【完結】最終的におっぱいが全てを解決する   作:星組

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最終的な冴えた解決方法

『元会社員の男性(46)がカミキヒカル殺害の容疑で逮捕されました。男性は容疑は認めており、娘の仇だったと供述しており……』

 

 青天の霹靂。

 星野アクアと星野ルビー。並びにその関係者達にもたらされたそのニュースは、まさにその言葉をあてるに相応しいもの。撮影から既に半年の時が経過して、映画公開が終了した直後の出来事であった。

 春の高校卒業を間近に控えた関係でとてつもなく忙しい時期にこの事件。正直な話、映画の公開終了を経て正式なお疲れ様会を関係者一同を踏まえて開こうと思っていた矢先だったので、当初苺プロダクションは対応を慎重にせざるを得なかった。

 映画公開中に飛び交っていた憶測や考察の熱が再燃したばかりか、更に発展していったから……という背景もある。

 ともかく、逮捕された当人の話が出揃うまでは静観。そのスタンスを貫くより他になかったのである。

 最終的には怨恨からくる殺害だと、マスコミは報じた。

 同時に映画では匂わせる程度だったカミキヒカルのブラックな部分がほぼ露呈。副社長が引き継いでいた形の神木プロダクションは事実上解体され、今後は被害者遺族への補償に力を注いでいくとのことらしい。

 結末は、そんな簡素でありふれたもの。

 いつかにアイの死が雪に覆い隠されるかのようにして、世間から風化した時と同じように。とうの昔に死んだ男の下手人の逮捕という話題は数日取り上げられて、コンテンツとしては消費し尽くされた。

 雪解けと共に訪れた春一番にさらわれるが如く、忘却の彼方へと消し飛ばされていったのである。

 ただ、改めて映画について言及する声が少しだけ増えて、公開終了後にもしばらく話題になるという珍しい例も生まれたりしたのだが……それはもう、関係者一同にとっては消化試合のようなものだった。

『15年の嘘』は役目を果たした。ただ、当人らにとって予想外なものを引きずり出す形で。

 

 

「……君達のお陰で、ね……」

 

 郊外のカフェテラスでコーヒーブレイクをとりながら、星野アクアは自嘲的に呟いた。

 かの報道から更にしばらく経ってから、アクアはカミキヒカルを殺害した当人との面会を申請した。

 駄目で元々な考えだった。

 受刑者の家族ではなく。被害者の……血は繋がっている筈だが、直接な親子関係を明確にするものはなし。映画の中で答え合わせをしたようなものではあるが、それが司法やらの場面でどれほど有効に働くかと言われたら、微妙なところである。

 ただ、可能ならば話は聞いてみるべきだ。そう思った上での行動だった。

 因みにルビーには言っていない。またスタンドプレーかと怒られかねないが、ミヤコには話を通しているし、相手に問題がなさそうならば、話した内容は共有するつもりだった。

 また精神的に危険な役目を自分だけ……! だとか、無理して会う必要はないじゃない! など、苦言を呈されたりもしたが、そこはどうにか押し切った。

 アクアは真実を知りたかったのである。

 

『何を言われても、変なこと考えるんじゃないわよ! 終わったら連絡……いえ駄目ね。私が送り迎えするわ!』

『今日はルビーの収録とかあるだろ。俺の方はオフなんだから、あっちに付き添ってやってくれよ』

『……………っ』

『そんな顔しないでくれ。本当に大丈夫だから。約束する』

『何かあれば、ルビーと私は泣くわよ。永遠にね』

『泣かせないよ。もう絶対に』

『事務所の皆も、アンタに関わった色んな人達だって悲しむわ』

『わかってる』

『……想像しなさい。寿みなみさんは一生ものな心の傷を負うわ。でもアレだけの美人よ。きっとそんな哀しみにつけこんで様々な男が群がって、いずれ……』

『帰るから! ちゃんと帰ってくるから! 腹立つ妄想広げんな』

 

