ダンジョン・フラグメント   作:トラロック

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英雄の一撃
18 アールヴの矜持


 魔剣を打つ鍛冶師の一族『クロッゾ』は国家級【ファミリア】に吸収されたのちに各地で猛威を振るう事になる。多くは森妖精(エルフ)の里を焼き払う事に使われ、今では多くの森妖精(エルフ)から敵視されることになる。

 世代を重ねていくに魔剣を打てる子孫や後継者が少なくなり、現代においては貴重な存在と化している。

 魔剣自体は上位冒険者になった鍛冶師であれば打てなくは無いがクロッゾ一族の打つ物は別格だと言われる。

 赤髪が特徴のクロッゾ一族の子孫である『ヴェルフ・クロッゾ』は青い髪の狐人(ルナール)に平身低頭で懇願していた。自分を弟子にしてくれ、と。

 

「弟子って言うか兄弟子になってほしいんだ」

「……ええ~。私、女ですけど……」

 

 彼女の名は『アイス・ヴァレンピナ』と言い【氷姫】の『二つ名』を持つ。

 元【セドナ・ファミリア】の団長であったが諸事情により冒険者を引退し、【ゴブニュ・ファミリア】に身を置いて鍛冶師として再出発した。

 両手両足が義手義足になっており、尻尾が二本ある特殊個体でもある。

 数年の修業期間を経てこじんまりとした工房を持つことを許され、包丁や若手冒険者の武具などを制作している。魔剣については勉強中で販売できるほどの物は打てない。

 

「【ヘファイストス・ファミリア】はどうなんですか? ゴブニュ様はとても気難しい方ですよ」

「……そっちは……まあその……」

(断られたのかな?)

「それに私は弟子を取るほど大層な鍛冶師ではありませんよ。徒弟も募集していませんし」

 

 アイスが鍛冶をする最大の理由は自身の特殊技術(スキル)を抑制するためだ。

 平均的な体温より下回る事が多く末端が冷えて壊死するおそれがあり、それが原因で両手両足を失った。

 現在は熱い仕事場のお陰で低体温にならずに済んでいる。

 

「……もしかして私の販売場所を間借りしたいのですか?」

 

 そう言うと図星だったのか、彼は顔を逸らした。

 摩天楼(バベル)には冒険者向けの装備品を販売する店があり、駆け出しの鍛冶師ともなれば用意に店を用意できず、大半は他人の店に商品を置いてもらっている。

 その中で顧客に気に居られれば店を大きくできるし、有名になる事もある。

 ヴェルフは魔剣が打てるが魔剣以外で顧客を得たいと思っていた。クロッゾという名前ではなく実力で知名度を上げたい、と。

 ただ、知名度の低い鍛冶師の商品は店の奥に追いやられ、なかなか客に見つけてもらえないし、制作者を気に入ってくれる者となれば更に少なくなる。

 アイスも一応、店を持っている。定期的に商品を納入したり入れ替えたりするが売り上げは底辺から浮いてきたな、という程度だ。

 規模は五(メドル)ほどのこじんまりとしたもので他人に貸せる部分があるかどうか――

 冒険者用の大きな武具を置くわけではないので、その程度の規模でも充分と言える。

 ちなみに【ゴブニュ・ファミリア】にある調理器具の殆どはアイスの作品となっている。使い心地も神様(ゴブニュ)に認められ、他の【ファミリア】からの依頼も少しずつ増えてきたばかりだ。

 そこに来て弟子にしてくれ、自分の作品を置く場所を貸してくれ、と唐突に言われればアイスとて嫌な顔をする。他の鍛冶師であれば殴っていてもおかしくない暴挙だ。

 頼まれれば断りにくいと思うのは人が良いのかな、とアイスは思った。後で事情を知った神様に怒られるのはヴェルフだろうから、と店に商品を置く事()()は許可した。

 

 
 

 

 仮面を着けた女冒険者キーノ・ファスリス・インベルンは【ミディール・ファミリア】の団員達を前にして下層攻略に勤しんでいた。

 人数は小規模ながら数年の月日を費やして増強してきたお陰か、第二級冒険者が半数以上となった。

 主神であるミディールにとって性急な【ファミリア】のランク上げは困ると言われていた。理由としてはギルドに収める上納金が増えていくのと強制的な依頼を受けさせられるからだ。

 のんびりと過ごしたい神様としてはキーノ一人で潜ってくれと言いたいところだったようだ。

 

「ギルドとしては深層攻略の【ファミリア】を増やしたいのだろうが……。好き好んで危険地帯に行きたい冒険者もまた少ないんだろうな」

 

 目下の目標は二七階層の突破だ。その後で三〇階層まで行ければ一先ず探索を止める事にした。

 冒険者を多く眷族に引き込みながら探索に否定的な【ファミリア】というのは一定数居る。

 世界的にも性急な攻略が望まるのに神様達は随分とのんびりしているな、とキーノ自身も思っていた。

 強者が増えれば争いが増える。ダンジョンより冒険者同士の戦いの方が実のところ多かったりする。それと下層以降の探索での死者も。

 眷族にしたからには長生きしてほしい。その事もあって無闇に死地へと行かせる為のランク上げを控えるのは暗黙の了解に近い。

 現時点で深層攻略に挑む命知らずの【ファミリア】は【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】の二つだけ。後者においては女神フレイヤの気紛れで探索は進まず、実質前者の【ファミリア】だけが五〇階層以降に挑む結果となっていた。

