寿みなみは、上機嫌だった。
最高に怠惰な二度寝を経て、気になる人――。星野アクアの腕の中で素敵な朝を迎え。
そのまま少しだけ彼の暖かなぬくもりや香り。綺麗で血管がセクシーな手や、たくましい身体を堪能し。
変装ながら、丁寧に結ったおさげを褒めてもらい、そのままブランチを取り、街へ出かけた。
元より計画もしていなかった、行き当たりばったりなお忍びデートは、適当に二人でぶらついて、検索にヒットした良さげな場所を回る。という色気も何もないものだったが、みなみは充分なくらい幸せだった。
何よりも。ブランチやデート中。そして自宅まで送ってもらえた時、アクアの口から次を意識した言葉が出てきた時の喜びときたら――!
「(お兄さん、お兄さん…………アクア、さん)」
枕を胸に抱き、ベッドに身を横たえながら、みなみはそっと大好きな名前を呼ぶ。それだけで胸がキュウキュウ締め付けられるような切なさに苛まれる。
別れ際に、願いごとをした。それを受け入れてくれたのが嬉しかった。同時に離れがたくもあり……。
あの時の自分は、きっと物欲しそうな表情をしていたに違いない。それを感じ取ったのか、お兄さんもその場から動きづらそうで……少し悪いことをしたかな。なんて思う。
ただ、もう少しだけ一緒にいたかったのだ。贅沢な望みだが、もう一度抱きしめて欲しかった。
「…………重症やわぁ」
そこまで考えて、みなみは苦笑いする。流石に寝るため以外にハグなんて出来ないだろう。あくまで自分たちは友人で――。……友人、なのだろうか? 一緒に寝るのに?
アカン、訳分からなくなってきた。友人とは?
頭がまたバグり始めてエセ哲学を始めそうになった所で、スマートフォンが鳴動する。
トークアプリのラインによる、無料通話らしかった。ディスプレイに表示されている名前は『星野アクア』つい数時間前に連絡先を交換した相手だった。
「――って、お兄さん!?」
思わずベッドから跳ね起きながら、無意味と分かってはいても髪を整えてから通話ボタンを押す。
『……寿』
「お兄、さん? どうしたの?」
明らかに憔悴しきった声が聞こえてくる。その瞬間に浮ついた気持ちは消し飛んだ。何かがあったのだろうか? もしやルビーと話して……やはり最初だから、駄目だったのだろうか?
『寿、頼む。嫌だったら断ってくれていい。本当に』
「えっと……うん、ええですよ? どないしましたか?」
妙な既視感を覚えつつ、みなみはアクアの話に耳を傾ける。ただ、何故か今回は言動の端々に、断ってくれ! 頼む! という声が聞こえてくる気がするのは、思い過ごしだろうか?
『あっ、みなみ〜! ヤッホー!』
『おい、割り込んでくるな』
『いいじゃん、どうせ私も話すんだしさ〜』
すると不意に受話器の向こうから底抜けに明るい声がした。友人であるルビーの声だった。
気安い二人のやりとり。それを聞いたみなみは、心がジワリと暖かくなるのを感じた。
ああ……よかった。仲直り出来たんやね! やったやんお兄さん!
少しだけ涙ぐみそうになる。これでまた一つ、幸せに対するハードルが下がって……。
『あのね〜みなみ、今からラインのグループ招待するからさぁ〜、通話できる時間あったりするかな?』
「グループ通話?」
『うん、ちょっとお兄ちゃん尋問したいから、証人になって欲しいの』
「……じんもん?」
ハードルが、下がって?