 そんなやり取りがあったのはアクアの心にそっと仕舞われている。

 どうにもカウンセリングを勝手に辞めたことが露呈して以来、ミヤコが過保護になりつつある気がした。

 

『ならよし。肝に銘じておきなさい。アンタの大好きなあの娘のおっぱいを独占したいならね』

『……育ての親にこの子は彼女のおっぱいが大好きって宣言される息子の気持ち考えたことある?』

『あら、何か間違ってるかしら?』

『………………間違ってはいないけども』

 

 あるいは、単に雑な弄りで息子とコミュニケーションを取りたいだけなのかもしれない。そっちの方が何だか嬉しくはある。……いや、心の平穏はどこかへ飛ばされてしまうけど。

 それはそれとして、本当に嫌な想像だったので、アクアは意地でも帰ってくるし、何なら日頃の感謝だとミヤコにお土産を叩きつける決意を固めるのであった。

 

「やぁ。どうだった? きっと大したことは聞けなかったんだろうけど」

「……………………何でいる」

 

 不意に声をかけられて顔をあげたアクアは、そこにいる人物を見つめて渋面を作る。

 幼い顔立ちや姿には不釣り合いな、理路整然とした言動が、彼女の不気味さを増長させる。

 芸名ツクヨミ。なんやかんやで、ちゃっかり苺プロダクション所属になった子役にして、恐ろしいことにアクアにとっての後輩になってしまった少女だった。

 

「ボスが心配そうにしてたからね。こっそりつけてきたのさ。アルバイター斉藤さんのポケットマネーからタクシー代も出たし」

「やめてさしあげろよ。……暇な奴だな」

「今日はオフだもの。後、個人的に興味があったから。というのもあるけど」

「……別に面白い話なんかなかったぞ」

 

 あるのは淡々とした事実のみ。

 娘の死に不審を持った父親が、必死に情報をかき集めて、かの男までたどり着いた。そこまではよかったのだ。

 告発はもみ消され、証拠不十分として警察には相手にされなかった。

 まるで神様がいるとしたら彼を守っているかのようだったという。

 その守護が、あの日は消えていた。向こうはこちらに気づかず。衝動的な凶行は成功し、どういう訳か自分は逃げ遂せてしまった。

 チョロチョロ嗅ぎ回っていたのを見ていた癖に、警察は自分の所に聞き込みにすらこない。ちょっと無能が過ぎるのでは? と呆れつつも、彼は自首する訳にはいかなくなってしまった。

 カミキヒカルは……哀れな被害者で終わろうとしていたのである。

 許しがたいことだった。同時に自分が罪を自白しても、また握りつぶされてしまうのではないか? そんな恐怖が芽生えてしまった。捕まるのはいい。だが、それだけは耐えられなかったのである。

 だから彼は他の声を探した。自分と同じか近い境遇の者がいるのではないだろうか? そんな望みに縋っていた矢先で……。あの映画が公開された。

 そこには怒りと怨念と……不思議な受け取り方かもしれないが、彼には希望が込められているように見えたという。

 後はもう、自分の心に従った。このタイミングしかないと思った彼は、警察に自ら出頭した。

 それが、事の結末だった。

 

「何か、引っかかってるの?」

「いいや。ただ、本当に復讐に向いている奴ってのは、ほんの一握りなんだなって思い知らされただけさ」

「その人も、君と同じで向いてない人だったんだ?」

「………ああ。そうなるな」

 

 小さなトレイにホットココアとマドレーヌを二個乗せて、ご機嫌な様子でツクヨミは向かいの席に座る。

 相席を許可した覚えはない。そんな心情で睨みつけるが、彼女はますます小生意気な笑顔でマドレーヌを一つアクアに差し出した。

 

「なんだコレは」

「え? 好きでしょ? このお菓子。ママンに似た香りのプレーン味だよ〜」

「人の恋人を勝手に自分の母親にするな」

「何だよ〜。最終的には俺がママにするって? あはは。言ってることちょっとキモいね」

「キモいのはお前の頭の中だ」

 