 キーノにとっては神の意向をある程度尊重し、深層攻略ものんびりと様子見がてら進めていた。――彼女一人でも五〇階層に行こうと思えば行けるのだが。

 

「お前達はこんなところで細々(こまごま)とした採掘ばかりで退屈しないのか?」

「……出来る事ならもっと下にある鉱石とか狙いたいですが……」

「俺達の実力ではちょっと……」

 

 周りには実力が上がって偉そうな態度を見せるものの実際には気弱な連中が多い。やはり命は大事だと思っているようで無難な探索が良いと本音では考えていた。

 キーノもそんな彼らの考えを無理に変えようとは思っていなかった。最初は呆れたが仕事は熱心だったので今は愚痴をこぼす程度だ。

 異邦人でもあるキーノは彼らに『位階魔法』を伝授していない。それは彼らが恐れたからだ。背中に【神の恩恵(ファルナ)】を刻まれる事よりも異邦人の(ことわり)を。

 

(小心者の方が長生きすると言うからな)

 

 そんな彼らも二〇階層より少し下に来れるほどには強くなった。

 最初の頃は牛頭人(ミノタウロス)の群に腰が引けていた彼らも随分と(たくま)しくなった。

 キーノが団長になってから団員の死亡率は今のところ零である。

 

 
 

 

 長閑な雰囲気だが【ミディール・ファミリア】には他にも仕事がある。それは二五階層の開拓だ。――現時点ではキーノ一人で(おこな)っている作業だった。

 以前、階層の崩落事件があったが、それとは関係ない。

 モンスターが湧き出るので街を作るのは現実的ではない。であれば何をしているのか、と問われれば出入り口の制作だ。

 階層の一部に自分用の拠点を作る事は昔から(おこな)われていたようで、各階層にその名残が見受けられる。

 通常ならダンジョンに取り込まれそうだが、そうならない地点も存在する。例えば『異端児(ゼノス)』達の住処である『隠れ里』も各地に造られているという。

 安全地帯とは言いにくいが住めなくもない。

 

「ご苦労様」

 

 自身の団員では実力的に心許なかったので【ガネーシャ・ファミリア】に協力を要請していた。勿論、『ナザリック地下大聖殿』の情報を知る数少ない協力者だ。

 団長であるシャクティ・ヴァルマも主神から説明を受けているが、基本的に面倒な事柄に関わらないようにしていた。

 【ガネーシャ・ファミリア】の団員は内部に入る事は無く、ダンジョン側の作業が多い。理由としては中を見るのは秘密を暴く事と同義で要らぬ責任を押し付けられそうで怖い、というもの。――キーノとしては中の様子をいずれは見せたいと思っていたのであまり怖がってほしくなかった。これは依頼主である至高の御方も望んでいる事だ。

 

(……物々しい重厚な門が出来そうだ。落盤の他に爆破による被害も考慮すれば仕方が無いか)

 

 侵入口となる場所は表向きには冒険者の休憩所として制作している。実際に宿泊施設としても使う予定なので嘘にならない。

 それと侵入口は一か所ではないが最初に公開する予定として設定してある。

 ここまで潜れる冒険者達には【ガネーシャ・ファミリア】が何かやっている、という程度にしか思われない。――彼らの服装は半裸が基本でどこの【ファミリア】か一目でわかる。仮面をつけているいかにも怪しい見た目のキーノからすれば知名度のある彼らの協力はとてもありがたかった。

 

「食料の補充を済ませた。ゴミは指定された場所に集めてくれるだけでいい」

「はい」

 

 彼らに手に負えないようなモンスターが現われれば代わりに討伐する。

 それが普段の日常だった。

 ダンジョンに潜る異邦人は十人に満たないが全員が何らかの密命を帯びているというわけではない。

 キーノを除けば自由気ままの方が多い。アンティリーネもその点(自由活動)で言えば同じと言える。

 【ウィツィロポチトリ・ファミリア】の団員の内、オラリオで活動しているのはごく少数。大半が商人として過ごしていた。

 マーレが所属する【ガイア・ファミアリ】は空中の拠点に降り、農産物の回収を除けば冒険者として活動しているのはごく少数――ほんの僅かといってもいい。

 地味で目立たないことが多いがダンジョンに潜ってはいけない、という条件は無い。

 

「平穏だがダンジョンの中なんだよな……」

 

 温かいお茶を飲みながらキーノは黄昏(たそがれ)る。

 千年の月日についてアンティリーネと違って新鮮な毎日だった。元々不死性だった事もあり、長期間過ごすのは比較的慣れていた。

 『インベリア』をこの地に興す事については保留にしている。今は人類の脅威を排除するのが先だ。

 