『ほら、お兄ちゃん先日と、“昨日も”だよね? みなみのお家にお泊まりしたじゃん?』
『――おい、待て』
『泊まったでしょ? 先日も。昨日も。そんなに身体からみなみのいい匂いさせておいて、嘘つくの?』
『…………泊まりました』
『うん。でね、先日はみなみから大体の事情は聞いたけど……ちょ〜っと気になることあってさ』
「気になる、こと?」
『みなみ……まだ何か隠してるでしょ?』
「……う」
思わずくぐもった声が出てしまう。確かに大体のことは話した。けど……二つだけ。
アクアが悪夢に魘されていたこと。不眠に苦しんでいたことは……言えていなかった。みなみが寝ぼけてアクアの寝るソファーに潜り込んだ。そういう話にしていたのだ。
でもそれは……。
『寿、俺個人のことに関するものなら、大丈夫だ。恥なんざもうない』
「お兄さん……」
迷うみなみの何かを察したのか、アクアが助け舟を出してくる。
『ただ、その……あったことを話すってのは、寿にも関わることだから。それが嫌なら、俺が死力を尽くしてルビーを止め……』
「あ、うん。迷ってたのはお兄さんに関することやから、お兄さんが大丈夫なら、ウチは構いませんよ」
『……と、止めるぞ? ほら、何と言うか……無理しなくても……』
「でもお兄さん、せっかくルビーと話せるようになったんやし、その切っ掛けになれたんやったら、ウチも嬉しいし」
『そ、そうか。…………そうかぁ』
とても残念そうな声色に思わず笑みが溢れる。
あと、個人的にルビーに尋問されてタジタジになるアクアを見たいという気持ちもあった。抱きしめられた。抱きしめたはもうルビーに話しているし、なんならフリルに唆されたあの言葉だって言った。今更恥ずかしがることなんてないのである。
『ん、ありがとね。みなみ。じゃあ、昨日のことだとか、諸々かかってる疑惑について、“他の人”も交えて深掘りしちゃうよ〜! 今夜は楽しくて長い夜になりそうだね!』
『…………は?』
「…………へ?」
ただし、恥ずかしくないとは、この三人の中で完結する場合ならの話である。
聞き捨てならない一言にみなみはおろか、恐らく今知ったらしいアクアもその場で凍りついた。
「ル、ルビー? 他の人って?」
『えっとね〜先輩……あ、B小町の有馬かなにMEMちょは確定ね。今回の尋問する切っ掛けになった二人だから。あと声掛けたのは一応関係があるフリルちゃんに…………面白そうだから、あかねちゃんかな』
『……ルビー、待て。落ち着け。冷静になれ。おバカキャラは番組上だけで大丈夫なんだよ。いや普段もちょっとバカだが』
『……ミヤコさんも呼ぶ?』
『おいバカやめろ。そうじゃない。あかねはなんだ。面白いからで売れっ子女優に迷惑かけるんじゃねぇ』
『でも、仲直り報告と一緒にお兄ちゃんの女性関係について深掘りする。ってラインしたら、今すぐ時間作るねって秒で返信来たよ?』
『あかねェ……』
スマホの向こう側で、アクアが今までにないくらい動揺していた。かくいうみなみもまた、顔を引きつらせつつ……ルビーにしてはかなり大胆というか、大規模なことをしていることにほんの少しだけ違和感を覚えた。
何だろうか。何か他に思惑が……。
「(あっ、もしかして――)」
前に泊まりに来ていた時に話していたことを思い出す。その時の考えがまだあるならば、確かにいい機会なの……かもしれない。けれど。
「ル、ルビー、その流石に他の人……しかもほとんど話したことない人達ばかりなのは……ちょっと恥ずかしい、やん?」
『そ、そうだ。そうだな。寿が気まずいに決まってるだろ。俺はどんな目にあってもいいが、寿は駄目だ』
『お兄ちゃんなんなの。みなみ絶対護るマンなの?』
『この場においてはそうなる覚悟だ』
『ふ〜ん? ほほ〜う?』
……これでちょっとだけドキドキする自分も自分やな。と、みなみは肩をすくめる。一方のルビーは何だか声色が楽しそうなのが意外だった。複雑な気持ちになるのでは? と思ったが杞憂だったらしい。
『じゃあ、ちょっと渋ってるご両人に、とっておきの情報を流すね。実は二人に、ある疑惑がかけられていましてね〜』
説明を聞いた二人は、数秒と待たずにOKした。冤罪とは恐ろしいものである。
斯くして、星野家にてグループ通話形式の『深掘れ☆ワンチャン!!(身内限定出張版)』が始まることに相成ったのである。
※
星野アクアは木べらを手に、ボウルにチャーハンの材料を叩き込んでいた。
ご飯。卵、ウェイパー、マヨネーズを混ぜ合わせ、オイスターソースも少々加える。具材はルビーが切り刻……用意してくれていたので、後は手なりでやるだけだ。
熱したフライパンにラードをひき、そのままチャーシュー、舞茸、ネギとピーマンを投入。手早く火を通したら混ぜておいたボウルの中身も投下する。
細かくフライパンを振るいつつ、木べらで切るように食材を炒めていると
『おお〜、アクたんやるぅ〜』なんて野次めいたMEMちょのどよめきがルビーのスマホから飛んでくる。
……変な尋問は夕食の後では駄目だったのだろうか?
