月と夕刻の少年の褪せぬ誇りに差す残光   作:ゆるポメラ

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ゆるポメラです。
前回の続きになります。
今回はオリジナルになっております。

それではどうぞ。



第6話 幻の歌姫(ファントム・ディーヴァ)黄昏の歌姫(トワイライト・ディーヴァ)

そして迎えた2マンライブ当日。

 

「それじゃ揃ったかな?」

 

まりなから今回の2マンライブについて話があると言われ、CiRCLEの楽屋に集まったRoseliaとAfterglowの面々。

 

「あのー、まりなさん。ゆうりんが居ないんですけど……」

「夏々も居ないんですが……」

「あの2人なら大丈夫だよ。その件についても私から話すから」

 

この場に悠里と夏々が居ない事に気づいたあこと巴がまりなに言った。しかし彼女は事情を知ってるのか、その件についても話すとの事。

 

「今日の事、みんなは悠里くんと夏々くんから、何か聞いてる?」

「えっと朝の7時くらいに『今日は待ちに待ったAfterglowの後輩ちゃんとの2マンライブ。遅刻なんかしたら、CiRCLEの中心で友希那ちゃんの可愛さについて叫ぶ』って、悠里からメッセが送られてきて……」

「私達の方もそんな感じです。モカを二度寝させない為なのか、朝の6時30分に夏々から『まさか当然、みんな起きてるよね? ……ねえ、モカちゃん……? 遅刻なんかしたら、CiRCLEの中心で蘭ちゃんの可愛さについて叫ぶ』って送られてきて……」

「うわ! なんか色んな意味でえぐい!?」

 

リサとひまりの言葉に突っ込むまりな。実際のやり取りのメッセージを見せてもらったが、なんという起こし方である。

 

「リサ!」

「ひまりも見せなくていいから!」

 

そこには思い出してしまったのか、顔を真っ赤にしながらメッセージを必死に止める友希那と蘭の姿があった。2人の様子を察するに、色々と大変だったのだろう……

 

「それで話を戻すと、今回のRoseliaとAfterglowの2マンライブで、悠里くんと夏々くんが()()を務める事になってるの」

『ええっ!?』

 

そしてまりなの口から衝撃の事実が告げられたのだ。それを聞いたRoseliaとAfterglowの面々は驚きの声を上げる。

 

「悠里先輩と……夏々君が前座……ですか?」

「うん。最初は私も冗談なのかなーって思ってたんだけど、悠里くんと夏々くんがCiRCLEで合宿するって言ってたから、これは本気っぽいなって確信したよ」

「それじゃあ……ゆうりくんが練習に顔をあんまり出さなかったのって……もしかして……」

「個人練習に集中したかったんじゃないかな。他のスタッフとも仲が良いから、CiRCLEの関係者のみんな、今回の前座の件は知ってるよ?」

 

つぐみと燐子の質問に答えるまりな。あの時、悠里が夏々とCiRCLEで合宿をしてた理由がようやく分かったからだ。

 

「そうそう。機材とか他のセッティングも悠里くんと夏々くんがRoselia用とAfterglow用で予め私達に指示しておいてくれたから、みんなはゆっくりしてていいからね」

「そこまでしてたんですか!?」

 

あまりの用意周到さに驚く紗夜。

 

「「おはようございます」」

 

すると楽屋のドアが開く。入ってきたのは、件の悠里と夏々だった。

 

「2人とも練習お疲れ様。今日の調子はどう?」

「問題ないです」

「ボクも」

 

まりなの言葉に悠里と夏々はいつも通りの口調で返す。しかしRoseliaとAfterglowの面々から見た2人は雰囲気が違うように感じた。

 

「順番の確認だけど、夏々くんが最初で次に悠里くん。その後は残りの時間次第で何かやるって形で大丈夫?」

「はい、それで大丈夫です」

「まりなさーん、後はよろしくお願いしますー」

「はーい。それじゃあ時間になったら、スタッフが呼びに来るから。今日はみんな頑張ってねー♪」

 

そう言うとまりなは、楽屋を後にした。

 

「悠里。どういう事か説明して頂戴」

「友希那ちゃん、近い」

「夏々。あたし達にも説明して」

「蘭ちゃん、近い」

 

ドアがバタンと閉じる音がしたと同時に、友希那は悠里に蘭は夏々に詰め寄った。他のメンバーも前座とはどういう事か説明してくれとばかりな表情をしている。

 

