「もう一回さぁ。お兄ちゃ……アクアが私のブチ切れるような事してくれたら……何やかんやで話せると思うんだよね」
「ちょ、どうしたのさ突然!」
そもそもブチ切れたら冷静に話し合えないのでは? なんてもっとらしいことを考えながら、有馬かなは発言主……ルビーの方へ視線を向けた。
それは、過密なスケジュールを詰め込みまくった後に時々ある、ポカッと空いた時間。とある夜の出来事だった。
そこで久々にB小町の面子が揃っていたので、雑に動画を撮ろうか。なんて話になったのである。
他愛のない話。奇妙なチャレンジ。お料理。勿論撮影の細部にMEMちょの絶妙な技が効いているから、内容が多少薄味でも視れる動画になっていることだろう。ルビーもいるから、再生数は問題ないはず。
「(……そろそろ帰って、台本読みしたいなぁ)」
そんなことを思い始めていた矢先に――。さっきの発言が飛び出したのだ。
「……え、何かおかしいこと言った?」
「考えれば考えるほど、なんで!? ってなるやつだよぅ!」
リラックスモードに入って事務所のソファーにてルビーとMEMちょはぐで~ん。としていた。ほっといたら大昔のマスコットみたいに、タレていきそうな勢いだった。
でも、嫌なだらけ方ではない。心地よい疲労感が程よく伝わってくる、走り続けてる奴らが出せる特有の空気。それが今の二人にはあった。
『ここ数日ね! ルビーが前よりも明るい? 柔らかくなった? とにかくね! 可愛いの!』
と、嬉しそうにMEMちょが話していた。何かがいい方向に向かっている。そんな予感がする……らしい。知らんけど。
「まぁ、ご存知さ。私はお兄ちゃ……アクアに……」
「そこまで言ったならお兄ちゃんって呼んであげてよぅ!」
「は? 嫌だよ。私はまだアクアを家族と再認識してないから。ちょっと血が繋がってて、たまたま同じとこに生まれて、何か十七年暮らしてただけだから」
「アクたんェ……」
「(いや、それ家族じゃん。って言うのは、野暮なんでしょうね)」
その結果がこれである。いい傾向……ではあるのだろうか。アクアに完全な無視を決め込んでいた時に比べたら雲泥の差だけども。
あの時は……自分も原因に入り込んでいたが故に、どう話せばいいかわからなくなったのを覚えている。
「とにかくね。アクアが許せないの。最近ちゃんと訳があったりだとか、何だかんだで私が守られまくってたのは分かった。……それはそれとして、一部余計なお世話もあったけど」
「最後ぉ……」
「(何か思春期の娘と、父親みたいな距離感になったわねコイツら……)」
いつしか見えるようになったルビーの瞳の星は、最近黒い凶星と白い一番星がコロコロと明滅するようになった。理由は分からないし、パフォーマンスが落ちているわけでもない。
ただ、かなから見て、どうにも彼女は惑っているように感じた。あるいは、末恐ろしいことだが、ルビーがこれから進化する前触れか。
……いや、これ以上凄くなってどうすんのよって話だが。
「話したいって気持ちはあるの。かといって簡単に割り切れないから……いっそもう、めちゃくちゃに私が怒るか、何かもう流れでこう……ね?」
「いや、ね? じゃないわよ。力技が過ぎるでしょうが」
「で、でも私は嬉しいよ! 最近ルビーとアクたんギクシャクしてたし、これを機にまた話せるようになるなら……!」
ギクシャクなんてレベルじゃなかった気もするが、まぁそれは言わぬが花だと、かなは口を閉ざす。口も性格も悪いという自覚はあるのだ。これで空気まで読めなかったら流石に終わっている。
それに……。苦しげなアクアの顔と、以前以上に闇を濃く身に纏っていたルビーを思い出す。様々な原因があったのだろう。それでも。
「(……まぁ、責任は感じてたし。正直謝る以上になんかしてあげたかったのは事実だし?)」
そんな訳で、かなは台本読みの予定を放り出し、ルビーやMEMちょとは対面にあるソファーへ座りなおす。
すると、不思議そうな顔でこっちを見てくる二人と目が合った。
「……なによ」