(……英雄か……)

 

 建設などに忙殺されていてあまり考えなかった。

 異邦人として英雄についてはあまり興味が無く、冒険者としてそんな存在が現われればどんなことが起きるのかな、程度しか考えていない。

 仮面を外し、もう一つの人格に意識を委ねる。今は思うだけで切り替えが出来るようになった。

 

(アリスが言うように敵の気配はない。この次元では、ということなのか。冒険者としての技術が(ことわり)に解消するのか)

 

 額に浮かぶ目の模様から世界を俯瞰する。

 キーノの身体を間借りしている彼女は異邦人の代表者である至高の御方と呼ばれる者達に協力している。

 並行世界を含めて彼女は彼らに安全宣言を出した。それが今、破られようとしているらしい。とても看過できない。

 他の同類の干渉であれば即座に感知できる筈なのだが――

 

(……残滓も無い。なのに……。別種の異常事態ということか)

 

 悠久の時を過ごし、穏やかな日常を送る事を願わなかったわけではない。

 世の喧騒こそ歓迎すべき破壊の(ことわり)――しかし、それはまだまだ先の事だと思っていた。

 彼女達にとって脅威ではないが冒険者にとって危険な事象であることは間違いない。少なくともアンティリーネに危害が加えられた。自分達が守護すると約束した相手なのに。

 

「……【悠久の時告げる未来の歯車】

 

 キーノは告げる。否、人類の敵対者だった彼女が口遊(くちずさ)む。

 世界に(あだ)成すものは許さない。

 

【回れ回れ、幾億の(えにし)【門を開けよ。旅立ちの鳥船が征くぞ】【解析せよ。世の真理を】【絡み、解き(ほぐ)し、(とも)(とも)せ、叡智(ひかり)光輝(とも)せ】

 

 キーノの身体の周りに数十から数百の様々な色合いの魔法陣が浮かび上がった。

 一つ一つが離れていきダンジョンの壁面に張り付いて行ったり空中に留まったり、そのままどこかへ飛んで行ったりした。

 

(少しでも助けになれれば……。それとダメ押ししておくか。……後でモモン殿に叱られそうだな。でも、許してほしい。これも世界の守護者の役目だから)

 

 キーノは詠唱しながら別の魔法を用意する。

 元々、キーノが取得していたものだがお互いの目的が一致したので使用に問題は無い。

 足元に魔法陣が発生し、それが立体的に形を形成しながら宙に浮く。

 位階を超えし、その魔法は何処までも飛躍()ぶ為に在る。

 

惑星間(インタープラネタリー・)転移(テレポーテーション)

(……行った事のある並行世界であればいいのだが)

 

 本来は異邦人の悲願を叶えるのに最適な魔法であるが事は簡単に済まず、それ(原初への帰還)を果たせたのは数千年、あるいはそれ以上の時を要する事となった。

 キーノ、というか彼女の別人格が行使するのは至高の御方の計らいである。それに彼女であれば惑星間どころか並行世界間の行き来をも可能とする。

 八八体居ると言われる『人類にとっての敵』は並行世界を含めての数だ。よってアリスはどの世界でも一人しか存在しえないし、キーノの別人格も同様だ。

 もし、彼らが別の並行世界に飛んだ場合、向こう側の存在もまた別の場所に飛びそうだが、何故か重複しない。そう言う事になっているらしい。

 どうしてそういう事になっているのか、原理は当人達も分からないそうだ。

 

 
 

 

 キーノがダンジョンから姿を消して数日後、アイズ・ヴァレンシュタインはリュー・リオンと二人きりで早朝訓練を(おこな)っていた。

 二人共、【ファミリア】の活動で忙しくなり顔を合わせる事が難しくなってきた。

 今日は外壁の上にある通路で走り込みを行っていた。

 

「貴女と鍛練するのも随分と長いですよね」

「……師匠と特訓するの楽しいから」

 

 アイズは十代未満の時は活発な少女だったが今は言葉少なめの控えめな性格になりつつある。敵と見ればすぐに斬りかかろうとしていた幼い姿がリューの脳裏に今でも思い起こせる。

 森妖精(エルフ)種だから、というわけではないがリューはあまり変化がなかった。見た目にも性格的にも。

 服装もあまり変わらない。――仕事の都合で色々と変えては居るが基本となる服装の方が多いのは事実。

 緑色の外套をまとい口元を覆い隠す。服装は簡素でロングブーツも傷まない限りだいたい同じ。

 アイズは基本となる戦闘衣(バトル・クロス)は同じ造りだ。しかし、リューから見ると少し露出が多いのではないか、と思う。これは女神ロキの趣味でそうなっているので致し方ない。

 今回はお互い裸足になってごつごつとした石畳の上を走った。これは足の裏を強化する為のもので人気の少ない早朝で良く(おこな)っている訓練方法だった。

 お互いロングブーツだったので靴を脱ぐと色白の素足がよく目立つ。

 【アストレア・ファミリア】で最初にこの訓練を聞いた時は顔を真っ赤にして抗議したものだ。だが、女戦士(アマゾネス)の団員が居るのでリューがどうして怒っているのか理解できない、として言い分を退けた。

