暁に贈るアーカイブ【完結】 作:紛れもなく奴
アビドス高等学校
かつては数千人の生徒が通う、キヴォトス最大の学園として名を馳せていたそうです。
ですが、数十年前のある時期から頻発し始めた大規模な砂嵐によって学区の環境が激変。
進む砂漠化対策のために多額の資金を投入するも事態は好転せず、膨らみ続ける借金のせいで学園の経営は悪化し、人口の流出にも歯止めがかからないまま地区全体は緩やかに衰退しています。
もう生徒も指折りで数えられるほど、私の中では、もう正直絶滅寸前だと個人的には思っています。
今日も増えてく借金、もう、学生が払える額じゃないと思うんですよ。誰か助けてくれませんかね?
正義の味方とか妖精さんとかいませんかー悪魔でもいいですよー!?
青天井で増えていく借金……今は私しかいないこの学校の臨時の生徒会で、木製の椅子に座り、考えるふりをして、ボールペンでペン回しをしている人物が1人。
まぁ私なんですが。
大人は利益を追求し、そこには必ず搾取される者たちがいる。
私たちのような弱者が……子供が知恵を振り絞ってもがいても……どんなに命乞いをしても、無駄でしょう。
悪い大人は、私達から絞れるだけ搾り取って最後はボロ雑巾のように捨てる。
私たちは所詮、何処まで行ってもいいカモのまま。
私達が悲劇のヒロインだ、なんてことは思ったりはしません。こんな悲劇は、この世界では、きっと頻繁に発生していることなのでしょう。
今回は私たちがその対象だった……それだけ。
あたりまえの学園生活……友人との楽しいおしゃべり……
青春なんてものはありません。
今の会長であるユメ会長が悩み……悔やみながらも断腸の思いで手放した土地は、汚い大人たちの元に渡り、必死に工面して得たお金は、借金の総額と比べれば雀の涙程度のもの。借金の利子を考えれば涙にもならないかもしれません。
大人達は、私達を騙して手に入れた、このアビドス自治区の土地利権を我が物顔で振りかざし、私達が不法にこの場所を占拠していると騒いでいる。
私がいれば、少しマシな未来になるかもしれない。
そんな気持ちで、ユメ会長を補助していた私も、勿論契約書には目を通しました。ユメ会長がその後も何度も読み返し、確認しているのをすぐ側で見ていました。
しかし、所詮、子供の知識はそう簡単に大人に敵うものではありません。
気がついた時には既に手遅れ、様々な抜け穴が作られていた契約書、
残ったのは、多額の負債。
搾取され続けた私達でしたが、そんな中でも、ユメ会長は笑顔を向けて、私達に微笑みます。
打開案を考えていたある日
締めていた入り口の扉が勢いよく開きます。
「聞いて聞いて! 借金、全額じゃないけど、何とかなるかも」
ユメ会長は久し振りの笑顔を見せ私に微笑みました。
何やら、話しを聴くに、多額の融資をしてくれる人から連絡があったこと。怪しいとは思うんだけど、背に腹はかえらず話だけでも聞きにくとのこと。
「辞めた方がいいかと思いますよ。どうせ、また碌なものじゃないと思いますよ」
後が怖いので、無駄だと思いますが、考え直すよう説得しておきます。これで私は、必死に辞めるように伝えたという免罪符を獲得しました。
「大丈夫! 何事もやってみないと始まらないよ」
私の意見を華麗にスルーしつつ、ユメ会長はパパッと荷物を纏めていきます。
「一週間時間を頂戴。貴方は、その間ホシノちゃんを誤魔化しておいて!お願い!! ……あの子怒ると怖いんだもん」
そう言って、嵐のようなスピードで会長は暫定の生徒会室を飛び出すと、何処かに去っていきました。
