羽織る者、何に成る   作:かのん・まーれ

6 / 8
バーヴァン・シーはかわいい


2日目

「いねえ!」

「もしかしてもう帰った……?」

「早すぎだろ!!」

 

 ドカドカと数名の生徒が教室に入る。グラウンドから余程慌てて来たのか息切れしている者も数名。

 耳郎、切島、上鳴、瀬呂、芦戸の5名がそのまま教室を見渡しているが目当ての人物は見つからない

 

「おや」

 

 それもそのはず。探していたはずの人物は先にグラウンドから姿を消した。が、その本人は何処かへふらりと寄っていたのか誰よりも遅く現れた

 自分達の方が早く辿り着いていたのだから本人がいるわけもない。

 

「そんなに慌ててどうしたんだい?」

 

 そんな事情など知らないオベロンは怪訝な表情を浮かべた。

 

「あー!!なんでお前さっさといなくなるんだよ!」

「聞きてえことこっちは山ほどあるって!」

「ていうか、何でお前の方が教室に帰って来るの遅いんだよ!」

 

 やんや、やんやと騒騒しくなりオベロンの顔がいっそう困惑したものになる。しかし一瞥した後

 なるほどね

 と何かの納得と、溜息をひとつこぼした

 そして

 

「よし、それなら自己紹介だ!

 僕はオベロン!趣味は資格取得、そして君たちも知っての通り実技試験TOPさ!」

 

「」

「……」

「????」

 

 高らかに胸を張り自己紹介をし始めた。周囲はそのテンションの変わりようについていけずフリーズ。

 

「……これで満足かい?」

 

 あんなに堂々と……

 自己紹介始めたのに……

 急に終わって……

 

 オベロンは一仕事終わったとばかりに突然落ち着く。

 そこで二度目のフリーズ、あまりにもマイペースなオベロンにA組生徒達は振り回される

 

「「できるわけねえだろ!!?」」

「……流石に今ので納得する人いないでしょ……」

 

「そうかい?」

 

 反論も無意味、笑ってオベロンは流す

 マイペース、飄々として掴みどころのない、しかし何処か紳士的などオベロンの振る舞いに多様な印象を抱く。

 その中でも特に大きく感じたのは

 

 むかしむかしの 童話 で 見たことがある

 

 という既視感に近いもの。耳郎、芦戸、切島、瀬呂、上鳴が揃ってオベロンという人物に子供が思いを馳せるような物語にいる人物を重ねた。

 

「……さて、僕も隠すことはないからね。聞きたいことがあればなんでも聞いてくれ」

「それなりに……あー、いやほどほどに……

 うーん、少しくらいは答えるよ!」

 

「……話す気あんのかそれ」

「勿論あるとも」

 

 オベロンはどうぞ、と促すように視線を向ける。

 それを察したのか早速皆を代表してか切島が質問を投げかけた

 

「いや、オベロンの走り見てた時みんなで話してたんだけどよ。今まで見たことないくらい不思議な個性だって話になったんだ」

 

「ふむ」

 

「そうそう。他のヤツは理解できる個性だったよな。例えば爆風で加速してるから速いとか、エンジンがついてるから速いとかいただろ?」

 

 爆豪の爆破による加速、飯田のエンジンによる初速

 瀬呂であればテープを伸ばし、自分を引っ張る形で速度を出す。これらは目に見える形で速い理屈が分かる個性だ

 

「ああ、それか」

「でもオベロンは違ったよな。エンジンがついてるわけでも爆発を起こしてるわけでもない」

「あとは空も飛んでたでしょ?なんか飛ぶにしては変だったけど……」

「だからすげえ意味分かんねえ個性だなって」

 

 しかしオベロンは謎に加速し、謎に空を飛んだ。

 視覚的に分かるものではなく、かといって砂糖のように肉体を強化しているような個性ではないと肌に感じさせた。それを見ていた者達はあまりにも理屈が分からない不明な個性に興味と疑問が尽きなかった

 

「たしかに僕は空も飛んでたし、エンジンがついてないけど速かったね。でも君たちは一つ勘違いしてるけど、爆発は起こしてたよ」

 

「この通り、僕は光でモノを作ることができてね。それをその場に合わせた形に作っているのさ」

 

