生まれ変わったら後の死王子だった件   作:Another2

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と言うわけでマリカ視点のお話、赤髪三つ子はまた今度


黄金の女王は何を思い耽るか

 私には殆ど自己の意思なんて無かった、唯々神の託宣に従うのみ、私はその様な存在として選ばれた。

 

──神人となり狭間の地を統一せよ。

 

 それがまず与えられた使命だった、それ自体に不満はない、私はあらゆる手段を模索し狭間の地の統一を図った、結果先王とその妃である宵眼の女王を討伐出来た、その際に後のゴッドフレイ、当時はホーラ・ルーと名乗っていた戦士と出会った、今思えばあの時の王は少々野蛮であったな。

 その後統合し巨人族に戦を仕掛け唯一生き残った火の巨人を釜の番人の役割を任命させ巨人との戦争は終わった。

 

──神人の後継となる子を成せ。

 

 それが次に与えられた使命だった、道理ではある、私は不滅の存在ではないのだ、いつか来る終末に備えて後継者を産んでおくのは必然と言える、ならば相手は誰か?それも決まっていた、当日狭間の地で最も強い男であるホーラ・ルーと婚儀を結び我等は黄金樹の民として生きる事になったのだ、その際にホーラ・ルーは王となる事を決意し名をゴッドフレイと改めた。

 

 そして遂に待望の我が子が産まれた、名をゴッドウィン、産声一つ挙げなかったのでもしやと思ったのだが杞憂であった、身内贔屓もあるがあの子はかなり成長が早い、産まれて数ヶ月で言語を発しており、僅か半年で歩行をこなす程だった。

 ただ当時あの子は少し内気なのか殆ど自己意思を発する事はなく書斎に引き篭もり本を読み耽るばかり、必死に勉学に励むのは構わないのだが親としてはやはり外に出て運動もしてほしいと思ってしまう。

 

 そんなあの子が大きく変わったのは夫との初鍛練の後だろう、珍しくゴッドウィンが夫に鍛練を申し付けた後その後軽く手合わせをする事になった、結果は夫の勝ちであったがゴッドウィンは子供とは思えない大立ち回りで後一歩のところで勝ちを逃したと言う、そこからは日課の様に夫と手合わせを行い凄まじい勢いで力をつけていった、2歳になる頃には既にゴッドウィンの相手を務めれる者は夫が私しかいなくなっていた。

 

 そしてあの子の心持ちが大きく変わったであろう出来事がその一年後だ、私は双子を身籠りこれを無事に出産、しかしその双子は身体中から角が生えておりそれは紛れもなく“忌み子”の象徴であった、まさか私が忌み子を産んでしまうなんて、周りの助産師も処理するべきだと言っている、私は一国の女王としてこの二人の処理をしようとした時──。

 

「待て」

 

 たった一言、それのみでゴッドウィンはその場の空気を支配したのだ、有無を言わせぬ雰囲気を纏ったゴッドウィンに助産師達は愚か、私も夫もその雰囲気に圧倒されていた。

 

「産まれたばかりの、それも我が弟達をなぜ私の無断で処断しようとしているのだ、忌み子である?それがどうかしたのか、貴公等にとって忌み子であっても私にとっては初めての弟達なのだ、乱雑に扱うのはこの世の全てが許しても私が許さん、蝶よりも、花よりも、丁重に扱ってもらおう」

 

 その言葉にハッとさせられた、私は今この子達をどうしようとした?周りの声に流されて始末しようとしただけではないのか、自ら腹を痛めた子を己の勝手で殺そうとしたのではないか、ゴッドウィンは直接的に言う事は無かったが言外に私にもその言葉を浴びせられているのだと認識してしまった。

 

「お前達は身体中から角が生えている、ただそれだけで呪われているだの忌み子だのと宣う、私にはそれが理解できんのだ、この世に生まれた命は全て尊く、そして儚い。呪われたり、忌まわしき子など存在しない……全て等しく唯一無二の存在たる命なのだ、それを貴様等……己と多少姿形が違うからと言って即座に処断するとは呆れた物だ。人間だけに問わず、生物は全てが同じ形をしているわけではない、一つ一つ全ての個体にその個体特有の個性があるのだ、我々人間もそうだ、多少背が大きかったり、肌の色が違ったり、様々な個性があり、その個性こそがその一個体を表すのだ、であればこの子達のこの角も立派な個性であり尊重されるべき物だ。