「はぁ、また文句言われますねこれ」
私の独り言は空気と混ざり、誰にも聞かれることなく消えていきました。
それから1時間ほど経過した時です。今、私の心配の種1位……彼女が帰ってきました。
会長には申し訳ありませんが、私が彼女の命令を守るはずもなく、警戒活動をしていた私の相棒? 仲間であるホシノが戻ってくると、先程までのやり取りをすぐさま、洗いざらい話します。
私も彼女は怖いですし。
私の説明を聞いているホシノは次第に表情を曇らせていきます。
まぁ、当然でしょう。ポスター破り事件があった矢先ですからそりゃまぁ不機嫌ですよ。
「またですか。彼女は何でそんなに分かりやすい嘘に騙されるんですか? 貴方も分かってるなら止めてくださいよ」
不機嫌です。と一目で分かるイラついた顔を隠そうとしないホシノは、会長だけでなく、私にも不満があるのか、非難の目を向けてきます。
「いやいや、私も全力で引き留めたんですよ」
私にも言い分があります。ひとまず、身振り手振りを踏まえて、彼女に説明することにしました。
「私も何度も会長を何度も説得しました。説得し続けてもダメだったんです! ホシノも知ってるでしょ? 会長さん決めたことは全然曲げない頑固者でしょ?」
ボディーランゲージも使って大袈裟に、少し誇張して、様々な理由を並べて見ますが、ホシノの私を見る目つきは変わることはありません……どうやら、何をやっても無駄みたいです。
世の中諦めも肝心です。
このキヴォトスと呼ばれる世界ですが、争い事が絶えません。
私は、戦闘が正直得意ではなく基本的には弱いんです。よわよわです。
普段、ユメ会長の護衛は基本ホシノがやっているし、会長自体も結構お強いようで、私は、二人に迷惑をかけないよう端っこでチマチマやってます。
特にホシノはホントに強いです。ショットガン一丁を持って縦横無尽に駆け回りますし、会長も会長で盾でめっちゃ攻撃受け止め、盾に収納されてるハンドガンで容赦なく相手を倒していきます。
ホシノが言うには、ユメ先輩はへっぽこらしいですが、私から見ればそれぞれが一騎当千の猛者です。
彼女らの力…主にはホシノですが 彼女の力があるから、この学校が存在しているのは間違いないでしょう。
それに比べて、私の戦力は一般的なもの。メイン武器である相棒のMP7……この子と一緒に何とか頑張っています。
色々カスタムしており、なかなかの愛着がある私のもう1人の相棒で、愛称はなっちゃんです。
まぁ、実はこの世界では珍しい……というか基本的に見ない装備がないわけでは無いんですが…………
いつの間にか持ってて、何処へ置いてきても、気がつけば手元に戻ってきている、一本の刀。
この刀一見して分かる業物なんですが、今まで鞘から引き抜けた試しがない。怖くなって何処かに置いてきても無駄。
まるで意志を持つかのように手元に戻ってくるのです。
正直怖いですよね……これ。
ホシノやユメ会長も最初見た時は不思議がってはいましたが。
「使えない武器を携行してるなんて、無駄だよね。飾っとこうか」
ユメ会長の一言で、この部屋の端っこに立てかけられていたりします。
飾ってないじゃん。なんなら頭にはたきがついてるじゃん…掃除用具になってるじゃん。
実はこの刀……初めて持った時、この刀に秘められている力を、刀に理解させられたんですが、先輩達には言えないでいます。
そんなわけで、私の武装はこの愛銃ただ一丁のみ。
仮に私がユメ会長の後を追いかければ、ホシノの邪魔になるかもだし、基本私はビビりなので争いごとはしたくないのです。
