生まれ変わったら後の死王子だった件   作:Another2

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完全に遅刻しましたがなんとか書き終えました。
(執筆記録が2回も飛んだなんて口が裂けても言えねぇ…)
アンケートのご協力ありがとうございます。

後今回後書きがものすごく長いです、申し訳ない、本編読み終わったらブラバしてもらって構いませんので。


リエーニエ戦役〜決着

「さてさて…いまいち情況が読み込め無いが…お前が敵でいいのだな?」

 

 ゴッドウィンの乱入、それはこの場にいる三者の度肝を抜くには十分な出来事であった、ラダゴンはアステールの巨体を吹き飛ばした事に、レナラは遠方に飛ばし且つそれなりの数を配備して尚ここに姿を現した事に、アステールは突如現れ己を吹き飛ばしたこの謎の存在に。

 そんな三者の思いを他所にゴッドウィンは事も無げに辺りを見る、其処には見るも無惨な肉塊の数々、それは両軍の元兵士達であろうと言うことはすぐさま理解できた。

 ゴッドウィンは顔を俯き拳を握る、その拳は震え血が滴り始めているところから余程の握力で握りしめているのが分かる。

 

──男は悔いていた、己の不始末に、不出来に、何より間に合わなかったと言う事実に。

 

 そんな心中のゴッドウィンに声を掛けたのはレナラだ。

 

「貴方…本当にゴッドウィンですか?遠見で覗いた時よりまるで別人の様に見えますが」

「…そう見えるか?ならばその問いには是と答えるぞ女王よ、私は貴方が施した策と寄越した戦略のお陰で本当の己を見つけれたのだ、心より感謝をする」

「…あの場所にはかなりの戦力を配備していた筈…其方はどうしたのです」

「あぁ…そんな事か、其れは──私が五体満足で此処に居る事が答えでは?

「──ッ‼︎」

「いやまぁなんだ…かなり手古摺らされたよ、事実幾度か危うい部分もあったが…ほらこの通り、私は生きている」

 

 言外に鏖殺してきたと発するゴッドウィンにレナラとラダゴンの両名は冷や汗が流れる、何せ本人から発せられる圧が転移される以前より別物なのだ、それこそ生まれ変わり、別人になったと言われても納得してしまう程に。

 

「全て片付けた後に蒼い魔力流を目視したのでな、凄まじい魔力の流れを感じ取った故、すぐさまあの地から下山したのだ、そして最短ルートを取る為に湖を横断し此処に向かった、道すがら隕石群が見えた時は心底焦ったがな」

「其れよりも──いつまで呆けているつもりだ、来るならさっさと来ないかデカブツ、其れともでかいのは図体のみで中身は矮小な存在だったかな?」

 

 空気が凍る、この期に及んで目の前の怪物に対して挑発、安っぽい言葉ではあるが、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 アステールには人間の言葉等理解できない、否しようとしない、何故なら己にとって人間とは等しく虫だからだ、虫の発する言語などどうして理解できようか、しかし言葉が通じずとも伝わる事がある。

 

──()()()()()()

 

 幾万年と生きてきたか定かでは無いがアステールは今目の前の小さな、とても小さく矮小な存在である虫に、事もあろうか舐められていると言うことを認識した。

 これは彼の生の中では初めての事だったろう、何せ今まで自分が出会った生物は皆恐れ慄き、恐怖する、偶に怒り心頭で向かってくる奴も居たがそこまでだ、だからこそだろう今まで舐められた事がない、侮られた事が無い、つまりは煽り耐性が低い彼とってゴッドウィンのこの行為は──。

 

『グガアアアアアァァ‼︎』

 

──その怒号が心地良いと思える程にとても良く効くのだ。

 

 大地が揺れる──。そう錯覚してしまうほどの怒号を発するアステールを目の前にしてゴッドウィンは涼しげな表情をしている。

 彼が此処まで煽ったのは無論故意にだ、しかし当然理由もある、其れは未だアステールからの攻撃から回復していないラダゴンとレナラの回復の為、そしてその間のヘイト、つまり狙いを己だけに定めさせる為の視線誘導も兼ねている。

 