 そして答え合わせ。誰かの喉がゴクリと鳴る

 オベロンが手を差し出すように前へと出す。ふわりと光が手元に集まったと思うと、手のなかに鮮やかな蝶が。

 蝶はパタパタと羽を動かし手元を離れその場を飛び始めた

 

「こんなに、くっきりと」

「なんか神秘的だな、光る蝶って」

「勿論作るだけじゃない」

 

 パチン、と乾いた音が鳴る。その音に合わせて蝶はその場で即座に散った。

 

「蝶が」

「爆発した」

 

 ただ爆発というには優しく、暖かな風が彼らに届く。

 

「勿論、触れることもできる。光ーーと称したけど実際には光じゃない。最も近い表現をするなら魔力だね。ゲームでよくあるアレさ」

 

「自分の魔力を使って、適した魔術を選ぶ。至って単純なモノだ」

 

 ほら、と蝶を再度作り飛ばす。親和性があったのか、触角があったからか蝶は芦戸の肩に止まった。

 本当だ、と芦戸も蝶を指で優しく撫で触れられることを実感する

 

「今回はその蝶と爆発を使ったんだ。理由はあの爆破していた彼と同じと言えば分かりやすいね」

 

 そう、オベロンがやっていたことは爆破による加速

 スタートに立つ前に複数の蝶を作り、トラックの各位置に配置した。あとはその蝶を踏み、蹴り出す瞬間に爆破、それを繰り返す加速を生み出した

 

「あとは自分を強化したぐらいで、他はこのテストにおいてはやっていないよ。これで満足かい?」

 

 それだけではなく自己強化を行うことで3秒台という、速度特化の個性と同じタイムを叩き出していた

 

「強化……?」

「一時的な身体強化、個性強化みたいなものさ。僕以外に与えることもできる」

 

 パッと切島が淡い光に包まれる、突然の出来事に驚いた表情を浮かべるが、オベロンが軽く手を振ったことで切島も納得する。少し腕をぐるぐると回してみると変化に気付いたのか

「なんか身体が軽い!!」

 と感じたらしく、トンと軽く地面から飛んで表現している。

 

「それであのタイム……それだけやること多いと考えたりするの疲れないの?」

「基本的には無意識にできるからね、必要であれば考えるだけさ。だからパフォーマンスには何も影響はないね」

 

「そりゃ、実技TOPになるってもんか。

 ……こんなイケメンで強個性なんて神様は不公平だな」

「ははは、実技TOPはたまたまだよ。僕があの実技に一番適していたというだけだ」

 

 まあ、格好良いのはそうかもしれないね?

 と付け加えてオベロンは笑う。

 周囲もお前な、と少々呆れつつも自然と口角が上がっているようだった

 

「個性の名前って何なのー?パッとこれ!っていうのは思いつかないんだけど」

「……羽もあるしやってることが妖精っぽいから、妖精じゃないかな?」

「確かに妖精っぽいよね!!」

「じゃないかって自分の個性の名前だろ……?」

「ていうか本物なの!?その羽」

「本物さ、飛ぶのは得意ではないけどね」

 

「あ、俺らオベロンの話聞いてばっかで俺らの自己紹介してねえじゃん、悪いな」

「ウチらもお互いの事知らないし、しとこっか」

 

 各々が自分の名前を話していく

 明日からのこと、他の実技試験会場のことを笑って話し合う。

 気づけば時間が経ったことを思い出す。周囲を見れば他の生徒が既に帰って行ったことに慌て、バタバタと帰宅の準備を始めた。

 

「せっかく同じクラスになったんだ。お互い手を貸して頑張ろうじゃないか、よろしく頼むよ、みんな」

 

 そうして1日目の学校生活は無事終了した

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「……どうだった?……クラスメイトとの顔合わせ」

 

 ……オールマイトが心配そうな顔でこちらを見てくる。

 まるで思春期の子を相手にする過保護気味の保護者みたいな、なんかそういった感じの若干気持ち悪さを感じる

 

 いやまあ、年的には思春期だし保護者であるのも間違いではないのだが。そういうのを突然やられると紅茶を吹き出しそうになるからやめてほしい

 

「・・・・・何をそんな、人とコミュニケーション取るのに心配することあるかい?」

 

「ほら君、何でもそつなくこなすけど人と関わるの嫌いだろ?クラスで過ごすの辛くないかなって」

 

