推しの子 in SAGA   作:片倉の推しの子Bです

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推しの子が終わってしまいました・・・。
アニメ一話から再燃したにわかですが、毎週楽しませてもらいました・・・。赤坂アカ先生と横槍メンゴ先生の次回作に期待・・・!

皆さんの感想、全部読ませて頂いてます!
東京ブレイド編は結構改変しましたが、楽しんで頂けた方が多くて嬉しいです・・・!!
実はファタールのラストのアイを見て、アクア目線でこの景色を書きたい!ってなって書き足しました・・・。


第二十四話 ギターを持った渡りゾンビだよ SAGA

 





「とってもいい舞台だったね!」

 

「そうね、まだ感動が残ってるみたい」

 

「そういやちんちくはどうしたと?」

 

「他の役者さんと今日の反省点を振り返るんだって」

 

リリィちゃんの舞台が終わった後、私たちは建物の前で感想を言い合っていた。

 

そういえば今日のアクア、やたらと甘えんぼだったけどどうしたんだろう?

もしかして、上手く演技できたからほめてーってことだったり?

さっき褒めてあげたら、めーっちゃ照れてたしありえるかも?

やっぱりかわいいな〜。

かわいくてかっこよくて演技もできる自慢の息子って言いふらしたいなー!

・・・そうだ!

 

「・・・ちなみに皆は誰が良かった?」

 

ふっふっふー!

さりげなく感想の話題をふりながら、刀鬼(アクア)の良いところを自慢したり皆から褒められてる刀鬼(アクア)の話が聞ける・・・!

いやー、天才過ぎてやばいね☆

 

「あたしはやっぱキザミやけんな!漫画と同じ動きができるなんてありゃあ相当練習しとるけんね!・・・まあちんちくができたのはもっと驚いたとが・・・」

 

「ブレイドの人もすごかったとよー!観に来た人が話してたんだけど、大河ドラマとかの主演もやってる有名な俳優なんだって!」

 

「わっちは誰が良かった、というわけではありんせんが、殺陣の迫力がすごかったでありんした。まるで本当の斬り合いみたいでわっちもつい昔を思い出して・・・おっと、なんでもないでありんす」

 

「鞘姫・・・ていいたいけど、役者の演技付きならツルギも推せるところね。あの子、佐賀で会った時はアイドルとして未熟に感じたけど、本職は役者だったみたい。気迫が全然違ったように感じた」

 

「うんうん、皆良かったよねー、ちなみに私はー、刀───「刀鬼、ですかね」」

 

名前をあげようとした矢先、純子ちゃんと被ってしまった。

思わず純子ちゃんと目を見合わせる。

 

「え?純子ちゃんも?偶然だねー!」

 

「アイさんも刀鬼が推し、なんですね。ちょっと意外でした」

 

「えー?そう?だってかっこよかったじゃーん。舞台のうえで鞘姫を守るとことか、ブレイドと戦うとことか」

 

「わかります・・・!鞘姫を守れず、そのやるせなさ、怒りをブレイドにぶつけるしかないところとか、思わず手に汗握ってしまいました・・・!」

 

「だよねだよねー!あそこ良かったよねー!」

 

「はい・・・!演者の方の迫真の演技とも呼べる想いが伝わってきて・・・!」

 

「うんうん!わかるよー!私も心配で手が震えちゃったし!」

 

純子ちゃん、目の付け所がいい!

そうそう!こういうトークがしたかったんだよねー!

心の中でも激しく頷きながら刀鬼(アクア)トークに花を咲かしていく。

 

「何よりもラストシーン、生き返った鞘姫の姿を見た刀鬼の顔・・・一人の表現者として、とても感服しました!」

 

「わかる!わかるよー!あそこかわいかったよねー!!」

 

「・・・え?」

 

「え?」

 

あ、やば。

やっちゃったー!

あのシーンでかわいい、はおかしかったかー!

 

ついこの前の雨の日を思い出して、アクアを愛おしいと思う感情が漏れてしまった。

突然のかわいい発言に驚いたのか、純子ちゃんがきょとんとしている。

 

「可愛かった・・・でしょうか?あ、いえ。私のこれも個人の感想ですから、悪いわけではないのですが・・・」

 

「まあ確かに。すごい演技だったけど、可愛いとは思わなかったかな」

 

「愛はん、純子はん、女には、男の泣く仕草に母性をくすぐられて可愛いと感じる時もありんすよ。かくいうわっちも、島原でお客をとった時に・・・」

 

「わ、わあー!?ゆ、ゆうぎりさん!そ、それ、私達が聞いても大丈夫な話と!?ほら!年齢とか時間とかー!」

 

「え?え?ど、どんな話しをしようとしていたのですか!?」

 

「猥談か!?猥談とや!?」

 

「ヴァウー?」

 

ゆうぎりが語り出した内容に皆の興味が移り、話の流れが変わっていく。

ほっ。ゆうぎりのおかげでさっきの失言はスルーしてくれるかも?

 

 

「は!?待って・・・!刀鬼役の役者の名前、星野アクア、て書いてある・・・!これってもしかして・・・」

 

・・・と思っていたら、先ほど貰った劇のパンフレットを見ていた愛ちゃんが、キャスト一覧のページの一部を指差しながら見せてきた。

 

「星野って・・・確かルビーちゃんも星野って苗字やったよね?」

 

「星野ルビー・・・星野アクア・・・もしかして二人は兄妹とか?」

 

「言われてみれば、この写真の顔、ルビーちゃんにそっくりやけん!」

 

「ん?ってことはよ?アイとも姉弟ってことやと?」

 

皆の視線がいっせいに私に集まる。

うーん、これは逃げられそうにないなー。

こうなったら・・・

 

 

「・・・えへへー、なーいしょ!」

 

「あっ、キメ顔で誤魔化しよんな!」

 

「てへぺろかわいい」

 

「愛さん・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁー、でも東京遠征楽しかったとね!」

 

「はい、都会はこんなにたくさんの人がいるんだって驚かされました!」

 

「ふふ、都はやはりいつの時代も華やかでありんすな」

 

「あっ!お土産は何買うと?実は東京行く前に調べたけん、東京では東京バナナっていう特産品があって・・・」

 

「さくら、多分それ違うと思う・・・」

 

「・・・納得がいかんばい」

 

サキちゃんが我慢できないとばかりに、肩を震わせている。

 

 

「サキちゃん?」

 

「お前らも思わんと?あたしら都会まできてやったのが、ちんちくの舞台観るだけなんてもったいないとや!」

 

「ええー!?」

 

「で、ですが私たちが無理を言ってここまで連れてきて頂いたわけですし・・・」

 

「言いたいことはわかるけど、私たちお金もないし、こっちに頼れる人もいないからどうすることもできないでしょ」

 

「・・・あっー!くそ!ゾクやってた頃ならその辺のゾクに喧嘩ふっかけて、バイクパクってハマまでかっ飛ばすのによー!」

 

 

 

 

「・・・物騒なことを叫ぶな。以前も言ったがお前はアイドルとしての自覚を持て」

 

「あ、巽だー」

 

悠々と建物から出てきた巽が呆れ顔でサキちゃんを嗜める。

舞台が終わった後も、しばらく出てこなかったけど誰かと話してたのかな?

 

「せからしか!ゾクの頃ならの話ばい!」

 

「・・・てか、あんた随分時間がかかったけど何してたのよ」

 

「ふっふっふ、当然ビッジネースの話をしていたに決まっとるじゃろがい!」

 

「え?」

 

巽が自慢げにサングラスを光らせる。

どうやったんだろ・・・あれ。

 

「───な、な、な、なんと!フランシュシュの東京での活動拠点が見つかりましたぁ!」

 

 

 

「東京での・・・」

 

「活動拠点・・・?」

 

思わず聞き返してしまう。

ていうかリリィちゃんの舞台を観たら、佐賀にとんぼ帰りするって話じゃなかったっけ?

 

「なに、リリィの舞台が一ヶ月は続くからな。この機会に我々も東京で活動し、知名度を上げようという作戦だ」

 

「やるやないか!グラサン!」

 

「ヴァウ!」

 

「そうじゃろそうじゃろ〜?お前らの名前がここで知れ渡れば、佐賀にもスポットライトが当たるようになり、ひいては佐賀を救うことに繋がるんじゃーい!」

 

「つまりまだこっちに居れるとー?わーい!」

 

「ふふっ、都の観光が続けられるのは嬉しいでありんすね」

 

「東京、か・・・」

 

「・・・」

 

盛り上がるサキちゃん達に対して、愛ちゃんと純子ちゃんはあまり喜んでいるようには見えなかった。何か思うところがあったのかな?