 乱暴に焼き菓子を奪い取り、口に放りこむ。

 80点。味も食感も悪くないが、本人はもっといい匂いがする。

 その連想が一番キモいんだけど。と突っ込んでくれる有馬かなはここにはいないので、アクアはのんびりと焼き菓子を堪能した。

 

「……本当に、徹底的にカミキヒカルを貶めたいなら、映画の公開中にするべきだったんだよ。俺達の方にもダメージは入るだろうが、そっちの方が強い火種になっただろう。なのに、わざわざこっちの心配もして映画終了まで待った。人を殺してる奴にこんなことを言うのもなんだが……お人好しが過ぎる」

「………トイレにおっきな鏡があったよ?」

「またド頭掴んで持ち上げてやろうか?」

「ママンに告げ口してもいいなら、どうぞ」

「クソガキが……」

 

 軽口をつき合いながらも、二人は静かに空を仰ぐ。

 テラス席のパラソルで半分隠れた視界に映るのは、雲一つない蒼天だった。

 

「……君の人生は、続いていくよ」

「どうした急に」

 

 ポツリと上を見たまま呟くツクヨミをアクアはまじまじと見る。彼女はどことなく楽しげに口元を綻ばせていた。

 

「端から見たら、大きな波を乗り越えたように見えても、君の先はまだまだ長いってこと。これからどうするの?」

「……別に普通だよ。仕事して。一応大学出て。大事な人達のそばにいられたら、それでいい」

「普通〜……お医者さんには、ならないの? 外科医とか今度は目指せそうだけど。夢だったんでしょう?」

「……ああ。でも今のところは、なるつもりはないよ」

 

 その決意は、口にしてみると思いの外、今のアクアの胸にぴったりとはまり込むというか。しっくり来るものがあった。

 一方ツクヨミは、どこか意外そうに目を細めていた。

 

「医療関連の本は、今も読み続けてるのに?」

「アレは趣味だよ。いつかに将来の選択肢の一つとして挙げていたのも、あの時は復讐相手がいなくなったと思っていた頃だったからだ。……踏み込みきった後は、違う」

「つまり?」

「……資格がないんだよ。どんな形であれ、どんな相手であれ。……“僕”は人を社会的に……あるいは直接殺そうとした。思うだけじゃない。本気で実行しようと準備して、動いてしまっていたんだ」

 

 カミキヒカルは、哀れな面はあっても、確かに人殺しだった。

 だが、相手が大量殺人犯であろうと患者として運ばれてきたなら治療するのが医者なのだ。

 仮に。もしも自分が医者で、カミキヒカルが患者として運ばれてきたら? 自分は果たして、冷静でいられるだろうか?

 

「僕が、自分自身がそれを許せない。そんな奴が医者になるなんて……そう思ってしまう。誤魔化そうが絶対に、いつかそんな思考が、致命的なものに繋がっていく気がする。だから……医者にはならない」

「罪を背負っていくのも人間じゃないかな?」

「背負い続けた結果、大切な人を傷つけるかもしれない未来は選べないよ。ならかつての夢を捨てるくらい惜しくない。それに……夢ならもう、近くにあるから」

「……ほう?」

 

 どんな? と、引き続き問いかけるツクヨミに「内緒だ」とはぐらかし、アクアは静かに席を立つ。さり気なくツクヨミのトレイとカップも一緒に拾い上げて返却口へ。

 トテトテとついてくるツクヨミを捕捉しながら、アクアは帰路へと足を向けた。

 

「パパン、暇だからどこか遊びに連れてってよ〜」

「やめろ。勝手に娘を名乗るな疫病神」

「酷い言い草だな〜。これでも君達の味方なつもりなんだけど。今夜はママンのとこいくんでしょ? 楽しませてくれたら夜についてくのを止めてあげるけど?」

「そもそもついてくるって選択肢を捨てやがれ」

「……夜に震えながら訪ねたら、ママンなら入れてくれそうだな〜」

「………………行きたいとこを言え」

「わーい。わーい(棒)」

 