「先輩、今日はさっさと帰らないんだなぁって」
「帰って欲しいなら帰るわよ? ……ちょっとした、贖罪よ」
「……先輩は煮てもアクか重曹しか出なそう」
「食材じゃないわよこのおバカ! あー! やっぱ帰ろうかしら! 帰っちゃおうかなぁ! 私も知恵しぼろうと思ったのになぁー!」
「まぁまぁまぁ! ルビーのジョークだよ! ただ……最近すぐ帰っちゃって寂しかったから、嬉しいよぉ……!」
わたわたと大袈裟なリアクションでかなとルビーの間を取り持つMEMちょ。そんな様式美めいたやり取りが自然に出てきていることが、少しだけかなは可笑しかった。
「(何だかんだで、長いのよね。一緒に活動して。だからこうして、100%とまではいかないけど、本音で自然なやり取りが出来ている。悪態だってつき合えて……)」
「まぁ、おに……アクアの話題だからね。先輩なら食いつきたくなるよねぇ」
「ルビー!?」
「アンタはホンッットに遠慮がないわねぇ!」
うがーっ! と、かなが怒りを顕にすると、ルビーはケラケラと“一番星を瞳に宿しながら”笑っていた。毒気を抜かれるようなその魅力的な笑みに、かなはおろかMEMちょまで釘付けになる。
「冗談だよ。ありがとね先輩。…………ん? どうしたの? 二人とも?」
「い、いやぁ、なんというか……ねぇ?」
「……変わったわね、アンタ。良い意味で」
困ったような。照れたように頬を掻くMEMちょの珍しい表情を楽しみながら、かなは温かい気持ちになりながら静かに頷く。
遺伝子は恐ろしい。アイは映像でしか見たことがないが、最近のルビーは元々の華やかさに磨きがかかり、どんどん美人になっていく。暗い雰囲気や見え隠れしていた計算すらスパイスにして、より人を惹き付ける存在になっていた。
それが今はどうだろう? ビジュアルの良さはそのままに……より眩しい輝きを魅せるようにもなってきたように思う。
何かの覚悟や決意? いいや、違う。寧ろこれは……。
かなが長い芸能生活において何度か見てきた、壁を打ち破った。あるいは抱えていた問題の昇華を果たした役者の姿によく似ていた。
どのみち、何らかのいいきっかけがあったのだろう。
それが、今のかなには、少しだけ嬉しかった。
「そんな変わった〜? あっ、美人になった!」
「うん、気の所為ね。思い過ごしだったわ〜」
「酷い〜! 先輩たまには褒めてよ〜!」
「黙らっしゃい。それより本題よ。何だったかしら? アクアを? 怒らせる?」
うんうん。と、後方腕組みお姉ちゃん面しているMEMちょには手近なクッションを投げつけつつ、かなは当初の目的を引き出していく。
「いや、お兄ちゃん怒らせてどうするの? 私ならねじ伏せるけど」
「話し合いは!?」
「ああ、逆だったわね。ルビーを怒らせる……大丈夫? あーくん、立ち直れなくならない?」
「先輩、二人きりの時なら好きにしていいけど、私の前であーくん呼びは止めてくれる?」
「な、なんかごめん」
テンポのいい掛け合いを楽しんでいたら、急に凶星が瞬いて、かなは反射的に謝罪する。何やかんやでブラコンなのは変わらないらしい。心臓に悪いなこの子。なんて思いながら、かなは話を続けていく。
「で、そうアクア。アクアよ。アンタが怒ったら……余計に縮こまるか、アイツが怒りを受け入れて話が拗れそうじゃない?」
「確かに……私が怒るってことは、お兄ちゃんを完膚なきまでに叩きのめしてるってことだし……」
「だから話し合いはぁ!?」
グッジョブMEMちょ。ぶっちゃけアンタが突っ込んでくれるから話が早いわ。なんてことを内心で呟きながらも、かなはどうすべきか思案する。
何かないか? 絶妙に二人の仲が拗れずに、多少は笑い話に出来る身内厄ネタ……。
いやいや、そんな都合のいいもの……。
「(あっ……)」
そこで浮かんだのは、学校で見かけた桃色の少女だった。あの衝撃なスキャンダル。即ち――
『若手俳優、星野アクア。現役同級生グラドルをママに! お部屋にて朝まで激熱特殊プレイ!』
いや、ダメだろ! 仲直りどころか絶縁になるわ!