 

「アイちゃんも良かったとね!・・・一ヶ月もあるしルビーちゃん達にも会う機会があるかもしれんとよ!」

 

さくらちゃんが小声で教えてくれた言葉に、思わず止まったはずの心臓がときめく気がした。

確かに、ルビーやアクアにももっと気軽に会いに行けるかもしれない。

・・・そして何より、私の目的の彼にも会えるかもしれない。

 

「・・・だね!よーし、頑張っちゃうぞー!」

 

おー!とさくらちゃんと一緒にガッツポーズをする。

この一ヶ月はチャンスだ。絶対に無駄にできない。

 

 

 

 

 

 

 

「で!で!で!?その活動拠点ってどんなところと!?」

 

「ふっ・・・お前らの秘密があるからな・・・当然一軒家、駅まで徒歩十分、日当たり良し、駐車場つき、更に各自の個室もある、水道ガス電気もばっちり・・・」

 

「おおー!めちゃくちゃ当たりの物件とや!」

 

「すごかー!どこかのオフィスビルとかですか!?」

 

「ヴァゥヴァゥワー!」

 

あっ、このパターン、見たことがあるなー。

愛ちゃんと純子ちゃんも察したのか、興味を失ったみたいでハイライトを無くした眼で爪や髪をいじっている。ゆうぎりはいつもの笑顔だ。

 

「なあ!いついくと!?いついくとや!?」

 

「もちろん・・・」

 

「わくわく♪」

 

「今からじゃあああああああい!!!!」

 

「おっしゃあああああああああ!!!!」

 

「あんた達うるさい!ここは公共の場だから騒ぐんじゃないわよ!」

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

 

「騙したとやグラサンんんんんんんん!!!」

 

完全に日が暮れた頃、巽に連れられて着いた先は病院だった。

・・・それも既に廃棄されて久しい感じの。

 

「何が日当たり良し、個室つきの当たり物件とや!どこからどうみても廃病院やけんな!」

 

「屋上があり洗濯物は干せる、周りに建物はなく各部屋の日当たりは良し、部屋はたくさんあるから各自の個室も可能、間違ったことは言ってないじゃろがい」

 

「こんなの詐欺じゃないですかー!私、こんな怖いところ住めないとよ!」

 

「普段住んでるところもおばけ出そうな洋館だけどねー」

 

「・・・」

 

「──って純子ちゃんが言いそう・・・あれ?純子ちゃん?」

 

リアクションのない純子ちゃんは、白目をむいて立ったまま気絶していた。

 

「ちょっと純子!しっかりしてよ!こいつがああ言って期待通りのものが出ないのはわかってたことでしょ!?」

 

「・・・だとしてもこれは無理です。なんですかこれ飛行機を回避したと思ったらおばけ出そうな病院ってずるいです卑怯です住みたくないです・・・」

 

「当世の病院は古くなっても壮観でありんすなぁ」

 

「ヴァウウァー」

 

 

 

 

「ああーもうぶつくさと文句が多いやっちゃのー!屋根付き電気ガス水道使える物件の何が悪いんじゃボケー!」

 

「お前のセンスに決まっとるやろがー!常識的に考えても廃病院に勝手に住み着こうとする奴はアウトやろが!」

 

「・・・なんだそんなことか。しっかり許可は取っているに決まっとるじゃろがい」

 

「え!?」

 

「ふふん、お前らが思っている以上に、伝説のプロデューサー巽幸太郎の顔は広いんじゃい。・・・ほらお前ら!何を言ったって他に住むところはない!わかったらさっさと中に入って住みやすいように掃除始めるんじゃーい!」

 

 

 

・・・

 

 

 

「と、とりあえずこの病室の掃除は終わったとね!」

 

さくらちゃんが頭につけていた三角巾を取りながら、ほっと一息をつく。

この部屋にあった壊れかけのベッドやカーテンは一旦全部外に出してある。

愛ちゃんと純子ちゃんはゴミを捨てに行ったのでいない。

 

「まずはひと段落だねー」

 

「掃除道具はそれほど変わらないから、わっちでも使えて助かるでありんす」

 

「掃除機とかあればもっと楽だったんだけどねー」

 

「まあ電気がうまくつかないから仕方ないけん。幸太郎さんが戻ってくるのを待つしかないと」

 

巽は電気がつかなかったので、配電盤を見に行った。今は非常用の懐中電灯を灯りにして、周囲を照らしている。

私たちは夜目がきくけど・・・やっぱり灯りがないと怖いから、早く電気をどうにかして欲しいところだ。

 

「た、只今戻りました・・・」

 

「おかえりー」

 

純子ちゃん達が戻ってくる。

あれ?さっきよりも純子ちゃんが心なしか怯えているような・・・?

 

「戻ってくる途中で使えそうなものがないか、軽く他の病室を見てみたの。そしたら・・・人体模型を見つけちゃって・・・」

 

「うう・・・眼が合っちゃいました・・・動き出したらどうしましょう・・・」

 

あちゃー。

確かに、人体模型って不気味だし動き出しそうな見た目してるよねー。

ましてやこんな廃病院じゃ、あまり見たくないかも。

 

「あ、ならここで雑魚寝しよーよ。どうせ今日中に他の病室の掃除は終わらないんだし」

 

「そうね、なんだかんだであっちじゃいつも布団並べて寝てたし。使えそうなベッドから取ってきましょうか」

 

私の提案に、愛ちゃんが同意する。

他の皆も頷いていた。

 

「是非お願いします。・・・一人にしないでください・・・」

 

「そういえばサキとたえは?」

 

「・・・病院を探検してくるって走っていったと。たえちゃんもついてっちゃって・・・」

 

「・・・体良く掃除をサボったわけね」

 

「ま、まあ何か見つけてくるもしれんし・・・」

 

「はあ・・・、仕方ない。先に寝る準備始めましょうか」

 

運び出したベッドからシーツやふとんを持ってきて、掃除したばかりの病室に並べていく。

あっという間に大きなふとんの集合体ができあがった。

 

「・・・やっぱり、リリィちゃんがいないと寂しいとね」

 

「・・・だね。なんだかんだでずっと八人で夜は寝てたしねー」

 

「アイと純子はいない時もあったけどね」

 

「その節はご迷惑をお掛けしました・・・」

 

「いやー、あの離れってものがたくさんあって、考え事する時とか結構居心地いいんだよねー」

 

「それはわかります。ジメジメしていて、キノコの生育にも便利で・・・」

 

「キノコ?」

 

「・・・でもリリィちゃん、一人で寂しくないかな・・・?今は下宿してるって言ってたよね?ゾンビバレとか大丈夫かな・・・」

 

「あー、アク・・・リリィちゃんに聞いたけど、下宿先の人、ドライブイン鳥のCM撮ってくれた監督さんの家なんだってー」

 

「へー、あの強面の?」

 

「そうそう。あの人、顔に似合わず面倒見はいいから。案外監督の方がリリィちゃんにメロメロになってたりしてねー」

 

「うーん、あんまり想像つかんと」

 

「遊廓にいた頃、遊女を身請けしにきた若旦那とよく似た雰囲気をあの殿方から感じんした。きっとリリィはんは大丈夫でありんすよ」

 

 

 

 

 

「きゃあああああああああ!!!」

 

突如、絹を裂くような声が響き渡った。

思わず全員が飛び起きて、窓から外を見る。

 

そこには逃げ出すように走り去っていく人影が見えた。

 

「え!?え!?な、何事やと!?」

 

「あの人、誰だろ?」

 

「さあ・・・?」

 

私達に背中を向けているうえに街灯が反射して、顔はわからない。

だけど走り方や体格から、女の子のように見えた。

 

「あの慌てっぷり・・・もしかして・・・」

 

愛ちゃんが逃げていく後ろ姿を見ながら、心当たりがあるのか神妙につぶやく。

 

「ヴァウッ、ヴァウッ、ヴァーヴ!」

 

その後ろを追いかけるように、四つん這いで走るたえちゃんが現れた。

 

 

「た、たえちゃん!?」

 

たえちゃんは獲物を狙う狼のように、まっすぐ走ってくる。

その視線は私達ではなく、走り去った女の子に向いてるように見えた。

もしかして・・・あの子を追ってる?

さくらちゃんの声にも反応してないし・・・。

私達に気づかないくらい興奮してるなら・・・まずいかも。

 

さくらちゃんがいち早く飛び出してたえちゃんを止めようとする。

 

「たえちゃ・・・ぶべっ!」

 

・・・けど床に落ちていたごみに足を取られて、その場ですっ転んでいた。

仕方ない、ここは私が人肌脱ぎますかー!

 

「──たえちゃーん!こっちだよー!」

 

「ヴァウ!?」

 

懐から隠し持っていたゲソを取り出して、たえちゃんに見せびらかすように持つ。

案の定、大好物のゲソに食いついたたえちゃんが急ブレーキをかける。

 

「よーし、取ってこーい!」

 

そのタイミングで、私はたえちゃんが走ってきた方へとゲソを投げた。

 

「ヴァゥヴァゥワー!」

 

たえちゃんが投げたゲソへ飛びかかる。

見事、口でキャッチしたたえちゃんは美味しそうにゲソを食べ始めた。

 

「ふー、これで一安心だね」

 

「ナイス、アイ!」

 

「よくイカゲソなんてお持ちでしたね・・・」

 

「以前巽からくすねといたんだー」

 

「うう・・・顔ぶつけたとよ・・・」

 

「大丈夫でありんすか、さくらはん?」

 

 

 

 

「あの人、もう見えなくなっちゃいましたね・・・」

 

「ふむ・・・火事場泥棒でありんしょうか?」

 

「火事場っていうか、ゾンビと病院だし殺人現場にしか見えないけどねー」

 

「・・・おーい!」

 

たえちゃんが走ってきた方から今度は聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

「・・・サキちゃん?」

 

走ってきたのは、病院内の探検をしていたはずのサキちゃんだった。

 

「おい、やべーぞ!さっきのガキにあたしとたえの顔を見られたけん!」

 

「顔って・・・もしかしてゾンビだとバレたと!?」

 

さくらちゃんの目玉が驚きのあまり、文字通り飛び出す。

私と純子ちゃんは慣れた手つきで床に落ちる前にキャッチし、元あった場所へと戻した。

 

「あ、ありがと・・・。ってえええええええ!?ゾ、ゾンビってバレたらまずいとよ!?」

 

「やっぱり・・・さっきのは私達の顔を見て逃げてたんだ・・・」

 

「い、一体何があったんですか?」

 

「おー、あたしとたえが病院内を歩いてたらよ?懐中電灯の光が見えたから、お前らかと思って驚かしてやろうとそーっと後ろから声をかけたけん。そしたら懐中電灯を向けられて、叫んで逃げ出したけん」

 