 はしゃぐ素振りを見せるツクヨミを疲れたように睨んでから、アクアはため息をつく。

 多分、複雑なこちらの心境を彼女なりに気づかってくれているのだろう。そういうことにしておいた。

 その時だ。

 ピコン。と、スマホが鳴りひびく。ラインの通知らしい。

 誰だとディスプレイを見たアクアは……思わず顔を引きつらせる。

 ――相手は有馬かなと黒川あかね。そして、星野ルビーの三人だった。

 

『ロリコンとおっぱい星人の性癖同居は……シャレにならないんじゃない? ロリ巨乳はフィクションだけよ。夢から醒めなさい』

『アクアくん、私とはデートしてくれないくせに、ツクヨミちゃんとは行くんだ』

『みなみにライン画像送ったよ〜。お兄ちゃんサイテー』

 

 クククッという、笑いを堪える声が耳にとどいた時、アクアは必ずやこのクソガキにアイアンクローをかまして泣かすと決意した。

 

「……何をした」

「いや〜間違えたよ。ボスにアクアとデートしてくる。朝まで帰してくれないかも〜って送るつもりだったんだけど………アダダダダダダ! 痛い! 痛い! 飛び出る! 目玉飛び出るっ!」

「やっぱ医者は無理だな。今お前を殺しそうだ」

 

 これもいずれは愛しい記憶や思い出になるのだろうか。そんなことを考えながら、アクアはツクヨミの頭蓋骨を痛めつけるのに専念するのであった。

 

 

 

 ※

 

 

 クソ生意気な幼女を家まで送り届けた後のことだ。

 何となく頭に浮かんだ、昔好きだった歌の歌詞を思い浮かべながら、アクアは帰る部屋への道を足早に進む。

 途中の広告用の看板に、見知った推しアイドルのグループが目に入り、何となく足を止めてしまう。

 

 B小町。

 

 星野ルビーはあいも変わらず飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍を続けていた。

 時に可憐に。時にミステリアスに。マルチな方向性で彼女は出来ることを増やし続けている。

 かの映画撮影を経て更に一皮剥けたのか。ますます美しさに磨きをかけた彼女にかつていた最強で無敵なアイドルの姿を重ねる者は多いと聞く。

 

 

 有馬かなはアイドルと女優。二足のわらじを上手に履きこなしながら、芸能界の荒波を器用に渡りついでいた。

 アイドルならばその歌唱力だけでなく、発掘されたバラエティ適正をもって、引退芸を始めとした様々な形で笑いを誘い。かと思えば太陽のような。それでいて卓越した演技力を誇る女優としてバシッとキメる。

 そのギャップがファンにはたまらないらしい。

 

 MEMちょもまた、B小町で活動を続けている。年齢については目を向けないようにして、全力でアイドルを楽しんでいるようだ。

 余談だがマネジメントの勉強も現在はしているらしい。日常動画内での罰ゲームで、かなにピーマン体操を踊らせて鬼バズりせたのが最近の功績(本人談)らしい。後にかなのラリアットに沈んではいたが。

 

 そんな3人の最大目標は、ドーム公演。今や苺プロダクション全体の夢となったそれは、ファンの間でも今度こそ届くんじゃないか。といった声があがりつつある。

 いずれ来るであろうその時に想いを馳せながら、サイリウムをスタンバイしているのは……アクアだけの秘密である。

 

 電車に乗る。

 吊り下げられた広告に、ドラマのポスターを見かけた。最近視聴率が鰻登りな『丑の刻参り若奥様、マナミ』

 主演は黒川あかねだ。

 ジャンルはホラー要素を含んだサスペンス。夫と破局したバツイチの女性が色んな嫌な奴を呪いまくるという内容なのだが……。

 何で齢十九にてバツイチの色気を出せるんだとか、込められる怨念が妙に実感を伴ってない? といった声が多数上がっている。

 チェックしているアクアも彼女が凄いのは知っていたが、この演技力にはただ圧倒されるようだった。超怖い。

 あと、このドラマの放送日は妙に身体の調子が悪いのだが……気の所為だと思うことにしている。

 

