ダンジョン・フラグメント   作:トラロック

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02 絶死絶命

 トラロックとウィツィロポチトリの双神が作り上げし都市『月の湖(メストリアパン)』と『白鷺(アストラン)』は出来て間もないにもかかわらず多くの異国民で賑わいを見せていた。

 初期のころは『迷宮都市(オラリオ)』を手中に収めようと様々な国が攻めてきたが屈強な冒険者によって追い返されてきた。今は年の一度くらいのペースで戦いを挑まれるに留まる。

 せっかく遠い国からやってきた人々をそのまま返すのは勿体ないと考えた神々は現地民と協力して――異邦人による様々な文化を吸収する下心も加わり――造り上げたのが今の瓢箪(ひょうたん)型の都市だ。

 兵士の多くが平民という事もあり、一定数を受け入れる代わりに地元の文化を落としてもらっている。

 そういう事もあり、実に賑やかな都市として成長を続けていた。

 世界の中心とまで言われるオラリオは意外と排他的で入国審査が厳しい。そもそも大穴たねダンジョンがあり、そこから様々な物資を調達する世界屈指の都市だ。他国が目を付けない理由にはならない。

 代わりに瓢箪型の都市にはダンジョンは無いがオラリオに近く、観光に赴くには丁度いい宿場町ともいえる。勿論、単なる宿泊施設だけではなく、地上に進出したモンスターを討伐する為の【ファミリア】も存在する。

 そもそも神が運営する【ファミリア】はオラリオだけに存在するわけではない。

 神々が天より降臨してから千年も経てば世界中に【ファミリア】が行き渡るのも道理である。

 

「ん~、ちょっと寝すぎたかしら?」

 

 都市の周りに作られた防壁の上で一人の少女が目を覚ました。

 ここしばらくモンスターの襲撃がないか監視していたのだが、いつの間にか眠ってしまったようだ。

 誰も起こしに来ないところから特段の異常は無いと判断する。

 彼女は左右黒と白で別れた髪色をしており、瞳の色も――髪とは反対――黒と白の色違い(オッドアイ)だった。

 【ウィツィロポチトリ・ファミリア】に所属する彼女の名は『アンティリーネ』という。

 本当はもっと長い名前を持っていたが忘れてしまった、と彼女は公言している。

 

(マーレ君に会いたいな~。……なんで会いたいのか分からないけれど)

 

 胡乱な顔で理由を探るも()()()()()()()()思い出せない。

 こういう事になるから覚悟するように、と言われていた彼女は残念に思う。

 意識が覚醒してきたので詰所に戻ることにした。寝坊しても報告は必須なので。

 多少の小言を貰うが異常が無ければ明日頑張ればいい。そんな思いで街に戻る。

 

 
 

 

 アストランの防衛任務――単なる見回り――という退屈な仕事を終えたアンティリーネは定まらない思考を整える為に鍛練場に顔を出す。

 目が覚めた時から自分は強い、という思いがあったものの『最強』とは程遠いとも感じていた。

 かつての自分は自信に満ち溢れていた。それは何となく確信が持てる。そして、それは揺らいだ。

 

(……私は幾度となくマーレ君に負けた。そんな気がする。……それから何があったんだっけ……)

 

 昨日の事もあやふやなアンティリーネは寝ぼけたような顔のまま武器を振るう。

 得物は何だっていい。大抵の武器は扱える。手に持った時から確信出来ているところから戦士(ファイター)の才能があるのではと思わせる。

 我流ではあるものの都市の中では強者の部類に入る。

 

〈疾風走破〉

 

 身体に馴染んだ技名を口にすれば水を得た魚のように疾走する。

 これはいつ身に着いた技なのか。それだけが思い出せない。――あるいは思い出さないように記憶に蓋をしているのか。

 言葉には力が宿る。それゆえに技名は口にしなければならない、気がする。

 魔法も同様に詠唱を必要とする事が多い。

 だから――身体に馴染んだ。この不可思議な現象が。

 

(……でもまだ弱い。……今以上に私は強くなるのかしら? ……それともそうなった方がいいのかしら?)

