恋人同士になり三日目。
朝の日差しに目を細めながら、星野アクアは静かにふぅ……と息を吐いた。
腕の中には可愛くて愛しい恋人が、ピッタリと鎖骨辺り(そこに顔をくっつけるのがお気に入りらしい)に頬を寄せ、すぅすぅと寝息を立てている。
その様子に思わず口角が緩みかけて……すぐに彼は真顔になった。
確かに幸せだ。だが、同時に現実も自分に降りかかってきていた。
スベスベしている。スースーもしている。プニプニ柔らかくて、生温かい。
「(い、いかん、バグってるな。落ち着け。落ち着くんだ……)」
深呼吸を数回し、昨夜のことを思い出す。
後悔はない。当然だ。
覚悟も決めた。それは前からだ。すなわち何が起きたかというと……。
「(よかった……! 自分の理性を信用しなくて……本っっ当によかった……!)」
致してしまったのである。
あちゃー。と、額に手を当てるMEMちょ。
うわ〜。と複雑そうな顔をしてるルビー。
ロンダートからバク宙につないで着地後に両手ガッツポーズをキメるフリル。
道端のゴミを見るような目で……あるいは絶対零度の視線を向けてくるかなとあかね。
そんな連続する幻覚を見た。
……でもちょっと待ってくれとアクアは叫びたかった。
さんざん癒やされて、助けられて、愛した女の子が、セックスアピールたっぷりの格好でくっついてくるのである。 オフショルダーのネグリジェは駄目だろ。
それはともかく。何処が好き? と言われたらたくさん挙げられる自信がある。その中でも一番は? と聞かれたら、一日迷うまである。……口には出さないが、それくらいにはベタ惚れだ。
内面的な面も加味すれば、間違いなく包み込むような優しい心と答える。では、外見的な面なら?
……往生際が悪い自覚はあったが、もう隠すまい。キャラ崩壊してんじゃないわよ! と、有馬かなに突っ込まれようが知ったことか。
星野アクアは――、寿みなみのおっぱいが大好きだ!
それを本人から触ってもいいなんて言われたら? 触って……何か自分の中で革命が起きて。しかも、それはそれは可愛らしくて、色っぽい反応を彼女にされてしまったら? そんなの……。
「(耐えられる訳ないだろがぁ! 寧ろ今だからこそ言える……! 何故俺は、今まで耐えられていたんだ……!? 凄いな!)」
ここに来る前に、ふと思ったのだ。ミヤコの会話であがった、所謂そういう時の男性のエチケット……。用意すべきか、否か。
いやいやいや。流石に告白したその日には無いだろう。……無いよな? そう思っていた時期があった。
でも、自宅でキスしようとした時……一回や二回で済まなそうだったのでは? 今回はルビーもミヤコさんもいないんだが? ……マズイのでは? 結果的に自分の直感は正しかったらしい。
「…………」
横目で時計を確認する。朝の七時少し前。このまま二度寝したい誘惑はあるが、色々と体力を使ったせいか、身体はエネルギーを欲していた。自分がこうなのだから、みなみはもっと深刻なことだろう。
何より彼女は……初めてだった。
正直これだけ美人なグラドルだ。深く聞いたことはなかったが(無意識に自分が聞きたくなかったのかもしれない)高校3年かつ芸能界に身を置いているならば、経験済みでもおかしくないとは思っていた。
だからこそ、その事実を知った時は、仄暗い喜びが芽生えなかったと言えば嘘になる。
悲しいかな、男はいつだって、女にとっての最初になりたい生き物なのだ。
「(……もう二日も部屋に居座ってしまってるから、出ないと迷惑だと思ったが……流石に今日だけは、ほっとけ無いな)」
極力家事は自分がやろう。みなみは今日一日、しっかり休ませて、充分な栄養も取らせる。アクアはそう決意していた。
昨日ちょっと無理をさせ過ぎてしまった負い目というのもある。
それなりに場数は踏んでいると自負していた筈なのだが……どうにも昨晩は、自分に制御がきかなかったというか。やらかしたというべきか。