ホシノが、一つため息をつき、生徒会室に奥に移動する。彼女はそこに保管されている予備弾薬を引っ張り出し、効率的に消耗品の装備を補充していきます。
準備ができ次第、会長を追いかけるのでしょう。
私はそんな、彼女の正面に立ち、豊満ではないですが、それなりにある胸を張ってみます。
「ホシノ安心して、今回も発信機つけてあるから」
会長が騙され忽然と姿を消すのは今まで何回かありました。彼女は騙されても、何とか解決して戻ってくることが殆どで、ホシノに無理やり連れられて私達が助けに行くと、無駄足に終わったことがほとんどです。
絶対表には出しませんが、ホシノは先輩を心配しているんです。
「よし、じゃあ行くよ。君も付いてきて」
「えぇぇ……」
準備も整ったらしく。私に声をかけ出入り口方向に移動するホシノ。
ホシノの中では、今回の一件は私も悪いらしく、私も一緒に行くことが既に決定されていました。まぁ知ってました。
誰も来ることはないでしょうが、念のため出入り口の鍵を閉めようと、部屋の中に視線が向いたとき…………
飾っている?とは言い難い 刀から一瞬紅い炎が立ち昇ったように見えた気がしました。
「ほらー行くよ!!」
私を呼ぶホシノの声。
「…………今いきます」
きっと気のせいでしょう。
ユメ会長につけていた発信機。性能もよく追跡も容易でした。彼女に追いつき連れ戻し、また、青春とはかけ離れた借金の対策を練る。
この時は、そんな生活が待っていると思っていました。
酷い大人に騙され、危険な目にもたくさんありました。
最初は去ろうと思ってたこの学園。
仕方なく入った学校……彩もなく、日々の生活にはやる気も出ない。
学校も生徒は殆どおらず、皆それぞれの理由でこの学舎を去っていく。
放課後、ぶらついた先でよく分からない刀を気紛れで拾ったら、刀に精神的にも物理的にも分からされますし、呪いのように自身の手に戻ってくるし、夢の中で知らない光景を見るようになりますし…………最近明らかに自分が経験したことがない記憶が脳内にあったりします。……人の脳に他人の記憶を入れないでください訴えますよ。
他の生徒と同じように、自分もただ何となく、転校を考え、意図も容易く入手出来た退学届を机上に置き、未来について判然と考えていた時……
必死な形相で学校を走るピンク髪の少女が見えたのです。
生徒がもう殆どいないこの学園でも彼女は有名でした。
日々生徒が減っていくこの学園で、本気でこの終わりゆく学園をどうにかしようと奮起する姿。
所詮は他人事……どうして誰かのためにそこまで頑張るのか……そんな彼女を陰で笑うものもいました。
自分と同い年のはずのその少女を無意識に目で追っていた時……
絶対に本人には言いませんが、真剣な目をして毎日駆け回る彼女の色違いの瞳に釘付けになりました。
私もこの時に、ホシノという少女の姿に惚れてしまったのかもしれません。
ビビりで臆病な私が、気がついた時には、生徒会室の扉を叩いていました。
笑顔で迎え入れてくれた先輩、ムスッとしているホシノ。
それからは、毎日毎日荒事続きで疲れる日々。
偶然助けたゲヘナ学園の生徒。
真面目そうな見た目の彼女に、突如ハードボイルドについて聞かれ、自身の知る中で一番の作品である、とある宇宙海賊の話を熱弁したりもしました。
あれはいい思い出です。私の説明をあんなに目を輝かせて聞いてくれたのは彼女しかいませんでした。
ピンク色の髪をした可愛い見た目の女の子なのに、ゴリラなんじゃないかと思うほどの怪力お嬢様と談笑したり
……あれ? 何で私こんなこと思い出してるんですかね?