 

「結局、【アストレア・ファミリア】も深層攻略に追随する事になったようですが……。さすがに五〇階層までは無理だと思います。あ、そうじゃなくて……」

 

 【アストレア・ファミリア】だけであれば難しいところだが【ロキ・ファミリア】と一緒であれば可能性は高くなる。それは間違いない。

 団長である赤髪のアリーゼ・ローヴェルもあまり乗り気ではなかった。彼女が渋るという事は良くない事が起きそうと思っている。アリーゼの直感はバカにならないので他の団員も及び腰だ。

 

「……あとリヴェリアの魔法問題も……」

 

 走り込みが終わった後、(たらい)を用意して魔法で水を出す。魔法道具(マジック・アイテム)でも出せるがその日の気分で変える。

 濡れた脚は魔法で乾燥させる。

 リューは当たり前のように使っているが使えるものはどんどん使え、と団長やライラが言っていたのでそれに(なら)っている。

 本当なら弟子がやるべき仕事なのだろうけれどアイズは位階魔法を習得していない。

 

「……遅かれ早かれリヴェリア様は位階魔法に手を出すと思います。我々はただ無事を祈るのみ」

「私もその魔法、覚える事が出来ますか?」

「おそらく可能でしょうね。貴女の場合は『武技』も教えてもらえるかもしれません」

 

 対価については前もって話していた。

 初回の対価さえ払えば豊富な力が手に入る。だが、リューは今も後悔の念に囚われていた。

 力を欲するあまり自分は大事なものを失ってしまった、と。

 

「私に止める権利はありません。ただ、覚悟してください、としか……」

「分かりました、師匠」

 

 苦笑した後、リューは弟子に靴を履きましょうか、と言った。

 その後、軽く武器による手合わせを(おこな)った。

 

 
 

 

 森妖精(エルフ)にとって魔法は自らの存在意義に等しい、と王族(ハイエルフ)のリヴェリア・リヨス・アールヴは思っていた。

 相談したいのに周りが必死に止めてくるので闇妖精(ダークエルフ)の冒険者マーレ・ベロ・フィオーレとは今まで会えずじまいだった。――依頼を出せば会う事は容易だろうけれど。

 そして、情報を聞いてから数か月は経っただろうか、と経過した月日に思いを馳せる。

 彼女の人生において『位階魔法』はここしばらく知ることのできなかった未知であった。

 

(……よし。ダメもとで行ってくるか)

 

 と決断しても単独での邂逅を許す同族は居ない。

 面会するのに指定があるとは言われなかったので、余計だとは感じつつも【ロキ・ファミリア】に所属する同族――アリシア・フォレストライトとレフィーヤ・ウィリディスの二人を引き連れる事にした。そうでなければ後々小言が延々と続いてしまう。

 もし、位階魔法が存在していなければ自らの魔法をもっと磨く。魔導士にとって命綱である能力を十全に使うための努力を決して惜しまない。

 正直、内容については考えていない。新しい概念が目の前に現れた、というだけ。

 知識欲は他の種族よりも貪欲だと自負している。

 

(五億ヴァリスの対価は安くはないが用意できない程ではない。問題はもう一つの方だが……)

 

 内容が(おぞ)ましいから、という理由で正確な事は聞けずじまいだった。

 口が軽そうなアリーゼ・ローヴェルですら最後まで言わなかった。だが、そんな彼女達は位階魔法を手に入れた。

 自慢するわけでもなく、逆に(さと)してくるほど。

 それでも知りたい欲は日に日に強くなっていった。そして、今日マーレと会う事にした。既に先方との約束は取り付けてある。手続き自体は簡単だった。

 秘密の会話が出来る店をリヴェリアが紹介し、マーレは了承した。普通は彼が内緒話しとして店を指定するものと思っていた。

 

「……リヴェリア様。何があってもお守りします」

「喧嘩をしに行くわけではないからな」

「……でも、相手は正体不明の冒険者です。それも異邦人の同胞……。同胞と見ていいのか疑問に思いますけど」

 

 付き添いの二人に心配されつつ店の中に入り、空いている席に座った。アリシアとレフィーヤは少し離れた場所で待機する。

 早朝だった為か、店内にリヴェリア達以外の人影は無く店員は食器の掃除に専念していた。

 約束の時刻までほんの僅かだったが三人の間には緊張が走っていた。不安な言葉ばかり聞かされたのでリヴェリアとて心中穏やかではない。

 程なくして店に小柄な少女然とした格好のマーレが現われた。

 

 
 

 

 事前情報によれば【ガイア・ファミリア】の団員で団長という地位にはついていないらしい。

 本人の言葉がどこまで正しいのか分からないが間借り、または食客の様な扱いだとか。

 冒険者ギルドには荷物持ち(サポーター)の依頼表を提出する為に来ることが多い。しかも料金は据え置きだとか。――極端な低料金というわけではない。

 【ロキ・ファミリア】も(くだん)のマーレを雇おうとしたが機会に恵まれなかった。早い者がちなので偶々(たまたま)ということもあるし、大手【ファミリア】が強引な手段に出ると印象が悪くなるので団長のフィン・ディムナも無理な勧誘は控えていた。