 ーーー納得、確かにそうだ。心配する理由も何もかも腑に落ちる。一般的な子供、同年代の青少年みたいな在り方ではないと自覚している。周囲から好かれるような人間の役を演じているだけというのが自分である、明らかに彼と対面している今見せている自分とはちがうもの。

 

 そこから生まれる心労等を心配してるんだろうな、この人は

 

「……居心地は良いんじゃないかな

 今日色んな話をしたけど嘘をつく生徒はいなかったし、みんな真っ直ぐだ。だから大丈夫だろ」

 

「そうか、良かった……相澤君のは許してほしい。彼なりの理由があって嘘をついた」

 

「……そんなこと、分かっていたさ」

「まあ、君は見えてしまうからな」

 

「素質ある者を篩い分ける、嘘をつく必要があったかはさておいて、必要だ」

 

 この素質は単純な力だけの話ではない

 アイツは可能性と意思も素質に含めて見ている

 緑谷出久への見方を見れば分かりやすいものだ

 彼の現時点のパフォーマンスはあまりにも極端だ、破壊力は申し分ないがそれ以外が大体終わっている。ピーキーすぎる。だが、彼は成長の可能性を示した。

 

『まだ、やれます……!!!』

 

 と、すればそれに比べて去年はというやつだ

 おそらく去年のヤツらはお遊び気分だったのだ。いざテストとなった時でもベストをつくすような心構えではなく浮かれて、ふざけて、そうして落とされたのだ。

 ……明らかに1クラス分の人数がいないとこあったからな。まあそういうことだろう

 

「あの人はソレを見抜ける人だ。教師として、ヒーローとして正しいことをしているのだし、許すも何もない。別に気にしてないさ」

 

 くっっそ不快になるから、おそらく都度気にするものだとは思うが、必要な事だと割り切ってしまえ。

 それにどうせ忘れるものだ。

 ああ、そういえばどうでも良かったな、と

 

 

 

「そうかい」

「ああ、そうだとも」

 

 カチ、カチと秒針が刻まれる音が心地よい。

 見てみれば、すでに22時になっている。オールマイトも気づいたのかスッとソファから立ち上がった

 

「そうだ。明日も早いし後始末は私がやっておくからもう寝なさい」

「ははは、オールマイトこそ疲れやすい身体してるんだし、初めての教師職で僕より明日に備えた方が良いんじゃないか?ほら僕がやっておくからさっさと寝たら?」

 

 飲み終えたティーカップやポットを持っていこうとするので手で押さえ、笑顔で牽制する。

 これは僕の仕事だぞ?と

 

 しかしオールマイトも負けじと笑顔で今もカップを引っ張っている

 

「ふふふ」

「ははは」

 

 

 

 

 

 この攻防のせいで結局寝るのは日を跨いだ

 ざけんな

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 2日目

 登校してから僅かな時間しか経っていないが何となく慣れていた。英語とか数学とかの授業自体はまだ振り返りみたいな感じで変わり映えがしない。クラスメイトが変わって、先生も変わって、設備も変わっているのだけど、なんてあうかあまりに普通の光景に慣れを感じていた

 

 

 ちゃん

 

「ーーーちゃん」

「んえ?」

 

「三奈ちゃん?ご飯食べに行こ?」

「え?わあ!もう授業終わってた!?」

 

 あまりにも現状を普通に感じていたのか名前を呼ばれていた。どうやら授業が終わったことにすら気づかないほどボーッとしていたようだ。これと春の陽気と苦手な座学の相乗効果のせいだ。そのせいで私の意識は優しく遠くへと誘われていたんだから。……入学してからまだ数日なのに大丈夫なのだろうか私は。

 

「分かるよー、なんか雄英!!って感じの授業じゃないもんね。いつも通りの授業って感じだからねー」

「ねー、それじゃ食べに行こっか。葉隠!」

 

 

 

 

 お昼は食堂でランチラッシュによる一流のご飯が食べられる。新入生も在学生もワイワイも料理や会話を楽しんでいるようで賑わっていた。

 私たちも楽しみだねーと話しながら各々好きな料理を運んで席へと着いた。

 

「ね、この後の授業のヒーロー基礎学って何だろうね」

「うーん。ヒーローの基礎について学ぶんじゃない……!?」

「確かに……そうかも……!!