 ゴッドウィンの発する圧力に陰りはない、己が負けることなど微塵も想定していないといったその風貌はまるで歴戦の戦士と比較してもなんら遜色なく寧ろ上回るほどだ、開戦時には何処か甘さが抜けない青年と言った所なのに、この短時間での急成長、その原因はやはり転移先での戦闘だろう。

 

 ゴッドウィンにとってその戦場は正しく死地であり歓喜の地でもあった。

 

 父との鍛錬という名の戦闘もかなり刺激的なの物だがやはり親子というべきか殺意の程は軽く幼いゴッドウィンに手心を加えられているというのは言われずとも理解できた。

 加えるに同年代処か成熟した戦士であっても己と拮抗するほどの実力者が居ないという現状(マンネリ)……好敵手がいないと言う孤独(退屈)……男はついぞ己の生命の危機を知りもせずに育ってしまった、幼い自分が犯した都合三度の蛮行、伝え聞くに手練れの暗殺者の返り討ちに始まり、二度に及ぶ市民の虐殺、それに伴って己と鍛錬をしようとする物好きは今や父と弟2人だけになっていた。

 

──自業自得だ。

 

──其れを知って尚家族は私に付き合ってくれている。

 

──これ以上何を望む?

 

──では何故私はこんなにも飢えている?

 

 己は恵まれている、これ以上は望むべくもない、そう認識し、ゴッドウィンは溢れんばかりの本音を包み込みその心に蓋をした。

 しかしいくら蓋をしていてもその本能は湧き上がってくるのだから薄っぺらな理性で蓋をするにも限界はあったのだ。

 そこに此度の戦争だ、最初は一部隊を軽く蹴散らしてやっただけだった、あの時の虐殺と何ら変わらぬいつもの蹂躙、しかしあの時と明確に違うのが一つ。

 

──ゴッドウィンの理性の蓋には、既に修復できぬほどの罅が入っていた。

 

 更にそこに追い打ちをかける様にレナラの転移による死地への送還、溜まりに溜まったゴッドウィンの本能は本人の理性(ブレーキ)や意図を遥か彼方に追いやり──。

 

──一気にフルスロットルに振り切った‼︎

 

 思うがままに暴れる、其れの何と心地の良い事か、向かい来る敵の肉を断ち骨を砕く音が耳に入る度ゴッドウィンはその音がかつて前世で聞いたトップオーケストラの演奏よりも心地よく聴こえた。

 敵の槍が、剣が、牙や爪が己の肉を削るその痛みはゴッドウィンにとっては神の手を持つとされる按摩師の施術よりも快感に感じ取れた。*1

 己が今まで経験した事のない濃厚過ぎる“死の予感”に満ちたその場所はゴッドウィンにとっては前世にて幼少の頃に初めて訪れた遊園地を遥かに上回る程のテーマパークであった。

 

──何故満足出来ない?

 

──何故退屈している?

 

──()()()()()

 

──満ち足りてないから‼︎満足してないんだよ‼︎

 

──満ち足りてないから‼︎退屈なんだよ‼︎

 

──あんたら知らないだろう‼︎俺がどれだけ退屈だったか‼︎どれだけ窮屈だったか‼︎娯楽に満ちた世界から転じてこの世界‼︎俺が知る物が何一つないそんな世界‼︎そんな世界で己には不相応な強さを持つ肉体を授かったから俺は……暇つぶしすら満足に出来ないんだぞ‼︎

 

 本能の解放、今まで溜め込んでたが故のストレス、全てを解放したゴッドウィンを止める者は誰もいない、そんな怪物が暴れるのだ、レナラが用意した戦力が全滅するのも時間の問題だった。

 

──お陰で今は最高に。

 

「楽しいぜ」

 

 ゴッドウィンのその呟きを聴いた者は誰一人居ない、しかしこの瞬間ゴッドウィンは己の身に流れる戦士の血を最大限に覚醒させるに至り燻っていた黄金の種子を発芽させるに至る。

 

──黄金の英雄発芽の時。

 

 斯くしてゴッドウィンは覚醒した、其れは完成形からすれば未だ未熟なれど、成長点が大きく飛躍したと言う点ではこれ以上はない。

 