 今回は多くの森妖精(エルフ)の助力――見張り、または場所取り、とも言う――の結果であった。当然、ギルドとしては迷惑千万な行為だが。

 

「お待たせ、しました」

「……ああ。今日はよろしく頼む」

 

 リヴェリアが席を立って彼を出迎え、席に着かせた。

 高貴な王族(ハイエルフ)が一闇妖精(ダークエルフ)に過ぎない彼を優遇するのはとても不敬に当たる、とアリシア達は内心怒りを覚えたが我慢した。相手は異邦人の森妖精(エルフ)なので迷宮都市(オラリオ)の常識が通じないかも、と。

 お互いが席につき、しばし沈黙が流れる。

 リヴェリアから見れば普通の少女、というか少年にしか見えない。――性別については男性だとはっきり告げているし、格好については普段着、または正装ですと言い張っている。

 男子の格好をしろと御方が命令すればします、とは言っていたらしい。聞いたのはアリーゼ達でリヴェリアはしばし彼の格好に戸惑った。

 

(女装と言ってもれっきとした戦闘衣(バトル・クロス)のようだし。破廉恥さは無いな)

 

 これで女戦士(アマゾネス)の格好で来られたら激高する自信がある。

 何度か呼吸を整えて冷静さを取り戻す。

 

「きょ、今日はどのような依頼……、というか魔法、なんでしょうね」

 

 おどおどした気弱な態度。(つたな)い喋り方。けれども内に秘められた実力は本物だから侮ってはいけないと【アストレア・ファミリア】から聞いていた。

 直接見ても信じられない。

 目の前のマーレが第一級冒険者を凌駕する事が。

 推定難度レベル(ナイン)は決して誇張ではないとか。

 

(【絶死絶命】がレベル(エイト)相当と聞いている。それよりも強いとは到底信じられん)

 

 しかも、これでも自分は弱いと言い張っている。

 強さ談義する為に呼んだわけではないのでさっさと本題に行こうと決めた。

 

(おおよ)その見当はついているかもしれませんが……。言葉で教えた程度では習得できません」

(位階魔法を口にするのだから事前に調べていると見られてもおかしくない)

「……可能であれば習得したい」

「神様の許可は得ていますか? 僕は冒険者個人の自己責任だと思っていたんですけど……」

 

 当然、ロキに無断だ。

 全ての事柄をロキに説明する必要はないが【ステイタス】関係で言えば主神の許可を得るのが筋だろう。

 きっと全力で止めに来ると思うから勝手に来た。後で泣きわめきそうな姿が予想出来る。

 

「一度取得した位階魔法は取り消せません。……き、基本的にデメリットのような? ものは無いんですけど……、不安に(さいな)まれて不眠症になるくらい? でしょうか」

 

 自信を持って言わない分、不穏な説明に聞こえてしまう。

 相手が王族(ハイエルフ)だから怯んでいるわけではなく、彼の元々の喋り方である。――(たま)に流暢になる。

 

(お前の言い方で充分不安になったぞ。……しかし、不利益が無いというのは本当だろうか。……もう少し自信を持って言ってくれればいいのだが)

 

 取り消しの部分も何となく理解できる。これについては問題ないとみていいだろう、と判断した。

 他に気になる点は――対価だ。五億ヴァリスという法外な代金にも驚くが。

 

(らち)があかん。習得に必要な対価とやらを教えろ」

「……た、対価は貴女です」

 

 両手を差し出すようにマーレはにこりと微笑みながら言った。

 少しの間、沈黙が降り、様子を窺っていたアリシア達は口を開けたまま驚愕した。

 少し経ってからリヴェリアはこめかみに青筋を立てつつ握り拳に力を込める。

 

「……なんの、冗談だ」

「【アストレア・ファミリア】から聞いてませんか? 箝口令は敷いていませんので……。対価は貴女……。正確には貴女の肉体です」

「……肉体!? ……私の……」

(……ぐっ、だから、言えなかったのか。……ああ、同胞があれほど私に警告を……していたのはこの事だったのか)

 

 箝口令が無くとも言える筈がない。

 まともな思考を持つ物であれば気軽に言っていい事ではないと理解している。

 普段は明るく何でも喋るアリーゼですら匂わせる事しか出来なかった。その答えがこれか、と。

 

(……待て、では【アストレア・ファミリア】は……。位階魔法と引き換えに……。だが、あいつらは健在だった。何を渡したのだ? 何を? 人体を再生出来るなら……)

 

 少し前に隻腕となった眷族の事を耳にした。しばらく後に五体満足に復活した事も。

 高位の位階魔法による治癒であれば人体再生も可能になるらしいわよ、と明るい口調でアリーゼ達が言っていたような――

 実際に目撃したわけではないし、同胞の噂話の一つとしか認識していなかった。

 急激な悪寒を感じたリヴェリアは普段から持ち歩いている『マグナ・アルヴス』という杖をマーレに突き付けた。

 