因みに有馬かなは知る由もないが、そのグラドルとルビーは友人である。
そもそも、ルビーが可能性を感じさせる輝きを放つようになった切っ掛けに、そのグラドルが一枚噛んでいたりもするのだが……またしても、有馬かなは何も知らなかった。
「うん。ここはさー、やっぱりアクたんを怒らせる……って方が、うまく行きそうじゃない?」
「えー、でも私、返り討ちにしちゃうよー?」
「そこは話が進まないから堪えてよぅ!」
「(ナイス! ナイスMEMちょ! マジで愛してるわ! ごめん、嘘。ちょっと盛った。やっぱ愛してるはあーくんにだけ)」
畜生なことを考えつつも、かなもまたMEMちょの意見に賛成ではあった。さっきも自分が言ったようにルビーが怒れば、アクアは間違いなく引き下がる。
ならばいっそ、絶妙な塩梅でアクアを呆れまじりに苛立たせれば……。ルビーと昔みたいに話せるかもしれない。ルビーも変な意地やモヤモヤを取り払い、腹を割って話せるかも。
すると、二人の視線が自分に集中しているのに気がついた。
「えっ、何?」
「いや、だって……」
「アクたんを怒らせる方法なら、かなちゃんが一番わかるかなぁって」
「はっ倒すぞお前ら!」
そんなに怒らせたりしてな……あれ? してない? してないよね?
「お兄ちゃん昔、先輩がママをバカにしたから殺そうとしてたよ?」
「初耳なんだけど!?」
「あっ、違った。殺しはしない。ちょっとわからせるだけ……あれ? 生まれてきたことを後悔させる……だっけ? よく覚えてないや」
「その節は悪かったけども! てか、妹なら兄に怒られる経験いくらでもあるでしょうが!」
「ないもん! お兄ちゃん優しいから、呆れながらも最後は助けてくれたし……」
「クソッ、あんのシスコンめぇ……!」
「(……アクたんもアクたんだけど、ルビーもブラコンの極みだなぁ。言わないけど)」
結局アクアを怒らせる方針だけが決まり、三人は何を持って怒らせるかという方向にシフトする。
白熱する議論。飛び交う解釈違いや他色々。そして……。
新生B小町の三人は、ついに一つの結論に至った。それは……。
※
「という訳で! B小町ちゃんねる! 突撃! 君の部屋! かなちゃんの部屋はやったけど……ルビーのお家は初かな?」
「要望はあったけどねぇ……なんか恥ずかしくてNG出してたんだ〜。でも今回はOKだよ! 何せ見せるのはお兄ちゃんの部屋だからね」
「いや、ルビーのじゃないんか〜い!」
「因みに今外出してるみたいだから許可は後で取りま〜す」
「………………いや、待ちなさいよバカ二人。カメラ止めろ」
勿論本当に止めはしない。そういうノリだからだ。
最終的に三人が至った結論は、動画撮影だった。
当然、生配信等はしないし、万が一ヤバいのが映ればお蔵入りにする。そんなユルイ感じで、かつ絶妙にアクアが嫌がりそうで、でも許してくれそう。そんなギリギリのラインを見極めた結果がコレだった。
「(普通の兄妹だったら、ガチの殴り合いが始まりそうなネタだけど……まぁ、この二人なら大丈夫か)」
あと、個人的にも興味はあるし。と、かなは自分の利益を優先した。色々と捻くれてはいるが、彼女もまた恋する乙女だった。
そうこうしているうちに三人はアクアの部屋の前に立つ。
溜めの間ということで、やんややんやと騒ぐ素振りは見せるが、その時が近づくにつれてかなは心臓がバクバクと高鳴っているのが分かった。
気になっている男の部屋だ。緊張しない訳があろうか。
「よぉ〜し! じゃあ行くよ〜。アクたんのお部屋まで……3.2.1――、突撃ぃ!」
「ごめんね〜お兄ちゃん! 許して!」
「全国のお兄ちゃん達。妹は大事にしなさい。こんな動画撮られる前にね!」
MEMちょが一気にドアを開け放ち、三人は部屋になだれ込む。そこには……。
「えっと……」
「普通……ね。てか、物少なっ!」