 そして時間は戻る、既にゴッドウィンが昂った精神を落ち着かせている、其れでも尚生まれ変わったと言っても差し支えないほどの覇気は抑えられていない。

 アステールは思案する、どうやってこの虫を倒そうか?否、どうやってこの虫を最大限苦しめようかという一点のみだ、そして思いつく、最低最悪の下劣な手法を。

 

──そうだ‼︎先ずは此奴の手足を潰して動けなくしてから赤い虫と青い虫をゆっくりと潰して苦悶の声を楽しもう、そうして無力感で苦しむ黄金の虫をゆっくりと、ゆぅっくりと潰してやるのだ‼︎そうすれば黄金の虫は最大限苦しみの声をあげて死んでいくだろう‼︎

 

 何処まで行ってもアステールの思考はそれしかない、否それしか知らないと言っても過言ではない、悲鳴中毒者(ジャンキー)と言っても過言ではないその執着は悪魔と言えよう。

 

 すぐさまその考えを実行するアステールは重力波をゴッドウィンに仕向ける、不意打ちによる重力波、確かにこれ以上ない完璧な攻撃と言えよう、そこに標的が存在しないという点を除けば

 突如アステールを激痛が襲う、原因を探れば痛みの元は己の右複腕、差し当たっては右の真ん中の腕辺りにゴッドウィンはいた、そしてその元にはあらぬ方向に曲がった我が腕が、アステールはこの激痛の原因がゴッドウィンが己の腕をへし折ったのだと気づいた。

 直ぐに距離を取りアステールはゴッドウィンを串刺しにすべく尾を振るおうとする、しかしその場にゴッドウィンは既に居ない、何処に行ったと探そうとする前に二度目の激しい衝撃が襲った、衝撃の元は頭部から露出した目玉である、そしてあまりの衝撃の大きさにアステールは地面に埋没してしまった。

 ゴッドウィンはアステールが距離を取ったと同時に目にも止まらぬ速さで跳躍し、アステールの頭部に攻撃を喰らわしたのだ、すると頭部にグリッとした感覚が伝わってくる、何かを乗せられているのだ。

 なんてことはないゴッドウィンは埋没したアステールの頭に足を乗せているのだ、つまりは頭部を足蹴にするという最大限の侮辱だ。

 

「──ふむ、如何な気分だ?普段己が地面に沈めている相手から逆に己が地面に沈められてこともあろうに足蹴にされる気分というのは?まぁ尤もお前には私の言葉など通じていないだろうし私もお前の言葉なぞ理解したいとは思わんさ」

 

 この言葉は無論アステールに対しての言葉だ、しかしゴッドウィンの言葉はアステールだけに向けられない。

 

「其れで?お前達2人はいつまで呆けているつもりだ?そのまま見てるだけでいいのか?此奴に味わわされた屈辱や痛みを返したいとは思わないのか?」

「──むぅ、確かにそれは…」

「そうと言えますが…」

「──?ッあぁ‼︎成程成程、ククッすまなかったなお前達の気遣いに気づいてやれなかった‼︎己達は既に戦闘が続行出来ぬ故にそこで大人しくしているということだったのか‼︎いやァ申し訳ない‼︎であれば戦闘に参加できぬ不能者達は出来る限り遠くに離れていたまえ、自殺志願者を守ってやれる程私は優しくないのでね」

 

──その言葉は……己の実力に確固たる自信がある者にとって等しく戦意を高ぶらせる物である、端的な言えばこの言葉を聞いた2人は──

 

「「は?」」

 

──物凄くブチギレた。

 

「む?癪に触ったか?だが人の善意は無下にすべきではないぞ?戦闘不能者が戦場に残っていても邪魔なだけなのでね」

「ククッ…誰が不能者だと?精々数年ぽっちしか生きてない青二才が…随分とほざくじゃないか」

「全くです、たかだか相手の虚を突いただけで粋がっている未熟者風情が少々おいたが過ぎる様で…場を弁えてはいかがです?」

「ッハ‼︎なら未だ戦えると?」

「「無論だ(です)‼︎」」

(やっぱ此奴ら息ピッタリだな、さすが未来の夫婦と言ったところか、かなり複雑な心境だが)

 