──お前達の誰もがこの子達を誕生を祝福せんのなら、私が変わってこの子達を祝福しよう」

 

 私は私自身の愚かな行動を心底悔いた、周りに流され自己意思を持たずに行動する私よりこの子は立派に自分の足で立ち、自分の頭で考え行動しているのだ、一人の人間として、未だ幼い我が子に器の大きさで負けた気がした、この子は間違いなく夫の子であろう、王としての素質を感じてしまったのだから。

 

 私はこの子達の処理は行わなかった、それは女王マリカとしての物ではない、ただ一人の、母として私の考えによる行いだ、その行いに悔いはない、ないのだが私はその瞬間ゴッドウィンが誰よりも過酷な道を選んだ事に、選ばせてしまった事を察してしまった。

 

 その後ゴッドウィンが忌み子であるモーゴットとモーグを庇ったと言う話は瞬く間に広がった、その事は本人はまるで気にしていなかったし本人も特に何かする必要もないと言うので私はゴッドウィンに対して傍観の姿勢を崩すことはなかった、それが誤ちだったのだ。

 

 私は兵士からの報告を聞いた際我が耳を疑った、何せゴッドウィンが民を虐殺したと言う報告が入ったからだ、原因は弟二人を貶されたからだそうで幼い頃あの子が過ごした部屋に軟禁した際に本人から聞き及んだ、あの子は我が事よりも自分が愛する者を貶される事を一番嫌うらしい、私は初めてゴッドウィンの心情を聞いた。

 詰まるところ夫も私もゴッドウィンの事を何一つ知り得なかったのだ、思考も趣味も何一つ分からない、それで生みの親とは笑わせる、ゴッドウィンが何も話さなかった?否あの子にとって私は話すに値しなかったのだ、聞きもせず語り合おうともせず、よく知ろうと歩み寄ろうともしなかった、私の罰だ。

 そこから約二ヶ月の間あの子は自分の部屋に篭った、私はその間毎日の様にあの子の部屋に通いあの子と語り合った、お互いを知る為に、三年という余りにも長い年月を埋めるには二ヶ月は余りにも短過ぎる、だがそれも厭わず私はあの子と語り合ったのだ。

 

 そしてその三年後、またしても悲劇はおこる、モーゴットとモーグが民衆から暴行を受けそれを見たゴッドウィンがその場にいた民達を鏖殺しかけてしまった、幸いモーゴットがすぐさま止めに入ったらしくゴッドウィンは我に返ったらしい、私は国を治める者として、親としてゴッドウィンを叱りつけた、あの子は己がした事を悔いていないのだろう、しかし私はあの子が周りを置いて孤独の道を行くのを止める事ができなかった。

 孤独と孤高は全く異なる、あの子には対等と呼べる存在が必要だ、しかし我等ではその存在になり得る事はできない、つまり今あの子に最も必要なのは友と呼べる存在だ、しかしあの子が持つ類い稀な素質が災いしあの子と対等な者なんて存在しない。

 

──リエーニエに座するカーリア王家を攻め落とし、その女王たるレナラと子を成せ

 

 それが次の神託だった、私は耳を疑ったのだ、女の身である私に女と肌を重ね子を成せと言うのだ、理解が及ばなかった。

 

「…私は女の身です、他者の女と肌を重ねた所で子を成す事は不可能です」

 

──問題無し、其方が性別を変え男となり女王を娶れば良い

 

 私は絶句した、事もあろうにこの神は私に男となり相手に子を孕ませろと言ってのけたのだ、そしてそれは今の我が夫に対する不義理でもある。

 

「…子であるなら、我が子ゴッドウィンがおります」

 

──否、奴は神人たる資格がない、奴は神を嫌っている

 

 これもまた初耳であった、我が子ゴッドウィンは神である大いなる意思を忌み嫌っていたのだ、そして私は何故嫌っているのかすぐに理解した、()()()()()()()()()と。

 

「…ならば、また子を産めば──」

 

──ならぬ

 

「…ッ‼︎私はまだ子を産めます‼︎それからでも遅くは──‼︎」

 

──不可解、忌み子を孕ませたあの男の種が神人を産めるはずもない

 

 私は呆然とした、神は…否コイツはたかだか角があるだけの子を忌み子と呼び、更にはそんな物を孕ませた我が愛する夫を貶したのだ、許されるはずがない、しかしどう思おうと私にはコイツに反抗できる力がない、従うしかないのだ。