「…まあ、簡単に言えば、RoseliaとAfterglowのみんなの2マンライブを互いに対等する為かな」

「対等に……? えっと……つまり、どういう事?」

 

言ってる意味が解りそうで解らず、リサが悠里に聞き返す。

 

「先に演奏するバンドが不利にならないようにする為って言えば、分かりやすい?」

 

要するにこうだ。

こういう演奏による勝負を行う場合、演奏する順番によっては不利になると悠里は言いたいのだ。もちろん、逆もまた然りらしいが。

 

「そこでボクと悠里兄が前座をやる事で、その不利な条件をなくすんです。あと()()も兼ねて」

 

その言葉に続き、夏々は自分達を『壁役』と言ったのだ。しかし壁役とはどういう意味なのだろうか?

 

「失礼しまーす。夏々くーん、そろそろ準備してもらってもいいかなー?」

「あ、はーい。衣装に着替えたら、直ぐに行きまーす」

「はーい。よろしくねー」

 

その理由を聞こうとした時、スタッフが夏々を呼びに来た。しかし悠里もそうだが、夏々も私服姿のままだった。

 

「じゃあ、ボク行ってくるー」

 

そう言うと夏々は、愛用のギターを持って楽屋を後にした。

 

 

 

 

「ゆうりん。ナナ兄って、歌も歌えるの?」

「歌えるよ? 僕も夏々の歌をライブで聴くのも久しぶりだし」

「え? ライブで?」

「うん。蘭ちゃん達も見てるかもだし、今日はマジでやるって本人が言ってたからさ」

 

あこに聞かれた悠里はそう返す。Afterglowのメンバーも幼馴染みの演奏が気になるのか、モニターを見る。

 

『本日は来ていただきありがとうございます。本日はRoseliaとAfterglowの2マンライブ! お姉さんも楽しみ過ぎて寝不足だー!』

『あはははは!』

 

映像越しにまりなのアナウンスが聞こえた。しかも張り切ってるのか、やたらノリがいい。

 

『まずはオープニングアクト! 今日来てくれた皆さんは超ラッキー! 常連のお客さんやバンド出演者は存在を知っていても過言じゃないでしょう!! 何せ皆さんが今からお目にかかるのは音楽界では『気まぐれな夕焼け』でお馴染み、黄昏の歌姫(トワイライト・ディーヴァ)の演奏が今から聴けるぞー!!!』

『うぉおおお!!』

 

アナウンスの説明が終わると、会場は驚きに包まれた。

 

「ええ~、ナナが都市伝説って言われてた歌姫の正体~?」

「あたし、まりなさんが言うまで全然気づかなかった……」

「黄昏の歌姫の存在……音楽雑誌やプロのミュージシャンのインタビューでも名前だけは出てたけど、本当だったのね……」

「ええ。私も驚いてます。夕方か朝方の特定の時間だけにライブをするという、あの黄昏の歌姫が……まさかこんな身近にいたんですか?」

 

会場だけでなく、RoseliaとAfterglowも驚いていた。まあ、驚くのも無理もないかなと悠里は思った。

そう。夏々の正体は『黄昏の歌姫(トワイライト・ディーヴァ)』であり、音楽の世界では有名な話で、プロも一度は直で演奏を聴いてみたいといわれる存在なのである。しかしライブや演奏をするのは気まぐれで、夕方か朝方にしか開催しない事から『気まぐれな夕焼け』とも言われているのだ。

 

しかもオリジナルの曲や演奏を直接観たという目撃者も存在してるので、偽物が居るという話は不思議と一切ない。

 

『それではー……どうぞ!!!』

 

ステージの足元から煙が一気に噴射され姿を現したのは、夕焼けをイメージしたパーカー型の衣装を身に纏い、愛用の橙色のギターを携えた夏々が姿を現した。

 

『ハロー☆ 今日はRoseliaとAfterglowの2マンライブに来てくれてありがとー!』

『ほ、本物だー!!!』

『今日は盛り上げ役に来ました! RoseliaとAfterglowが全力を出し切れるには、会場のみんなの協力です。なのでボクと一緒に盛り上げ役、よろー☆』

『おおおおおおおおおおおおおお!!』

『では最初の曲を聴いてください。『DUSK HOOP』!』

 

そして深呼吸をしギターを構えた夏々は、演奏を始めた。

 