「つまり、その時にサキとたえの顔を見られて逃げ出したって訳ね・・・」

 

「でもなんでたえはんは、あんなに夢中で追いかけたんでありんしょうか?」

 

「ヴァーヴ♪」

 

「・・・たぶん、何か食べ物でも食べてたんじゃない?それこそゲソとか?」

 

「・・・まあたえがあんなに本気で追いかけるならそれくらいか・・・」

 

「いやいや!?そ、そんなに落ち着いていられんとよ!ど、どやんす!?す、すぐにここから逃げる!?」

 

さくらちゃんは混乱してるのか、枕をもってシーツをほっかむりのように顔に巻いてあわあわしている。

流石にその姿で外に行ったら、ゾンビじゃなくても目立つと思うなー。

 

「まあまあ落ち着いてよ、さくらちゃん。あの人達がここでゾンビを見たーなんて言っても誰も信じないって」

 

「で、でも・・・」

 

 

 

 

「そうだ、出ていく必要はない」

 

 

そう言って巽がぬっと現れた。

その手には工具らしきものを持っている。

 

「お、巽おかえりー。どうだった?」

 

「ダメだな、手持ちの工具じゃ直せん。明日、改めて工具を大家に借りてくる」

 

「大家?」

 

「・・・もしかしてこの病院の持ち主のことじゃあ・・・」

 

「そうだ。言っただろうが、許可を得ている、と。だからここにいて問題はない。むしろ、大家からは最近肝試し目的の子供達が勝手に遊び場にして困ってる、とも言われている。見つけたら丁重に追い払って欲しい、ともな」

 

おおー、本当に許可をもらってたんだー。

見るからに廃墟って感じだし、勝手に使ってるのかと思ってた。

 

「じゃあさっきの人達って・・・」

 

「大方その子供達だろう。お前達は図らずも大家の意を汲んだ形になったな」

 

「今後も無断で入ってくるやつがいれば丁重に追い返して構わない。・・・ただーし!お前達がゾンビである以上、絶対に気をつけなければならないことがあーる!それが何かわかるかぁ?・・・さくら!」

 

「ええ!?・・・や、やっぱり顔を見られんようにするとか!」

 

「ちっがーう!顔を見られたところで証拠がなければ人は信じないものなんじゃーい!・・・つまぁり!絶対にキャメラに撮られるな!ということじゃい!」

 

「か、カメラ・・・ですか?」

 

「そうじゃい!近年、スマートフォンが普及したこの情報化社会において、人間の死角と呼べるものはほぼなくなった・・・」

「お前らは、俺の化粧なしではその死角以外で生きられない、まさに水槽の魚・・・いや、まだまだお前ら程度では魚は早い。せいぜいタニシといったところじゃい!」

 

「タ、タニシ・・・?」

 

「結局何が言いたいのよ・・・」

 

「つまぁり!見られた記録を残すな!ということじゃい!奴らのスマートフォンにはカメラが標準装備されている。一枚でもゾンビだとわかる写真を撮られたらお前らは終わり!フランシュシュの活動もパー!佐賀も滅んでこれまでの全てが無駄になると思え!」

 

「少なくとも佐賀は滅びないでしょ・・・」

 

「相変わらず巽は大げさに言うねー」

 

「・・・」

 

私の悪態に、巽は意味深な沈黙で返した後、私達に背を向けた。

 

「俺はもう少し配電盤をみてから寝る。お前らも早く寝ろ。明日は9時からミーティングだ」

 

そう言うと巽は再び病院の奥へと消えた。

 

「・・・最後の巽さん、何か様子が変でしたね・・・」

 

「うん・・・」

 

「グラサンが変なのはいつものことやろ」

 

「・・・それもそうね。明日も早いし、寝ましょうか」

 

 

 

 

・・・・・・

・・・

 

 

 

 

 

「──グッドモーニングエブリワン!佐賀から上京したサガジェンヌ達よ?都会の朝はどうだったかなー?」

 

「別に悪かないわよ・・・」

 

「なんじゃい!つまらんのおー!お前らぺーぺーの田舎アイドルが逆立ちしても住めない豪華な一等地じゃぞ?もっとありがたがって感謝感激雨霰せんかい!」

 

「廃病院でそんなテンションが上がるわけないやろ!」

 

「どこも悪くないのに入院してるみたいだよねー」

 

「・・・だいたいなんで霊安室なのよ!」

 

そう私達は何故か、地下にある本来遺体を一時的に安置する場所、霊安室に集められていた。

パイプ椅子に並んで座っている私達の後ろには、詳細不明の棺が納められている。

 

「ま、まさか・・・本当に中身、入ってたりしないとよね・・・?」

 

「ヴァウー?」

 

「ひいっ!?た、たえさん!それはおもちゃじゃありません!さ、触っちゃダメです!」

 

棺が気になるのか、触ろうとするたえちゃんを純子ちゃんが半泣きで止めようとする。

うーん、なかなか見てて面白い光景だね。

 

「ふー、やれやれ・・・。では問題だ・・・ゾンビパニックものでど定番とも言える舞台、三つ答えろ」

 

「はあ?」

 

「チッチッチッ・・・」

 

「ちょっと何勝手に進め「はーい!」て・・・アイ!?」

 

「はい!星野アイさん早かった!」

 

「学校とー、スーパーマーケットとー、病院!」

 

「んんん!!エクセレーント!正解したあなたには賞品としてこのゲソをプレゼントー!」

 

「わーい、たえちゃんあげるー」

 

「ヴァゥヴァゥワー♪」

 

私の手ごと食べかねない勢いで食べ始めるたえちゃんの頭を撫でつつ、思い出す。

懐かしいなー、監督からアクアが役者になるなら早めに名作みせとけーって色々な映画を見せられたっけ。

 

 

「つまぁり!ゾンビィパニックのど定番である病院!そしてその地下にはたいてい、秘密の研究施設があるもの!秘密の会議をするならうってつけなんじゃーい!」

 

「だから答えになってないわよ!バカなんじゃないの!?」

 

「あ、愛ちゃん!落ち着いとってー!このままじゃ話が進まんとよー!」

 

今にも巽に掴みかかろうとする愛ちゃんを、さくらちゃんが必死に宥めている。

どこにいても、変わらない私達だった。

 

「うぉっほん!では改めまして・・・、こっからのフランシュシュの行動方針を発表しまぁす!」

 

いつのまにか用意していたホワイトボードを巽が勢いよく叩く。

ホワイトボードはくるりと回転し、裏に書かれていた文字があらわになった。

 

「名付けて、フランシュシュ都会で人気アップ大作戦!フランシュシュの名をここでも広めるため、あえてグループとしてではなく、メンバー一人一人がソロで仕事を行い、その名を知らしめるのだ!既に仕事は用意している!さあゴーゴーゴーゴー!!!」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

 

 











俺の名前はヒムラ。

音楽で飯を食ってる作曲家だ。

 

これでも十年前は第一線で活躍していたアーティストだった。

おかげで今も音楽を仕事にして、生活できている。

これまでにいろいろな曲を作り、さまざまな歌詞を書いた。

傑作と呼べるものもあれば、駄作と呼べるものも中にはある。

だが十年以上もやってれば限界は来る。

言ってしまえばもう俺に、あの頃のような情熱は残っていなかった。

 

メールが届く通知が鳴る。

開いてみれば直近で受けた仕事の依頼主からだった。

新生B小町で歌う新しい曲。

是非、旧B小町の数多の曲を作った俺に依頼したい、と直々に連絡を貰って受けた仕事だ。

だがすでに、この依頼の締め切りは過ぎている。

このメールも催促の連絡に違いない。

 

そう、今俺は作曲に詰まっていた。

いわゆるスランプというやつだ。

 

新生B小町初のオリジナル楽曲。

当然、過去に作ったB小町の曲を超えるものを作りたい。

だがそのアイデアが浮かばない。

どうやっても過去に作ったものと、似たような曲になってしまう。

彼女達のライブ映像や歌、ラジオなどは視聴している。

 

だがフレーズが、メロディーが、歌詞が、思い浮かんでは何か違うと否定してしまう。

 

引退・・・しどきなのかもしれない。

俺という人間の才能はもうとっくに枯れている。

そう認めてしまえば・・・。

 

「・・・やめだやめ」

 

こんな気分じゃいい曲なんて作れっこない。

俺は気分転換に外へと繰り出した。

 

 

 

・・・

 

 

 

「・・・しまった。つい持ってきちまった」

 

外に出てしばらくしてから、背負っていたギターケースに気づく。

どうやら無意識に持ってきていたらしい。

思えば昔はギター一つ持ってよく東京まで行ったっけ。

名前を売るためにストリートミュージシャンまがいのことや、ライブハウスで名前も知らないやつと即興バンドを組んで演奏したりしたな。

懐かしい思い出に浸りながら、歩き続ける。

だが目の前を通り過ぎた、アイドルの宣伝トラックから流れる歌に現実に引き戻された。

 

「・・・ちっ」

 

気分を害された気がして思わず舌打ちが出る。

アイドルの宣伝トラックは通り過ぎた後、少し先で信号に捕まって止まった。

当然止まってる間は曲が流れ続ける。

俺はため息をついて来た道を引き返し始めた。

 

──そういや、なんで俺、アイドルソングなんかも作り始めたんだっけ。

 

昔はもっとゴリゴリのロックな曲ばかり作っていた。

だがある時からアイドルの曲も作り始めた気がする。

少しでも仕事が欲しくて手を出したのか、名前を売りたくて受けたのか。

・・・思い出せない。どうやら相当昔の記憶らしい。

 

「はぁ・・・」

 

外出したのは失敗だったな。

こんな気分になるくらいなら、家でギターを弾いてた方がマシだったか。

俺は自宅に帰ろうと思い、足を踏み出す。

 

 

だが自宅近くにある公園を通り過ぎる際、何気なく見たものに心を奪われた。

 

 

 

そこには一人の少女が佇んでいた。

黒の時代錯誤なセーラー服に身を包み、肩ほどの長さの白い髪を風にたなびかせている。

寂しげな公園にその儚げな姿が合わさり、まるで一つの絵画のように思えた。

 

思わず見惚れていると、その少女はこちらに気付いたのか顔を赤くして目を背けてしまった。

 

しまった・・・。

つい外聞も気にせずに見惚れてしまった。

今のご時世、未成年の女の子に俺のようなおっさんが声をかけるだけで犯罪になることがある。

仕事柄、若い女の子の歌う曲を作ることが多いと言ってもジロジロと見ていいはずがない。

俺はそそくさとその場を離れようとする。

 

だがどうしても先程の光景が頭から離れなかった。

公園で一人寂しく佇む彼女。

その姿を昔どこかで見たような・・・。

 

気がついたら彼女の方へと歩いていた。

もしかして今俺は、すごく恥ずかしいことをしようとしているのでは・・・?