MEMちょが思わず顔をひきつらせ、かなはぐるりと中を一望し、率直な感想を述べる。
ベッドに本棚。机にクローゼット。目につくのは本当にそれだけ。生きるために最低限なものだけが置かれたシンプルな内装。
物をあまり持たない主義だったとしても、もうちょっと何かあるだろうと言いたくなる程に、そこには何も無かった。
「(……何だろう。……変に不安を煽るというか。胸が、締め付けられる?)」
目の当たりにした想い人の部屋をもう一度、まじまじと観察して、かなが得た感情がそれだった。
心理学の本に、部屋か本棚を見れば、その人物の人となりや精神状態などをある程度ではあるが推測できる。なんてことが載せられていたのを思い出す。
部屋には必ず、その主特有の感情やこだわり。色やらしさが現れる……筈なのだ。
「(なのにこの部屋は何も無い。本棚も……見覚えがあるのばかり。これ、全部アイツが出演したドラマの原作ね。仕事で必要だから買ったって感じ)」
ポスターでも、小物でも、お気に入りの書籍でもいい。役者としてのアクアではない。アクア個人の感情を垣間見ることが出来そうなものが……この部屋には何一つ見当たらないのだ。
「(何だろ……見ちゃいけないものを、見ちゃった感じ)」
……これは、コメントに困るという意味でも、これからの展開を考えるにしても、動画としては失敗だろうか。
チラリとMEMちょを盗み見ると、案の定彼女も困ったように笑っていた。
「ルビー、これは何と言うか……駄目ね。隙がない奴だとは思ってたけど、ここまで……とは……」
これは撤収かしら? なんて思いながら、かなはルビーの方に向き直り……驚愕する。
ルビーが何処か遠くを見るようにして、寂しそうに力無く笑っていたからだ。
「ルビー?」
「ちょ、どうしたの〜?」
二人が恐る恐る話しかけると、ルビーは頭を振り、すぐにいつもの笑顔を作る。そこには少しの悲しみと、後悔のようなものがにじみ出ていた。
「私はやっぱり……何も知らなかったんだなぁって。……だって見てよ、この部屋。“何かがあったら、すぐに引き払えそう”な……。それこそ、しばらく誰も使わないで放置していたら、アクアが……お兄ちゃんがいたことを皆が忘れちゃいそう」
それって……何? どういうこと?
かなは訳がわからなかった。その口ぶりでは、まるでアイツが消えようとしていたみたいではないか。
かなの不安げな顔を見たからだろうか。ルビーは慌てたように、両手をパタパタ振った。
「あっ、今はもう大丈夫だよ。多分! いや、間違い……なく。…………そうに、決まってるもん」
だが、すぐに何故か落ち込んだようにしょぼんとする。その様は兄の部屋にショックを受けたというよりは、何だか自分自身を責めているように感じられた。
結局何があったのかは分からない。けれども……それが二人にとって重要なものを巡る争いだったのは間違い無さそうだった。
「二人とも、巻き込んでごめんね。やっぱり私……お兄ちゃんと、一回じっくり話してみる」
無言かつ迅速に、かなとMEMちょは視線を交わす。
「(今は何も聞かない。でも顛末は聞く。拗れたら相談に乗る……で、いいわね)」
「(OK! かなちゃん! それでいこ〜う)」
阿吽の呼吸が如くのアイコンタクトで瞬時に状況整理した二人は、うんと小さく頷いた。
かな個人は、こんなにも他人に関わる気はさらさら無かったのだが……そんな非合理な決意に何処か納得している自分がいるのに気がついた。多分どっかのお人好しの気質が感染ったに違いない。
「まぁ、あれよ。ビンタする時は私も呼びなさい。なんならグーでやるのも可よ」
「動画はお蔵入りにするけどぉ。さっきのルビーちゃんはアクたんに見せたいかもねぇ。絶対大ダメージはいるよぉ……!」
これが気休めになったかはわからないが、少なくともルビーは朗らかに笑っていた。
それに一先ずは安堵する。
