推しの子 in SAGA   作:片倉の推しの子Bです

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推しの子3期はじまりましたね!
一話の特殊OP、「Bのリベンジ」
いや〜もう最高でしたね!「アイドル」をオマージュした曲をルビーが歌う・・・。
えっ、もしかして最終回?えっ、まだ三期一話?おいおいマジかよ・・・(歓喜)
ところでこのところどころ映像に挟まる不審者消せないですかね?え?消せない?そっか・・・。


第三十一話 スリル×ショック×サスペンス×SAGA 前編

「えっ?こんなところまでとるんですか?」

 

B小町のセンター、有馬かなちゃんが驚きながら質問する。

私は予想していたその質問に、用意していた言葉で返す。

 

「うん、アイドルのMVは踊りパートとドラマパートを分けてとることが多いでしょ?メインはダンスの映像で尺を稼ぐけど、ちょくちょく個々の可愛さを切り取ったカットを挿入しなきゃいけないのよ」

 

「へー」

 

納得したのか、かなちゃんが再びカメラに背を向ける。

カメラ慣れした余裕ある演技。

流石元天才子役、全く緊張を感じさせない。

だけど、それじゃあ絵的につまらないのよねー。

 

「・・・かなちゃんもカメラが好きな人だと思って振り返って見て?」

 

「ええ!?」

 

顔を赤くして、慌てふためきながら彼女が振り返る。

少しでも素の姿が見たくて言ってみたけど・・・。

 

「・・・ふーん、いい顔♪」

 

やっぱりこの子、推せるなあ〜♪

 

私の名前はアネモネ・モネモネ。

インスタグラマー兼動画クリエイターだ。

今は昔馴染みのMEMちょを通して受けた仕事、アイドルグループB小町、その新曲のMV作成のため、彼女達を撮影している。

B小町は過去に存在したアイドルグループで、彼女達はその名前を襲名した二代目だ。

二代目B小町の完全新曲。

そのMVの撮影という大役・・・を受けたのは、当然自分の実績のためでもあるが同じインスタグラマーであるMEMちょの存在も大きい。

彼女とはそれなりに付き合いも長く、その経歴もある程度知っている。

そんな彼女がアイドルになる、と言うのだ。

友人として、多少の手助けをしたいと思うのは当然のことだった。

 

今撮った映像を見返す。

有馬かな・・・やっぱりこの子は華がある。

視聴者の眼を引く魅力がある。

元天才子役という華々しい経歴。

そして、そこからの挫折と苦悩、ここまで這い上がった芸能界への執着。

視聴者に興味を持たせるバックボーンがあり、そしてその期待に応えられるだけの実力がある。

加えて、年相応の女の子の見せる生の表情・・・。

うん、流石このグループのセンターを任せられるだけのことはある。

彼女は間違いなく、今後もこの世界で輝くだろう。

 

それに対して・・・。

ちらりと隣の友人を見る。

MEMちょ。

残念ながら彼女はあまり、私のセンサーがビビッときていない。

他のメンバーに対して一歩引いているように感じられる。

それは年齢のためか、アイドルというかつての夢に対しての気後れか・・・。

どちらにせよ、彼女自身の問題であり、私が口を出すべきではないとは思っている。

・・・まったく、せっかく顔は良いのだからもう少し自分に自信を持てばいいのに。

 

そしてもう一人、B小町の三人目のメンバー。

星野ルビー。

・・・まあ、顔はダントツなんだけど、見てて面白くないのよねー。

いかにもアイドルとして教科書通りというか、まるで誰かを真似してるみたいな・・・。

どちらにせよ、かなちゃんほどの将来性は感じられない。

せっかくの才能もこれじゃ宝の持ち腐れ。

私がこれまでよく見てきた、いずれこの世界から消えていく存在。

 

・・・昨日までは、そんな認識だった。 

 

 

「──じゃあ次はルビーちゃん、撮影するわよー」

 

「──はい」

 