 ゴッドウィンがそう思っているとアステールが地面から飛び起きる、その表情はやはり憎悪の面だ、もはや何を考えてるかなど言うまでもないだろう。

 

──怒りは全生物にとって等しく最高効率を誇る行動エネルギーである、それは宇宙の飛来者である彼にとっても同じこと。

 

──許すまじ‼︎断じて許すまじ‼︎たかが虫の分際で‼︎我を二度も傷つけ数多さえ足蹴にしようとは‼︎身の程を知れ‼︎

 

 アステールの思考を文字ににするとこんなところだろうか、アステールはゴッドウィンにへし折られた腕の再生を終え既に攻撃体制に入っている、にも関わらず3人に危機感はない、寧ろ誰がとどめを刺すかで揉めている始末だ。

 

──虫の分際が…我を差し置いて…我以上に愉しむんじゃない‼︎

 

 そして放たれる重力砲、その威力は今まで見たそれよりも遥かに早い、アステール自身も確信していた己が生涯の中で最強最速の一撃であると確信を持って言える。

 しかし3人はその渾身の一撃を難なく躱してしまう、ラダゴンとレナラは事前にその攻撃を見ていた為に回避に成功しても不思議ではない、唯一ゴッドウィンは初見の筈だがそもそもこのゴッドウィンの中の人物がアステールは高速の重力砲を使用すると言うことを知っていた為に溜めの音が聞こえた時には既に回避行動をとっていた。

 ならばとアステールは最大出力の重力波を行使する、6本の腕を全て使用した重力波の威力は先程までのそれとは別次元だ、アステールが重力波を発生させようと試みたその時──

 

「前々から思っていましたが、貴方のその重力波の溜めは少々…鈍過ぎますね」

 

──最速の魔術詠唱を誇る魔術の女王が詠唱を終えていた。

 

 レナラはアステールが重力波を発生させるより早く転移魔術の詠唱を終えていた、対象はラダゴンとゴッドウィンだ、2人をアステールの頭部へと転移させた後にすぐさま己は反重力魔術で保護体制に入る。

 瞬間途轍もない重力が発生する、全てを地の底に沈めんとするその重圧はアステールを除く全てに作用した。

 

──()()()()()()()()()()()()()()

 

 アステールの頭部に転移したラダゴンとゴッドウィンに途轍もない重力が掛かる、逆らおうとすれば肉が潰れるだろう、ならばと従ってやれば良い、ちょうど真下に標的がいる、己が武器を構える、既に全身の力を込めている、これにより渾身の力+武器の切れ味×2+絶大な重力によってもたらされる勢い=破壊力の方程式が成り立つ、その一撃はアステールの結晶とも見間違う様な目玉を容易に切り裂いてしまった、さらに間髪入れずに蒼い魔力流が傷跡を呑み込む、こうなることを見越したレナラは最大まで魔力を溜め魔術を放つ、源流魔術が一つ彗星アズールだ、日に3度目の彗星の放射、然し此度の放射時間、なんと18秒、その放射はアステールの頭部に綺麗な風穴を開けるに至る。

 

『ギェアアアアアァァァァァ‼︎』

 

 大地に響く耳をつんざく様な大声、二度目は痛みによって引き出される悲鳴であった、発声者は勿論アステールだ。

 今まで数多の人を重力波で悲鳴を上げさせた、痛みを与えた、しかし此度は違う、皮肉にもアステールは今まで数多の人を苦しめた己の重力波によって己の悲鳴を上げさせる結末になったのだ。

 

 完全に頭から露出した目玉を切り裂き魔力で抉り散らした、機能不全は避けられないだろう、されどアステールは未だ視力を無くしていない、第3の目を無くしたがそれでも未だ二つある、未だ目は見えている。

 然しアステールには一つの感情が芽生えつつあった、今までの自分は知らない“ソレ”、自分には遂に縁がないだろうと思い込んでいた“ソレ”、そして小さな虫達が己に向けていた“ソレ”、己が生きる糧であり最大の楽しみであった“ソレ”‼︎

 詰まるところ“恐怖”の感情がアステールの中に芽生えたのだ、これはアステールの幾万年と言う長い生涯で初の出来事だろう、初の出来事故に恐怖によって起こる生理現象の止め方をアステールは未だ知らないのだ。