ただ、半分はみなみにも原因があった。反応が良すぎたというか、こちらの理性に爆弾を何発もぶち込んでくるわ、本人もダイナマイトボディだわで、アクアのアクアマリンはもう大変だったのだ。
下世話な話になるが、正直昨日までは身体の相性なんて迷信だと思っていた。その考えは、ただ単にそんな相手に巡り合っていないだけだったのだと、アクアは思い知らされることになる。
「(…………めちゃくちゃ、ヤバかった)」
昨晩の自分達を思い出すと、柄にもなく気恥ずかしくなる。みなみが乱れに乱れていたから目立たなかっただけで、アクアも余裕は皆無だった。
それを隠したくてつい攻めたててしまい、そうしたらみなみの色気やらが更にとんでもないことになり……結果的にはアクアも追い詰められる。
悪循環とはまさにこのことだった。
「……んっ……あく、あ……さん?」
回想に浸っていると、すぐそばで舌っ足らずな声がする。彼女が身をよじる度に素肌が最高な感触で蹂躙され……アクアは身震いしたくなるのを堪えつつ、そっと寝起きな姫君の額に唇を落とした。
「おはよう、みなみ」
「…………………………」
優しく囁やきかけると、愛しい恋人の顔がへにゃりと綻んで……すぐにその表情がピキッ。と凍りついた。
ピンクパールの瞳が猛烈に泳いだ後、それはアクアの鎖骨や胸板に注がれて、続けて今の自分の状態を確認するかのように下方へ向けられる。
今更ながら、二人とも一糸纏わぬ素っ裸で抱きしめ合っていた。
「あ、わわ……っ、えと……おっ、おはよ〜ござい……ますぅ……」
どんな反応だよ。と、アクアは思わず吹き出しそうになる。そんなアクアの反応にみなみはますます顔を赤くして……最終的には「プシュ~」と頭から煙が出そうなリアクションを見せながら、そのまま俯いてしまった。
「……大丈夫か?」
「…………大丈夫なわけないやろぉ……」
「スマン、無理させ過ぎたな」
「ちゃうわぁ……身体は全然平気やし、寧ろ……い、いや。そうやなくて! ……ウチ、昨晩あんな……あんな大声でぇ……!」
「……俺は嬉しかったぞ?」
「なんでそんな複雑なこと言うねん! アクアさんのあほぉ……!」
ペチペチと抗議するようにみなみの拳が可愛らしくアクアの胸板を叩いてくる。
その心地よさにまた頬が緩みそうになっていると、それを見たみなみはぷくっ。と、膨れっ面を作った。
「……もうええわ。ええもん」
「怒るなよ。ただ可愛いだけだぞ」
「腹立つわぁ〜ウチの彼氏。ホンマに腹立つわぁ〜……」
「ごめんって。許してくれよ」
「……ぎゅーって……して」
「ああ、おいで」
「――っ! もぉ〜!」
アクアさんのいけずぅ! と悪態をつきながら、みなみがのしかかってくる。
声がちょっとどころか、だいぶ嬉しそうなのは指摘しないのがアクア流だった。恋人のいじらしさに胸を撃ち抜かれていたとも言う。
……尚、そんなみなみを受け止めたアクアが己の迂闊さに気づくのは、ほんの数秒後の事であった。
「(ミスった……! 俺は……大馬鹿者だ……!)」
繰り返すが、二人は全裸である。しかもその身体はお互いに昨夜交わした情事の熱がまだ滞留し、火照りきっていた。そんな状態で、いつものような激しいハグをしたらどうなるか。
「あっ…………♡」
その瞬間、みなみの悩ましげな声が、アクアの耳をくすぐった。
しっとりと吸い付き合う肌の感触が心地よい。暴力的な柔らかさに感動すると同時に、鼻腔は彼女の焼き菓子に似た甘い香りをたっぷりと取り込んでしまい……。
朝というバックアップも手伝って、とある反応は実に良好だった。
「…………(おっきい。かたい。あたる)」
「(3.14159265……π……って、違う!)……なぁ、みなみ。身体は本当に大丈夫か? 無理してないか?」