川辺に腰を下ろし、足を川へと投げ出す。

彼女には川辺での自然な姿を見せてほしいと伝えている。

勿論、カメラがあることは意識して、こちらが映える画を撮ろうとしていることも。

彼女はおもむろに川辺に立つと、ゆっくりと足を前に出した。

当然、事故や怪我が起きないようにここは浅瀬だ。

だが時期的にはまだまだ冬で、川の水は氷のように冷たい。

それを彼女は全く意に関せずに両足を浸すと、その場に崩れ落ちた。

保護者の女社長が思わず口を押さえるなか、彼女がカメラの方へと視線を向ける。

 

──そして、その視線に、私達は釘付けになった。

 

何かを訴えるかのような糾弾する瞳。

視線を外すことは許さないと言わんばかりに引き込まれる。

暗い昏い闇のようで、妖しく見たものを魅了する光のようでもある。

ただわかることは、絶対的な惹きつける何かを彼女が見せたこと。

そしてそれが、ここにいる一人のクリエイターの心を鷲掴みにしたことだった。

 

 

 

・・・・・・

・・・

 

 

 

ツクヨミと会ってから、ずっと考えていることがある。

このまま漠然とアイドル活動を続けたら、ママみたいなアイドルになれるのか。

 

ミヤコさんは精一杯、私の夢を応援してくれてる。

先輩とMEMちょも同じグループの仲間として頼りになる。

 

だけどこのまま続けても、私は私がママと同じようにステージの上から、テレビの中から、たくさんの人を魅了するキラキラした存在になれると思えない。

 

・・・それだけはだめだ。

せんせーとママの復讐を捨ててまで、アイドルでいることを選んだのに。

 

こんなところで立ち止まってなんていられない。

 

このままずっともたもたしてる自分なんて許せない。

 

なら、変わらなくちゃ。

 

アイドルになることを夢みる私から、アイドルであることを望まれる私に。

 

・・・アイドルになれない私はいらない。

 

ママからもらったルックスと健康な身体だけじゃ足りないなら、あとは私自身の問題。

 

必要なのはこの世界で、アイドルとして成り上がるための覚悟。

 

私の残りの全てをかけて、この一瞬のために燃え尽きても構わないという決意。

 

 

─────このMVははじまりだ。

 

私の視線の先、いずれこの私を見るであろうカメラの前にいる全ての人へと視線を向ける。

 

・・・私を見ろ。

 

──私を見ろ。

 

元天才子役の先輩アイドルでもない。

 

登録者数三十万人のユーチューバーアイドルでもない。

 

・・・現代に蘇った伝説のアイドルでもない。

 

 

 

 

私だ。

星野ルビーだ。

その目に焼き付けろ。

一瞬たりとも見逃すな。

 

 

 

 

 

 

──いつかアイすら超えるアイドルを。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・

・・・

 

 

 

 

 

「───ええ!?あかねちゃん大丈夫なの!?」

 

慰安旅行最終日、B小町のMV撮影は昨日で無事終わり、今日一日は皆で佐賀観光の予定、だったんだけど・・・。

 

「ごめんね、ちょっと疲れが出ちゃったみたい」

 

私はマスクをしながら軽く咳き込むフリをする。

心配そうな顔を浮かべるルビーちゃんに申し訳なさを感じて心が痛む・・・。

 

「うつしても悪いから今日は一日、旅館で大人しくしてるね」

 

「心配ね・・・やっぱり私だけでもついていようかしら」

 

「大丈夫です。薬も飲んだのであとは寝るだけですから。せっかくの旅行ですし今日はルビーちゃん達と楽しんできてください」

 

「でも・・・」

 

「まったく!体調管理もできないなんてプロ失格ね!・・・まあお土産は買ってきてあげるからせいぜいゆっくりすることねー」

 

「あはは・・・うん、そうさせてもらうね」

 

「・・・なによ、張り合いないわね」

 

「あかね、何かあったらすぐ呼んでね?些細なことでも本当に、絶対、必ず!」

 

「 う、うん、わかった」

 

「・・・ルビー、なんでMEMはこんなに念押ししてるの?別に旅館にいるなら滅多なことは起きないでしょ」

 

「さ、さあ?な、何でだろうねー?」

 

やたら心配してくるMEMちょにかなちゃんが不思議そうな顔を浮かべる。

今ガチの時を思い出させちゃったかな?MEMちょには今度謝っておこう。

 

「 ・・・あかねがそう言うなら大丈夫だろ。それにいざとなったら俺が戻るよ」

 