現状はラインのグループビデオ通話にて、述べ6人の大所帯がこの場に擬似的に集結していた。
星野アクア、ルビー、寿みなみ、有馬かな、MEMちょ、黒川あかね。唯一不知火フリルだけが不参加だ。『仕事なの……』と、血涙を流さんばかりの凄まじい声で辞退していた。
終わってまだこっちでやってたら、絶対参加する。と意気込んでいたが……ぜひ仕事を頑張って欲しい。何せ国民的美少女マルチタレントなのだ。テレビに出ててくれ。頼むからこっち来んな。アクアは切実にそう願っていた。
そもそも、どうしてこの段階でメンツが集められた上に、自分がチャーハンを作る様を見られなければいけないのか。中華鍋のような見栄えがする器具で華麗に作る訳でもないのに。
『ちょっと、ピーマンは主張強すぎるとか言ってたじゃない! 何使ってるのよ裏切り者!』
「意味わからんこと言うな。チャーハンに彩り的な意味で使えば、少量ならアリだ」
「まぁ、ぶっちゃけ冷蔵庫で中途半端に余ってたから、使っちゃいたかったんだよね〜。彩り枠でネギと被る上に、いつもより多めになっちゃった」
有馬かながアホな事を言い出していたが、これは軽く流す。色々と思うところはあるが、後ろでルビーがウキウキしているから問題ないと思うことにした。基本的に優先されるべきは晴れて仲直り出来たルビーなのだ。
まぁ、これからそのルビーに酷い目にあわされるのは確定しているのだが……自業自得と諦めることにしていた。
それはそれとして、どんな羞恥プレイだと思わなくもないけれど。
『アクアくんは、ボウルで混ぜてからやるタイプなんだね。豪快だぁ……』
「……なぁ、あかね。忙しいんだろ? 大丈夫なのか?」
『え? どうして? …………アクアくんは、私にいて欲しくないの? 顔も見たくない?』
「いや、そうじゃなくて。言ったらアレだが、こんな馬鹿みたいなことに付き合う必要は……」
『うん、でも色々と聞くってルビーちゃんも言ってたし』
「それに大した価値は……」
『ふ〜ん。アクアくんは私に聞かれたら、マズイお話でもあるのかな?』
『ちょっと〜何彼氏の浮気問い詰めるような空気出してるのよ〜。アンタは“元”でしょ?』
『……かなちゃん?』
かなとレスバを展開するあかねの姿にたくましくなったよなぁ本当に。なんて感想を覚えながら、皿にチャーハンを盛りつけていく。
ビデオ通話ということもあり、笑顔の圧に耐えられなかったともいう。
それはそれとして、星野家兄妹による合作、舞茸チャーハンはなかなかに上手くいったのではないだろうか。
『わぁ、美味しそうやなぁ。ウチも食べたくなってきたわぁ……』
キラキラした顔で言ってくれるみなみだけがアクアにとっての癒やしだった。
今度作るよ。と危うく口にしそうになり、慌てて『舞茸入れるのはかなりオススメだ。刻んだ椎茸でもいい』とだけ伝えておく。流石のアクアにも、余計な一言というのは分かるつもりだった。
あかねの視線が妙に痛いのは……気の所為と思うことにした。
席につくと、スマホの向こうからも『いただきま〜す』という声がチラホラ聞こえる。丁度夕食時というのもあり、各自で用意しているらしかった。
チャーハンのお味は……悪くはないが、やはり余り物故にいつもより多めに入ってしまったピーマンの主張がちょっと強い。
これではスーパーマンにもピーターパンにもなれそうもないな。体操でもしててくれ。
何てことを考えながら、アクアとルビーは久々に隣り合って夕食を摂るのであった。
「さて、それじゃあ本日はお集まりいただき、ありがとうございます! まず簡単に集めたメンバーを説明すると……まずお兄ちゃん! 今回の深堀り対象その1にして、何やら最近色々あったっぽいので呼びました! ちゃんと私の質問には嘘偽りなく答えるし、法と倫理に触れようと何でもやってくれるそうです! 言質とってます!」