「へ? …………えっと、うん。ホンマにしてへんよ?」
鋼の理性を総動員し、アクアはみなみからそっと離れる。
「もうぎゅーってするの、終わりなん……?」と彼女の顔からはありありと伝わってくるが、アクアはそこから必死に目をそらした。
「今日の家事は全部俺がやるから、みなみは休んでてくれ」
「えっ、でも……」
「俺がやってあげたいんだ。それに間違いなく、みなみの身体はまだ本調子になれてない筈だからな」
そう言って優しくみなみの髪を撫でてから、アクアはゆっくりベッドから身を起こす。
「まずは朝食か。足りないのは買ってくるから、リクエストがあれば何でも言ってくれ。何がいい?」
みなみの視線が自分の裸やらに固定されているのを感じつつ、アクアは質問する。
……布団がはだけて、みなみの裸身が視界に入る。白い肌に咲き乱れているのは、いくつもの鬱血跡。自分の方にもつけられているとはいえ、こうしてキスマークまみれな彼女を見ると、流石に暴走しすぎたなと反省したくなった。
すると、そんな苦笑いする自分の様子に気づいたのか、みなみは不満げに口を尖らせはじめた。
「……何でもええの?」
「あ、ああ。勿論だ」
「…………せやったら」
ムクリと、みなみも身体を起こす。ぷるんと形のいいバストが揺れてアクアの目が釘付けになり……やがて彼女はぴとりとアクアに身を預けた。
「……おはようのちゅー。して?」
「…………え?」
「ぎゅーも足りへん。もう一回。キスも……昨日みたいにウチが溶けちゃいそうになるくらい……激しくして欲しいねん」
さてはコイツ、テロリストだな?
現実逃避したアクアの脳が暴走する。実際その喩えの存在が襲撃してきたかのような錯覚に陥ってはいたのだが。
「いや、あのな、みなみ……」
「リクエスト、何でもいいって言ったやん」
「言ったけども……」
「…………ウチが、アクアさんの“最後の女”やもん」
「…………んん?」
要領を得ないみなみの言動にアクアは首を傾げる。最後の女? 一体何を言っているのだろうか。分からない。分からないが……。
「朝ご飯、遅れるぞ?」
「……ウチは、アクアさんが欲しいねん」
「軽率に殺し文句言うのはやめてくれ。理性がもたねぇよ。……ああ、あとさ――」
それなりに女性を転がして来た星野アクアは、女の子が出すサインにも敏感だった。すなわち――。
みなみが何かに不安を覚えていたのは、何となく伝わっていた。
「言われなくても、そのつもりだから。俺だって、これから先はずっと君を独り占めするよ」
誰にも渡さない。
そうみなみの耳元で誓いを立てて、アクアは彼女を押し倒した。
おはようという挨拶にするには、少々強引で大胆なキスを交わす。可愛い桜色の唇の間に舌を突っ込めば、みなみの全身からはたちまち力が抜けて――。
結局。ご飯より先に恋人になり、入浴やシーツの洗濯を経て二人が台所に立ったのは、そこから三時間後だった。
※
破瓜の痛みは、恐ろしいくらいに小さかった。
先輩のグラドルや芸能関係者と話す機会が多いこともあり、寿みなみは耳年増な面がある。……ムッツリスケベとも言う。
だからこそ初めては、たとえ好きな相手でもぶん殴りたい程に痛い。と聞いていたし、それでも好きだったら本物よ。だとか、初めて同士で上手く行くケースは稀だとか、他にも色々と……アレな話は知っていた。
それを踏まえて、みなみはキスと愛撫だけのセックスから次の段階に進み……。
「(……なんかもう……めっちゃ凄かったわぁ……)」
嵐にあった小舟のごとく翻弄されまくるわ。アクアのとんでもない色気に物理的にと、精神的にノックアウトされるわ。それはもう、一生忘れられない初体験を終えて、心地よい疲労と充足感たっぷりなままで、彼の腕の中で眠りについてから……。みなみは気づいてしまったのだ。
いや、キスの時も思ったけど、アクアさんおかしくない?