「 アクアくん・・・。うん、助けてほしいときは連絡するね」

 

アクアくんの言葉でやっと納得したのか、斎藤社長とMEMちょが引き下がる。

全員を見送った後、私は宿泊している旅館の一室へと戻った。

 

「さて、と・・・」

 

部屋に備え付けられているメモ帳を取り出す。

考え事をするときは、スマホやパソコンに打ち込むよりも手書きのほうが集中できる。

 

私は昨晩集めた資料をもとに、プロファイリングを始めた。

 

 

 

 

「フランシュシュ七号、・・・容姿、性格、他全てがアイに酷似、ライブ中のパフォーマンス、ファンへの対応も私の中のアイと一致、・・・だけど、彼女は昔起きたストーカー殺人事件で亡くなっている・・・」

 

プリントした写真を見ながら、調べてきたフランシュシュに関するデータを片っ端から書き出していく。

 

 

 

 

「フランシュシュ三号、・・・アイドルグループ、アイアンフリルの不動のセンター、水野愛に酷似、メンバーの中でも高いレベルのパフォーマンス、ライブ中の周りのフォローも上手く、実質フランシュシュの屋台骨、・・・水野愛はアイアンフリルの野外ステージでのライブ中、落雷の直撃による全身火傷が原因で死亡・・・」

 

伝言用の小さなメモ帳のため、あっという間に文字でいっぱいになる。

 

 

 

 

 

「フランシュシュ四号、・・・アイドルブームの火付け役となった昭和の時代に活躍したアイドル、紺野純子に酷似、フランシュシュの中でも圧倒的な歌唱力、チェキ会ではツーショ不可、ブロマイドのみだがその昭和のアイドルキャラがハマり、七号に次ぐ人気、・・・紺野純子は初の九州ツアーの飛行機の墜落事故で死亡・・・」

 

紙いっぱいにびっしりと書き込んだものはすぐにめくってはがし、新しい用紙へと書き出していく。

 

 

 

 

 

「フランシュシュ六号、・・・全チャンネルのゴールデン番組で主演を経験した天才子役として名を馳せた星川リリィに酷似、メンバーの中で最年少、だけど持ち前の明るさと天真爛漫なキャラから主に低年齢層に人気、役者としての実力も高い、・・・星川リリィは自宅での急性心不全で死亡、けど一説では過労死なんて噂も・・・」

 

そこまで書いて一旦手を止め、辺りを見回す。

自分のいる布団の上には文字でいっぱいになったメモ用紙で溢れていた。

 

・・・この四人はモデルとした人物が芸能界にいたから比較的情報が集めやすかった。

問題は残りのメンバーだ。

 

 

 

 

「フランシュシュ一号、・・・年齢は私と同じくらい、唐津弁、外向的な性格、メンバーの中心的存在?なにもないところで転ぶ場面がよく見られる、・・・住宅街で起きた軽トラックとの追突事故で亡くなった女子高生、源さくらに酷似・・・」

 

 

 

 

「フランシュシュ二号、・・・年齢は一号と同じか一個上、唐津弁、グループのリーダー、強気でしばしば過激な発言もあるがファンからはそれが良いと親しまれている・・・暴走族同士のトラブル、鏡山バイク事故によって死亡した女子高生、二階堂サキと酷似・・・」

 

 

 

 

 

「フランシュシュ零号、・・・年齢は不明、外見、肉付きから二十代後半?、メンバーの中で唯一歌わない、インタビューでも喋らず、唸り声やメンバーに噛みつく等異常な行動・・・だけどファンからはマスコットのような存在と認識・・・亡くなった山田たえという女性に酷似・・・」

 

 

 

 

「フランシュシュ五号、・・・年齢はアイと同じか少し上、古風な廓言葉を用いる、メンバーの中では一歩引いた立ち位置、独特なキャラで根強いファンが多い、彼女のビンタを受けた人は生涯幸運に見舞われるという噂も・・・何これ?それに・・・この人だけは全く情報が見つからない・・・」

 

五号に至っては情報が無さすぎる。

一旦、この人は除外して考えよう。

 

 

集めた情報をもとに考察を進める。

 