「ねぇ!!しっかりして! 起きて!! どうしよう血が止まらない……なんで!? 何でよ!! お願い止まってよ!!」
誰かが私の名を大声で叫んでいる気がします。
ゲリラ豪雨のような雨が降る最中。
私の名前と同時に聞こえてくる打ち付けるような金属音が響いてくる。
私は、どうやら意識を失っていたようです。
朧げながら瞳を開き状況を確認します。
視線の先、ぼやけてはいるが、おそらく、ユメ会長の盾で私を銃撃の射線から庇いつつ、必死に私の応急処置をするホシノの姿がありました。
「ああ、そうか、これが走馬灯ってやつですか」
さっきまで思い浮かべていた光景が、自身の記憶を振り返っているたものだと理解します。
ホシノと2人でユメ会長を追跡し始めてすぐに、突然彼女につけていた発信機からの反応が途絶えます。
嫌な予感がしました。今までとは何かが違う。
そんな予感がしたのです。
必死に捜索する私とホシノ。
それでも会長は見つからず終いには二手に分かれ、必死に彼女を探し続けました。
しかし、まるで神隠しにあったかのように、会長の姿は発見できない状況
今までの大人達とのいざこざとはレベルが違う、黒い悪意が流れている気がしました。
2週間…いや3週間以でしょうか、ユメ先輩の行方が分からなくなり、学校の維持にも支障がで始めたころ、私はホシノと離れ、別々の場所をキヴォトスを探し周っていました。
しかし、何の成果もなし……と思っていた時でした。消失していた彼女の発信機が再び反応を示したのです。
あの時、私がもっと強く引き留めていれば……罪悪感が拭えず焦っていました。
ホシノに連絡を入れることも忘れ、必死に走ってユメ会長の元に辿りついたとき……
彼女の頭上のヘイローはなく
無惨な姿で地面に突っ伏していました。
うつ伏せに倒れる先輩の姿、ここは砂漠のど真ん中、本来ならばこんな場所に人がいるはずはないのですが……ユメ先輩の周囲には重装備に身を包んだ集団の姿。
まるで、彼らは餌におびき寄せられる獲物を待っていたかのように……
ゆっくりと、確かな足取りで先輩の元に向かいます。 武装した集団に銃を向けられます。指揮官がいるようで動きが統率されている姿から、ならず者の集まりではないようです。
ですがそんなのは今は関係ありません……今の私には100人は裕に超える武装集団よりも大事なことがあるです。
誰が黒幕なのかは分からない。それでも悪意ある大人の仕業なのは分かりました。騙し討ちだけではなく、あまつさえ餌にして、おびき寄せる。
先輩の身体は一見して外傷は見られず、少なからず時間が経過していました。彼らが亡くなった彼女をここに放棄したのか…それとも発見したから有効活用したのか…今の私には分かりません。
利用していたとしたら、許せるものではなかったし、許す気なんて1ミリもなかった。……ですが、私が1番悲しかったのは自分自身に対してでした。
私は自分の性格を冷たいタイプだと思っていました。
元々、明るいタイプでもありませんでしたし……それでも、会長の亡骸を抱え、その姿をみても涙一つ流せずにいる自分に絶望し……自分自身に落胆しました。
ただ、この胸の内で抑えきれないドロドロの殺意があることには感謝しましょう。もう一度先輩の身体を確認し、外傷がないことを確認します。傷はありません、彼らに撃たれたわけでないようです。
ですが……そんなことはどうでもいいのです
コイツらはただの一人として、生かして帰さない。
殺意の感情の中にあっても、意識は透き通るかのように冷静でした。
戦闘の開始は1発の銃弾
一発二発銃弾が当たろうとも痛いだけ、私に銃口を向ける奴の中で、一番弱そうな奴を探し、地を這うようにして一瞬のうちに接近し、胸ぐらを掴み地面に引き倒す。
先輩の亡骸を抱え、全力の跳躍を用いて、距離をとり、被害が及ばなそうな箇所に安置。
直ちに身を翻し、再度集団に突っ込みます。最初に 土手っ腹になっちゃんの銃弾を数発撃ち込み、無力化。
すぐさま付近を見渡し、一番近い武装兵の右手を捻り上げ、盾にする。
一瞬躊躇する武装集団らに容赦なく、相棒を連射し無力化していく。
数は多い、練度も一流、だから何ですか? なっちゃんの予備のマガジンも使い切り、今度は、倒した武装兵の武器を使って、攻撃を避けつつ一人一人的確に潰すことに専念します。
付近は砂埃が舞い、撃発音が響き渡ります。
30人から数えるのは辞めました。
もうどれぐらい倒したか思い出せません。息も上がり、集中力も切れ始めました。私はホシノのように強くありませんから、攻撃のすべては避けれませんし、身体は、既に傷だらけ。