手慣れているのだ。そもそも誰かとそういう事になったことがないみなみでさえそう思えてしまう程に……何か慣れていた。
どうしてこんなにピンポイントで? 相性というやつ? 確かにキス等のイチャイチャは待ちに待ってたけども……どうにも高校生にあるまじき、ねちっこさがあった。
絶対初めてじゃないやろ! とみなみは内心で叫びかけて……ふと、思い出してしまう。
そもそも、アクアにはかつて彼女がいたことを。
そこでチクリと。胸につっかえるような、いがらっぽさを感じてしまったのである。
そりゃあ、あれだけ美人な彼女さんだ。
「(止まらんやろなぁ……)」
しゅん。と、みなみはアクアの腕の中でしょぼくれる。勿論そんなことを考えても仕方がないことだ。
ただ、その経験を培ったであろう相手と、何度夜を越えて、心や身体を重ね合わせたのだろうか。……そんな想像をしてしまったら、みなみは無意識のうちに涙が出そうになっていた。
理屈ではこんな思考は間違っているとわかっているのだ。今の恋人は自分なのだから。けど、わかってはいてもどうにもならない感情はあって……。
だからこそ、そんなとこまで見透かされて抱きしめられたら、みなみはもう堪らなかった。
こちらの身体を気づかってくれるアクアにも。本当に容赦なく自分をトロトロにしてしまうアクアにも……彼女は完全にノックアウトされてしまったのだ。
女は男にとって、最後の存在でありたい。みなみもまた、例外ではなかった。
そして……。色々な感情がお互いに交通渋滞を起こした結果、長い間我慢し続けたこともあり、二人の枷は外れてしまっていた。
「本当に、世話になったな。……その……一部とはいえ、せっかくの一週間オフを……」
「そ、そんな! ええんやでぇ〜? だって、うちらは、もう……」
恋人になって四日目の朝。
『流石に明日は帰るよ。付き合いたてとはいえど、ちょっと長居しすぎたからな』
そう言いながらこちらの髪を指で優しく梳く彼に、みなみが少しの寂しさを覚えながらも頷いたのがつい昨夜のこと。
ベッドからなかなか出られなかったのは仕方がない。名残惜しくて、抱きしめあったまま。みなみは内心では帰って欲しくない気持ちを抑えながら、努めて明るく、『一人旅は何処に行くん〜?』と問いかけていたりしていた。
本当は連れていって欲しかったが、そんな我儘を言うわけにはいかなかった。アクアにだって、一人の時間くらい必要な筈なのだから。
尚、重い足取りで玄関についた二人は、結局ぎゅーぎゅー抱きしめ合ったまま、早くも三十分以上も時間が経過していたことには気づいていないらしかった。
「…………」
「…………」
無言の時間がしばらく続く。見つめ合うことはしない。
そんなことしたらキスしたくなる。
キスしたらどうなるか? また離れられなくなる。
結果、さらなるイチャイチャが始まって……。下手したらまた、いつかに学校をサボタージュした時のようにベッドへ逆戻りしてしまうだろう。
二人ともそうなることを期待……ではなく、恐れていた。
「…………また、くるから」
「……うん。絶対やで?」
「ああ、約束する。…………あのさ。みなみ」
「ん〜?」
「今は……こうして部屋でこっそりとしか逢えないけど……高校卒業したら、デートにいかないか?」
「――っ! ええ、の?」
思わずアクアを見上げながら、みなみは目を輝かせる。
芸能界のカップルは、ビジネス上の付き合いでない限りは、圧倒的にお家やホテルデートの割合が多いと聞く。
人目や週刊誌を避けるという意味もあるが、正式に将来を考えている相手でなければ、あまり二人きりで外へ一緒に出かけるというケースは少ないのだという。勿論、不倫関係や、熱愛報道上等などのように例外もあるのだが。
だからこそアクアの提案がみなみは嬉しくて堪らなかった。
「勿論、互いの事務所が許してくれたらだけど。……駄目だったら申し訳ないが二十歳までお預けって方向で」
「それでも……それでもウチ、嬉しい……!」
ちゃんとした真剣交際だと(勿論そうだと疑ったことはないが)宣言してくれたも同然な言葉に、みなみは目を潤ませる。
それをみたアクアは、はにかみながらも「考えておいてくれ」と言ってみなみの額に唇を落とす。彼女の返事は「絶対に行く!」という今更なものだった。