(……偽りなく答えても怒られる。僕、ちゃんと仕事、出来てないって事なのかな……)

 

 仕事が出来ると誉められる。というより至高の御方の為に働ける事が一番嬉しい。赤の他人に怒られても何とも思わないが一方的な敵視はいかに温和な性格のマーレとて面白いわけがない。

 森妖精(エルフ)のリュー・リオンに対して容赦が無かったように彼の本質は純粋な信望による行動だ。端から見れば狂信者に見えてしまうが、実際はそうではない。

 

 
 

 

 リヴェリアはすぐに自分が莫迦なことをしていると気づき、武器を下ろした。

 五億ヴァリスに匹敵する対価の謎は解けた。であれば交渉を続けるかやめるか――

 魔法への欲望は強い。しかし、対価を踏み倒しては強盗と大差ない。

 

「すまなかった。少し取り乱した」

「そ、そうですか。少し驚きましたけど、落ち着いたのでしたら、良かったです」

 

 呼吸を整えた後、改めて位階魔法についての交渉を開始する。

 リヴェリアとしては習得の前に知識でも良かったのではないかと思えた。

 習得出来なくとも知る事もまた目的の一つだ。そもそも位階魔法とは何なのか。

 

「位階魔法は四つの系統に分かれています。魔力系、信仰系、精神系、その他系と……。それぞれ身に着けた職業や種族によって覚えられるものが変わってきます」

 

 一般に知られている魔法の多くは攻撃が主体の魔力系と治癒などの信仰系だ。

 精神系はオラリオにおいて分かりやすい例で言えば忍者の『忍術』、陰陽師などの『符術』がそれに当たる。他には念力(サイオニック)がある。

 その他系はいずれにも属さない。特定の種族、職業しか行使できないもの。

 一系統しか覚えられないわけではなく複数の職業を取得すれば魔力系と信仰系の両立も不可能ではない。

 職業は豊富にあるが取得できるものには限界がある。例えばリヴェリアであれば六〇レベル分の職業を取得する事が出来る。――元々取得していた職業に加算されるので実際には低いレベルとなる。

 

「魔法職を取っているようなので充分に位階魔法を取得できるでしょう」

 

 先ほどまで気弱だったマーレが説明を始めた途端に流暢になったので少しだけ驚いた。

 本人は自覚していないが一生懸命に説明している、という認識しかしていない。

 人と話すのが苦手、というわけではなく性格が気弱なだけ。そういう存在としての自我が働いている。

 気弱さについてはマーレも何とかしたいという気持ちを(いだ)いたことがあったが彼の主が個性として大切にしなさい、と言ったので無理に変えようとしなくなった。

 

「では、改めて……。対価と引き換えに魔法を取得なさいますか? ここで見聞きした事に制限は設けておりませんので、あ、安心してください」

 

 リヴェリアは唸り、話し声に聞き耳を立てていたアリシアとレフィーヤも話しが美味すぎると思い疑心暗鬼に陥った。

 聞いているだけだと対価が必要な要素に思い至らない。今すぐ本拠(ホーム)に戻り検討するだけでいいのでは、と思えてしまう。しかし、位階魔法は未知の能力だ。簡単なわけがない。

 

「対価は当人でなければいけませんか?」

 

 リヴェリアを守るためにアリシアが身を乗り出して言った。

 出来れば当人がいいんですけど、と尻すぼみな言い方でマーレは言った。彼個人としては依頼主が一番いい。欲しくもない人材を提示されては困る。

 今のところ冒険者であれば誰でも構わず、至高の御方からも特定の人物を持ってこいとは命令していない。

 

「……依頼人が対価を払うのが、一般的? だと思います。同意が無い方から無理に徴収しようとは思ってません」

「いいから下がれ。お前達を犠牲にしようとは思っていない。それにこれは私の問題だ」

「リヴェリア様……」

「我々が対価を肩代わりすればリヴェリア様に無償で教えていただく事は可能ですか?」

「確かに。対価さえいただければ依頼人に位階魔法を教える事は可能です。それと肩代わりした方もやられ損では困るでしょう。その方の面倒も勿論見ます」

 

 最後に前に出たレフィーヤの問いにもマーレは淡々と答えた。

 通常ならば負担を減らしてくれた事に労いの言葉を掛ける。しかし、対価が尋常ではない為にかえって精神的な傷を負いかねない。

 リヴェリアには冒険者としての目的があり、その為ならば何をも犠牲にする覚悟を持っていた。だが、実際には躊躇する場面があり、今回も足踏みしてしまった。

 

 
 

 

 揉め事になる事は想定内だ。

 マーレとしては結論を急がなくても問題は無い。待つ事も出来るし、断られても仕方が無いと諦められる。

 豊富な魔法を知る彼からすれば対価は大騒ぎする程の事だろうか、と疑問を覚える。

 至高の御方の為ならば命を投げ出す事に何の躊躇いもない。それに――代えの利く肉体でもある。

 リヴェリア達は代えの利かない存在なのかもしれないが、それほど酷い結果にしないと約束する事は出来る。

 