フランシュシュのメンバーには共通点がある。

それは、・・・既に死亡している人物と類似点が多いこと。

アイ、水野愛、紺野純子、星川リリィ、源さくら、二階堂サキ、山田たえ・・・全員故人だ。

確証はないが五号もモデルとなっている人物が亡くなっている可能性は高い。

けど、亡くなった死因も時代も場所もバラバラ。

いや・・・大きく括れば彼女達が活動する佐賀で亡くなっている・・・?ううん、それだと七号だけ違う。

芸能界に縁がある・・・これも違う、出身地・・・これも違う。

芸能界でかつて名を馳せた人物のそっくりを集めたアイドル企画・・・他のメンバーは数合わせ?けど、しっくりこない。

 

「・・・なんでこんなに胸がざわつくんだろう」

 

アイ本人としか思えない七号。

亡くなった人物にそっくりなメンバー。

 

 

 

 

───そもそもなんでアクアくんは七号(アイ)と会った時、あんなに冷静だったんだろう。

 

私の推察が正しければアクアくんとルビーちゃんはアイの子供・・・。

 

亡くなった母親と瓜二つな相手と出会ったとき、あんなに冷静でいられるのだろうか。

 

 

 

 

──あの時、既にアクアくんは七号(アイ)と知り合っていた?

 

アクアくんは前に、B小町の仕事の付き合いでフランシュシュと交流があるって言っていた。

 

学園祭の時、私が聞いたのは紫がかった髪の女(アイの容姿に似た人)とアクアくんが仲良く歩いていたって噂。

 

昨日、アクアくんは姫川さんじゃない誰かと待ち合わせをしていた。

 

 

 

 

──待ち合わせ相手は七号(アイ)

 

だけど私を連れてわざわざ会いに行くだろうか。

 

「・・・この前みたいな早とちりは気をつけないと」

 

旅行前のことを思い出して顔が熱を帯びるのを感じる。

うん。私はアクアくんのこと、信じるって決めたんだから。

・・・まああんな姿、二回も見せちゃったし、あんな態度も取られたし、本当に浮気されたらコロすけど。

 

 

おっと、考えが変な方向に行っちゃってた。

気を取り戻して考えよう。

 

大事なのはアクアくんが七号(アイ)と知り合いだったこと。

 

 

 

 

──アクアくんの目的は?

 

アクアくんは今ガチの時、好きな異性のタイプを聞かれてアイを挙げていた。

 

なら亡くなった母親への郷愁?

母親と同じ顔のアイドルを見て応援したくなった?

アイと七号を重ねている?

 

・・・考えられないことはない。

だけどアクアくんは芸能界にいるアイを殺した相手を探している。

曲がりなりにもそんな危ない相手がいる場所に、同じ顔のアイドルが行こうとしているのを後押しするだろうか。

それこそ、ルビーちゃんと違って自分の手元にいない人を。

 

 

 

 

──もしかして母親の復讐が・・・フランシュシュに関係している?

 

だとしたら七号と会っていたのは、情報収集が目的・・・。

復讐の対象がフランシュシュにいる?もしくはその近くに?

だとしたら一番怪しいのは素性不明の五号・・・だけど、あの人は違うと思っている。

一度会って話をした・・・底知れないとこはあったけど、殺人を犯すような人じゃない。

となると、メンバーじゃない。

その近く。

 

 

 

「フランシュシュの・・・プロデューサー?」

 

 

 

名前は巽幸太郎。

常にサングラスをかけ、その素顔はわからない。

私がフランシュシュのメンバーについて調べた時、この男についても調べたがろくな情報が見つからなかった。

 

アクアくんも彼を調べたとして、私と同じように詳細がわからなかったら、多少危険を冒しても近づこうとするはずだ。

 

「この人は要注意だ・・・」

 

現状では一番怪しい。

私は頭の中の要注意人物リスト、その最上位にこの男の名前を刻み込んだ。

 

 

 

 

 

──彼女達の正体について。

 

ありえないことだけど。

・・・もし、本当に、何かしらの方法で、彼女達が生き返っていたとしたら。

フランシュシュのメンバーが全員、モデルとなった人物本人だとしたら。

彼女達が、それをした相手に恩を感じていたり、弱みを握られたりしていて命令を拒否できないとしたら。

犯人の目的は?どうして佐賀でアイドル活動を?・・・その存在を秘匿する理由は?