「よぉし! 何かしっとりしちゃったし、動画はここまでにしよう! せっかくだから、三人で美味しいもの食べに行こうよぉ〜」
「あっ、賛成! MEMちょ〜私、お肉食べたいなぁ〜。お兄ちゃんよりいいとこの!」
「コイツゥ〜! ちゃっかりしてんなぁ、甘え上手め! いいよいいよぉ! 思う存分食えやぁ! かなちゃんもいくよね?」
「…………………まぁ、今日くらいは付き合ってあげるわ」
いいご飯と、一応気になる奴の部屋。それに自己満足な贖罪。台本読みと天秤にかけて……まぁ、トントンだろうか。
部屋を出る前に、アクアの部屋を再び見る。……自分のブロマイドなり、タペストリーなり渡してやろうか。なんて柄にもないことを考えかけた時……。かなはそれに気づいた。
「ん? ベッドの上、雑誌あるじゃない。整頓しているアイツが珍しいわね」
何の気なしの一言だった。だがそれで、部屋の入口に向かいかけていた二人は戻ってくる。
戻って来てしまった。
「え〜雑誌? お兄ちゃん、事務所の資料室でとかならともかく、自分では買わないし、読まないと思うけど」
「まぁ、確かに、そういった類は見当たらなかったもんね? おっ、ミドジャンだ〜しかも今週号! いや~ゴールデンステイが激熱でねぇ〜」
MEMちょがヒョイッとその雑誌を拾い上げる。伏せられていた表紙があらわになり、そこには……。
「………この子」
「…………えっ?」
図らずも同時に、かなとルビーは声を上げていた。
そこにグラビアとして掲載されていたのは、白いビキニタイプの水着に身を包んだ、見覚えがありすぎる少女の姿だった。
桃色の髪。シミ一つない白い肌。目を引く抜群のスタイル。
「(淫乱ピンク巨乳同級生ママドル……!)」
とんでもない悪口ネームを脳内で呟きながらも、かなはその雑誌がここにある意味を考える。答えは一つしかなかった。
「(成る程、彼女の仕事はちゃんとチェックしてると。……ハッ、不思議な男の優越が見えるわね。この水着の下を俺は見たことがあるぜ。好き放題したぜ……的な?)」
仮にも想いを寄せる相手への妄想がこれである。
もっとも、かなの機嫌が急落するのも無理はない。初めて出てきたアクアらしい(?)要素が、まさかの現在自分が辛酸を舐めさせられている、グラドルだったのだから。
とは言っても、彼女はすぐに自分のテンションなどどうでも良くなることになった。何故なら……。
「……………先輩。ちょっといいですか?」
「ん? 何よ。今まさに私は虫の居所が……ヒエッ!」
双眸に黒い凶星を宿した堕天使が、すぐ傍で自分の肩を掴んでいたのだから。
というか、ルビーだった。
「私は……びっくりするのはわかるんです。グラビアの子、友達なんで」
「……えっ? えっ?」
アイツ……ママプレイを現役同級生グラドルとやったばかりか……それ妹の友達だったのー!?
完璧な役満じゃねぇかぁ! と、有馬かなは叫びたかった。
「でも、面識ない筈の先輩がびっくりするのは、おかしいよね? 先輩が反応するとしたら、お兄ちゃん絡みだよね? 私、一応色々知ってはいるけど……みなみがまだ何か隠してる気がしてならないんだぁ……」
ちなみに、みなみが隠したのはアクアが悪夢に魘された……という部分だけである。寝ぼけて布団に入ったのは聞いているが……それもちょっとだけムムッとしたのはルビーだけの秘密である。
「ねぇ、先輩。……すっごく忌々しげにみなみの写真見てたよね? ……何を知ってるの?」
この時、かなは静かに十字をきった。これは無理だ。逃げられない。誤魔化してもすぐバレそうだし。
……ワリィ。あーくん。私の無事のために死んで(社会的に)
尚、MEMちょはすっかり現実逃避して、震えながらミドジャンを読み耽っていたという。
ちなみに時系列上、このエピソードの裏にて、あーくんは同級生グラドルとベッドで激しく抱きしめ合いながらマーキングしあったり、体温交換してます(言い方)。酷い男だね