振りかざすと、その手の先端から良く絵で描かれるような星がいくつか飛び出して、クィムガンへと吸い込まれるように飛んでゆく。

 ひとつ、ふたつ、みっつ――その星が当たるたび、リゼにより熱せられていたリベットの頭は形を変え、リベット穴へと引っ張り込まれてゆく。それと同時にリベットを通されていたクィムガンの外板もまた、ミシン目加工のされた紙の切り取り線のように、リベット穴の列に沿って一気に亀裂や破断を拡大させてゆく。

 オリオンの出した6つの星が全て当たる頃にはリベットは抜け、ぱっくりとその接合部は穴を開いていた。こうなってしまえばもう後は早かった。その穴は()()()()()()()()()()()()していて、そこからみるみるうちにクィムガンの内部へと海水が流入してゆくのだ。

 

 って……。

 

「……なぁ、いいのか? 沈んだってまた上がってくるんじゃないのか?」

 

 ……おかしいなぁ。そうなってもいいように、と発信機を取り付けたのはそうだが、できればそれを避けたいというのは変わりはないんじゃなかったのか。

 それに対して、タカサゴは少し考え込む素振りを見せた。

 

「うーん。ま、乗り込んじゃえるのが一番だったけど、これでも問題ないよ。こうなると簡単には水の上に上がってこれないだろうし、それにどうすればいいのかがだいぶわかってきたもん」

 

 そうタカサゴが答えると、まもなくそのクィムガンは海の上にいられなくなって、そして水底へと沈んでいったのだった。

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