 

──アステールの身体が震えだす、最初は小さかったそれは時がすぎるにつれ大きくなって言った、最早アステールの目にはこの3人は矮小な虫ではなく未曾有な大怪物へと変貌していた。

 

 アステールはそんな恐怖を振り払う為に尾を振るう、苦し紛れの攻撃、狙いもあったものではない、当然の様に避けられる、それどころか手痛い反撃まで来る始末だ、ならばと6本の腕を併用した合計三門の重力砲を放つ、然し速さは先ほどより遅く更には既に慣れたのかラダゴンとゴッドウィンの2人は難なく避けてしまう、残されたレナラは回避行動を取らない、当たるか?と思われたその瞬間、ラダゴンもゴッドウィンも目を見開いた、レナラに向けて放たれた重力砲が軌道を曲げ事もあろうに放ったアステールの顔に向け帰っていったのだ。

 

 レナラは一体何をした?確かに魔術を打ち消しカウンターと成す魔術にカーリアの返報があるにはあるがあれはそもそも飛んでくる魔術に含まれる魔力を吸収して輝剣を生み出すと言う物であり魔力そのものを返すことはできない。

 では何故?その答えを知るのはやはり未来の知識を持つゴッドウィンだった、然し本人にしても不可解極まりないだろう、何せあの魔術は今の時代には存在せず、ましてや軌道を逸らすだけで精一杯の魔術だったからだ、だがあの発生した魔力の力場やら効果を鑑みるにそれしか考えられなかったのだ。

 

(まさかとは思うが…トープスの力場…なのか?)

 

 トープスの力場、それは今から遠い未来に於いて誕生する魔術師がその生涯を掛けて生み出した魔術だ。

 その効果、()()()()()()()()()()()()と言う物、それだけしか効果を持たない魔術はあまり目を配られない物であったされるが更に遠い未来において新しい研究室を作り上げると評されるほどの物と再評価された。

 トープス自身は魔術学院の中では才がなく自他共に鈍石と評していた、然しそんな鈍石な彼が構築した魔術術式が大天才レナラの手によって大きく飛躍した、源流たる魔術、神秘の塊とさえ言えるアステールに届いたのだ、尤も今回レナラが使用したこれは正確には術式ではないし本人も未だ生まれていないのだが、今は置いておく。

 正確には術式ではないとはいえ後にトープスが構築した魔術術式と類似した物をレナラが使用したのも事実だ、緻密な魔力操作と弾道の計算を完璧に行えば同様な事は可能と言える。

 しかし言うは易し実行は難し、例えるならば針で開けた極小さな穴、穴ともいえぬ極々小さな穴に糸を一発で通すかの様な正しく神業をレナラは実戦で実行したのだ。

 

「驚かれる事もないでしょう、えぇその技は何度も見ましたので、ならばこの程度の事、造作もない事です」

 

──女王レナラ、正しく神域の魔術師である。

 

 アステールは心底恐怖した、当初は軽く潰せる筈の虫達によもや己が追い詰められているとは‼︎だが彼は逃亡しなかった、それは蹂躙者としての淡い矜持(プライド)?否、彼は知らないだけだ、逃走というものを。

 彼はいつでも蹂躙者、彼がいつも行っているのは一方的な殺戮と蹂躙、差し詰め言うならば弱い者虐めであり彼は己と対等、或いは格上との戦闘を経験した事が無かった、故に彼はこの3人から逃げる最後にして最大のチャンスを逃してしまった、或いは……心の何処かで分かっていたのかも知れない、逃げてもこの3人は地の果てであろうと追いかけてくるであろうと言うことを。

 

 アステールが両腕を上げる、その瞬間辺りが怪しく光りアステールを中心に光の球体が出来上がった、光が収まった時アステールは居なかった、まさかの逃亡?否、アステールは逃げたのではない、移動したのだ、安全な場所に、向こうの攻撃が届かない安全地帯に移動したのだ。

 

──そう、これは断じて逃走ではない‼︎向こうの攻撃が届かない位置から攻撃すればよかっただけなのだ‼︎これは敗北ではない‼︎最後に笑うのはやはり我なのだ‼︎

 