 

 

 

 

「・・・うん、ここで考えてても答えは出ないや」

 

 

 

私はオカルトが好きだ。

科学で解明できない不可思議に、人々が馳せるロマンを感じられるから。

だからこそ、私はオカルトを信じない。

この世界に宇宙人はいないし、生まれ変わりだってありえない。

ましてや、死人がその姿のまま生き返るゾンビなんてもってのほかだ。

 

だから、この仮説は否定しなきゃいけない。

 

考えが煮詰まった時は、自分の足に頼るに限る。

私は、ささっと部屋を片付け身支度を整えると部屋を飛び出した。

 

「───フランシュシュに会いに行こう」

 

 

 

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

 

 

 

「な、な、な・・・なんじゃそりゃああああああ!?」

朝、サキちゃんの声で眼を覚ました私は、まだ眠い眼をこすりながら身体を起こした。

いつの間にかふとんに潜り込んで齧り付いていたたえちゃんが起きないようにゆっくりと辺りを見回す。

他の皆はまだ寝てるようで、布団がふくらんでいるのが見えた。

 

「もー・・・サキちゃんなんばしよっと?」

 

「さ、さくら!起きろ!いいからこっちみるけん!」

「んー・・・?」

 

あくびを噛み殺しながらサキちゃんの指の先へと視線を向ける。 

まだ朝早い時間なのにサキちゃんは元気やけんね・・・、一体何があると・・・

 

「・・・って、ええええええええええ!?!?」

 

思わずサキちゃんよりも大きな声で叫ぶ。

 

今度こそ、眠気はふっとんでいた。

 

そこには・・・

 

「あ、サキちゃん、さくらちゃんおはよー☆」

 

いつもの笑顔でおはようの挨拶をするアイちゃん・・・の顔をしたグラマラスな女の人がいた。

 

・・・っていうか!?

 

「アイちゃんがいろいろおっきくなっとーと!?」

 

「ゾンビやけん!成長がはえーのか!?」

 

驚きのあまり、眼が飛び出した私達に対して、アイちゃんは特段驚く様子は見せず、むしろ余裕そうな表情だった。

 

「んー?まあ、遅れてきた成長期ってことかな☆」

 

「マジか・・・ゾンビも成長すんのか・・・」

 

 

 

 

 

「んー・・・うるさいわねえ・・・」

 

「なにか、あったんですか・・・?」

 

「サキちゃん朝くらい静かにしてよ~」

 

遅れて愛ちゃん、純子ちゃん、リリィちゃんがゆるゆると身体を起こす。

 

「あ、皆おはよー!」

 

そしてアイちゃんを見て、一瞬で真顔になっていた。

 

「すごーい!アイちゃんがおっきくなってるー!」

 

「これは夢これは夢これは夢これは夢・・・」

 

「こんなことってあるんですね・・・」

 

 

 

 

 

「見てみてー、せくしーぽーず、あはん☆」

 

「なんかスゲー違和感あんな・・・」

「確かに・・・全体的にバランスが悪いような・・・」

 

「あ、そっか。まだ夢見てるんだ。目覚めろ私。目覚めRETURNER、願えば良いんだ」

 

「あ、愛さん!そっちは窓です!巽さんのメイクなしで出ちゃ駄目ですって!」

 

雑誌で見たモデルみたいなポーズを決めるアイちゃん。

とんでもない異常事態なのに、絵面の強烈さに頭がクラクラしそう・・・。

 

 

 

 

「ヴァウー・・・?」

 

その時、視界の端でたえちゃんが布団の中からもぞもぞと這い出てくるのが見えた。

どうも寝てる間に噛みついてた私の頭が見つからなくて、探しているみたい。

寝ぼけながら近くにあったゆうぎりさんの布団に手を突っ込むと、中をまさぐり始めた。

 

 

 

「ん・・・!?」

 

「あん?どした?」

 

「え?べ、別にー?何でもない・・・ぷっ、あははははは!ちょっと、そこはやめてよー・・・あははは!」

 

「きゅ、急にどうしたんですか!?アイさん!」

 