「今日、お決めになる事が困難であれば日を改めても構いません」

「……構わない。位階魔法について教えてもらいたい。対価は私が払う。この者達は関係ない」

「リヴェリア様!」

「……そんな」

 

 アリシア達が驚愕した時、マーレはやっと決まったことに胸を撫で下ろした。ただ、性急な結論は望んでいなかった。なので――もう一度意思確認してみた。

 交渉ごとにおいて即日決論が出るものは後々厄介ごとが現れる傾向にある。今までの経験上も多かった事を思い出す。

 

(……無理に説得すると交渉の意味が無くなっちゃう。相手を怖がらせないように頑張ったけど……、今回はどうなんだろう)

「了承と判断して、いいですか?」

「ああ」

「では……、今すぐ覚えます? それともこの後ご予定とか……ありますか?」

「今回の交渉において予定は済ませてある。心配はいらないが……。どれくらいの時間がかかるのか……」

「覚える事自体は早いんですが……。選択と勉強にかかる時間が多いと思います。こちらは対価に含まれませんので、貴女が満足するまで付き合えますよ。この辺りは【アストレア・ファミリア】の方々と意見交換した方が理解が早まるかもしれません」

「マーレ殿! 私も位階魔法を覚えたいです」

「わ、私も……」

 

 大事な王族(ハイエルフ)が得体の知れない同族の毒牙にかかりそうと思ったアリシアは手を上げて彼に詰め寄り、勢いに飲まれたレフィーヤもつい自分も、と前に出てしまった。

 リヴェリアは思わず額を押さえた。

 一応、止めたが聞き入れてくれなかった。元より自分は彼女達の静止を振り払ってしまったので強く言えない。――それに二人共森妖精(エルフ)だ。遅かれ早かれマーレと接触して位階魔法に手を出すかもしれない。そうなればリヴェリアとてどうすることもできない。

 現場に連れてきた事を早くも後悔したが後の祭りだった。

 

 
 

 

 耳慣れない魔法が聞こえた後に意識が暗転し、気が付けば床が目の前にあった。

 リヴェリア達は交渉の後、マーレに何かされらしいのだが何があったのか思い出せない。

 身体に痛みが無い事から危害は咥えられていない。武具も奪われていない。近くには寝転がるアリシア達の姿があった。

 

(……結局二人もついて来てしまったか)

 

 上体を起こし周りに顔を向ける。

 底冷えのする空間。それが第一印象だった。

 ダンジョンの中ではなく人工物。それもかなり広く天井も高い。

 リヴェリアの知識の中でもこれほどの巨大な建物に覚えは無い。雰囲気はどこか異国の神殿のようだった。

 太い柱が規則正しく並んでおり、豪華な天井飾りからは光りが灯されている。それでも全体的には暗かった。

 一息ついていると何処からともなくメイド達が現われ、椅子とテーブルが持ち込まれた。

 それと空間の最奥に玉座の様なものが置かれていた。――その椅子には誰も座っていなかった。

 

「お目覚めですか、お客様」

「ようこそ『ナザリック地下大聖殿』へ」

 

 見た目は人間(ヒューマン)の女性達は見慣れない給仕服をまとっていた。

 リヴェリアが戸惑っている間にも彼女(メイド)達はせわしなく動き回っていた。

 少しの間惚けていたらアリシア達も気が付いたようで、それぞれ自分達が居る場所に驚いていた。

 

(……この私が昏倒していただと!? やはりあの者(マーレ)は只者ではないのだな)

 

 今更な事実に驚き、冷静になろうと深呼吸を繰り返す。

 位階魔法を知る者は眠らされて謎の施設に運ばれる。――その施設の名が『ナザリック地下大聖殿』というのは初耳だったが。

 アリーゼ達もどこかに連れていかれたとしか言っていない。

 

(窓が無い。地下と言ってからダンジョンの中か? しかし、これほどの規模となると相当深い場所なのか? あるいは全く違う場所……)

 

 短時間で移動させるのであればダンジョンの中だと考えてしまう。

 試しに給仕の一人に尋ねたが先の施設の名前しか言わなかった。

 現在位置が秘匿すべき場所であればおいそれと口にしていいわけがない。給仕達は徹底された教育を施されているとみるべきか、と。

 

「……ついに来てしまった、と言うべきか」

 

 疲れ様な声がリヴェリアの横長の耳に入った。

 声の主を探すと空を飛んでいる者が居るのが見えた。

 その人物には見覚えがあった。仮面を被る冒険者として有名なキーノ・ファスリス・インベルンと記憶している。

 

「……確か【虹瞳姫(リア・ファル)】」

「ん? ……ああ、私の『二つ名』か。久しく呼ばれなかったから後ろに誰か居るのかと思った」

 

 黒い外套を(なび)かせてリヴェリア達の近くに着地する。するとメイド達はキーノに一礼して去って行った。

 現場に冒険者だけになったところでようこそとキーノは彼女達を歓迎する。

 