 慣れ親しんだ駅に降りた。

 電車の中でチェックしていた今後のスケジュールを頭の中で整理しながら、アクアは先を急ぐ。

 深掘れ☆ワンチャンの企画にて、まさかの不知火フリルが出演することになったのは驚いている。

 彼女もまた、変わらず歌って踊れる国民的小娘――ではなく美少女マルチタレントとして存在感を放っているが……。アクアとしては毎回予想外な行動をするわ、事あるごとにみなみとのエピソードを掘りまくろうとしてくるわで、少し苦手だった。

 流石に本番ではやってこないと思いたい。

 

 来週の始めは姫川大輝と食事兼近況報告会。

 水曜日はメルトと現場が同じ。週末からはドラマの撮影が始まって……。

 そうこう考えながら、アクアはふと心が躍るのを感じていた。

 ツクヨミが言った通り、きっとこの先も色々とある。この慌ただしくも騒がしい。だが確かに愛しい日常が続いていくのだろう。

 それに小さな幸せを感じられるようになった自分に驚きながらも、悪くないと思えるようになったのは……明確な前進だった。

 自分がそんなふうになれたのは『彼女』のお陰だと改めて実感して。同時にこの後の逢瀬がより待ち遠しくなってしまう。

 

 目的地にたどり着く。オートロック完備のマンションに合鍵を駆使して足を踏み入れて、アクアは慣れ親しんだ部屋のドアを開けた。

 その音に気づいたのか、奥の方からパタパタと出迎えてくれる足音がして……。

 

「ただい……ま……」

「おかえり〜。寒かったやろ〜?」

「…………」

「……アクアさん?」

 

 部屋の主。恩人であり、恋人でもある寿みなみがキョトンとした顔で首を傾げている。

 ……胸空き白縦ニットにエプロンを装備という、とんでもない格好で。

 

 マジかよこの子。とアクアが額に手を当てながら天井を煽げば、確信犯だったらしいみなみはクスリと笑いながら、一歩アクアの方へ近づいた。

 

「今日、お話聞きに行く言うてたやん? ツクヨミちゃんと遊びに行ってきて癒やされてたかもしれへんけど……ウチも負けてられへんなぁって」

「残念ながら、あのガキには癒やし効果なぞない。寧ろイライラした」

「相変わらずあの子に辛辣!?」

「でも今、爆速で癒やされたよ。何なんだ君は」

「……えへへ。アクアさんの彼女やで〜?」

「なるほど、最強か」

 

 そんなバカップル全開な会話を交わしながら抱きしめ合う。

 おかえりの印に肌と唇で体温と愛情を交換して、二人はしばしの間その場で幸せに浸っていた。

 

「……ありがとな。みなみ」

「? 何が〜?」

「……なんとなく、言いたくなったんだよ」

「……じゃあ、ウチも。アクアさんありがと。そして、取り敢えずお疲れ様。ちゃんと帰ってきてくれて嬉しい」

「そりゃあ、最初から帰るって……」

「それでも、心配なもんは心配やったもん。何かあったらどないしよって……」

 

 ちゃんと元気ある? と問いかけるみなみにアクアは心配ないと伝えるように頷いた。

 

「整理は出来たよ。勿論全ての傷が癒えた訳ではないけれど……改めて誓う。キミも。ルビーとミヤコさん。有馬達にも絶対悲しい思いはさせない」

 

 因みに元気になってみなみと交際したことで一部の人間に芽生えた悲しみについては対象外とする。

 こればかりはどうしようもないのである。向こうから交流を断たれたら、寂しいが諦めざるを得なかったが……現状では、いい友人としていられていると思いたかった。

 

「安心、してくれたか?」

「……うん! じゃあ、“元気なんやね”アクアさん」

「ああ、勿論……」

 

 そこでアクアに電撃が走る。悪戯心とも言えた。

 

「………いや、少しだけ疲れはしたかもな」

「――!」

 

