タイヨーアライズ:幻解の女王   作:だぶるすたぁ

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ライジングフラワア

 横浜市中区海岸通三丁目。税関と県警の並びに、タイヨーアライズの東日本支部はあると、原作ではされていた。

 その通りの場所に向かうと、東日本支部の前にひとり、初めて会うのに知っている顔が待っていた。

 

「……サンヂヱゴさんから話を聞いた時はまさかとは思ったけど、本当に単独で来るとは」

「サンライズ、さん」

「おお、本当に喋っているよ」

 

 太陽の守護、サンライズ。通称リゼ。

 かつてはルドルフの商売敵のひとりで、そして今は彼女の最も親交の深い親友のひとりだ。そして今のルドルフ体制となったタイヨーアライズの重要ポジションにも就いている。

 

「さぁさぁ、中へ。話したいことはたくさんあるんだ」

 

 そんなリゼに連れられ、俺は東日本支部の中へと進んだ。

 リゼがわざわざ出迎えに来る。それだけ俺が1人でここに来ることは重大な事態なのだろう。

 ……まぁ、曲がりなりにもサンヂヱゴのエクスレー41にいたんだから、そりゃそうか。

 

 そう1人で納得しながら歩みを進めていると、リゼは1つの部屋の前にとまり俺を中へと招いた。

 

「さて、事情はサンヂヱゴから聞いているよ。それに、こうやって話をできる事自体がそれを裏付けている」

「……ということは、俺に記憶がないことも?」

「もちろんだとも。だからこそ、貴女を()()()()()についてはじっくり話をして決めてほしいと彼女に頼まれていてね」

 

 そう言ってリゼはニコリと微笑んだ。

 原作でも書かれていた通り、タイヨーアライズのルールでは、当事者のルール違反などがなくチームから抜けた者は直ちに別のチームへと入るか、あるいは本部直下の者として雑務と研修に回ることになっている。

 だからそのどちらかなのだろうと思っていたのだが……。

 

「まず、貴女がどうしたい? 貴女の実績は十分すぎるほどにある。現場になんて出なくとも、それなりのポストを用意することだってできるし、逆に貴女がタイヨーアライズを去ることも止めはしない」

「俺はサンヂヱゴを救いたい」

 

 そう言うと、リゼは驚いたかのように目を見開いた。

 

「そうか、救いたい、ねぇ……。彼女にあれだけの仕打ちを受けた貴女が」

「これはサンヂヱゴにも言われたんだが、彼女がしたことを俺も知らないからこそそう言えるところはあるかもしれない」

 

 具体的にどんなことをしたのかは、最後までサンヂヱゴは教えてくれることはなかった。言うのもはばかられるようなことをしてきたというのは、なんとなく察せられた。だから深追いはしないって決めたんだ。サンヂヱゴが、自ら話してくれるまで。

 

「俺は底抜けの莫迦で、どうしようもないお人好しなのかもしれない。だけど、俺がこうやって話して、考えて動けるようになるまでの間、サンヂヱゴが(コアマ)のことを守ってくれていたというのは事実だ。それがきっと、本来のサンヂヱゴなんだと思う。だから俺を見るときにような冷たい目を、彼女にはもうさせたくないんだ」

「……それが貴女の想いなんだね。まったく難しいことをしようとして」

 

 そしてリゼはクスリと笑った。

 もちろん、ルドルフやリゼ、そしてヴィオ達が何度も呼びかけたうえで、今の現状があるというのは知っている。これがいばらの道なことも。

 だけど。コアマがやらなきゃ、きっとそれはできない。タイヨーアライズに入ってから長年、サンヂヱゴの隣にいたコアマじゃなきゃ。だから俺がやるんだ、

 

「だけどその目。私が初めて貴女に会った時の虚ろな物とは違う、力強い目。本気なんだね」

「当たり前じゃないか。サンヂヱゴは今でこそ俺を遠ざけているが、タイヨーアライズに俺が貢献すれば必ず彼女の耳に入る。そのためには、俺はタイヨーアライズから離れる訳にはいかない」

「貴女の希望はわかった。でも、残念なお知らせが一つある」

 

 そしてリゼから告げられたのは、俺はしばらく現場に出ることができないということだった。今の俺を、現場に出すわけにはいかないのだ、と。

 

「それは、どうして……」

「もちろん貴女の力になりたくないわけじゃない。サンヂヱゴの肩の荷を下ろしてあげたいって思っているのは、私達だって同じだからね」

「ならば」

「だけどね、繰り返しにはなるけれど、タイヨーアライズは今の貴女を今すぐに前線に送り込むわけにはいかない。記憶を失っている貴女を」

 

 ……あ。

 普通に考えたら、そりゃそうだ。ここまであまりにも皆が過去のコアマと俺を同一視するものだからてっきりここでもそうなんじゃないかって思い込んでいたが、俺が知っているタイヨーアライズの中のことは、()()()()()()()()()()()()だけだ。それ以外のことは全く知らない。そもそも目覚めたときですら小舟の上に横たえられていたわけで、どうやって水の上に浮かぶのかすら分かっていない。

 そんな状態の俺を現場に出したらどうなる? 間違いなく大惨事だ。

 

「そりゃ、そうか。よく考えたら俺、どうやって戦うのかもわかってねぇや」

「……え、そこから? それでよくあんな大口を叩けたね?」

 

 やめて。可哀想な目で俺を見るのは。

 ただただ俺は、バンダラナイケ国際空港でサンヂヱゴの話を聞いてからずっと考え続けてて、そういった前提条件がすっぽりと抜け落ちていたことにすら気づかなかっただけなんだ。

 ……自分で言っててもものすっごく莫迦らしいな、これ。

 

「……サンヂヱゴやタカサゴから聞いていたよりも貴女の常態は複雑かもしれないね。だから研修を受けるにしても、事情を聞かせてもらってる私の直接の下で、という形にしようか」

「そうした方がいいなら、そうしよう」

「ならばそうしよう。では改めて、自己紹介をしておこう。私はサンライズ、これからよろしく頼むよ」

 

 そう言うとリゼは立ち上がって、俺の方へと手を差し伸べた。

 

「こっちからも改めて。俺はコアマ、まだかなり自分のことは思い出せていないが、何卒よろしく」

「ああ。1人になりたい時も、2人きりになりたい時も、誰かに会いたい時も。いつだって、私は力になりたいと思っている。だから困った事があれば、すぐに伝えてほしい」

 

 そして俺達は、お互いの掌を握りしめた。

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