戦が始まる、何気に私は初陣である、父との鍛錬で相当に強くなった自負はあるが……それでも緊張感が迸り武器を握る手の力が強まる、いかんな冷静にならねば、戦う前から武器を駄目にしてしまう、平静を保たねばなるまい、何せ今のこの軍の頭は私と言う体になっている。
何故かと問われると、マリ……基ラダゴンには知名度が無い、当然だ名前をつけたのは私だし其れも浸透させることもしていない、あくまで“元々軍に所属していた”、と言う物である。
扱いとしては一兵卒になる故に軍を率いて指示を出すのは多数の方面の面目に関わるらしい、その辺は私はよく知らん、優秀な奴が軍を率いれば良いと言う単純な話でも無い様だ、そちらの方の知識面は疎い故に起きた弊害だな。
序でに言えば一兵卒と言う扱いからなのか其れとも赤髪が珍しいのかラダゴンは周りの兵士に気安く話しかけられているし本人も気軽に応対している、お前達…そこにいる男は仮にも我が国のトップだぞ、と声を大にして言いたいのだが、絶対面倒なことになるので見なかった事にする。
ちょっとした珍事を見なかった事にして今回の目標の再確認と行く、目的地は眼下のリエーニエ、そこに存在するレアルカリア魔術学院の制圧、及びに満月の女王レナラの征伐…と言うのが目標だ、敵の戦力は女王レナラを筆頭に魔術師が大量、騎士もいるにはいると言った所だろう、あとは少数ながらトロルと飛竜、猟犬騎士と言った面子か。
正直な所、敵の兵力に関してはほぼ気にしていない、と言うのも私とラダゴンが普通に強過ぎるからそこらの雑兵ではサンドバッグにもならない、勿論率いる兵士達も選び抜かれた精鋭揃いであり後の赤獅子軍に倣うなら“我が黄金軍に惰弱なし”と言った所。
それよりローデイル兵が使っていた雷の祈祷なのか戦技なのか知らない“アレ”……いいな、私も使いたいぞ、前世で王都攻略中に雷攻撃に苦しめられたが実際目にすると何とも言えない……こう、心に来る物がある、*1私も剣に雷を宿して攻撃したいが*2いかんせん未だ実物を見ていないし、何より原型を使用するのは古竜達だったはずだ、やはり古竜戦役まで我慢するしかないのか。
……さてそろそろ目を背け続けるのにも限度があるのでそこの赤銅色……正しくは黄金色なのだが、そんな色の甲冑に身を包んだ十人ばかりの騎士達を見る……うむ、何処からどう見ても立派な坩堝の騎士である。
とまぁこの様に精鋭兵士数百人、坩堝の騎士が十人程、そこにラダゴンと私の布陣だ、余程のことがなければ惨敗はあり得ない、さりとて油断はせぬ、私には魔術や魔道具の知識造詣は深く無い、前世の記憶からそういった物があると言う事くらいは知っているが、それだけで勝てるほど低い見積もりもしていない、いかんせん父との鍛錬で前世で遊んだあの世界とは違うと言うのは身をもって味わっている、ならばこそ私が知らぬ魔術、それを用いた兵器等がある筈だ、否、必ずある、その前提で動かねばなるまい。
更には全盛期のレナラ女王の実力だ、彼女は武術こそ扱わないが桁外れの魔力と魔術の数がある、私が知る方はラニが創り出した幻影であるし、更に言えば幻影の時でも彗星アズールを使っていたところを鑑みるに恐らく現在のレナラ女王も使えるのだろう、ならばこそ他二種の源流魔術も扱えておかしくはない、故に彼方に現存してたあらゆる魔術を使える前提で更に私の知らぬ魔術を使う事を想定して私は動く。
ここまでレナラ女王や未知の魔術兵器の存在を語ってきたがそれらはまだ目に見えぬ強み、ならば次は目に見える彼方の強みを確かめねばならん。
先ず第一として地形だ、此方は圧倒的高所から攻め入るので有利…かと思われがちだが実際は魔術も弓も届かぬほど下に位置する敵地だ、無論飛び降りれば物言わぬ肉塊となるだけだろう、だからこそ大昇降機を使うのだ、そしてこれが我等の軍の補給ポイントであり退却ポイントでもある、つまりここを制圧されたらその時点で詰みだ、故に全軍突撃は出来ず、幾つか防衛戦力を残しておかなくてはならないが、防衛戦略にはトロル族を起用してるらしく、後程数十体のトロルが寄越されるらしい、あとは防衛設備を整え、兵士と坩堝達を幾人か配置しておけば取り敢えずは防衛は何とかなるだろう。
対して彼方側だが、奴らは基本的に魔術学院に引き篭もると予想される、あの魔術学院は籠城をするのに最適な立地だ、東西南北どちらから攻めても入り込むためには東と南から伸びる橋からしか入れぬ上その他は湖に囲まれた堀いらずと言う正しく天然の要塞と言えるだろう、攻め入る場所が限られると言う事はそれだけ防衛戦力を集中させやすいと言う事、更には向こうは遠見の魔術も使える筈だ、此方の動向は筒抜けであると考えていい、大昇降機の破壊工作に回らないのは恐らく後程自分達も使うからと見ていい、一々坑道を通り抜けるのも面倒であるしな。
とまあ後ろ向きな思考が続きつつあるがそれだけ全盛期のレナラ女王が未知数なのだ、裏を返せばそれ以外は然程と言った所だろう、未知の魔術は防ぐなり避けるなりで対処できるし、兵器は破壊して仕舞えばそれで終わりだ、トロルの群れが来るなら率先して潰しに行くし1、2体の飛竜なら多少梃子摺るぐらいといった所。
更に言うならこれは私1人で対処した換算だ、我が軍は精鋭揃いだし、なにより言うまでも無いが坩堝の騎士は強い、単騎でも十分な強さを誇り、例のダンジョンでの二体同時坩堝に業を燃やした者も多いだろう、それが複数体の同時進行だ、予め騎士達には最初から力を解放しておく様伝えているので四方から囲まれてタコ殴りにでも合わん限りは何とでもなる、それにこいつらいざとなったら短距離とは言え飛翔して離脱できるし。狡い
前置きが長くなった、士気は十分、時も満ちた、開戦だ。
リエーニエ戦域じゃなくてリエーニエ戦役だった…凡ミスです。
こっちも持てる限りの戦力で叩くけど実際レアルカリア攻め落とそうとしたらレナラとあの立地が関門すぎるよねってのが今回のお話です。
Q:大昇降機ってこの頃からあったの?
A:この世界ではそうなりました。
実際の所どうなんでしょうねあれ、この世界線では流れでもう存在した事になってますが。
以下無関係の後書き
7話を投稿した後のUAの増加数にビビり上がってもはや笑うしか無い小心者の作者です、小説情報からUAの傾向が見れるんですけど1時間あたりのUAがとんでも無い事になってて変な声出ました、未経験故…皆様誠にありがとうございます。