 そう思ったのかは定かではない、しかしあの高度ではレナラの魔術でも届かないだろう、そしてアステールは真下に向け力を展開する、先ほど2人を蹂躙したアステールメテオだ、しかもその量密度共に先程の比較にならない、とうとう万事休すか──。

 

 最大限威力を誇るアステールメテオ、かつて永遠の都を滅ぼした時より威力を上げたそれをアステールは眼下の虫達に向けて遂に放たれる──事はなかった

 

 アステールが隕石群を落とすより先にアステールの命を刈り取る一撃を振り落とした者がいた、それは誰か?ラダゴン?否、ゴッドウィン?否、2人にこの高度まで届く技はないし跳躍でも届かない、ではレナラか?それも否だ、レナラは三度目の彗星放射と先程の力場で魔力を使い果たしている、つまり3人とも除外だ、では誰か?そもそもその下手人、人ではない

 なにせアステールを屠ったのは赤く光る雷だ、遥か彼方から赤雷が飛来したのだ、人では雷を扱う事は未だ出来ない、()()()()()()()()()()

 

 レナラとラダゴンは驚愕に塗れた、弱っていたとはいえあのアステールを一撃で屠ったその攻撃についてだ、然しゴッドウィンはその赤雷の由来を知っていた為に飛んできた方向を振り向く、遥か彼方ではあったが確かにその存在を目視した。

 そこには腕と足を生やし立派な羽を携えた大きな竜の姿を、確かにゴッドウィンは目撃したのだ、そして──

 

──私を見たな?

 

──目線が合った、確証はないが間違いなく確信出来る、今己は彼奴と目が合った‼︎

 距離にして数10キロは優にあると言うのに‼︎心臓を鷲掴みにされた様な感覚にゴッドウィンは陥った。

 

 冷や汗が止まらない、震えが収まるところを知らない、そうか、これが…これこそが──

 

(恐怖と言う物か)

 

 そして力が途切れたアステールの遺体が落ちてくる、その轟音にゴッドウィンは我に返りアステールの亡骸を確認する、もう一度振り返りあの場所を見てもそこには何も居らず、生命の痕跡は無かった。

 

「勝った…のだよな?」

「えぇ…確かに勝ちました…不可解な最後ではありましたが」

「最後のあの雷がなければこの地は消し飛んでいただろう、してどうする?未だやるのか?女王よ」

「思ってもないことを言う物ではありませんよ、互いに限界でしょう、私も貴方も彼の扇動に乗せられて彼自身も自覚はないでしょうが大きく飛躍した事による脳内麻薬の分泌により限界を超えて動いていた、戦が終われば疲労に襲われるでしょう」

「ふむ、それもそうか…ゴッドウィン‼︎何時迄も呆けている場合ではない」

 

 ラダゴンの声によりゴッドウィンは思考の海から浮上する。

 

「──ッそうだな、戦後の処理をせねばなるまい…取り敢えずはこのデカいのを始末と…後は私が今見た物を話さねばなるまい、我が父ゴッドフレイも介して話さねばならないだろう、故に女王よ会合の場を設けたい、この戦の締結と今後の未来についての話だ」

「えぇ…分かりました、元より我等の軍は敗北したも同然、其方に出向きますとも、それより先に、この遺体の魔術的保存だけは施させて頂きますが」

「構わない、それが貴公らにとってとても貴重なサンプルである事は理解しているつもりだ、我等が扱っても宝の持ち腐れだろうしな、好きに使え」

 

 斯くしてリエーニエ戦役は一先ずの終着を得た、この戦の結果は突如乱入した異形により両軍痛み分けと言う結果に何の書物に記され、そしてその異形を討伐したゴッドウィン、ラダゴン、レナラの三名はリエーニエ戦役に於ける英雄として迎えられることになった。

 然しこの時は誰も…否、ゴッドウィンしか知り得ない、この世界は既に本来の歴史より大きくズレていると言うことを…

 

──黄金樹は今日も輝かしく光を垂らし、そしてその内部は妖しく光が蠢く。

──更には遙か天空にて、雷が迸り心なしか竜の様な甲高い鳴き声を響かせる。

 