「さてと……」

「ナナ兄すごーい! ……あれ、ゆうりん、どこ行くの?」

「…早いけど着替えて、持ち場に行ってくる」

 

同時に悠里がよいしょと言いながら、足元に置いてある自身の愛用のショルダーキーボードを持つ。あこの言葉に他の面々も悠里の方を見る。

 

「あのさ悠里……ほんとに()るの?」

「? 普通に演るよ? それにせっかくのRoseliaとAfterglowの2マンライブなんだし、別に問題なくない?」

「…悠里、あなた自分がどれだけ影響あるのか解ってるの?」

「さあ?」

「「……」」

 

リサと友希那にそう訊かれた悠里は2人にそう返す。彼の反応にリサと友希那は、悠里に対してちょっとは自覚しなよとばかりの視線を送る。

 

「そもそも僕は()()()()()()()()()をしてるだけだから。……それじゃ行ってくるよ」

 

そう言いながら悠里も、愛用のショルダーキーボードを持って楽屋を後にした。

 

 

 

 

「ねえ、友希那。悠里が言ってた『お互いに』の意味って、こういう意味だったんじゃない?」

「…そうね。予想と外れてほしかったけど……リサの言う通り、そういう事でしょうね」

「どういう事なんですか? 湊さん」

「もしかして……ゆうりくんが言ってた……『お互いに』の意味について……ですか?」

 

リサの言葉に溜息を吐く友希那。首を傾げながら訊ねる紗夜と燐子。

 

「ええ。悠里が言ってた『お互いに』という意味は、逆境の状況下で、どのくらい盛り上げれるのかを悠里に試されてるのよ」

「「!」」

「えーっと、つまり……どういう意味ですか?」

 

それを聞いた紗夜と燐子は驚きの表情をする。あこは意味が解ってないようだが。

 

「それにこれは私達だけじゃなく、美竹さん達も試されてるわよ」

「あたし達にもって……どういう意味ですか?」

 

なんと友希那はRoseliaだけでなくAfterglowも試されてるというのだ。

 

「…正確には、あなた達の場合は夕月さんに試されてるという言い方が正しいわね。初めて聴くけど、彼の演奏は私から見ても個性もあって、とても圧巻ね」

「「「「「……」」」」」

 

そう言われた蘭達は夏々の演奏を見る。確かに凄い。今まで近くにいた彼が遠い存在にも見えるくらいだ。

 

『ありがとうございましたー☆』

『わああああああ!!』

『アンコール、アンコール!』

『えー……無理☆』

「夏々君、ものすごい笑顔でお客さんからのアンコールを断ったよ……」

「あはは……なんか色んな意味で凄いね……」

 

1曲が終わるのと同時に観客からはアンコールの嵐が……だが夏々はなんと笑顔で断ったのだ。それを観たつぐみとリサが突っ込む。

 

『え~、お姉さんもまだ聴きたいなあー。だがしかーし! 今回のオープニングアクトが黄昏の歌姫だけかと思ったかー?』

 

そしてここで、まりなからのアナウンスが。またしてもノリがいい声で。

 

『続いてのオープニングアクト! 今日来てくれた皆さんは超超超ラッキー! この贅沢者めっ! 常連のお客さんやバンド出演者は存在を知っていても過言じゃないでしょう!! 皆さんが今からお目にかかるのはアイドル界では幻のアイドル、そして音楽界では幻の歌姫(ファントム・ディーヴァ)、またの名を……ソプラノ二重奏(デュオ)の演奏が聴けるぞー!!!』

『うぉおおお!!』

 

アナウンスの説明が終わると、会場は夏々と同じくらいの驚きに包まれた。

 

『うぉおおお!! マジか!!?』

『奇跡、奇跡だー!!!』

『黄昏の歌姫の演奏だけでも盛り上がり最高潮なのに、幻の歌姫の演奏も聴けるとか、前座が豪華すぎるだろー!!』

『そんなテンションで大丈夫か?』

『大丈夫だ、問題ない!』

「友希那さん、これってもしかして、ゆうりんの演奏が聴けるからですか?」

「そうよ。……悠里らしいけど、ほんとに自覚あるのかしら?」

「まあ、そうだよねー。これでもし悠里がライブするなんて言ったら、それこそとんでもない事になると思うけどねー……」

 

観客の反応を見て、あこの質問に答える友希那とリサ。

 

『それではー……どうぞ!!!』

 