そんな後悔が浮かぶが、押し殺して足を動かし続ける。

 

すぐに俺は彼女の目の前に立っていた。

彼女は驚き半分、不安半分といった表情でこちらを見ている。

・・・それも当然か。いきなりジロジロ見ていたおっさんが近寄って来たら誰だって怖がる。

 

・・・さて、近くまで来たはいいが何を言おう?

昔会ったことない?

・・・駄目だ。完全にナンパだこれ。

公園にいる君がとても綺麗だったからつい。

・・・いや、これも駄目だろ。さっきよりも酷い。

 

頭の中でどう話しかけるか考えるがいいものが思い浮かばない。

別に女性と話し慣れてないわけじゃない。

むしろ若い頃はよく遊んだし、今も仕事柄、若い女性と話す機会はよくある。

やめておけばよかった。

そんな後悔が頭に浮かんだ頃、ふと不安そうな彼女を見て気がついた。

・・・そういえばここに住んで何年も経つが、彼女のことは見たことがない。

 

「──君、ここらで見ないけどもしかして迷子?」

 

俺の質問に彼女は目をぱちくりさせる。

ずっと黙っていた男の第一声がそれだったのが、彼女にとって意外だったのかもしれない。

 

「・・・あ、はい。実は道に迷ってしまいまして・・・」

 

彼女は想像していた通りの鈴のような声で答えた。

俺は内心ほっとしつつ、まずは変質者じゃないことをアピールすることにする。

 

「ああ、やっぱりね。俺はこの近くに住んでるんだけど君みたいな・・・子、見たことがなかったから気になっちゃって」

 

思わず綺麗な、と言いそうになったのを我慢して話を続ける。

昔のイケイケだった頃ならいざ知らず、初対面の女の子に言ったら完全にセクハラ親父だ。

 

「そうだったんですね・・・、ご親切にどうもありがとうございます。実はここに行きたくて・・・」

 

彼女はまだ緊張してるようだったが、ぎこちない笑顔を見せてくれた。

たったそれだけのことで、心臓の鼓動が高まるのを感じる。

・・・ああ、こりゃあ重症だ。こんな年齢にもなってこんな若い子に一目惚れするなんて。

俺は照れ隠しに彼女が差し出したものを覗き込むように見る。

 

「・・・へぇ、今どき珍しいね、手書きの地図なんて」

 

彼女の小さな手に入っていたのは四つ折りにされた紙だ。

開いてみると住所や電話番号などの記載はなく、簡単な記号と絵で書かれた簡素な地図だった。

 

「スマホとか持ってないの?」

 

「はい、機械に疎いものでして・・・」

 

今時の女の子がスマホを持ってないなんてあるか?もしかして電話番号やロイン知られるのを警戒してる?と疑問が浮かぶが無視して地図を眺める。

ここは・・・近くのスーパーだ。

簡単なイベントステージがついていて、何度か観に行ったことがある。

 

「ここなら行ったことがあるよ。良かったら案内しようか?」

 

優しく、他意のないていを装って笑いかける。

だが彼女は露骨に怪しむ視線を送ってきた。

まあ、そりゃあそうか。

急に話しかけて来たおっさんが案内する、なんて言ったら疑うに決まってる。

 

「あ・・・」

 

「ん?」

 

彼女の視線が俺ではなく、背負っていたギターケースに向かってるのを感じた。

慌ててギターケースを強調するように背中を向ける。

 

「ギターが珍しいかい?」

 

「いえ・・・私も昔触っていたので、つい・・・」

 

共通の話題!これはチャンス!

 

「そうなのかい?俺も昔は結構やっててね。今日も気晴らしに散歩しようと思って外に出たら、いつのまにか背負っていたのさ」

 

「そうなんですか?でも、ふふ・・・それくらい音楽が好きなんですね」

 

今度は自然な笑顔を見せてくれた。

それはとても綺麗で・・・やはり、どこか懐かしい面影を感じさせた。

 

「・・・あの、やはり道案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」

 

「!!・・・ええ、俺でよければ!」

 

思わず力強く返事してしまった。

変に思われていないだろうか?

 

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

 

だが彼女は特に気にしたわけでもなく、深々とお辞儀をした。

よしっ、何はともあれこれでまだ話すことができる。

 

「では早速。・・・ああ、自己紹介がまだだった。俺の名前はヒムラです」

 

「はい。・・・フランシュシュ四号です。よろしくお願いしますね、ヒムラさん」

 

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

 

本当に不思議な雰囲気を漂わせる子だった。

彼女はフランシュシュというグループのアイドルらしい。

仕事柄、アイドルの子と話すことも多いがこれまで会った誰とも違う印象を感じた。

言ってしまえば・・・価値観が古い、そんな感じだ。

道行く人が持つスマホやタブレットに興味津々だし、車の往来もびくびくしながら眺めていた。

試しにスマホから音楽を流してあげると

 

 

 

「こ、この機械は電話だけでなく、ラジカセにもなるんですか!?でもどこにテープが・・・?しーでぃーが入るような大きさでもないですし・・・」

 

なんて言い出した時は、思わず吹き出してしまった。

 

 

まるで昭和の時代に取り残されたような少女。

どこか懐かしさを感じさせるのは、そのノスタルジックな姿だけでなく奥ゆかしさや言動がそう思わせるのだろう。

 

 

「それでですね・・・。あ、もしかしてここじゃないでしょうか?」

 

フランシュシュ四号が指差した先は確かに、地図にあった建物だった。

話しながら歩いていたらあっという間だったな・・・。

もっとゆっくり行けば良かったか。

 

「ああ、そうだね。ここで間違いないよ」

 

「ヒムラさん、ありがとうございました。きっと私一人じゃ辿り着けませんでした」

 

「ははっ、そんなことはないさ。この近くは交番もあるし、道を尋ねれば教えてくれるよ」

 

「警察の方は・・・ちょっと苦手で・・・」

 

まるで脛に傷があるような言い方だが、彼女にそんな経歴があるとは思えない。

だいぶ世間知らずなところはあるが、根は真面目でいい子なのはわかったからだ。

 

「なんにせよ、君の力になれて良かったよ」

 

名残惜しいがこれ以上彼女のそばにいる理由はない。

あまり付き纏っても不審がられるだけだろうし、ここらが潮時だろう。

 

「あ、ヒムラさん。もしまだお時間があればこの後のイベントに参加しませんか?」

 

・・・と思っていたらまさかの彼女の方からお誘いがきた。

天にも昇る気持ちになりながら、努めて冷静に答える。

 

「ま、まあ今日は休みだからね。戻っても散歩の続きをしようと思ってただけだし、せっかくなら参加しようかな?」

 

心の中で新曲の催促の連絡をしてくる女社長に謝りながら、さも誘われたから仕方なく感を出す。

 

「ありがとうございます!スタッフの方に伝えてチケット、もらって来ますね!」

 

フランシュシュ四号は俺の心情等つゆも知らずにそう言うと、建物の中へと走っていった。

 

「・・・はぁ、何やってるんだ俺・・・」

 

思わずその場にへたり込む。

十代の女の子相手に大の大人が一目惚れして、心臓をばくばくさせながら頼れる大人を演じて、かっこいいところを見せようとしている。

正直、この熱に浮かされている自覚もあった。だがそれにしたってこれはないだろ・・・。

自己嫌悪に陥りながらうんうん唸る。

 

だけど・・・。

身体の中から湧き上がるこの熱は、久しく感じていなかったものだ。

このまま彼女と接していれば、何か新曲の取っ掛かりを得られるかもしれない。

そう思った俺は、チケットを持って笑顔でこちらに走ってくる彼女に手を振って応えた。

 

 

 

 

・・・・・・

・・・

 

 

 

しばらくの間、フランシュシュが東京で活動することが決まった時、正直私はほっとしていた。

理由は簡単、佐賀までの飛行機が憂鬱だったからだ。

私の死因が飛行機事故ということもあってか、私は乗り物全般に弱かった。

巽さんの運転する車も、リリィちゃんの劇を観に行く時に空港から乗ったバスもすぐ酔ってしまう。

とりわけ飛行機はまずい。

手足の震えが止まらず、その場から動くことができなくなる。

愛さんのように自分の死因に負けたくない、とは思っているが身体は思うように動いてはくれなかった。

結局カバンに押し込んで貰い、皆と一緒に荷物に紛れることで何とか乗ることができて。

降りた後は、しばらくの間ゆうぎりさんの力を借りないと一人じゃ動けなかった。

 

結果的には問題を先延ばしにしてるだけ、というのは分かってるけど・・・。

今は飛行機に乗る機会が後になって安心していた。

 

 

 