突然吹き出したアイちゃんだけど、身体は全く動じてるように見えない。

なんか顔と身体が別々のものみたいな・・・。

 

「ていうか、こんだけ騒いでてゆぎりんが起きないなんて珍しいね?」

 

「確かに・・・ゆうぎりさんが寝坊なんて不思議ですね・・・」

 

私たちの視線がアイちゃんとゆうぎりさんの布団を交互に行き来する。

 

「ちょっ、たえちゃんもうやめてー!あははは!」

 

「・・・姉さん!失礼します!」

 

サキちゃんが勢いよくゆうぎりさんの布団を剥がす。

そこには・・・

 

「おや、バレてしまいんし?」

 

既に目覚めていたゆうぎりさんがいた。

 

「 ・・・なんかちんまくね?」

 

「今度はゆぎりんがちっちゃくなっちゃった!」

 

「 ってことは・・・」

 

アイちゃんとゆうぎりさんを見比べる。

おっきくなったアイちゃんと逆にちっちゃくなったゆうぎりさん。

ここから考えられることは・・・

 

「そっか!ゾンビって成長することもあれば逆に若返ることもあるけんね!」

 

「どうみても二人が身体を入れ替えてるでしょ!」

 

「わっ!愛ちゃんがもとに戻っとーと!?」

 

「な、なんとか直りました・・・」

 

「 あれ?字あってる?ていうかそのスパナどっからもってきたと!?」

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

「 もう、心臓に悪いからやめてよね・・・」

 

「もう動いてないですけどね」

 

「てか私達、頭と身体を入れ替えるなんてできるやけんね・・・」

 

「いやー、前にリリィちゃんが舞台でかなちゃんの衣装に着替えて代わりを演じてたでしょ?あれ見て、ゾンビ同士なら身体とか入れ替えられるのかなーって思ってゆうぎりに手伝ってもらったの」

 

「だいぶ思考がゾンビじみてきてんな」

 

「結果的には頭を変えても身体は元の持ち主じゃないと動かせないみたいで、ゆうぎりにポーズを取ってもらって首から上だけ自分で動かしてたんだー」

 

「・・・思い返してみると笑っているのに首から下が別の生き物みたいに動いているの、すごい生命への冒涜な気がしてきました・・・」

 

「そう?案外可愛い動きしてたと思うけど?」

 

「愛の可愛い基準はズレてっからな・・・」

 

「リリィ、昔見たゲームに、あんなクリーチャーいた気がするかも・・・」

 

「ふふ、わっちはいたずらなんて、童心に帰ったみたいで楽しかったでありんすよ」

 

「あはは・・・たまにアイちゃんとゆうぎりさんが同い年ってことにびっくりするときがあるけんね・・・」

 

「今更年齢なんて気にならないけどね。私たち、ゾンビだし」

 

「そうだよ!リリィ達はずーっとトゥインクルでマジカルなんだから!」

 

 

 

 

 

「はいおはようございます!!!」

 

朝のことを振り返っていたら、いつものように巽が勢いよく地下室に入ってきた。

 

「 よーし、今日も元気にゾンビィしとる面だのお・・・って既に死んどるのに元気ってどういうことじゃーい!!」

 

「「「「「「・・・」」」」」」

 

「うっさ」

 

「zzzzzz・・・」

 

「さて、小粋なゾンビィトークで場を和ませたところでCMのお時間です」

 

「今来たところやろが!」

 

「ハイ負けー!我慢できなかったから負けー!」

 

「ガキかてめー!ぶっコロすぞ!!」

 

「サキ・・・いつものアイツのペースになってる・・・」

 

「今日は巽の勝ちだねー」

 

「ちょっ、アイちゃん達もサキちゃん止めるの手伝ってー!さ、サキちゃんも落ち着いてー!」

 

 

・・・

 

 

「・・・はい、皆さんが静かになるまでコレだけかかりました」

 

「「「「「「・・・」」」」」」

 

サキちゃんと愛ちゃんが無言で椅子から立ち上がる。

流石に巽も二人の雰囲気にただならないものを感じたのか、慌ててホワイトボードへと身体を向けた。

 

「・・・というのは冗談でこれから今日の仕事の話を行う!」

 

・・・

 

 