 
 

 

 ナザリック地下大聖殿は近い未来、オラリオに解放される予定となっていて一部の神々も存在を認知していた。――その中にロキ、ヘスティアは含まれていない。

 建造が開始されてから千年も経つ。存在を記した文献なども存在しないので今もって知らない者の方が圧倒的に多い。

 元々はモンスターを迎撃する拠点だった。だが、過度な干渉を控える上でのんびりと造る事に移行し、今に至る。

 

「ここは未だ建造の途上だ。案内については機会を見て、というところだな」

「……まさか貴様が位階魔法を授ける立場の者か?」

「いいや。しかし、王族(ハイエルフ)があの対価を呑むとはな。激高して拒否すると思っていた」

(……確かに(おぞ)ましい対価は拒否する所だ。事前に不安を仄めかせられたから、とも言える)

 

 キーノに促されて用意された椅子にそれぞれ座った。

 会話が途絶えた後、新たなメイド達が食事を持ってきた。

 所作が丁寧で礼儀正しい。無駄口も叩かない。この手合いはオラリオでも見かけた事が無い。

 

「お前でなければ誰が私達に魔法を教えてくれるというのだ?」

「ここの本来の主だ。今は所用で席を外している。ここに客人は滅多に来ないからな」

 

 位階魔法を授けるのはマーレではない。彼はあくまで案内人に過ぎない。

 少しの間、余裕があるのでキーノが色々と説明を始めた。といっても彼女に言える部分は多くないが。

 説明自体は【アストレア・ファミリア】に(おこな)った事と大差ない。

 儀式的なものを済ませた後は勉強会に挑むだけ。

 

「対価についてはお前達が想像するよりかはあっさりしたものだ。眠っている内に終わる」

「実際に見たわけではないが……。腕を丸々一本再生させられるものなのか?」

「ああ。四肢の欠損は容易く再生できる。相手が死んでいなければ治癒魔法はしっかりと機能する。ただし、相手が同意しないと治りが悪くなる。こちらの魔法は色々と条件が課せられていて真に万能というわけではない」

 

 キーノはマーレよりも淀みなく答えた。たどたどしい気弱な言い方よりも安心できる。

 アリシアも気になった点を尋ねるが殆どの事柄を答えてきた。言えない事が多いのではないかと危惧していたので拍子抜けだ。

 ナザリック地下大聖殿の全容についてはさすがに守秘義務で教えられない、とは言った。

 

「そろそろ儀式を(おこな)うか。安心しろ、ちゃんと内容を教えてやるから、言うとおりにするだけでいい」

 

 キーノは空になっている玉座に向かい、そこに座る。そして、こめかみに指をあてる。

 彼女の背丈は人間(ヒューマン)の子供くらいしかないので足が浮く。

 

(……こちらの準備は終わりました。では、お願いします)

「三人共、私の言うとおりにしろ。姿勢は自由で構わない。立とうが跪こうが、な」

 

 キーノはリヴェリア達に儀式に必要な文言を伝える。

 異邦人の理は現地に住む者にとっては馴染みのないもので理解される事は無い。実際にキーノ自身もどういう原理なのか未だに分かっていない。ただそういう条件で解放されるものしか分からない。

 言い方に差異があろうとも意味が通っていれば構わず、解除方法も同様であった。

 三人は半信半疑のまま玉座に座る彼女(キーノ)の言われるがまま言葉を紡いだ。

 言い終わった後、キーノは仮面越しに何度か頷き、三人に楽にしていいぞ、と言った。

 

「対価については別の者が回収する。これからは魔法や技術の勉強だ。お前達、本拠(ホーム)に戻ってもしばらくは予習復習が続くと思え」

 

 楽しそうに聞こえたのは気のせいではないな、と三人の森妖精(エルフ)は思った。

 その後、メイド達が現われて別室に案内すると告げた。

 リヴェリア達が居る場所には様々な施設が併設されており、買い物もできるし、宿泊する事も可能だとか。

 キーノに言われるがまま行動しているが地下大聖殿の主にはついぞ会う事は叶わなかった。――位階魔法などの習得に関して主に会う必要はそもそも無い。条件を満たすだけなら代役で充分だ。

 その後、気持ち的に長い勉強の時間が始まった。

 




付録:作中に登場した魔法 11

惑星間(インタープラネタリー・)転移(テレポーテーション)

系統:召喚術[瞬間移動]
位階:魔力〈超〉、信仰〈超〉
構成要素:音声
距離:自身、および接触
目標:自身、および接触した物体あるいは接触に同意したクリーチャー
持続時間:瞬間
●備考●
 この魔法は真に有効距離の限界が無い。向かいたい場所を明確に把握できていれば並行世界だろうと跳躍する事が出来る。ただし、漠然とした想像(イメージ)は不可。移動先――術者にとって――に安全な着地点が存在しない場合、魔法は不発に終わる。ちなみにこの魔法で空想(ゲームや創作物)の世界に行く事は出来ない。
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