それでも射線を避け、攻撃を潜り抜け打撃を加え、無力化し別の対象を捕捉する。
数が多いため、ヘイローの破壊まで出来ずにいるのが残念ですが、それは後でもできます。
今は、一瞬でも早く、敵を倒しきることが先決です。
そう考え、引き倒した武装兵の頭部に銃弾を数発撃ち込み無力化したとき…………
視界の端に、ショットガンを構え、必死な形相で走ってくるホシノの姿が見えてしまいました。
待っていた応援、彼女の武器は近距離でこそ、真価を発揮する。
敵の数は当初の半分くらいでしょうか。これで何とかなるかもと思った時、彼女を狙うように武装兵の1人が、今まで見たこともない、禍々しい武器を背後からホシノに向けて構えていました。
本来の彼女であれば、当たり前のように回避するでしょう。ですがホシノは気づいていません。
ただの銃弾……だったら当たっても痛いだけ、だけど嫌な予感が拭えない。
ホシノの視線は今、私が移動させた先輩の姿に気を取られ、それどころではないのでしょう。
兵士はホシノに向かって引き金を引きました。
体感時間が引き延ばされます。銃弾は放たれ、それは確実ホシノに直撃するのが見てとれました。
心を支配していた殺意が瞬く間に消え去るのを感じ、状況の整理を行います。
構えていた兵士にはすでに鉛玉をぶち込み無力化済み。しかし発射された弾頭はゆっくりとホシノに迫っています。
ホシノは未だ、背後から迫る弾丸に気がついておらず、避けることは出来そうにありません。
自分の現在装填されているマガジンは空のため、撃ち落とすことも不可能。1発でも残っていればビリヤードのように弾いてやるのに。
彼女を助ける手段は、限られていました。それが、どんなに自分に悪影響を及ぼすのかも理解できていました。
それでも私は、ホシノに向かって全力で駆け出しました。
無理にホシノを庇うため、手を伸ばし直撃した銃弾はやはり特殊な弾丸だったらしく、私の利き腕である左腕を容赦なく奪っていきその直後、私は気を失ったのです。
乙女を傷物にしやがったなこのヤロウ。
応急処置なのでしょう、おそらくホシノが巻いてくれたであろう包帯は赤く滲んでいます。
だが、上手く圧迫出来ているからか、止血は成功しているらしいです。
しかし、戦場を共に駆け抜けた相棒のなっちゃんも衝撃で何処かに飛んでいってしまったようです。
血が抜けすぎた影響か再度意識が薄れ始め、視界もぼやけ、私を守ろうとするホシノ姿もよく見えません。
敵の数は未だ多く、減っていたはずなのに、最初よりも増えているように感じます。
このままでは、私もホシノも助からないでしょう。いや、ホシノ1人なら切り抜けられるかもですが、私という荷物、そして先輩の身体があるせいで彼女を邪魔してしまう。
止みそうにない雨を恨むように頭上に視線を向けます。
今の私は守られるだけ、何も出来ず、必死な形相のホシノを見ていることしかできません。 なんて惨め。
実を言えば、手段がないわけではないのです。
ここから、敵を1人残らず殲滅することもおそらく可能。
ほら、この通り、その手段は忌々しくも、今もこうして、何故か私の右手に収まっています。
初めて拾った時から知っていました。
刀の以前の持ち主でしょうか、それとも刀に魂が宿ったのでしようか、老人の姿をした影が精神空間という無限の時間がある空間でこの刀の使い方をスパルタで叩き込まれました。
この刀は悪事には使用できない。また、使える時も限られている。
この刀はこの世界に理から外れた存在。
そして、私は本来の持ち主ではないため、この刀に秘められた本来の力の半分も引き出せない。
さらには、一度この力を使えば、私の意識は消失するそうです。
それだけなら、まだしも、世界が私を異物と判断し、この世界から私が生きた証は消滅し、私の存在を覚えている者はこの世界からいなくなる……そうです。そして、世界は私がいなかったように修正される。
そんなことを教えられて、はいそうですか、と直ぐに認められるはずないでしょう。
私は、この刀をいろんな所に捨てに行きましたが、知らぬ間に戻ってきてしまいます。
最悪な拾いものだったと今も思っています。
ですが────────手段が残されているだけマシなのかもしれません。
この刀を使用することで得られる結果はホシノの生存
失うものは私の存在。
辛くても頑張ってこれたホシノとの思い出が消える…………彼女もそれを忘れてしまう。世界は私が居なかったように再構築される。
正直言えば、嫌で嫌で仕方がないです。
……誰が自分の存在が消えると分かってて進んでやるもんか!!!!