 

 二度三度と後方宙返りしながらアンティリーネは駆ける。

 何かが欠けている。何となくそれを理解している。

 敗北か。それとも強者との戦いか。

 自問自答しながら無為な戦闘訓練を続けていると褐色肌の獣人が現場に姿を見せる。

 赤い髪に頭頂部に獣耳を持つ女性。種族は狼人(ウェアウルフ)

 

「ご苦労様っす!」

 

 快活な挨拶をするのは所属不明のルプスレギナ・ベータ。

 人を食ったような掴みどころのない存在だが毎回色々んな仕事を斡旋してくれる。面倒見が良いのか、他人の不幸を笑いに来たのか。

 今もってよく分からない存在だ。

 

「今日はどんな仕事を持ってきたのかしら? 三下(野盗の類)の相手は嫌よ、面倒くさいったらありゃしない」

「まあまあ。私も仕事で来ているっすからね。指令を出す人を恨んでくださいっす」

「……本当に恨んでもいいの?」

「……言葉の綾っすよ」

 

 黒い甲冑を身に着けるルプスレギナだが実力的にはアンティリーネより下だ。それは戦闘訓練で毎度勝利しているから分かる。

 誰もが最上の強さを持っているわけではなく、それぞれに役割が与えられ、強者と弱者によって割り振りが成されている。

 ルプスレギナもその一環らしい。――アンティリーネの記憶の中ではそういう風になっている。

 

(……あー。まだ完全に覚醒しきってないっすね。……本調子に戻すにはマーレ様を呼びつけるしか……。あの方も本調子じゃなかったような……)

 

 千年の時は長すぎたっすかね、と僅かに呟きつつアンティリーネにオラリオに向かうよう書かれた指示書を渡した。細かな内容までルプスレギナは把握していない。

 他人を評論する彼女(ルプスレギナ)自身も数年前まで自我が薄かった。

 軽く内容を読み込んだアンティリーネは嘆息しつつルプスレギナに鍛錬に付き合ってと尋ねてみたら速攻で拒否してきた。

 

「連絡役が鍛練に付き合う義理は無いっす。……武器も持ってきてないし……」

「……弱そうにしていてレベル(ファイブ)相当の実力を持っている癖に」

「何の事か分からないっすね。じゃあ」

 

 と、捨て台詞を(のたま)いながらルプスレギナは逃げ出した。

 彼女の姿が消えてからアンティリーネは指令書に目を落とす。

 オラリオのダンジョンに挑め、と簡潔な文章が目立つ。退屈な監視業務に比べれば楽しそうな気配がするが、かの都市にはマーレが居る。

 自分と同じ同胞――正確には半森妖精(ハーフエルフ)の自分を友人と扱ってくれる強者(マーレ)との邂逅は気だる気な表情とは裏腹に頬を赤く染めるほど楽しみに感じていた。

 彼は強い。それは間違いなく言い切れるほどに。

 何しろ――何度も半殺しにしてくれた超越者(オーバーロード)なのだから。気持ち的には妊娠確定ではないか、とおかしな事を口にしそうになる。それほど恋焦がれる相手だ。

 いや、覚醒に近いからこそそう感じるだけで実のところマーレの事はあまり思い出せていない。それが実に――残念であった。

 

 
 

 

 アンティリーネが厄介になっている【ファミリア】の主神であるウィツィロポチトリにオラリオに行くことを伝えると頑張ってこい、と引き留めの言葉も無く言われた。少し疑問に思ったが神という存在は今もってよく分からないので、そういうものかと――

 元々主神は好戦的で初期のころは生贄を要求し、血生臭い儀式を現地民に()いたとかどうとか。

 地上進出した未討伐のモンスターでそういう部分はうやむやになったようだが――

 出掛ける前に背中に刻まれた【神聖文字(ヒエログリフ)】によって神に与えられた『神の恩恵(ファルナ)』を最新のものに変えていく。

 【ステイタス】の更新は所属している神にしか(おこな)えない。

 最初こそ彼女の【ステイタス】の内容に驚いたが更新に至って【経験値(エクセリア)】が殆ど増えていない事に(ウィツィロポチトリ)は疑問を覚えた。

 退屈な仕事ばかり押し付けた弊害か、と。

 

「どうかした?」

「いつもと変わらない【ステイタス】だ。……あまりに変化が無さすぎて紙に写す意味があるのか……」

「じゃあいいわ。……ありがとう」

 

 身支度を整えた後はちょっと買い物に行ってくる、という軽い感じでアンティリーネは本拠(ホーム)から出て行った。

 彼女の知ろ姿を見送った主神は【ステイタス】に思いを馳せる。

 異邦人だからなのか、それとも高すぎるレベルだからなのか。

 何も変化しない、というのは虚しいな、と。

 

 アンティリーネ・●●●・●●●●

 Lv.