「・・・つまり、グループを分けてそれぞれで別の仕事に行くってこと?」

 

「エグザクトリー。これから先、フランシュシュはさらなる躍進に向けて仕事をバンバンこなしてもらう!東京ではソロで仕事をこなせたようだが、複数での仕事はまた別!様々なペアを組み、互いにフォローすることでどんな状況にも対応できるように場慣れするんじゃい!」

 

「・・・まあ、一理あるかも。私、アイ、純子(元アイドル組)抜きでもライブがこなせるようになれば仕事の幅も増えるし」

 

「ふーん、で組み合わせはどう決めると?」

 

「ふっ、俺が用意したゾンビィ用の秘密兵器を使う・・・」

 

「要するにくじ引きだねー」

 

「もったいぶった割に割り箸の先に色塗っただけやなかとか!」

 

 

 

・・・

 

 

 

 

「ゆぎりん!リリィに任せてよ!」

 

「あい、リリィはんは頼りになるでありんすから心配してないでありんすよ」

 

「純子ちゃん!頑張ろうね!」

 

「はい、さくらさん。フォローは任せてください・・・!」

 

「おっし!たえ!二人でぶちかまそうぜ!」

 

「ヴォウ!・・・コケコッコー!!」

 

「・・・」

 

「愛ちゃん、よろしくねー☆」

 

「タイム」

 

愛ちゃんが巽を連れて部屋の隅へと向かう。

何やらひそひそ話をしようとしてるみたいだけど、私もともと耳がいいしこの距離なら聞こえちゃうんだけどなー。

 

「なんじゃい」

 

「この組み合わせに作為的なものを感じるんだけど!」

 

「何を言う。しっかりタネも仕掛けもないのを確認したじゃろがい。・・・それに結果的にはフォローが必要なペアでバラけたしベストじゃい」

 

「・・・私、自分を制御できる自信がないんだけど」

 

「そこも含めてのペアじゃい。・・・あれあれー?それとも愛ちゃんはー?ベテランアイドルなのに相手を選ばないとお仕事一つできないんでちゅかー?」

 

「喧嘩売ってんの!?」

 

「ならば問題なし!いつまでも周りに甘えてばかりでは腐ったゾンビのままなんじゃい!」

 

巽が勢いよくこちらに振り向く。

 

「・・・いいか!?お前らもよく聞け!お前らは俺が見込んだ伝説(一人除く)のゾンビィじゃい!佐賀を世界に羽ばたかせるためにも、こんな序盤で躓いてる暇なんぞまったくない!わかったらとっとと支度せんかい!」

 

「・・・はい!・・・ん?今小さく一人除くって・・・」

 

「それじゃあ早速仕事に向かうんじゃーい!ゴーゴーゴーゴー!!!」

 

巽の有無を言わさない指示に、慣れた皆がゆっくりと移動を開始する。

あっという間に皆いなくなり、地下室には私と愛ちゃんだけになった。

 

・・・前にサキちゃんが、愛ちゃんは生前私のことを推してた、て言ってたっけ。

だから時折変な行動をするってことも。

 

・・・推し。

私達アイドルにとっては身近な言葉。

ステージの上に立つ私達を応援してくれるファンの皆の好きって気持ちだ。

私にとってはアクアとルビーのことを指すのかな?

・・・うーん、でも『推し』って感じは違うかも。

二人はもっと近いような・・・うん、やっぱり愛してるって言葉がしっくりくる。

なら、フランシュシュの皆は?

・・・前と同じ、愛したいって気持ちは本当。

だけど、あの時から近づいたかというと・・・。

 

───よし!

せっかく二人でお仕事に行くことになったんだし、この機会に愛ちゃんともっと仲良くなろう!

推しじゃなくて・・・アクアとルビーみたいに愛してるって言えるような仲に!

 

「私達も行こ!愛ちゃん!」

 

さり気なく愛ちゃんの手を取って扉へと向かう。

ルビー達以外には、あまり自分からは触れようとしてこなかったけど勇気を出してみよう。

そう思って手を引いたけど、愛ちゃんは動かない。

ちょっといきなり過ぎたかな・・・?

