前回の続きになります。
それではどうぞ。
「友希那ちゃん、こんにちは。そういえば今日も予約入ってたね!」
「ええ。本番は来週に迫っているのよ。確認と調整の繰り返し……時間は、いくらあっても足りないわ」
CiRCLEのロビーにて。受付をしていた
「次の予約は帰りにさせてちょうだい。それじゃあ……」
「ギリギリまですみません。撤収終わったので、次の人来てたら……って、湊さん」
そして友希那がスタジオに向かおうとした時、練習を終えた蘭がロビーに現れた。
「美竹さん。お疲れ様。次、入らせて貰うわ」
「今から練習なんて、余裕ですね。あたしは2時間も早く練習に入ってましたよ」
「練習の開始時間は関係ないんじゃないかしら」
「……(うわ~、悠里くんと夏々くんから話は聞いてたけど、なるほどねー……)」
お互いに火花を散らす友希那と蘭。その様子を見て、まりなは予め悠里と夏々から経緯を聞いてた為、そこまで驚かなかった。
「そうですか? 熱意があるなら、少しでも早く入りたいと思う気がしますけど」
「あいにく、今日は外せない用事があったのよ。熱意なら十分にあるわ」
嘘は言ってない。実際に今日、友希那はどうしても外せない用事があっのだ。
「今日は練習時間を、普段の倍。4時間にしたと言えば納得して貰えるかしら?」
なので友希那は蘭に今日の練習時間を言った。遅れた分は倍にして練習するだけだ。……尤も、友希那からすれば、いつも悠里が1人で練習してる時間に比べてもまだ少ない方だが。
「な……じゃ、じゃあ、あたしもあと2時間やります! まりなさん! どこか空いてますか!?」
「うん、空きはあるから大丈夫だけど……」
それを聞いた蘭は、自分もあと2時間やると言い、まりなにどこか空いてるスタジオはないか?と訊く。
「美竹さん。前から思っていたのだけれど……なぜそこまで私に張り合おうとするの? バンドを侮られたくないという気持ちはよく分かるわ。けれど、あなたはそれだけじゃない気がするの」
「はあ? そんなの……」
「前から知りたいと思っていたの。今から少し、話せるかしら?」
知りたかった事を聞けるかもしれないと思った友希那は、蘭に少し話せるかと訊ねてみる。……返答は彼女次第だが。
「今から? ……まあ、いいですけど」
なんと返事は意外にもオーケーだったようだ。
◇
「それで、さっきの話の続きなのだけれど……美竹さんはなぜ、私に張り合おうとするのかしら」
CiRCLEの外にあるカフェテリアに移動した2人。そして蘭に先程の質問をする友希那。
「それは……多分、悔しいからです」
「悔しい……? どういう事?」
「正直、あたしもよく分かりません。でもなんか……湊さんには負けたくないんです」
悔しいという答えに友希那は意味を訊くが、蘭は自分にもよく分からないと返す……が、友希那には負けたくないと答えた。
「あたし、最初はRoseliaが気に食わなかったんです。技術技術ってそればっかり言ってて」
「……」
「でも実際は違うじゃないですか。違うっていうか、それだけじゃない。結構熱い曲も多いし、悪くないじゃんって思ったりして」
それにと蘭は口を開く。
「ライブで新曲やれば気になるし、クラスでRoseliaの話題が出たら気になるし……でもそういうの、湊さんにはないですよね」
「……」
「それが、すごく悔しいんです。あたしはこんなにRoseliaを、湊さんを気にしてるのに湊さんにはそういうのないんだって。噛みつかれても、気にしてないって流せる程度なんだって」
そう思ったらすごくムカつきましたと蘭は言った。
「湊さんはいつも落ち着いてて、辿り着きたい場所がしっかり見えてる。あたしみたいに手探りで進んでる訳じゃない。だから、転んだりカッコ悪い思いをする事もなくて……そんな湊さんに勝てば、あたしもきっと……」
「きっと……?」