 力:D512 耐久:C651 器用:A822 敏捷:C602 魔力:G245

 神器:G 狩人:F 耐異常:G 武技:F 不屈:H

 《魔法》

 重傷治癒(ヘビーリカバー)

 ・信仰系第三位階相当。

 ・治癒の魔法。

 《スキル》

 【異端判決】

 ・対象の消費精神力(マインド)を増加させる。

 【異端断罪】

 ・対象の魔法発動失敗確率を増加させる。

 

 主神権限でレベルなどを封印処置したが()()()()()()数値に恵まれていた。

 魔法もスキルも一つだけではないが――全てを表記するのは躊躇われた。

 それよりもこれほどの【ステイタス】をもってしても自分は弱いと言っていた。ならば、彼女より強いマーレという闇妖精(ダークエルフ)はどれほどの冒険者なのだろうか。

 ここ最近はアンティリーネの事ばかり考えている気がする。根は真面目だし、鍛練も続けている。言う事も聞いてくれる。何が不満なんだろう――

 答えは分かり切っている。

 

 闘争が足りない。

 

 先日の大きな抗争で興奮したのも束の間、終わってしまえば消化不良気味に陥った。確かに苛烈な戦いが(おこな)われたのだが血が足りない。

 あまり過激すぎると闇派閥(イヴィルス)扱いされかねないから大人しくしているけれど。

 せめてアンティリーネに血沸き肉躍る戦いをしてもらいたいと思うのは悪い事だろうか、と軍神や狩猟の神とも呼ばれるウィツィロポチトリは平和になった世を(うれ)う。

 

 
 

 

 近郊と言えど乗合馬車で一日以上の距離がある『迷宮都市(オラリオ)』へ向かう場合、一般人は地上進出したモンスターへの対処の為に冒険者同伴か護衛を雇う。

 アンティリーネは徒歩でも行けたが急ぐ旅路でもなかったので乗合馬車を利用した。

 モンスターは体内に魔石を宿して姿を現す。それが地上に進出し世代を経る毎に魔石は小さくなり、最終的には消える。そうなると元々の強さからかなり弱体化する。

 ダンジョンの中より弱いと言っても人々の脅威なのは変わらない。特に『三大冒険者依頼(クエスト)』の最後の一体である『隻眼の黒竜』は大勢の第一級冒険者をもってしても討伐出来なかった。いわば最強のモンスターだ。

 

(……私一人で倒せるとは思っていないけれど……どうしようかな。……竜王(ドラゴン・ロード)と戦うようなものかな。今回の目的はそういうのじゃないみたいだけど……)

 

 自分が強者であることを認めるとしても(ドラゴン)相手だと気が引ける。

 はっきりしない意識のまま生活しているのも乗り気に慣れない原因だ。

 ある程度、過去の記憶を思い出せる。だが、それが重要なのかそうでないのかの線引きが出来ない。

 マーレについてもそうだし、自分のこの世界に居る事もあやふやなまま。

 

(でも、同意したからここに居るわけだし。……何か大事な目的があったような。……それらを思い出すまでダンジョンに潜って日銭を稼ぐとしましょうか)

 

 ぼ~っとした顔のまま外の景色を見て物思いに耽っていると同乗者の子供がアンティリーネの憂い顔を見つめている事に気付いた。

 獣人を含めて色々な人間が住んでいる世界はどこか故郷を思い出させる。

 ガタゴトと揺れる馬車だが身体能力に優れた彼女にとっては耐えられないものではない。何の支障もなく愛想笑いを見せたりして時間を潰していると歩いてオラリオに向かう旅人の姿に気が付いた。

 世界の中心とも言われ、地下に広大無比なダンジョンを保有するオラリオは多くの人々に希望を与え、英雄が集まる街とも呼ばれている。

 冒険者の強さは世界屈指。それは誇張ではなく、遥か昔からオラリオを手に入れようとして多くの国々が返り討ちに遭ってきた。

 国王の様な存在は居らず、街を統治しているのは実質冒険者ギルドだ。そんな都市に様々な思惑を内包する者達が集まってくる。

 

(彼らも未来の冒険者かしら? それとも混乱を起こす原因? ……私はどっちだろう)

 

 煮え切らない気持ちがあるとはいえ自由に活動できることに不満は無い。

 そう。今の自分は自由だ。神から指令を受けているとはいえ、街から出られないわけではない。

 なのに――嬉しくないのは何故だろう、と自問自答する。

 

 
 

 

 モンスターに襲撃される事も無く野営を挟んで朝方には無事にオラリオの入り口に到着出来た。

 騒動がそんなに頻繁にあっては困るけれど。

 既に多くの人員が行列を作っていた。多くは中で生活する者。冒険者になりたい者。外での依頼をこなしてきた者。行商人など。

 襲撃もあるので入国の審査には屈強な冒険者が当たる。

 アンティリーネは大きな武器を背負っているが、それは冒険者であれば普通の事で特に怪しまれる事は無い。

 