ステージの足元から煙が一気に噴射され姿を現したのは、黒い衣装に蒼い造花のヘッドドレスを付け、更に愛用の楽器と思われるショルダーキーボードを携えた悠里だった。

 

『…どうも。今日はRoseliaとAfterglowの2マンライブに来てくれてありがとう』

『ほ、本物だー!!!』

『使い込んであるショルダーキーボードと一度見たら忘れない衣装!! 極めつけは左耳に着けてある三日月型のピアス!! やべぇ……本物のソプラノ二重奏(デュオ)だー!!!』

 

悠里の姿を見るや否や、観客は凄く興奮しており、中には一番後ろで謎のオタ芸をする観客も確認できた。……他の人にぶつからないよう距離をかなり開けてるのも律儀だが。

 

『今日はRoseliaとAfterglowの盛り上げ役に来ました。1曲歌ったら、2人で軽い()()()()()()でもしようかなと』

『幻の歌姫と黄昏の歌姫のフリートーク!? マジで!?』

『…では聴いてください。『MOON ABYSS』』

 

そして深呼吸をしショルダーキーボードを構えた悠里は、演奏を始めた。

 

「……凄い……です。音もかなり正確で、何より悠里さんの歌声が……」

「ゆうりん、凄い! なんか……こう、徐々に力がババーンってする感じみたい!」

「うん……! ゆうりくんの歌声……わたし……すごく好き……」

「「「「「す、凄い……」」」」」

 

初めて悠里が演奏してるところを観た紗夜、あこ、燐子が言う。3人だけでなく、Afterglowの面々も夢中になって演奏を見ている。

 

「みんな悠里の歌に夢中になってるね?」

「そうね。いつ聴いても印象があって良い歌ね」

「だよね~(友希那ったら、悠里の歌を聴くたびに嬉しそうな顔しちゃって~♪)」

 

リサと友希那も悠里の歌をこうやって聴けるのは、かなり久しぶりであり嬉しい事だった。そして友希那が嬉しそうな表情をしてる事に気づいたリサは後で悠里に教えてやろうかなと思った。

 

『…ありがとうございました』

『わああああああ!!』

『では、予定通り2人でフリートークをしたいと思います』

『レッツゴー☆』

 

曲を歌い終えた悠里は、夏々とフリートークの開始の宣言をした。

 

「夏々と悠里さんのフリートークかー。なんか不思議と気になるな」

「あこも。ゆうりんとナナ兄って、普段どんな話してるんだろ?」

 

巴とあこも話す内容を予想してみたが、全く浮かばなかった。

 

『じゃあ先ずはボクの最近の話~。()()()()()()とお出かけしてましたー』

『ほうほう』

『何それ、気になるー』

『どんな人ー?』

『とある総合病院の娘さんでーす♪ ピアノも上手なんです♪』

「「「「「っ!!?」」」」」

 

夏々の口から『昔からの友達とお出かけ』という単語を聞いたAfterglowの5人は過剰に反応。モニターを凝視する。

 

『お出かけって言っても、作曲のヒントになるお手伝いに関したお出かけだけどねー。ボクもいい勉強になったー』

『ちなみに僕は()()()()()()()()()()()()()()と一緒にアニメショップに行ってました』

「「「「っ!!?」」」」

「うわっ、みんなどうしたんですか!?」

 

今度は悠里の口から『漫画とアニメが好きな幼馴染みとお出かけ』という単語を聞いた友希那とリサ、紗夜と燐子が過剰に反応。その光景を見て驚くあこ。

 

『さて。楽器の準備やら色々とあるかもなので、次はいよいよメインの出番です』

『色々と協議した結果、最初はAfterglowのみんなにやってもらおうと思います☆ 会場のみんな! 盛り上げ役よろしく☆』

『うぉおおお!! 任されろー!!』

 

悠里の進行と夏々の合図で観客の盛り上がりが凄まじくなった。

 

『その次はRoseliaのみんなです。…僕から言う事は、皆さんも楽しみつつ、限界オタクのようにライブを盛り上げてください』

『うぉおおお!! 分かりやすい説明!! よっしゃ、任されろー!!』

『ただし、マナーは守りながら……ですよ?』

『はーい!!』

 

その光景を見たRoseliaとAfterglowは、今以上にライブを盛り上げられるよう頑張らなければと思うのであった。




読んでいただきありがとうございます。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。
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