「………こんな大所帯でやるとは聞いてなかった。あと、多少だ。法やら倫理のとこは、多少だからな」
『(シスコンね)』
『(シスコンだぁ)』
『(うん、ルビーちゃん大事だもんね)』
『(シスコンやけど……うん、やっぱり仲直り出来てよかったぁ)』
全員の意見が内心で一致しているなどつゆ知らず、ノリでMEMちょが拍手をすれば全員がそれに習う。
地味に草の根ネット番組みたいな雰囲気が形成されつつあるが、誰もそのことには気づかなかった。
『続いて! 私の親友で本日の深堀り対象その2! 今回はお兄ちゃんの弁護人も務めるよ! 寿みなみちゃん!』
『ど、どうも〜。グラビアモデルの、寿みなみいいます。よろしゅう』
「正直、すまん。……本当にすまん」
『え、ええんですよ〜。ルビーとも仲直り出来たみたいやし。それに、ルビーに酷いことしたんは変わらんからまぁ……いっぱいワガママ聞いてあげて?』
「いや、寿にもだいぶ流れ弾が来る気がするんだが?」
『まぁ、やましいことはしてへんけど、一番ダメージが凄いのお兄さんやろから……せめて一緒に恥はかいてあげるさかい、頑張ろ?』
「……助けられすぎて、足向けて寝れないレベルになってきたぞ」
項垂れながら謝るアクアからは、哀愁が滲み出ていた。
「(まぁ、お兄ちゃん足向けるってか、一緒に寝てるけどね)」
『(なるほど、これがママ味。あーくんってば、デロデロに溶かされてるのねぇ〜。ケッ! マザコンが)』
『(はわわ……かなちゃん! あかね! これ、何ていうか……ダークホースっていうか……アクたんの反応も……!)』
『(…………………………)』
一方、拍手とよろしく〜という声が一斉に上がる中、女性陣からのアクアへの視線と評価はバラバラだった。
みなみに関しては全員が初対面故にこれからという部分が大きく、まだ誰も何ともいえなかった。
「次は同じ枠だから同時に行くよ〜! B小町メンバー、先輩とMEMちょ! 今回は私と一緒にお兄ちゃんに色んな事聞いちゃうよー! 先輩は何か色々見つけたり、耳よりな情報くれたりしたよ〜MEMちょは最初、胃が持たないって辞退しようとしたから、聞いた話は今後秘密にしちゃうよ〜って言ったら、来てくれました!」
『まぁ、アクアを真人間に戻せると聞いて』
『ごめんよアクたん! 好奇心には勝てなかったよ……』
「MEMはうちの妹がスマンとだけ。そして…………ああ、有馬。お前だけは来てくれて嬉しいよ。俺は今、初めて会った時を思い出してる」
『へ、へぇ〜。そう! 嬉しいかぁ……じゃあ今日はアンタにとってのターニングポイントになるかもね。……あの時の私も……そうだったし?』
傍にいるルビーですら、アクアの雰囲気がガラリと変わった事に顔を引きつらせていたが……当のかな本人は、お前だけは来てくれて嬉しいを無限脳内リピートしていた。
やはり有馬かなは有馬かなであった。
そこがアホだけど愛嬌があるパンダみたいで可愛らしいのだが。と、内心でアクアは思いつつ、必ずやこの重曹を舐める元天才子役を羞恥でギャン泣きさせてやろうと決意した。
死なば諸共、完全に道連れの腹積もりである。
「(あれ? お兄ちゃんと先輩が初めて会った時って……あっ)」
「(アクたん、これ激おこ? おこなの?)」
「(さ、流石にこの勘違いだけは……他のとこ広がる前に正さんと……!)」
「(……いっつもかなちゃんにばっかり激しい感情出すぅ〜。ムムゥ……)」
様々な思いが交差する中で、ついに最後の紹介が回ってきた。
この中ではある意味で異端な者。騒動には直接関わってはいないが、完全な第三者として切って捨てるにはアクアとの関係が深い。