 

──理解したならば、汝男となり女王レナラと子を成せ、手段は問わぬ

 

 神託は降った、手段は問わないと言った、ならばこちらも最大限手を打たせてもらおう、確かにいずれリエーニエは落とすつもりだった、だが予定を変更する、いずれ神を殺す為にカーリア王家の力を引き込む、その為には…我等とは思考が違うあの子の力が必要だ。

 

「マリカよ、神託が降ったのか、…此度はどの様な事があった?酷く衰弱している、ゆっくりとでいい、話してみてくれ」

「申し訳ありません、王よ、私は…貴方に不義を働いてしまいます」

「不義を…?」

 

「私は王以外の者と子を成さねばならなくなりました、相手はリエーニエの女王、レナラ」

「彼の高名な魔術女王か、しかしマリカよ、其方と彼奴は女同士、子を成すのは不可能な筈」

 

「神託によれば我が身を男体に変貌させ女王に孕ませるのだと宣っていました…」

「そうか…」

「王よ…私は耐えられません…‼︎他の者と身体を重ねる事よりも、神託に逆らえぬ我が身に、愛する我が子を、何より最愛の貴方を裏切る事が何より苦痛なのです…‼︎」

 

「…顔を上げよマリカ、其方の苦痛と慟哭、確かに受け取った、其方は私を…()()裏切った事を苦痛と言うが俺はお前に裏切られたと思う時はない。今までも今後もだ」

「ホーラ・ルー…」

「然しそれでお前の気がすまぬと言うのなら、どうか我が願いを聞き入れてほしい」

「如何なる願いでも聞き届けましょう」

 

()()、我が血湧き肉躍る強敵を所望する、それが戦士としての生き甲斐故」

「叶えましょう、この地を統一した際、貴方の瞳は色褪せるでしょう、その際貴方をこの狭間の地より追放いたします、この地の外で如何なる強敵を打ち滅ぼした際にまた御帰還ください」

「感謝する、遍く敵を滅ぼした際、また君に会いに舞い戻る、その際に()()()()()()()()()()()()()()再び君に我が最強を証明して見せよう」

 

 そうして私は夫と契約を結んだ、王は最後の宿敵をこの地の者と見出した、その相手が誰か等問うまでもない、彼は神をも殺して見せると言ってのけたのだ、或いは神を殺せるほどの実力者を私に送ってくるのだろう、それだけで私は大きく報われた気がしたのだ。

 

「してマリカよ、この事はゴッドウィンには伝えるのか?」

「あくまで一部のみ…ですが少なくとも私と男である私の事は伝えねばなりません、私はあの子を信じると決めたのですから」

「そうか、ではゴッドウィンを呼びつけに上がるとしよう」

 

 男となった私の肉体はなんとも不便だ、従来扱えた祈祷の類が一切扱えずあるのは女体であった頃より強靭な肉体のみ、戦闘力の大幅な下落は免れないだろう、それを埋める為にも此度の戦にゴッドウィンを連れて行くのだ。

 

 そこからは早かった、ゴッドウィンが私の顔を見た時の顔は今思い出しても笑い物だろう、あの仏頂面が呆けた顔になったのを見れただけでも十分な価値はある、それに最愛の我が子から大事な名を授かったのだ、確かラダゴンだったか、モーゴットとモーグの件と言い奴が発する名は自然と体に良く馴染む、フフッ少々浮き足立ってしまうな。

 

 戦が始まり私は先行するゴッドウィンを見てやはり夫との確かな血の繋がりを感じた、あの暴威の嵐は夫のそれに匹敵する、だが少々先走り過ぎたな、奴は魔術の造詣は多少なりともあったのかレナラを最大限警戒していたが奴の実力はその上をいった、レナラが発動させたであろう転移魔術にゴッドウィンが掛かりどこか遠くに飛ばされたのだ、怒りはない、寧ろ良い教訓になるだらうと思った。

 

 そしてレナラとの戦いが始まった、彼女の実力は想定を上回り様々な魔術を駆使してくる、本来の実力なら敗北はないのだがいかんせんこの肉体にまだ慣れていないし何よりここでレナラを殺すのは不味いのだ。