「オラリオに来た目的は?」

 

 前に居た者に聞く質問だが大体は同じもの。文言の差異こそあるが嘘をついているかどうかは神が判断する。彼らの場合は主神ガネーシャがどこかに控えている筈だ。

 何をどう答えるかは当人の自由だし、掴まるかどうかに彼女は興味が無かった。

 悪心を抱かなければ問題なく通される。

 そして、アンティリーネの番が来た。

 

「ご苦労様です。私はダンジョンに挑みに来ました」

「所属【ファミリア】を述べよ」

 

 この問いについて正直に答える。

 神の名によっては闇派閥(イヴィルス)かどうかが分かるし、場合によれば背中を見せろと言われる。

 彼らは隠された【ステイタス】を暴く手段を持ち合わせているので要らぬ抵抗をしない方がいい。

 聞かれた質問に答えるが武器については最後まで尋ねられなかった。結構大きなものなのに披露できなかったのが、少しだけ残念に思った。――愛用の戦鎌(ウォーサイズ)なのに、と。

 喧嘩を売るような挑発をしなかったお陰で無事にオラリオに入る事が出来た。まずは拠点となる宿探しから。

 【ファミリア】の本拠(ホーム)はこの都市には無く、同盟相手の所に厄介になる事も出来るが、それにはまず冒険者ギルドに行く必要がある。

 ダンジョンに潜るのは――基本的に――冒険者だけ。入り口には警護員が目を光らせている。――夜間にこっそり入れるところからダンジョンに侵入する事自体は昔から簡単らしい。

 

(宿ね~。……ここしばらく贅沢もせず質素に暮らしてたから少し高級路線を狙ってみようかしら。でも、お金は大切だから倹約? 私はどちらが()()()のかしら)

 

 無為な生活を続けてきた為に贅沢の仕方が分からなくなったらしい。そんな自分に呆れつつ街中を散策する。

 敵対派閥という存在についてよく分からないので適当な【ファミリア】を襲撃するのも無駄な行為だな、と思いつつ。

 誰彼構わず喧嘩を売る。それもまた一つの生き方ではある。――ただ、それは自分には合っていない気がするのでしない。

 

 
 

 

 一泊二〇〇〇ヴァリスの宿で一夜を明かし、朝靄煙る中央広場に向かった。

 ダンジョンは地下迷宮なので朝から潜ろうが夜だろうが関係ない。例外は一八階層にある安全地帯(セーフティーエリア)くらいか。

 中はうっすらと魔石光で明るく時間の感覚は己の腹具合に任されている。時計というものも無くはない。

 アンティリーネはいきなりダンジョンに挑まず、オラリオの雰囲気を感じながら近くに椅子の座って冒険者達を眺める。

 彼女はオラリオに来るのは今日が初めてではない。何年か前にも試しで来ていた。

 

(……長寿の種族だと人間(ヒューマン)の成長って本当にあっという間に感じるわ。まあ、私は永遠の一七歳だけど)

 

 不老長寿。不死ではないが危険な事を除けば早死にする事は無い。かといって病気にならないわけではない。

 多くの森妖精(エルフ)は故郷を追われたものが多く、本来ならば外界に出てこない。――変わり者を除いて。

 今では冒険者家業に身を(やつ)している始末。

 噂話に耳を傾ければ王族(ハイエルフ)も冒険者として活躍しているとか。

 

(……私には王族(ハイエルフ)の高貴さなんか分からないんだけどね)

 

 以前来た時には聞かなかった情報だ。

 アンティリーネには王族(ハイエルフ)という存在は敬う対象にはなっていないが会ったらどうなるのかは少し楽しみにしている。

 少なくとも冒険者をやるくらいだから弱くはない筈だ、と思いつつ。

 その(くだん)王族(ハイエルフ)はリヴェリア・リヨス・アールヴといい、魔法に特化した冒険者だという。

 

「………」

 

 それっぽい人物が今正にアンティリーネの目の前を横切っているのだが全く気が付かなかった。

 部下と思われる森妖精(エルフ)を数人引き連れながら悠々とダンジョンに向かうその姿を視界に入れているのに。

 現地の森妖精(エルフ)であれば王族(ハイエルフ)を目にしただけで(かしず)くところだ。

 

(……そろそろダンジョンに行こうかな。それとも同行者を雇った方がいいかな。マーレ君も見当たらないし)

 