そんな面倒くさい……もとい複雑な立場の女性であった。
「最後はこの人! ぶっちゃけ呼んだ理由はいたら超面白……コホン! お兄ちゃんの女性関係を深堀りする上で、絶対必要だと思いお呼びしました! 黒川あかねちゃんです! 来てくれてありがとう〜!」
『ルビーちゃん、呼んでくれてありがとう。……色々と気になることがいっぱいあったから……今日はいっぱい深堀り出来たら嬉しいな』
「…………っ!?」
何故かアクアの身体がブルリと震え上がる。理由はわからないが、この寒気に彼は覚えがあった。
いつぞやに浮気したら絶対コロス。と圧をかけられた時と同じもの。……今は別に付き合ってる訳じゃないのに、何故か自分が悪いと錯覚してしまいそうだった。
「(この場に直接あかねがいなくてよかった……いたら何か……うん)」
「(う〜ん、重い! 何か色々と! まぁお兄ちゃんが悪いから仕方ないね。ヨシ!)」
「(ハッ、その彼女面がアクアと淫乱ピンク巨乳ママドルとの特殊プレイでどう歪むのか……見ものねぇ! 楽しくなってきたわ!)」
「(あ、あかね、大丈夫かな……。ショックで倒れなきゃいいんだけど。いや、でも本当って決まった訳でもないし……)」
「(やっぱめっちゃ美人やなぁ。お兄さん、なんかタジタジやし。…………そ、そんな意識せんでもええやん)」
こうして紹介が一巡する。
特殊な状況。非日常というべきか。何やかんやでそれを全員が楽しんでもいた。
これから始まるカオスに阿鼻叫喚となるなど知る由もなく。
そもそもこの場にいる全員が、断片的な情報しか持たず、一切の共有もしていないのである。
ルビーはお泊まりしたと知ってはいても、添い寝の内容や理由までは知らず
アクアとみなみは誤解の理由は知っているが、その詳細までは知らず。
有馬かなは繰り返すが有馬かなであり。
一番冷静になれそうなMEMちょは、そもそもどれが真実か知りようもなく。
黒川あかねに至っては前情報が一切なしという、ある意味で一番可哀想なことになっていた。
故に……。最初の悲劇の幕は上がる。
「よっし! じゃあ今回の発端になった事件を動画共有で紹介しちゃうよ〜! では早速、行ってみましょう! 深掘れ☆ワンチャン!」
全員の端末に動画が再生される。
それはアクアのお部屋ツアー。
あまりに何もない部屋に本人とB小町メンバー以外の二人が唖然とし、ルビーの悲しげな顔にアクアが胸を痛める。
それ以外は……特に山もオチもない、はっきり言えば面白味のない動画の……筈だった。
かながアクアのベッドから、みなみがグラビアに載ったミドジャンを発見するまでは。
この時点であかねに結構なダメージが入る。
プロファイリングが図らずも真実にたどり着いていたという答えを得たことと、自分とのデート中に、他の女の水着グラビアを欲したばかりか……。多分別れた後に購入した事実に。
だが、悲しいかな。この程度はまだ序の口だった。
動画内にて、ルビーがかなに詰め寄っている。
『ねぇ、先輩。……すっごく忌々しげにみなみの写真見てたよね? ……何を知ってるの?』
『そ、それは……その……アイツがこの子とお泊まりデートしてたり、このおっぱいで凄いことしてるのと……その、何かママプレイしてるらしいってこと……くらい?』
いや、誤解よ? 誤解かもしれないけど、聞いた会話的には……。と続きながら、画面が暗くフェードアウトしていき……。
次の瞬間、画面いっぱいにデカデカとしたピンクのフォントで見出しが登場した。
『衝撃! 若手俳優星野アクア! 現役グラドル寿みなみと熱愛発覚!? えちえちGカップをどうしたの!? 朝までママプレイの真相は……?』
その圧倒的な情報爆撃により、黒川あかねは本来優秀な頭脳を活かす暇もなく。白目を剥いて一時的に気絶した。