巽さんの発案でしばらくの間、こっちでフランシュシュの名前を広めるためにメンバーの皆でそれぞれソロ活動をすることになった。

ソロでの活動は生前から一人で活動してた私にとって得意分野とも言える。

時代の変化に完全に順応できた、とはまだいえないけど、ここらで私も元アイドル組としての実力を見せるいい機会かもしれない。

 

 

 

・・・

 

 

 

「ヒムラさん、いい人でした」

 

道案内をしてくれただけでなく、イベントにも参加してくれるなんて・・・。

やはり音楽が好きな方に悪い人はいません。

 

ステージの脇にある控え室で待機していると、同じくイベントの参加者と思われる人が入って来た。

その子はキョロキョロと辺りを見回した後、私を見つけて声をかけて来た。

 

「どうも!フランシュシュ四号さんですよね?お久しぶりです!」

 

「あなたは・・・星野ルビー、さん?」

 

アイさんの生前のご家族で、今はかつてアイさんが所属していたアイドルグループ、B小町のメンバー、星野ルビーさんだった。

どことなくアイさんを思わせる笑顔で一直線に近寄ってくる。

笑顔が似てるのはやはりアイさんと姉妹だからなんでしょう。

それと同時に、先日見たリリィさんの舞台を思い出す。

いや正確にはそこに出演していた、星野アクアさんを。

 

「四号さん、こっちに来てたんですね!」

 

「はい、しばらくの間は滞在して、こちらで活動するつもりです」

 

「そうなんですか!?・・・あれ?でも今日はマ・・・他のメンバーはいないんですか?」

 

「今回はソロでのお仕事なんです。だから私一人。ルビーさんもお一人ですか?」

 

「はい!先輩が舞台でMEMちょは配信関係の打ち合わせで・・・。せっかくだから一人での活動に慣れるためにもってことでミヤコさんも今日はいません!」

 

やはり、そっくりだ。

アイさんだけでなく、アクアさんにも。

アイさんは否定していたけど、三人は姉弟(妹)に違いない。

ミヤコさん・・・というのは確かルビーさんが所属する事務所の社長だ。

ルビーさん達、B小町のマネージャーでもあるらしい。

 

「そうなんですね。今日はソロ同士、お互い頑張りましょう」

 

「はい!頑張りましょう!」

 

ルビーさんが隣に座る。

・・・。

どうしましょう・・・、そういえば私、ルビーさんと二人で話したことがありません。

いつもアイさんやさくらさん、サキさんが率先して話していたので、私は相槌くらいしか・・・。

 

確かルビーさんはアイドルを夢見てアイドルになったと聞きました。

ならばここは、同じアイドルの先輩として、頼れるところを見せなくては・・・!

 

「る、ルビーさん!」

 

「はい!なんですか?」

 

「えっと・・・あっ、る、ルビーさんはこれまでにどんなアイドル活動をされたんですか?」

 

ああー・・・つい当たり障りのないことを口に・・・。

で、でもルビーさんのアイドル活動を知ることで先輩らしいかっこいいアドバイスができれば・・・!

 

「えっとですね・・・主にユーチューブで配信したり、CDの販促ミニライブとかかな?」

 

ゆーちゅーぶ?・・・確かめむちょさんが得意としているいんたーねっとでしたっけ。

うう・・・いきなり苦手な分野が・・・。

 

「それとサガロックに出たり・・・あ!あとジャパンアイドルフェスで初ライブやったりしました!」

 

「じゃぱんあいどるふぇす?」

 

「はいっ、日本の名だたるアイドルグループが集まってライブフェスをやるんです!」

 

名だたる・・・私たち、呼ばれてない・・・。

まあ内陸でやったみたいですし、九州の端っこで活動してる私たちにお声は掛からないですよね・・・。

 

「確かその時の映像があったはず・・・」

 

そう言うとルビーさんがすまほを取り出して画面を触り始めた。

ヒムラさんも当然のように操作してましたけど、ボタンも無いのにどうやって画面を動かしてるのでしょうか・・・?

 

「あっ、あった!」

 

ルビーさんがすまほの画面をこちらに見せてくれる。

そこではルビーさん達B小町のメンバーが、赤い衣装に身を包んで大勢の人の前で踊っていた。

 

「わぁ・・・!すごいっ、こんなにたくさんの人の前でライブされたのですね」

 

「この時、私達初ライブでめちゃくちゃ緊張しててー、先輩なんか柄にもなく落ち込んでて新鮮だったなー」

 

恥ずかしそうに語るルビーさんですが、どこか嬉しそうにされてます。

ふふ・・・やはり初ライブは誰にとっても衝撃的な思い出になりますよね。

かく言う私も・・・。

・・・。

ん?初ライブ?こんなに大きな会場で?

わ、私たちなんて駅前の路上ライブだったのに・・・。

というか、私たちがこれまでライブした中で一番大きい会場がサガロックなのに、このすまほの中のじゃぱんあいどるふぇすはそれ以上の大きさな気が・・・。

 

「それでつい先輩に発破かけたりしてー・・・、あれ?どうしました四号さん?」

 

「いえ・・・ちょっと過去の自分を思い返して反省してます・・・」

 

「??」

 

これが都会のアイドル・・・うう、力の差を思い知らされた気がします・・・。

こんな私がアドバイスしようだなんて・・・。

 

「・・・四号さんって、歌が上手ですよね!私、歌うの下手でよく先輩から怒られてるんですけど、何かコツとかってあったりしますか?」

 

今度はルビーさんから質問をしてきました。

もしかして気を遣わせてしまったでしょうか・・・?

いえ、歌でしたら私の得意分野。

ここでかっこよくアドバイスして私も先輩としての威厳を──

 

「───あら、星野ルビー。自分が音痴だという自覚はあったのね」

 

突如割って入った声に、思わず口を閉ざす。

誰ですか・・・私がかっこよくアドバイスしようとしたのを邪魔するのは・・・。

少しもやもやしながら声のした方を見る。

声の主は控え室の扉を開けた場所に、堂々と仁王立ちしていた。

同じアイドル・・・でしょうか?

どことなく見覚えがあるようなないような・・・?

 

 

「あっ、しおりんだー!」

 

「ふふっ、星野ルビー。私を前にして、そのあだ名で堂々と呼ぶその大胆さは嫌いではないわ!」

 

ルビーさんがその人の名前を呼ぶ。

どうやら知り合いらしい。

しおりんと呼ばれた方は靴を鳴らしながら力強く歩いてくると、私たちの前で止まった。

 

「久しぶりね、星野ルビー!あの時の答えを聞きにきたわ!」

 

「あの時?あ・・・」

 

「思い出したかしら?いえ、あえて忘れていたことは水に流してあげる!あなた達がアイアンフリルに入るかどうか、その答えを聞かせてもらおうじゃない!」

 

「えーと、やっぱり私はB小町で活動したいというか・・・」

 

「ふふ、わかったわ!まだ考えが変わってないようね!いいわ!なら、待ってあげる!次こそ、いい返事を引き出してみせるわ!」

 

「わあー相変わらず会話が通じないー」

 

ルビーさんに豪快に振られたしおりんさんは、気にせずに私の方へと視線を向けた。

 

「そしてあなたは初めまして!私は詩織!アイアンフリルのセンターよ!」

 

手を組んで胸を張りながら大声で言い放つ。

全身から絶対の自信が感じられる太陽のような方だった。

・・・ん?今この方が言ったアイアンフリルって確か愛さんの・・・。

 

「・・・あなたの名前も聞いていいかしら!」

 

私が考えに耽っていると、返事がなかったのを気にしてか、こちらに身体ごと視線を向けてきた。

行動や言動がいちいちパワフルな方ですね・・・。

 

「ああ、すみません。私はアイドルグループ、フランシュシュの四号と言います」

 

簡単に自己紹介をしてぺこりとお辞儀をする。

詩織さんはそれを聞いて、目を丸くした後、ずいっと乗り出してきた。

 

「フランシュシュ!その名前、知ってるわ!佐賀で活動しているグループね!」

 

驚きました。

私たちはここから遠く離れた佐賀で活動しているご当地アイドルですし、こっちの方に知られているとは思いもしませんでした。

 

「以前佐賀に遠征した時に、名前を聞いたのよ!サガロックにも参加したのだけど、残念ながらあの時はスケジュールが押しててあなた達のライブを見れなかった!でも映像であなた達のライブを見てから注目してるわ!」

 

「・・・アイアンフリルは今とっても人気のアイドルグループなんです!だからそんなグループのセンターの子に注目されるなんてすごいことなんですよ!」

 

ルビーさんが声を抑えて私だけに聞こえるように教えてくれる。

どうやら詩織さんは、尊大な物言いですがフランシュシュを褒めてくれたらしい。

まあ・・・それは悪い気がしないので嬉しいですけど。

 

 

 

「──特に三号と七号!あの子達はチームとして、個として、それぞれ高い実力を持っていると私は分析してるわ!」

 

「──っ!」

 

「あら、ごめんなさい。私、嘘は嫌いなの。だから今いったことは本心よ」

 

 

三号と七号、つまり愛さんとアイさん。

私達、フランシュシュにもグループ内での人気の差は存在する。

とりわけアイドルには握手会、チェキ会等互いの人気の差を明確にするイベントまで存在する。

私がいた時代になかったこの文化に、まだ私は完全に適応したとは言えなかった。

チェキ会ではブロマイドの販売にとどめてるし、握手会でもファンの方と直接触れ合うようにはしていない。

私自身、ファンサービスが苦手なのもあるが、やはりアイドルは舞台の上のパフォーマンスでファンを魅了すべきだという考え方が抜けてないからだ。

 