 

 ってそのまんま言っただけじゃん」

「あははー」

 

 とゆるーい会話を続けていると

 

「同伴しても良いかい?お嬢さん達」

 

「あ、オベロン」

「いいよー」

 

 オベロンがやってきた。

 トレイにはメロンが乗っていた。

 いや、メロンしか乗っていなかった

 ……メロンだけしか食べないの!!????

 

「いやあ、席がどこも空いてなくてね。知らない人が隣なのは気まずいし、中庭とか外で食べられたら良いんだけど

 

 それにしてもランチラッシュは厳しいね。メロンを持って外で食べて良いか聞いたら駄目!!って言われてしまったよ」

 

 どうやらメロンだけ持って食堂以外で食べて良いか聞いていたようで、まあうん。ダメって言われるよね。

 料理作るのが本職の人にそれはなんか若干喧嘩売ってない?

 あったかいご飯、沢山のラインナップ、そして安い

 そんな学生にとってありがたいことこの上ない提供体制に対して、メロン単品は……なかなか度胸があるというか

 さては……オベロン、ワガママだな?

 

「うーん、メロンだけ食べようとしてるからじゃない?」

 

 ほら、葉隠も同意してる。

 というか

「足りないでしょ絶対!」

 

 オベロンがほっそいの絶対これのせい

 なんか分かる、普段からこんな食生活してるんだって

 

 ……細いし白いのずっるいなぁ!!

 

「うーん、僕は足りるんだけどなぁ」

 

 と笑って気にせずモグモグと食べ始める。

 ほら見たことか先に食べ始めてた私達より食べ終わるの早いもん。あと4口で終わりじゃん

 

「で、ヒーロー基礎学の話してなかった?」

 

「うん、してたけど」

「それだけど、午後は座学じゃないから安心して。君、座学嫌いだろ?」

 

 やったぁと心の中で喜ぶ、座学よりも体を動かす方が好きだし、得意な自分にとっては何よりもありがたいものだ。

 というか分かりやすいのかな、わたし。そんなに活発そうに見える?

 

 あ、頷いてる。見えるのね

 

「さっき廊下でオールマイトに会ってね、適当に喋ってたら口を滑らせて何処かに走っていたのさ」

 

 ーーーあ、身体動かすから楽しみにしておくと良い少年!!!

 

 ……今の無しで!!じゃ!!

 

 

 

 

 

「わーたーしーがー!!」

 

「来っ」

 

「普通にドアから来た!!!」

 

 オベロンの言う通り、オールマイトがやってきた。

 でかいし画風違うし、何よりいつも画面の向こう側のヒーローが自分達の目の前にいる事に夢の様な感覚と確かな迫力がある。

 

「ヒーロー基礎学!」

「ヒーローの素地をつくる為、様々な訓練を行う科目だ!!!!単位数も最も多いぞ」

 

 座学ではないけれど、訓練、ヒーローになる為のものと聞いて自分が本当にヒーロー科に来たんだと実感する

 途端、ゴゴゴの音を立てて壁が動き出す。何事だと見てみれば

 

「入学前に送ってもらった『個性届』と『要望』に沿ってあつらえた」

 

「戦闘服!!!!」

「おおお!!!」

 

 コスチュームだ。あそこに私たちがこれからヒーローになっていく為の相棒とも言えるものが入っている

 どんなものなのか、期待に胸を膨らませる。興奮で私も「おおおー!」って叫んでしまった

 

「着替えたら順次グラウンドβに集まるんだ!!」

「はーい!!!!」

 

「格好から入るってのも大切な事だぜ、少年少女!!」

「自覚するのだ!!今日から自分は……」

 

 ヒーローなんだと!!

 

 その言葉は自然と緊張感を生んだ

 ただ嫌なものじゃなくて、自分の背中を「頑張れ」と押してくれているような。オールマイトからの鼓舞だという感覚で、不思議と笑みを浮かぶ。

確信している、この笑みは自信なんだと

 

 

 

「よし」

 

 ヒーロースーツに身を包む、自分のためにと作られた相棒

 これからヒーローになる為の第一歩を私は堂々と勢いよく飛び出した

 

「頑張ろう!!」

 

「さあ!!始めようか有精卵共!!」

 

 

 

 

 

 

 




上鳴「そういえばオベロン」
オベ「なんだい?」
上鳴「さっきゲームに個性を例えてたけどよ、MPに例えた時MPの最大ってどんぐらいなんだ?」
オベ「うーん、5000000000000ぐらい?」
上鳴「」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。