「楽しみにしてるよ。……じゃあ、そろそろ行くな」 「……………うん」
二人は最後にと腕に力を込める。お互いが好きな激しいハグをして。もう恋人だからと言い訳して、優しくキスを交わす。
「……っ」
「……んっ……んぁっ……」
離れて。くっついて。はむはむして。
視線を絡み合わせたかと思えば、また口を塞ぎあう。 次第に唇による交接は情熱的なものになり……。
「――っ、て待て。ちょっと待て! マズイ」
「あっ……そ、そうやね……これ以上はアカンわぁ」
学習しない二人はどうにか身体を引き離す。
だが、いつまでたっても玄関から旅立てないアクアと送り出せないみなみの状況はさっぱり変化することはなく。
やがて……。
「も、もう少しだけ。抱きしめたら……な」
「う、うん。せやね」
「……っ、…………よ、よし。じゃあ行くから」
「……ちゅー。もっかいしたらアカン?」
「い、一回だけな」
「んっ…………ありがと〜。……じ、じゃあ。気を付けてなぁ……ちょっと、寂しいけど」
「…………………なぁ」
「な、なに〜?」
「ほっぺた。触ってもいいか?」
「ええよ〜。……ほっぺただけでええの?」
「…………」
「ウチのおっぱい、いらん?」
「………………………いる」
「えへへ……どーぞ〜♡」
まるで学んでいないバカが二匹そこにいた。
そもそも手が離れないのだ。片方が離しても、もう片方が相手の身体を掴み、軽めのスキンシップ。それが段々激しくも濃密なものになりかけて、慌てブレーキをかけ……話はふりだしに戻る。
そんなやりとりが延々と続く。
「……いかん、駄目だ。これ以上はもう駄目だ………」
「んっ……やめて、まうん……?」
何故か荒い息をつきながら、服がはだけかけているみなみを引き剥がし、アクアは数歩後退りする。それを追ってみなみが淋しげな顔でアクアへにじり寄っていく。
「め、迷惑に……」
「……ならへんよ?」
「………………そんなこと言うと、本当に離せなくなるぞ?」
「アクアさんは、ウチといるより、旅行したいん?」
「その問いは卑怯だろが……!」
「堪忍な。いい彼女ならちゃんとアクアさんの時間も確保出来るようにするんやろうけど……」
これから先、お互いに忙しくなったら? 勿論いいことなのではあるが、それはそれとして一緒の時間は欲しかった。
色々と対抗心やらを密かに燻らせている今なら尚更に。
なのでみなみは攻めまくった。
ぐいぐい。むにゅむにゅと、自分の柔らかい部分を押し付けながら、アクアの耳元に唇を寄せる。
ベッドの上ではやられっぱなしの泣かされっぱなしだが、こういう押しはなんやかんやで彼女の方が強かった。故に……。
「……やっぱ帰るのアカン。ウチとず〜っとイチャイチャしてよ? 行ったら嫌やぁ……」
プツン。と、彼女はアクアの中で何かが弾け飛んだのに彼女は気づかなかった。もっとも、気づいたら更に攻めようとしていたのかもしれないが。
「君は本当に……自分の破壊力を自覚した方がいい……!」
「へっ……? えっ、ちょ……! ア、アクアさん!?」
戸惑いながらも、自分の声色から喜びを隠しきれていないみなみがいて。
それを見たアクアはますます堪らなくなり、「もう滅茶苦茶になって帰るか」と、旅行の予定を白紙にした。
「ア、アクアさんっ! ここっ、玄関……っ! やっ……アカンよぉ……こんな、ワンちゃんみたいに……! はうぅっ………♡」
結局、二人は玄関で燃えに燃え上がり、不毛……もとい茶番めいた攻防戦は決着した。
その後の延長戦は……もはや語るまでもないだろう。
五日目も。六日目も。七日目も。
最終的にこのあと二人は存分にイチャついて、滅茶苦茶セックスした。
※
時は流れていく。 各々が騒がしくも忙しい日常に戻り。それぞれの分野で再び活動する中で、かの映画、「15年の嘘」が公開された。
それはある意味で界隈に小さくない波を引き起こし……爪跡を残したといえよう。
そして――、その公開が終わった数日後のことだ。
星野アクアと星野ルビー。及びその関係者達の元に、とあるニュースが届けられることとなる。
内容は――。
カミキヒカルの殺害の容疑がかかった人物が、逮捕されたというものだった。