愛ちゃんの顔をこっそり覗き見ると、・・・白眼をむいて気絶していた。

 

「・・・あ、愛ちゃーん!?た、たつみー!愛ちゃんまた気絶しちゃってるー!!」

 

「なにー!?よし、純子ー!壊れた愛を直しておけー!」

 

「ま、またわたしですかー!?」

 

 

いけないいけない、今のは早かったみたい。

人との距離感。

それを測るのは昔から苦手だった。

仲良くしようとした相手から嫌われて、距離を取ろうとした相手から好かれる。

けれど、結局最後は皆、私から離れていった。

 

私は人の心がわからない。

だって自分自身のことすら自信がないのだ。

誰かを愛せたことだって、今まで二人にしか伝えられなかった。

フランシュシュの皆は優しいけれど、いつかこんな私からは離れていってしまうんじゃないかって・・・。

そう思うと、私の足はいつも、その場で踏みとどまってしまう。

 

 

 

「・・・これじゃあ、ルビーのこと言えないなあ・・・」

 

 

 

 

・・・・・・

・・・

 

 

 

 

「───本日はフランシュシュのお二人がゲストで来てくれてまーす!」

 

「「はーい!」」

 

司会のお姉さんに呼ばれて二人でステージに上る。

私とアイ、二人の今日の仕事はミニライブ。

簡単なトークをしたあとに、ミニライブをして終わり。

私たち二人なら余裕の仕事だろう。

 

 

 

・・・

 

 

 

・・・よし、上手くやれてる。

洋館では気を抜いてたからちょっと取り乱しちゃったけど、ステージの上でならちゃんとできる。

アイと一緒に仕事をするのだってもう何度もやってきたし、他の皆がいなくてもまともに話せてる。

仕事だと思えば気合が入るからかな?

これなら最後まで問題も起こさずできそうだ。

巽のやつ、いつまでもアイとまともに話せないって私のことを馬鹿にして・・・!

この仕事でそんなことないってことを証明して、絶対に一泡吹かせてやる・・・!

 

ちらりと隣で楽しそうに笑うアイを見る。

巽のメイクで生者の肌になった彼女は昔、テレビの中で見た憧れのアイドルとなんら遜色はない。

B小町の不動のセンター。

完全無敵の天才アイドル。

彼女が活躍するたびに胸が踊った。

アイの名を聞くたびに心が高鳴った。

そして、あの日───

 

 

『アイドルグループ、B小町のメンバーであるアイさんが本日未明───』

 

 

 

「───はーい、じゃあこのあとはフランシュシュのお二人によるライブパフォーマンスでーす。準備がありますのでそのままお待ちくださーい」

 

 

 

「三号ちゃん、衣装に着替えきゃいけないし、一度控室に戻ろっか?」

 

「・・・え?ええ」

 

いけない、また気がそぞろになっていた。

トークショーは終わったし、あとはミニライブだけ。

むしろ、今の私にはこっちの方が喋らなくて済む分助かるかも・・・。

いつからだっけ。

アイとまともに喋ることができなくなってしまったのは。

最初のうちは、同じアイドルとしての対抗心から彼女に負けたくなくて。

フランシュシュとして活動していくと決めた時は、憧れのアイドルと一緒にステージに立てる嬉しさでまともにみれなくて。

・・・どちらも自分本位で勝手な理由。

生きてた頃から変わりやしない。

 

「?」

 

不思議そうにこちらを覗くアイ。

その瞳は純粋にアイドルとして、ファンの前で歌うことを楽しみにしてるように見える。

まったく、こっちの気も知らないで・・・。

 

「・・・何でもない、早く準備しましょ」

 

「おー!」

 

・・・・・・

・・・




あかねちゃんは、大古場さんが長い時間かけて調べ上げたゾンビィ関連の秘密を一日で調べ上げても不思議じゃない。

ゾンビィが身体入れ替えるネタとか公式でやらないかなー?って思ってます。
倫理的にまずい?ゾンビやけん!もう死んでるから倫理とか関係ねえんだ!

次はほぼできてるので近いうちにあげます!
公式から供給あるとモチベ上がって嬉しい!

引き続き書いていきます!
読んでいただけたらコメントや高評価頂けると嬉しいです!
特にコメント!短いのも長いのも貰えるとありがたいです!
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