 荷物を取りに向かおうとすると腹部に何かが当たる。何事かと探れば地面に転がる者が居た。

 身長が子供ほどで大きな荷物が地面に転がるところだった。

 その人物はよく冒険者の後をついていく小人族(パルゥム)に似ていることを思い出す。

 彼らは【ステイタス】に恵まれず、冒険者としては弱い種族だと聞いている。実際、そういう種族に生まれた事を不幸だと決めつけ、路地裏などで人生を諦めたような彼らを()()目にした。

 

「ごめ~ん、大丈夫?」

「は、はい」

 

 薄汚れた服装に夢も希望も無いと言わんばかりの死んだ瞳。

 アンティリーネもよく知る人生を諦めた人種の顔だ。

 ――かつて国の守護者だったアンティリーネは弱き者を守るべく戦いに身を投じた。それしか自分には価値が無いし、そうあるべきならばと好き勝手やってきた。

 

(……私好みの顔ね。……いえ、そうだったのでしょう。人々を救済すると(うそぶ)くロクデナシ共……。(てい)よく利用し、利用される間柄……)

 

 けれども全てを許しましょう、とアンティリーネは頬を緩ませる。

 自由意志が彼女の原動力。

 かといって全てから解放される必要はない。神という鎖が一つくらいあってもいいじゃない、と寛容を見せる。

 

「その大きな背負い袋(バックパック)……。あなた、サポーターかしら?」

「……はい、冒険者様」

「仕事中だったかしら?」

「……いえ、仕事を探しに来ました。これ(荷物持ち)しかリリには出来ないので」

 

 身体に着いた埃を(はた)きながら彼女は立ち上がる。

 アンティリーネの目から見ても彼女は薄汚れている、というよりは日頃から暴力を受けているようだ。顔や腕の痣はモンスターにやられたものではないだろう、と。

 荷物持ち(サポーター)は不遇の職業と言われている。その扱いも冒険者によって様々だが小人族(パルゥム)であったならば納得できる。そして、彼女はその小人族(パルゥム)のようだ。

 

「仲間を募ろうかと思ったけれど、あなたがいいわ。雇ってあげる。……それとももう仕事先が決まってる?」

「い、いえ。雇っていただけるのでしたら嬉しいです」

 

 そう言いながらアンティリーネは幾許かのヴァリス硬貨を彼女に投げ渡した。

 まずは薄汚れた格好をどうにかしろ、と。それとダンジョンに挑むのは明日からでもいいのか、と尋ねた。

 地面に転がる硬貨をみっともなく拾う姿を眺めつつ、けれども卑屈でありながらどこか闘志を燃やしているような雰囲気に懐かしさを覚える。

 これは復讐の炎か、と。

 

(己の不幸さを知りつつ今を生きようとする者は強くなれる。……【ステイタス】的には難しいんだけど、こういう子が冒険者にとって必要なんでしょうね。……私みたいな曖昧な毎日を送っているようなロクデナシより)

 

 念のために種族を聞けば小人族(パルゥム)と答え、名はリリルカ・アーデ。八歳。

 本当に子供だった事に驚きつつ出会った少女に興味を覚えた。――マーレの例もあるので早くから性別は聞いていた。

 

「これからよろしくね。……ところでギルドに行って何か登録とかした方がいいのかしら?」

「それは分かりません」

 

 分からないならギルドで聞くかー、と言いながら二人は歩き出す。

 ついでに人を雇うのに何か書類とか必要かと聞くと口約束です、と答えた。それじゃあ騙される、と思ったがリリルカの姿を見て色々と察した。

 分かっていても弱い種族は搾取されるものだ。反抗する力が無い者の末路はいつだって惨めである。

 いくつか鎖は存在するが基本的には自由行動が認められている。今はそれを楽しまなければ勿体ない。アンティリーネは僅かに嬉しそうな顔になり、冒険者ギルドに向かった。

 




CHARACTER 2
アンティリーネ・●●●・●●●●(未設定)

所属
【ウィツィロポチトリ・ファミリア】
種族
半森妖精(ハーフエルフ)

職業
警備員
到達階層
13階層

装備
戦鎌(ウォーサイズ)
所持金
44444400ヴァリス

ステイタス
Lv.(封印)
D512耐久C651
器用A822敏捷C602
魔力G245神器
狩人耐異常
武技不屈

魔法

位階魔法
・信仰系第三位階相当。

スキル

異端判決
・対象の消費精神力(マインド)を増加させる。

異端断罪
・対象の魔法発動失敗確率を増加させる。

装備

カロンの導き
・攻撃時魔法を発動する事がある。

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