「だからつまり…………って、ああもう! つまり、あたしは湊さんをライバルだと思ってるって事ですよ!」
「美竹さんが、私を……?」
実は友希那をライバルだと思ってたと言う蘭の言葉に、友希那は少し驚いた。
「……美竹さん。あなた、自分の歌は好き?」
「なんですか突然」
「大事な事なの。答えを聞かせて」
「そんなの、好きに決まってるじゃないですか」
藪から棒に『自分の歌は好きか?』と友希那に聞かれた蘭。その表情は真剣そのものだった。その質問に蘭は好きだと答える。
「確かに、まだ色々足りないのかもしれない。それでも全力で、今できる最高のものを作ってます。だから悔いとか迷いとか、そういうのはありません」
だから好きか嫌いかなら、はっきり好きだって言えますよと蘭は言った。
「あなたは迷わないのね。でも、そうね。きっとそう答えると思っていたわ。美竹さん。私は今、あなたのそのまっすぐさが少し…………羨ましい」
「はあ!? 急に何言ってるんですか?」
「以前、迷っていた事があるの。未熟なままの私が歌っていてもいいのかと……」
「……」
そんな蘭に友希那はその理由を話し出す。
「私には大切な歌がある。歌を純粋に好きと言い切れない未熟な私が歌っていいのか、と迷ってしまうほど大切な歌が。Roseliaを結成して、リサや紗夜、燐子、あこ、そして悠里とバンドをやる中で、歌う事への迷いは消えた」
だけど……と友希那は言葉を続ける。
「同じ質問をされた時、美竹さんのようにはっきりと答えられるか。それはまだ……わからないの」
「そう、なんですか……なんか、変な感じ。Roseliaはゆるぎなくて、自信満々って感じで湊さんも、迷いとか悩みとかには無縁だと思ってました」
その話を聞いた蘭は意外だのと同時に変な感じだと思った。蘭から見た友希那は、迷いや悩み等には無縁だと思っていたから。
「あたしは自分の歌が好きです。できる事は全部やってるから。ほんと、それだけで……」
「あなたはそれでいいと思うわ」
「またそういう事を……はあ。それ、どういう意味ですか?」
溜息を軽く吐きながらも、その意味を友希那に訊く蘭。
「私が感じるAfterglowの1番の魅力は感じた事を偽らず、ありのままを表現しているところよ。それは美竹さん自身が、ありのままでいるからこそできる事でしょう?」
だからきっと、そのままでいいのだと思うわと言う友希那。
「音楽にとどまらず……そうね。今回私にしたように、むき出しの感情をぶつけ続けてほしい。そう考えるのは勝手かしら?」
「勝手ですよ。でも……嫌では、ないです。けど、ぶつけるとかむき出しの感情とか……湊さんもしかして、あたしの事を生意気だって思ってます?」
後半辺り、ちょっとした好奇心のつもりで訊いてみたが……
「それは……そんな事は…………」
「思ってるんだ……」
友希那が言い淀んでるのを見て察した蘭。つまり少なくとも、生意気だと思われてるのである。
「ごめんなさい。つまらない話をしたわね。美竹さん。あなたは私をライバルだと言ったけれど私自身、ライバルというものがよくわからないの」
だから、蘭をライバルだと思っているのかは今はまだはっきりと答えられないと言う。
「ただ……その答えは、2マンライブで出る。そんな気がするの」
「前に言ってましたよね、『音楽は何よりも雄弁だ』って。湊さん自身の答えも、RoseliaからAfterglowへの気持ちの答えも……全てはライブが、音楽が教えてくれる。それなら、あたし達最初に言った通りRoseliaよりも盛り上がるライブができるって事を証明するだけです」
その答えを聞いた友希那は……
「ええ。それで構わないわ。お互いに、全てを出し切りましょう」
望むところだと言わんばかりの表情で蘭に、お互いに全てを出し切ろうと言うのであった。
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