*1
本人はマゾに在らず




これにてリエーニエ戦役編は終わりです、後は後処理とその後の日常を描いて第一章は完結です‼︎第二章の伏線も無理やり詰め込めたんで作者は満足。

以下作者の書きたいことを書くだけの所

思ったより展開が長引いてしまった、戦闘描写下手糞なのに戦闘盛ろうとするから…そもそも当初の予定は黄金軍とカーリア軍の戦争を描こうと思ったのに蓋を開けてみればまぁ初期ゴンと成りウィンの無双が始まってしまうので急遽プロットを変更、そもそもその後にレナラとラダゴンよ婚儀まで突き詰めなければならなかったのでね、原作だと2回あるらしいんだけど…2回も戦争の描写書けるわけないだろ!いい加減にしろ‼︎ってことでね、一回にねじ込んだ結果こうなりました(ヤキ)

>>アステール乱入
これがプロットを変更したその先に配置した舞台装置、そもそも戦争までしたのにその両軍の主要人物が結ばれるってどう言う事⁉︎ってなりましたので、じゃあ両軍共通の敵が用意すればいいよねとなって登板のスポットを浴びたのが彼、丁度リエーニエの地下って此奴の住処でしたので、彼が表に出てきた理由は暇潰し且つ、何者かの因果操作が絡んでたとか絡んでないとか…?

>>ゴッドウィンの心境
成りウィンは精神が昂ると口調が荒くなります、もっといえばちょっと性格が悪くなります、一人称が私から俺へと変わります、まぁこれは割と意図してですね、前を振り返ればそうなってる所もチラホラ、そんな彼ですが心境的には大分参ってる方だったりします。
 かなり取り繕ってますが、娯楽に塗れて極楽な現代社会から転じて娯楽皆無な殺伐としたエルデン世界に転移したらそりゃそうよ、その癖自分の身はエルデンリングの世界で最も有名と言っても過言ではない血筋、そりゃたまったもんじゃないよね、それをすぐに受け入れた辺り主人公もやっぱり狂ってる側ですよ。
 精神が否定しても肉体が否が応でも闘争に反応しちゃうんですよね、そしてそれを諌めようと喧嘩相手を探しても己の規格外の身体能力で喧嘩すらままならない、身体的にも精神的にも一枚処では無いクッソ分厚い壁で隔てられてるから、そりゃ友達の1人もできないよ成りウィン君。
 それでも伊達に社会人生活送ってないので滅茶苦茶取り繕って仮面を被れるんですけどもやっぱりストレスはどうしようもないよね、お父さんとの鍛錬(実質親子喧嘩)も毎日やったら飽きるよね、だから前世では縁がなかった弟達に癒されるね…と言うかなりやばい状況に、なので今回の戦争で思いっきり暴れてなかったらストレスによってかなり病んでたかも知れませんね。
 自分が周りより強すぎて退屈してるって明かしてるけど成りウィン君この世界今の君より強いの幾らでもおるでってのをやりたかったが為に古竜君フライング出演、そして久しく忘れていた恐怖心を思い出させて退屈してる場合じゃねえなってのが今の現状ですよ、そもそも腐ったらすぐ死ぬからね(二重の意味で)
 なので今後の成りウィンは硬くはあるけどもう少し柔らかくなると思います、と言うか柔らかくします、具体的には少々振り回されて貰おうかと、その為に赤髪の三兄弟が控えさせてるわけだしね、なんなら究極単為生殖兄妹もいますので家族セラピーの備えはバッチリです、後は完全に心を許せる唯一無二の友がいてくれたらナ…某運命の慢心王ですら親友が居たんやぞ。
 あ、因みに古竜達とは完全に殺し合わせます(ネタバレ)
やっぱ人と竜って分かり合えないって、ゴッドウィン本人ならともかくこの世界は中身現代人の成りウィンなんでね…そのせいで本来友達になれる筈フォルサクス君とは友達になれない始末…悲しいけどこの作品一応フロム作品なのよね。
と言う事で長々と書きましたがここまでとします、未だ書きたい事あるけどさすがにね、また次回も読んでいただけると幸いです、あ、文字数はまた戻るかも…なんとかします(焦)
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