「ところでキミたちは『四』と『八』、どちらの関係者なのかな?」
和やかに話していた深雪が凍りついた。まずい。フォローしなくては。
「―――何のことかわからないな。どうしてそんな風に思ったんだ?」
「深雪さんは容姿に優れた実力のある―――ありすぎる魔法師。達也は二科生でありながら風紀委員に抜擢される、血筋、或いは実力の持ち主。兄妹揃っての実力者、これで十師族と関係があることを疑わないほうが難しいと思うね、ボクは」
「
「あまり古式魔法師をなめないで欲しいね。古くからあるということはそういう事情に、何ならキミたち以上に詳しいのさ。というか、『司波』なんて『
「中禅寺がどう思おうと勝手だが、俺達は四葉や八代とは無関係だ」
「ふうん。まあ、深雪さんの態度で言ってるようなものだけどね。確かに四葉にも八代にも司波なんて分家は無いし、キミたちがそう言うなら、そうなのだろうよ。だが、他人の素性を明かそうとする人間が、どうして自分の素性が明らかにされないと思うのだね。非常に愚かだとは思わんか? よく言うじゃないか、『人を呪わば穴二つ』と」
「すまない。そのことについては非礼を詫びる。だが、俺達の両親はF.L.T.の社員で、ただの民間人だ。これで納得してくれ」
でないと俺はお前を消さなければならなくなるかもしれないから。
「ま、キミたちへの嫌がらせ以上の意味は無いし、誰に話すことも無いから安心してくれ」
「―――嫌がらせ、ですか?」
ああ、収まったと思ったのに、フリーズから回復した深雪が怒っている。頼む、中禅寺。俺の平穏のためにもこれ以上は煽らないでくれ。
「善意には善意を、悪意には悪意を返す。陰陽師――どうせ九重和尚から聞いているだろう――の基本だぜ。キミたちに悪意は無かったと言い切れるかな? 例えば、光井さんや北山さんにそういった態度は取らないのかな?」
「当たり前です! 彼女達は友人で―――」
「なら、友人ではないボクにはやっていいわけだ。友人と扱いを異にするキミたちが悪い。自分がされて嫌なことを他人にするキミたちが悪い。素性を隠したいのに遺憾なく学校という公共の場で実力を発揮するキミたちが悪い。ボクは突然の往訪にも拘わらず身上を明らかにして応対したのに。―――そう、だからボクは悪くない」
深雪は押し黙ってしまったが、身体中から冷気が漏れ出している。俺の心の中の願いは儚くも散ってしまったようだ。
「そこまでだ。邪魔をして悪かった。また学校で会おう」
「ああ、さようなら。ゼリー美味しかったよ。壬生先輩には時間を見てお見舞いに行っておくよ」
俺は怒りの収まらない深雪を連れて京極堂を辞す。外に出ると、体感では小一時間に満たないほどしか滞在していなかった筈なのに、いつの間にか夕暮れ時になっている。
まるで狐にでも化かされてしまったかのようだ。
俺と深雪は帰りのキャビネットで反省会をする。
「お兄様、申し訳ありません。つい感情的になってしまいました」
「いや、俺も深雪に害を為す人間かどうかを見極めようとして、結果を急ぎすぎてしまったようだ。クラスメイトなのに、すまないな」
「お兄様が謝ることではありません! 元はと言えば、あの偏屈がズケズケと言ってくるのが悪いのです! だいたい何ですか、あの態度は! 私はともかくお兄様にまで愚かなどと!」
「深雪、落ち着け。サイオンがコントロール出来ていない」
端的に言えば、非常に寒い。セキュリティ上は良くないが、窓を開けていて正解だった。
「……申し訳ありません。」
深雪は見るからに萎んでいる。家に帰ったら存分に甘やかさないといけないな。
……ん、待てよ?
「―――深雪、彼のあの態度はわざとかもしれない」
「どういうことですか?」
「今日の会話の中で、彼の副業―――陰陽師についての話までには至らなかった。それに、彼の古式魔法についても結局わからないままだ」
「―――彼はわざと煽った、ということですか?」
「その可能性は十分にあると思う」
「お見事な推察、流石お兄様です!」
〜後日、京極堂にて〜
「やあ、こんにちは」
「お久しぶりですね、九重和尚―――」
次回、種明かしの時間
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