 今更な話だが、交際して早くも半年に差し掛かりそうな二人は自他ともに認めるバカップルと化していた。

 故にこれ以降のやり取りは……ただのイチャつく口実。もとい茶番である。

 せっかく恋人がエロ……もとい可愛い格好で元気づけようとしてくれているのだ。こちらも応えねば無作法というもの。

 

「それなりに心労が来たとこで、あのクソガキが爆弾落とすわ、買い物に付き合わされるわ。ドラマのあかねは怖……いや、それは今日関係ないか。とにかく大変だったんだ」

「ふ〜ん。それなら……今日はどないしよか?」

 

 今度は数歩後退り、みなみは両手を広げた。

 

「アクアさん、ご飯にする? お風呂にするん? それとも、元気ないんやったら……」

 

 これ、フリルが聞いたら爆発するんじゃねぇかな。そんなことをアクアは思った。

 

「大丈夫? ウチのおっぱい揉む?」

 

 ……この時、星野アクアは知る由もなかった。

 近かったり、遠かったりする未来の話だが。

 ルビーに前世がバレて色々と大変なことになることも。

 映画の特典映像によって全国規模でおっぱい星人という事実が白日の元に晒されるばかりか、その癖を盛大にイジったドラマにて主演をはる羽目になることも。

 熱愛報道の直後に自分の出演する番組にてドッキリ同然の形で深掘りされ、MEMちょがいつかに作ったドピンクの頭悪いキャッチコピーが再利用されることも。

 15年の嘘の続編的に自分とルビーのドキュメンタリーが撮られることも。

 将来みなみとの間に授かる最初の宝物が、まさかの転生者になることも。

 他、色々……何もかも。

 

「取り敢えず、全部」

「は〜い♡」

 

 夢がいっぱい詰まった楽園に顔を埋めると、マシュマロもびっくりな極上の感触と一緒に、甘い焼き菓子みたいな香りが鼻腔をくすぐった。

 それはまさしく桃源郷。ルビーならば真・オギャバブランドと喩えただろうか。

 

「……最高すぎる」

「エヘヘ……じゃあもっといっぱい……ね?」

 

 何かおっきい赤ちゃんみたい。という本来ならば屈辱的な評価すら、今のアクアは脇に放り投げた。

 人生は前途多難なのだろう。だが、友人であるメルトの言葉を借りて、上等じゃんと彼は啖呵を切る。

 負ける気がしなかった。今までもそうだったし、なんやかんやでぷるんぷるんした夢とか真理はすぐそばにあるのだから。

 予言しよう。つまるところ、実に単純明快かつ突飛な話ではあるが、星野アクアが抱えたあらゆる問題は――。

 

「ひゃっ!? もぉ〜。アクアさんのエッチ〜♡」

 

 最終的に、おっぱいが全てを解決するのだ。

 




ここまでお付き合い下さりありがとうございました。
年内完結を目指しましたが、無理で年をまたぐことになりました。師走死ね。
なんやかんやで書きたいのはこの後のイチャイチャだったり、ほのぼのだったりするので、不定期ながらこれからも書いていきますが、一先ず一区切りということで。
それはそれとして二期放送辺りには、沢山更新したいですね。掲示板系にも初挑戦してみたいです。
取り敢えず予定表の一部。タイトルや軽い概要順番バラバラ↓↓

・ルビーちゃん家出する(前世バレエピ)
・千の夜をこえて(前世バレエピ解決編)
・兄とその彼女にサンドイッチされてみな。飛ぶぞ(フリル&ルビー)
・星野アクアとかいうイケメンおっぱい星人について(掲示板回)
・そうだ焼き肉へ行こう(あかねちゃん&かなちゃん)
・二人きりの水着撮影という名目な新手の性行為(中表紙みなみちゃんネタ)
・マネージャーはつらいよ
・深掘れ☆ワンチャン!(熱愛発覚編)
・みなみちゃんのゲーム配信
・勇者ゴロウマル
・転生者だけどパパとママが仲良し(意味深)過ぎる件


他、色々。今後も楽しんで貰えたら嬉しいです。

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