私がこの世界に本当は存在していない異物だと言われても!!
辛く苦しいことが多かった生活でも……
この記憶と思いは本物なのです。
誰かに一片たりとも渡したくないぐらい大切な物なんです。
せめて覚えていてほしい。そんな願いも許してはくれません。
怖くて怖くて仕方ない……
それでも……
この先に、いずれ来るであろう学園の後輩たちの笑い声……そして……ホシノの笑顔があるのなら……
私は、彼女の未来のための薪となり、私の存在を賭けて、彼女の未来を守りましょう。
決断はした。覚悟も決めた………ならあとは行動に移すだけ。
刀で身体の体重を支え、無理矢理に立ち上がる。無理に動き出し立ち上がった影響で、左腕にまかれた包帯がさらに赤黒く変色する。もう出血を気にする必要もないんですから。
刀の鍔に、指を添え優しく鯉口を切る。
その動作は、見事なまでに精錬されており、その動きを見たもの視線を全て惹きつけた。
今まで抜けなかったはずの刀は、あっさりと鞘から抜けだし、刀と鞘の僅かな隙間から溢れんばかりの炎が溢れでで、彼女も身体を包むように大きく膨れ上がっていく。
片腕で鞘は持てないためか、抜刀の勢いで地面に鞘を投げ捨て刀を右手で持つ姿は、死に際の姿ではなく、完成され一つの構え、立ち姿だった。
「あ、危ないよ!無理しなくていいから隠れてて、これ以上血を流したら本当にもう助からなくなる!おとなしくしてて!」
そんな、私に気づき、必死な形相で私を盾の防御範囲に納めようとホシノが少女に声を掛けている。
小さい体で、大きな盾を持って必死に敵からの射線からは外そうと藻掻いています。そんな彼女を私は刀を握った右手の甲で、優しく退けます。
貴方はいつもムスッと無愛想な顔をして、私や会長に文句を言っていましたが、本当はとても優しいのを知っています。
ホシノの視線が刀に向けられると、驚き目を見開いて動きが止まりました。
そりゃそうですよね さっきまで持ってませんでしたし
今ここで、この刀が抜けたこと、つまりは……ここが私の終着点。
「じゃあねホシノ……バイバイ」
最後の言葉は彼女の届いたでしょうか?届いてなかったらとても残念。
何事かと様子を見ていた兵士たちが気を取り直し、私に向かって銃弾を撃ってきますが、そんなのには叩き切るまでもなく、私に到達する前に、塵となって消えていく。
銃弾は私の身体に到着する前に溶けて消える。
私は、借り物の子の力……この刀の使い方を知っている。
力強く……この世界に高らかに告げる。世界の異物はここにいる。潰せるものならやってみろ。
万象一切灰燼と為せ 『流刃若火』
世界が止まる。 一瞬にして、土砂降りだった雨がかき消える。万物は呼吸を忘れ、その存在を認知した。
キヴォトス全土が、一瞬にして燃え上がり、焼失する幻覚を、世界の誰もが一斉に知覚した。
主人公の好物はアイスクリームです。
見た目はナイスバディな赤髪の女の子です。