コーチと巽さんから現代のアイドル観を聞いても、私はそのスタンスを変えていない。

昭和の時代に生きたアイドルとして、私は私の矜持を貫くと決めたから。

 

だけど、結果はまだ出ていない。

少しずつファンは増えてきているけれど、他の皆さん・・・とりわけ愛さんとアイさんに人気で差をつけられているのは知っていた。

 

そして自分が、その事実に焦りを感じていることも。

 

 

 

 

「──アイアンフリルの詩織さーん!ちょっといいですかー!」

 

私が言い淀んでいると扉が開いてスタッフさんが入ってきた。

どうやら詩織さんを呼んでいるらしい。

 

「ステージの立ち位置で確認したいところがありましてー!」

 

「──言いたいことは言い終えた。二人とも、次はステージの上で相見えましょう!」

 

そう言うと入った時と同様に堂々と出ていった。

再び控え室には私とルビーさんだけになる。

 

 

 

 

 

 

「・・・四号さん四号さん」

 

二人だけになった空間にルビーさんの声が響く。

いつの間にか、ルビーさんが私のことをじっと見つめていた。

気づくのが遅れた私は努めて冷静に視線を向ける。

 

「な、なんでしょうか?」

 

しまった、表情に出てしまっていたでしょうか・・・。

ルビーさんに変な心配をかけて・・・。

 

「──やっぱり七号ってとってもすごいですよね!同じアイドルとして憧れちゃうっていうか〜、もう美の化身とも言ってもいいし、そこにいるだけで極楽浄土を作って衆生を救ってるっていうか〜」

 

「・・・え?」

 

い、今なんて?

突然のルビーさんの長尺の言葉に、一瞬頭が真っ白になる。

それに何やらあまり聞き慣れない単語がたくさんあったような・・・。

 

「え?思いません?何で?」

 

私の無言に否定の意を取ったのか、ルビーさんが不思議そうに聞き返してくる。

あれ?もしかして私の方がおかしいのでしょうか・・・?

 

「いえ、そもそも言ってることの意味がわからないというか・・・」

 

「え?だって四号さん、七号と同じグループでアイドルやってるんですもんね。七号と寝食も一緒にしてるんですもんね」

 

続く言葉にやはり意味がわからず、目をぱちくりさせる。

それを見たルビーさんも、何故通じてないのかわからないとばかりに小首をかしげていた。

 

「・・・なりません?あのサラサラの長い髪に包まれて寝たいとか、あの髪の間から見える白いうなじに指を這わせたいとか、あの天上の香りを鼻いっぱいに嗅いで脳内麻薬バチバチにキメたいとか」

 

脳ない・・・???

な、なにやら後半はもっとよくわからない言葉がたくさん・・・?

も、もしかしてやっぱり私のことを慰めるために冗談を言って笑わそうとしてるんじゃ・・・。

 

「・・・??」

 

眼が据わってる・・・。

本気の眼です、これ・・・。

 

「・・・冗談は置いておいて、私は四号さんの歌、好きですよ」

 

「え?」

 

冗談?絶対に本気の眼でしたけど・・・

 

「四号さんのライブ、自分の中に譲れない何かがあって、それを心の底から信じている感じがして。私、好きなんです」

 

ゆっくりと語り出したルビーさんは何かを思い出すかのように目を瞑る。

 

「・・・私の大好きなアイドルも、歌やダンスを通して何かを伝えたいって想いが感じられて、いつもキラキラと誰よりも輝いていて・・・!だから、私もそんなアイドルになりたいんです!」

 

それはルビーさんの実感が籠った、心からの言葉に聞こえた。

 

「だから、四号さん!こんなこと言うのもなんですけど・・・負けないでください!四号さんの何かを曲げずに、アイドルを貫いてください!」

 

 

ルビーさんの視線に、既視感を感じる。

ああ、そうだ。

あの海でダンスを教えてくれたコーチに似ているんだ。

着ぐるみで顔はわからなかったけど、その想いは、今目の前にいるルビーさんと変わらないように思えた。

 

心の中で、詩織さんの言葉に感じていた劣等感がすっと引いていく。

なんというか・・・ルビーさんはアイさんの妹っていうのがよくわかるというか・・・。

こういうのもきっと、アイドルの才能なんでしょうね。

 

つい、悩んでいた自分が馬鹿らしくなってしまいました。

 

「──はい、元よりそのつもりです。私はフランシュシュとして、ステージに立つと決めた時から私のアイドルを曲げないと決めていますから」

 

ルビーさんに、自信に満ちた笑みで返す。

紺野純子はアイドル。

昭和の時代に生まれ、現代でもアイドルとして活動する一人のゾンビ。

そんな当たり前のことを、再認識しただけのことだから。

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

「はい、じゃあリハーサル始めまーす。リハと言ってもスーパーの小さなイベントなんで立ち位置と進行の確認くらいでーす。じゃあB小町さん、どうぞー」

 

「はーい!B小町の星野ルビーです!本日はよろしくお願いします!」

 

「はい、よろしくねー。じゃあ曲流しまーす」

 

イントロが流れ始め、ルビーさんが軽くダンスの振りをしながら歌い始める。

先ほど聞いた話では、本番はダンスと歌、両方でいくらしい。

 

「ダンス・・・お上手ですね」

 

本番に備えて体力を温存するために、振りは最小限に抑えている。

だけど要所要所でキレのある動きを見せており、

ルビーさんの技術の高さが感じられた。

 

「・・・対して歌は・・・」

 

正直、かなり微妙・・・ですね。

リハだから抑えている・・・というだけではなく、歌声に芯がない。

これでは技術以前の問題だ。

ルビーさんは先程、歌に関してアドバイスを求めていました。

つまり、自分でも歌に自信がないということ。

 

「・・・」

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

「よーし、リハは問題なし!本番もこの調子で・・・!」

 

控え室に戻ってきた私は、先ほどまでのリハを思い出して段取りを再確認する。

今回は初のソロでのお仕事。代わりのマネージャーさんは来てるけど、ミヤコさんもいないのは初めてだ。

よし、今のところ問題はなし!これなら今後、ソロのお仕事も積極的に受けていける。

先輩やMEMちょがいない間もアイドル活動をこなして、一歩ずつ夢へと進めていく。

そしていつかは、ドームに・・・。

よし!まずはこの後のお仕事を完璧にこなさないと!

 

「ルビーさん、お疲れ様です」

 

「四号さん!」

 

私と同じく、リハをしていたフランシュシュ四号さんが控室に戻ってくる。

六号がアクアと同じ舞台に立っている間、こっちでフランシュシュは活動するみたいで、今日は四号さんもソロでのお仕事らしい。

本音を言えばママとブッティングしたかったけど、こっちに来てることがわかっただけでもラッキーだ。

 

「お疲れ様です!結構ステージ広かったですねー」

 

アクアが言うには、四号さんは昭和の時代にアイドルブームの先駆けとなった紺野純子、というアイドルらしい。

すごい人なのはわかるけど、正直昭和だとかアイドルブームとか言われてもピンとはこない。

ただ、歌は上手いしライブでのパフォーマンスも慣れてる感じがした。

そして何よりその見た目だ。

数多のアイドルを推してきた私だからわかる。

儚げで憂いを帯びる表情に仕草、間違いなく先輩とは別種のコアなファンにウケるタイプ・・・!

 

「ルビーさん、少しいいですか」

 

そんな彼女が、控え室に戻るなり私に真剣な視線を向けながら告げた。

 

「先程の歌について、アドバイスをさせて頂こうと思うのですが・・・よろしいですか?」

 

「!! はい!ぜひ!」

 

やった!四号さんくらい歌が上手い人なら効率的な練習の仕方とか教えてくれるかも!

 

「ではまず・・・ルビーさんは歌が下手です」

 

ど直球のダメ出し来た〜・・・。

いや歌が下手なのは自覚してたけど、先輩やMEMちょに言われるならともかく、全くの他人に言われると流石に傷つくよ・・・。

しおりんにも音痴って言われたし、連続なのもあって結構くるなぁ・・・。

 

「・・・失礼しました。言い改めます。ルビーさんは歌い方がわかっていません」

 

それは同じことでは?

とは思ったけど、下手に事を荒立てても仕方ないしここは同意しておくことにする。

 

「そ、そうですか?確かに音痴なのは自覚ありますけど・・・」

 

「いいえ、ルビーさんはわかっていません。ルビーさんは歌う時、何を考えていますか?」

 

「えーと、歌詞とかダンスの振りとか・・・」

 

「いいえ、それらは身体に覚え込ませるもの。・・・ルビーさん、歌う時は誰に届けたいかを考えて歌うんです」

 

「誰に・・・」

 

「ルビーさんの歌には、目標としてる誰かがいて、その人のようになりたくて歌っている、そんな印象を受けました」

 

誰か・・・それは決まっている。

私の夢は(さりなの頃)から、ママのようなアイドルになることだから。

 

「もちろん、夢を追うことは悪いことではありません。歌うモチベーションは幾らあっても悪いことはありませんから。でもそれだけでは足りないんです。アイドルならば、歌を届ける相手のことも想って歌わないと」

 

届けたい相手。

でもそれは・・・。

 

「ルビーさんにはありませんか?自分の歌を聞いてほしい方。最初は誰でも構わないんです。ご家族でも、恩師でも。その人の顔を思い浮かべて歌う。芯の通った歌は、とても強く、聴く人の心を震わせますから」

 

 

 

・・・

 

 

 

 

私にとって、誰よりも歌を届けたい相手。

そんなの決まってる。

さりなをずっとそばで支えてくれた、さりなを大切にしてくれたせんせーだ。

ママのことも大好きだけど、誰よりも届けたい相手はゴローせんせーだ。

だけど先生はもういない。

あの日見た、物言わぬ姿は今もしっかりと覚えてる。

私が夢を叶えても、その姿はもうせんせーに見てもらうことはできない。

 