 この二つの制約により私はこの戦での動きにかなりの制限を設けられていた、そんな事を梅雨知らずにレナラは魔術を行使する、流石魔術のみでリエーニエを纏め上げた事はある、些か魔力の流れも量も衰えが見えない、恐らく彼女は最高効率で魔力を廻す事により無駄な魔力消耗を防いでおり、魔術を行使する際にどうしても起こる魔力ロスを限り無くゼロにしている、凄まじい程に魔術に向き合ってきたのだろう。

 敵ながら称賛したくなると同時に同情してしまう、そんな彼女があんな奴の運命に囚われてしまったのだ、最大限利用するつもりだがその一点は哀れだ。

 

 そして乱入してきた第三者、ゴッドウィンがアステールと呼称したそれは確かな強敵であった、途中渾身の一撃を叩き込んでやったがそれにより怒った奴に私とレナラは危機に見える、その際にレナラがなぜ敵なのに庇うのかと問うてきたが私としては敵である以前に神を殺す為にレナラの力が必要なのでみすみす殺させる訳には行かなかったのだがそう伝える訳にもいかないのでゴッドウィンの存在を出しに納得させた、実際にあの子が生まれて私も少しずつではあるが変わってきているので問題ない。

 

 その後帰還したゴッドウィンの激励で持ち直した私達はなんとかアステールを討伐した、尤もトドメは古竜が刺した様だが、兎に角戦は終わったのだ、これにより一件落着と言える。

 そう言えばあの時レナラから彗星を浴びた際何故私は無事でいられたのだろうか、その時から僅かに肉体に違和感を感じていたのだが今は何ともない、気の所為だろうか。

 

■■■■■──。

 

 その後ゴッドウィンから己が見聞きした物を書き出しそれについて夫が狭間の地で起きた事を話し、今後の備えとしてゴッドウィンは今まで以上なら過酷な鍛錬を受ける事になった、御愁傷様だな。

 かく言う私もレナラと結ばれる事になったのだが…いざ対面して話し合うとなかなか話が通じる、少なくとも学院の魔術師達が魅了されるのも頷けると言う物だ、その際ゴッドウィンにかなり分厚い本を渡していたのだがアレはレナラが特別に組んだ魔導書でありここの学院の者は殆どが読み解けない代物らしい、夫と同じ気質の持ち主であったか。

 

 そして遂に()()に至ったのだが…まぁ彼女は凄かったとだけ記しておく。

 

■■■■■──。

 

 此処に来て一年程経った、時折耳鳴りがするのだが体に特に支障はない、寧ろ調子が良いぐらいだ。

 ゴッドウィンの魔術の吸収率は凄まじい物があり、レナラ曰く既に教える事がなく後は実戦で鍛えるしかないらしい、後ゴッドウィンが新しく考案した強化魔術とやらは既存の魔術体系の其の何にも該当しない為に新しい魔術術式として登録された、魔力を流して肉体を強化するのは誰でもできるがその流れを術式として組み込みスムーズに行うのは無かったらしくレナラの体感的には中々使い勝手が良いらしい、他の者は皆失敗してたところをみるとかなり高度な技術の様でこの女の基準は当てにならない。

 

 更に祝福すべきことに遂に私達の子が生まれた、上からライカード、ラダーン、ラニだ、その際ゴッドウィンの様子が少し変だったのだが即座に持ち直した所から杞憂であったらしい。

 新たな子を目にして私は今になって己を嫌悪する、この様な幼気な子達を己の我儘に突き合わせようと言うのだ、私は間違いなく碌でもない最後を迎えるだろう、子供達を地獄へと導いているのだ、だが地獄に堕ちるのは私だけでいい。

 

私達は如何なる手段用いてでも何れ神を殺すのだ。

 

──ああ‼︎憎らしき小僧よ何故黄金律に染まらぬのだ‼︎何故神人たる資格を放棄したのだ‼︎何故私はこうなのだ‼︎何故、何故、何故何故何故何故──‼︎、口惜しやゴッドウィン!




不穏な空気が漂って来た所でここまで、少し全貌が見えて来ましたね。

此処からは私事なのですが、この作品の1話〜10話の修正を行いたいと思います、アンケートの結果今の書き方の方が読みやすい方が大多数だったのでこの決断に至りました、ので二章の更新は少し遅れると思いますがご容赦ください。

他にも書きたい物が出来ちゃったってのもあるし…

──回帰(リーダー表示)だけが秘密を暴く。
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