だけど私は夢を追うことにした。

二人のママに貰った愛情を胸に、進み続けると誓った。

 

だからだろうか。

アイドルになりたいという願いはあっても、明確に歌を届けたい相手がイメージできないのは。

 

 

 

・・・

 

 

 

 

「では本番始まりまーす。司会の指示に従って進行してくださーい。さーん、にーい・・・」

 

「──はい!本日は当イベントにお越し頂き誠にありがとうございます!有名人を呼んでトークショーだったりピアノの演奏会だったりやってきましたが、今回はなんと!大人気のアイドルが来てくれました!もちろんライブもあるので是非最後まで参加していってくださいね!」

 

司会のお姉さんがテンション高めの挨拶を始める。

私たちはゲストとして、このノリに順応しながらトークをしないといけない。

 

「それじゃあ早速、可愛いゲストの皆さんをお呼びしましょう!アイドルの皆ー!!」

 

「「「はーい!」」」

 

しおりんと四号さんと並んでステージ脇から飛び出す。

お客さんは・・・思ったよりまばらだ。

ステージの手前側に、同じ特攻服を着た人たちが数人集まっている・・・たぶんアイアンフリルのしおりんファンの人達だろう。

それ以外はステージを遠巻きに眺める人、アイアンフリルのファンから離れて観る人・・・B小町やフランシュシュのファンがいるようには見えない。

元々そんなに大きくないイベントだ。

アイアンフリルという巨大な蓑に隠れてしまい、私たちが参加していることを知らないのかもしれない。

 

「初めまして!B小町の星野ルビーです!」

 

ぱち・・・ぱち・・・。

うう・・・予想はしてたけど拍手が少ない・・・。

 

「初めまして、フランシュシュ四号です」

 

四号さんにも同じくらいの拍手だ。

 

「初めまして!アイアンフリルの詩織です!」

 

「「「しおりーん!」」」「「「かわいいよー!」」」

 

「ありがとうー!」

 

ステージ前にいたアイアンフリルのファンが、しおりんの声に合わせて名前を呼ぶ。

むむむ、流石現役の大人気アイドル・・・!

あっという間に会場の空気を持っていった。

 

ただでさえ少ないお客さんに加えて、このアウェー感。

私が思っていたよりも、この中でパフォーマンスをするのは大変かもしれない。

 

脳裏に始まる前のしおりんの言葉が蘇る。

 

 

 

・・・

 

 

 

 

『──ふふっ、あなた達、気づいたかしら?ここのスタッフの意図に』

 

『えっ、何が?』

 

『パフォーマンスを披露する順番よ。あなた達二人はともかく、アイアンフリル()はトリ。・・・つまり世間はあなた達よりも私達を評価しているということ』

 

『早い話、あなた達がどんな拙いパフォーマンスを披露しようとも、私に任せればどうとでもなると考えているのよ』

 

『だから安心なさい?あなた達がどんなにミスをしようと、私が全部帳消しにしてあげる!安心して舞台に立つことね!』

 

 

 

 

・・・

 

 

 

しおりんの言っていた通り、お客さんもスタッフさんも私達よりアイアンフリルに期待している。

この舞台の主役はアイアンフリルで私達は脇役なのかもしれない。

 

だけど──

 

 

それがステージに立たない理由にはならない。

だって私の夢はドームだ。

ここはまだ、ただの通過点に過ぎない。

通過点だからこそ、私は時間を無駄になんてできない。

アイアンフリルの詩織も、フランシュシュの紺野純子も超えて、私はいつかママが立つはずだったあのステージに立つ。

そのために私が今できること。

 

それは、全力であの二人から学ぶこと。

 

アイドルとして、私はまだまだ二人に及ばない。

 

私は、私に今できることを一歩ずつやって、アイドルとして成長してみせるんだ!

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

「それじゃあそろそろ、いつものコーナーいってみよっかー!ゲストさんのパフォーマンス、皆も早く観たいよね?正直、私も早く観たいです!じゃあ皆さん、準備お願いしまーす!」

 

そう言うと司会のお姉さんがステージ脇へと移動する。

私としおりんも続いてステージから避難した。

 

「さて、あれだけ大口叩いたんだもの。どんなパフォーマンスを見せてくれるかしら?」

 

しおりんが楽しそうに笑みを見せる。

その視線の先では四号さんが、見慣れるぬものを持って立っていた。

あれは・・・ギター?

なんで?ていうかいつのまに?

リハでは歌だけだった。

裏方のスタッフさんが流す曲を四号さんに確認してるのも見た。

 

事実、スタッフさん達も突然持ち出したギターに困惑してる。

 

「・・・」

 

だけど四号さんは周りの疑問も気にせずにギターを弾き始めた。

 

〜♪

 

綺麗な音色が流れる。

アンプは繋がっていない。

それでも元々広くないこのステージでは、充分に観客席まで届く。

 

「──夕焼けを遠く見送って、明日が迎えに来てくれるの〜♪」

 

弾き語り。

四号さんが歌い始めた曲は、意外にもバラードだった。

ゆっくりとしたメロディに乗せて、四号さんの力強い歌声が鳴り響く。

 

「解けかけ枝垂れたポニーテール、紅く色づいた恋心〜♪」

 

およそアイドルらしくない曲。

だけど四号さんが生きた時代では、こういった曲をアイドルは歌っていたのかな。

 

「ルルルル〜♪」

 

最初はその意外性に興味を持ったお客さんだけど、だんだんと熱を失っていく。

もともとしおりん目当てできたアイドルファンには若い人が多い。

昔ならばいざ知らず、今の子には刺さりづらいのかもしれない。

けど・・・。

 

ステージの脇から見てるからわかる。

興味を失う人とは別に、音色に聞き惚れている人、歌声を聞いて足を止めてイベントを観に来る人、決して少なくない人達が四号さんに惹かれて集まってくる。

 

その人達は皆、楽しそうに四号さんのステージを見て眼を輝かせていた。

 

これが・・・歌で人を魅了するということ。

四号さんが私に伝えたかったこと。

 

私にできるだろうか。

四号さんのように、ママのように、人を魅了する歌が歌えるだろうか。

 

本当に歌を聞いてほしい人がもういない。

誰に届けたいか、まだイメージできていない私に。

 

 

 

・・・

 

 

 

 

彼女の歌う姿を見て、俺は声を失っていた。

イベントステージ開演前に急にやってきて、ギターを貸してくれって言うから渡したら・・・。

 

彼女の歌うこの曲は、『50と4つの忘れ物』

かつて昭和の時代、アイドルブームの先駆けとも呼ばれたあるアイドルのデビュー曲。

 

ああ、やっと思い出した。

彼女に感じた既視感。

子供の頃、親父と一緒にテレビで観たアイドル。

その持ち歌がこの曲で、その朧げながら記憶にあるアイドルに彼女はどことなく似ていたのだ。

 

そういえば、俺が初めてアイドルソングの作曲の仕事を受けた時も、あの子の歌を聴きながら作ったっけ。

なんてことはない。

結局俺は、昔見た幻影を彼女に見ただけだったのだ。

 

全くもって、なんて恥ずかしい話。

子供の頃の多感な時期だったとはいえ、テレビのアイドルにハマって、おっさんになった後もその姿に心を揺さぶられるなんて。

 

でも、悪くはなかった。

まるで若い頃に戻ったような感覚。

彼女の歌には彼女の漂わす郷愁とも呼べる思いがこもっており、聴くものにどことなくかつて感じた心を呼び起こさせた。

 

「朝焼けが部屋を染めかけたら、甘い温もりで溺れたい〜♪」

 

きっと俺は、この先もこの歌を聴くだろう。

迷った時、悩んだ時に聴いて、かつての自分を思い起こす。

それはきっと恥ずかしい気持ちも呼び覚ますだろうけど。

それ以上に、得られるものがあるだろうから。

 

 

 

 

・・・

 

 

 

「昨日はとっくに、遠い日よ〜♪」

 

歌い終わった四号さんがギターを外し、静かに頭を下げる。

それと同時に、決して少なくない拍手が響き渡った。

 

「い、いやー、意外な選曲でしたが素敵な曲でしたね!なかなか懐かしいメロディでしたがなんて曲なんでしょうか?」

 

「50と4つの忘れ物、と言います。昔、あるアイドルがデビューした時に歌った曲です。私、フランシュシュ四号も彼女のような昭和の矜持を胸に、アイドル活動を続けています。もし興味があれば応援して頂けると嬉しいです」

 

そう言うと四号さんは再びお礼をした後、ギターをもって退場した。

 

「ありがとうございましたー!・・・それでは次のアイドルの方、よろしくお願いしまーす!」

 

司会の人に呼ばれて私はステージに立つ。

目の前に広がるのは、先ほどよりも少しだけ増えたお客さんの顔。

私はこの人たちに、これから私の歌を聞かせる。

 

『アイドルならば、歌を届ける相手のことも想って歌わないと』

 

・・・わかってる。

でも、いったいどうすればいいの?

 

届けたい人がいない私は、どう歌えばいいの?

 

イントロが流れ始める。

サインはB。

アイの持ち歌で、私が好きな歌の一つ。

歌詞もダンスの振りも全部頭に入ってる。

目を瞑ってだって歌って踊れる、今は星野ルビーの持ち歌。

そうだ、ママはいつも誰に向けて歌っていたんだろう。

やっぱりファンだろうか。

それとも元社長?ミヤコさん?

それとも・・・私とアクアの父親へだろうか。

わからない。わからないよ・・・。

 

・・・だけど、一つだけ確かなことがあった。

それはあの病室で私が聴いたアイの歌は、いつだって私を元気付けたこと。

テレビの中のアイはいつも笑顔で、その歌は病室から出られない私に生きる気力をくれた。

 

ああ、そうか・・・。

そうだったんだ。

私がアイの歌にいつも元気をもらっていたように、私も私を観てくれる人達に元気を出してもらえるように歌えばいいんだ。

 

私が歌を届けたい相手。

私が幸せにしたい相手。

それは一人だけじゃない。

病室から出られない人、アイドルを夢見てる人、・・・私を信じて応援してくれる人!

その想いを、愛を乗せて!

私は恐れずに歌えばいいんだ!

 

「───あ・な・たのアイドル〜♪」

 

 

 

 

 

 

「サインはBー!」

 

 

・・・

 

 

 

ルビーさん。

そうです。

歌はもっと自由に歌っていいんです。

心を込めて、届けたい相手のことを想ってしっかり歌っていれば、その想いは伝わるんです。

 

ステージの脇からお客さんの顔を覗き見る。

ルビーさんの歌はまだまだ発展途上ですし、お世辞にも上手いとは言えません。

ですが、確かに、今この瞬間彼女の歌に聴き惚れている人がいる。

 

きっとこれでルビーさんは、よりアイドルとして羽ばたくことになるだろう。

今更ですがライバルに塩を送った、と言うことになるのでしょうか?

・・・。

いいえ、そうだとしても後悔はありません。

だってルビーさんがアイドルとしてどう輝くのか、アイドルの先達として気になってしまったのですから。

 

「・・・あなたの差し金かしら?」

 

「詩織さん」

 

いつのまにか、私の横に立っていた詩織さんが声を潜めて話しかけてきた。

 

「星野ルビーには確かにアイドルの才能がある。だけどまだ磨かれていない、ただの原石だった。それが今、ほんの僅かだけど輝こうとしている。その未熟だった殻を破り捨てて」

 

「・・・ええ。ルビーさんには天性と言っていいほどの才能がある。事実、私はほんのちょっとしか口出ししていませんしね」

 

詩織さんの瞳は、私のことを値踏みしているように見えた。

それがわかっていながら何故?と問いかけるように。

 

「恐ろしいですか?ルビーさんの才能が」

 

「・・・まさか。確かに星野ルビーにはアイドルとして何かあるとは感じている。順当に成長すれば、いずれはアイアンフリルの脅威となることもね」

 

 

 

「だけど、そんなことは関係ないわ。私たちの前に立ち塞がるのなら、誰であろうと叩きつぶす。星野ルビーだろうと、フランシュシュ四号だろうと」

 

その言葉はルビーさんだけでなく、私にも向けられていた。

それはつまり、先程の歌で私の認識を改めたということ。

 

「ええ、望むところです」

 

ルビーさんの歌が終わり、拍手が鳴り響く。

その音は、私の時と変わらない。彼女がお客さんに認められた証だ。

やがて司会の方の次の曲を知らせる声が聞こえてくる。

 

「見ていなさい、王者のステージを。ここから先は、トップアイドルだけが立つ夢の舞台。あなた達なんてまだまだ私の敵じゃないってことを証明してあげるわ!」

 

詩織さんは言い放つと、堂々とステージへと歩いていった。

 

 

 

・・・・・・

・・・

 

 

 

結局、あの後はアイアンフリルの詩織が全てを持っていった。

彼女が登場すると同時に舞台は色めき、その歌声で観客席は最終的に満員になっていた。

 

言ってしまえばアイアンフリルの一人勝ち。

だが・・・

 

「俺にとっちゃあ、もっと収穫のある1日だったな」

 

背中に背負ったギターケースに触れる。

あのライブの後、彼女から返してもらったものだ。

その時の熱がまだ残っているかのように、ギターから暖かさを感じた。

 

「それにしても、まさか依頼主の事務所のアイドルもいるとはねぇ」

 

B小町の星野ルビー。

実物を見るのは初めてだったが・・・映像で見た姿とは一回りも違うように感じた。

歌はまだまだだが、歌に対する姿勢が変わった、そんな印象を受けた。

 

「やれやれ、昔から頑張ってる子に弱いんだよなぁ・・・」

 

頭の中に、昨日まではなかった新しい歌詞が、メロディが湧き上がっていく。

早く書き起こしたい、打ち込みたい。

今ならいい曲が作れそうだ。

 

「・・・ああー!早く帰って作曲してえー!」

 

俺は年甲斐もなくスキップをしながら自宅までの帰路を楽しんだ。

 

 

 

・・・・・・

・・・

 

 

 

「純子ちゃんおかえりー」

 

「ただいま戻りました」

 

病院に戻ってくるとアイさんが起きていたようで、出迎えてくれました。

 

「まだ起きていたんですね」

 

「眠れなくてねー、散歩がてら病院内を見て回ってたら純子ちゃんが帰ってくる頃かなー、と思って待ってたんだー」

 

そう言いつつ、アイさんは眠そうにあくびを漏らしていた。

そんなアイさんにちょっと笑みが溢れるも、気づかないふりをして歩き出す。

 

「アイさんのお仕事はいかがでしたか?」

 

「着ぐるみと一緒に子供達の前で歌って踊るお仕事!何のキャラクターかはわからなかったけど、新鮮で楽しかったよー」

 

でもリリィちゃんの方が向いてたかもー、なんて続けるアイさんと互いのお仕事であったことを話す。

生前、一人でずっと活動してた身としては、この互いのお仕事を報告し合うのは未だこそばゆく感じてしまう。

いい加減に慣れないと、とは思っているがもう少しこの感覚に浸っていたいと思うのも本音だ。

 

「───というわけでルビーさんと共演しました」

 

「えー!?いいないいなー!!そっちのお仕事受かればよかったー!ルビー、元気そうだった?アイドルちゃんとやれてた?」

 

「ふふっ、そんなに心配しなくてもアイドルとして立派にお仕事されてましたよ。私達も負けていられないと改めて思い知らされました」

 

「そっか・・・。純子ちゃんに褒められるくらいだから、きっとすごい頑張ってたんだねー」

 

「え?私、そんなに他人の褒め言葉を言わないイメージがついてますか?」

 

「あれ?気づいてなかった?純子ちゃん、自分にも他人にも厳しいから、滅多なことじゃ言ってないよ?」

 

アイさんの何を当たり前のことを、と言わんばかりの顔に、つい冷や汗が流れた気になる。

そういえば、練習の時もあまり皆さんに言ってないかも・・・。

 

「・・・気をつけます。全然知りませんでした・・・」

 

「別にこのままでもいいんじゃない?」

 

「ですが歌に関しては私も皆さんを指導する身ですし、褒めることでやる気にも繋がるんじゃ・・・」

 

「でも多分皆も気づいてるよ?だからさ、特に難しいことは考えずに、純子ちゃんが褒めてもいいと思った時に言ってあげればいいんだよ。その方が皆も嬉しいと思うしね」

 

確かに。

知られてしまってるかもしれないなら、対応を変えることで余計な気遣いをさせてしまうかもしれない。

 

時折、アイさんが同い年とは思えないくらい大人びてるように見えることがある。

それが互いの人生経験の差によるものなのかはわかりませんが・・・。

 

「・・・そうですね、であればこのまま、普段通りの対応で行こうと思います」

 

「うん、それがいいよー」

 

・・・少しばかり、その過去に何があったのか気になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クンクン・・・。・・・?」

 

「わっ、急に顔を近づけてどうしたの?純子ちゃん」

 

「あ、いえ・・・。ルビーさんが、アイさんは天上の香りがする、と言っていたのでどんな香りか気になりまして・・・」

 

「え・・・?そんなこと、ルビーが言ってたの・・・?・・・昔から二人とも妙に物知りだったし・・・でもてんじょう?の香りってどんな匂いだろ?ルビーは四六時中私に抱きついてたし、何かルビーだけが気づいてたことでも・・・」

 

「あ、あのーアイさん?何か心当たりでもありましたか?」

 

「あ、ううん?何でもないよー?ちょっと昔のこと思い出しただけー。・・・そんなことより、純子ちゃん!ここの病院、シャワー室あるんだよー!まだお湯は出ないけど・・・巽が使っていいって言ってたから純子ちゃんも使ってみなよー!」

 

「わっ!あ、アイさん!押さないでー!」

 

 

 

 

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

 

 

 

「えっ!?ヒムロさんから新曲が出来上がったって連絡がきた!?」

 

四号さんとのイベントから少し経った後、事務所でMEMちょと打ち合わせをしていたところにミヤコさんが慌てて飛び込んできた。

 

「ええ、お待たせした分、いい曲ができましたって。デモ音源も届いたからすぐに聴けるわよ」

 

「聞きたい聞きたーい!」

 

「ちぇー、せっかくやる気出してもらうためのメッセージショート撮ったのにー」

 

「いいじゃない、当初の目的は達成できたんだから」

 

「それもそっかー。・・・ねね!早く聞かせて聞かせてー!」

 

ミヤコさんがパソコンを操作すると曲名がモニター上に表示される。

 

「曲名は・・・『POP IN 2』」

 




今回は純子ちゃんの話が書きたくて・・・。
ルビーは純子と相性良さそうだと思うんですよね。
歌を教える良い先生になってくれそう。

ヒムラさんはアイドル曲を作ってるし、昔から音楽やってるしで純子ちゃんのこと知っていそうなので出しました。
多感な時期に純子ちゃん見たらそら情緒壊れる。

せっかく東京来たのでしばらくこっちでの話を書く予定。
ゾンビが佐賀離れて巽が平気なのかは・・・きっと劇場版で描かれるでしょう(願望)

原作は終わっても書いていきます!
引き続き高評価、誤字訂正、何より感想!お待ちしてますのでよろしくお願いします!
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