暁に贈るアーカイブ【完結】   作:紛れもなく奴

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 高評価、誤字脱字の訂正ありがとうございます。
 


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『おはようございます、先生!!』

『ここ数日間、シャーレに関する噂もたくさん広まっているみたいですし、他の生徒達から助けを求める声も届いています』

 挨拶と共に現状を報告するアロナ。

 彼女の説明では、先生と呼ばれている人物が来た日、この日引き起こされたテロ事件の一件以降シャーレの名前はこのキヴォトスの世界にいい意味でも悪い意味でも噂が回っているという。

 

 

「おはようアロナ。それで、何か変わった事は?」

『緊急のものですと手紙が一通届いています!』

 机の上に置いてある一通の便箋。

 置かれたそれは差出人の生徒の名前と学校名。

 そしてとある学校のシンボル――太陽のマークに、三角形が描かれている。 

「………」

 先生は迷うことなく、その便箋を手に取ると丁寧に開ける。

 

 その中には、可愛い筆跡で、SOSを告げる内容が書かれていた。

《連邦捜査部の先生へ》

《こんにちは。 私はアビドス高等学校の奥空アヤネと申します。 

 

《今回どうしても先生にお願いしたい事がありまして、こうしてお手紙を書きました。》

《単刀直入に言いますと、今、私達の学校は追い詰められています。

《それも、地域の暴力組織によってです。》

《こうなってしまった事情は、かなり複雑ですが……。》

《どうやら、私達の学校の校舎が狙われている様です。》

《今はどうにか食い止めていますが、そろそろ弾薬などの補給が底を突いてしまいます……》

《このままでは、暴力組織に学校を占拠されてしまいそうな状況です。》

《それで、今回先生にお願いできればと思いました。先生、どうか私達の力になっていただけませんか?》

 

 手紙を読み終えたタイミングを狙い、アロナが補足を始める。

『アビドス自治区ですか、昔はとても大きい自治区でしたけど、気候の変化で街が厳しい状況になっていると聞きました。』

 アロナは先生に昔のアビドスの大きさをホログラムの自身の姿で身振り手振りで説明する。

 小さいホログラムなので分かりにくいが、彼女はこの自治区は大きいということを表現しているようである。

 先生は便箋の内容やアロナからの情報を受け、すぐさま身支度を始める。

 そして一言

「アビドスに出張する」

 先生の行動力の凄まじさに目を輝かせるアロナ。

『かしこまりました先生!すぐに出発しましょう!』

 最低限の荷物を準備し、シャーレを出発しようとした先生に対して、アロナが思い出したかのように先生に声を掛ける。

 『あ、先生!アビドス自治区で一つ忘れていたことがありました』

 出口に向かっていた先生がその歩みを止める。

 『実はですね、少し前の話ですが、このキヴォトスが大災害が見舞われたことがあるんです…5分程度の短い時間でしたが、キヴォトス全土の気温が上昇し続け、あらゆる建物が融解し、多数の不良生徒が行方不明になったという事案です』

「………それはまた、不思議な出来事だね。」

 『あ、で、でもですね。その被害が一番大きかったのがアビドス自治区ってだけで、あらゆる学園がアビドス自治区には悪魔が住み着いているみたいな噂が流れているんです』

「そうか、なら気をつけないとね」

 先生が悪魔という言葉に疑念を抱き考えこんでいると、その顔を困ったような顔と捉えたアロナがフォローを入れるが、先生は気にしていないという素振りを見せ、シャーレを後にする。

 

 

 

 

 

 先生がアロナと共にシャーレを出発しもう既に4日が経過した。

 学校が見つからず迷い続け、ついには街の中心で道に迷い遭難してしまう。

 「もう、ダメだ……お腹が減って動けない」

 肉体がこの世界の生徒よりも貧弱な先生は餓えも早い。食料もなくなり、水もなし。

 ここで、力尽きることを思考に入れ始め仰向けに倒れる先生。

 「……あの……大丈夫?」

  ついには銀髪の女の子の幻影が見え始めた。

 「……大丈夫…のはず」

 自転車に跨り、バッグに愛銃を突っ込んだまま先生を困惑した表情をした銀髪に狼耳の生徒。

 彼女が幻覚でなく、シロコという先生の目的地であるアビドス高校の生徒であることを教えられる。

 先生の目的がアビドス高校だと、知ったシロコ。

 彼女の助けられ、アビドス高等学校の廃校対策委員会の部室に到着する先生だった。

 

 

 「ただいま」

 「おかえり、シロコせんぱ……い? うわっ!!何っ?そのおんぶしているの誰?!」

 「わぁ、シロコちゃんが大人を拉致してきました!」

 「拉致!?もしかして死体!?シロコ先輩がついに犯罪に手を……!!」

 廃校対策委員会の部室にいたのは3人、彼女らはシロコが悪事に手を染めたと大騒ぎ、シロコが先生のことを紹介するまで、この大騒ぎ。

 少し、落ちついた後、先生が所属と自己紹介、アビドス高校を訪れた理由を告げれば、別の意味で大騒ぎ。

 彼女らの姿から本当に助けを求めていたことが分かり、間に合ってよかったと安堵する先生。

 

 各々の軽い自己紹介が終わると、セリカと呼ばれる少女は部屋を見渡し首をかしげる。

 「あれ?委員長は?」

 「隣の部屋で寝てるんじゃないでしょうか?」

 対策委員会の1人であるノノミが反応し、セリカが部屋を確認しに行くが、セリカはすぐに戻ってきて怒号をあげる。

 「いないじゃない!!時々どこ行ってるか分からないんだから!!あの人は!」

 

 姿が見えない委員長。対策委員会一同で学校を探そうとした時、学園の外から無数の銃弾の音が鳴り響く。

 

 銃声の方向…窓際に視線を向ける一同。そこには、武装した集団。彼らが、カタカタヘルメット団と呼ばれる集団であること、何度も学園を襲撃してくることをノノミが先生に説明する。

 「委員長はいないけど、やるしかないわね」

 「すぐに行こう。先生のおかげで弾薬と補充品は充分」

 一斉に、対策室の出入り口から飛び出す3人。

 先生も彼女らの後を追いかけ、正面入り口に向かおうとするが、サポート役のアヤネに呼び止められる。

 「先生は私と一緒にこちらでサポートをお願いします」

 先生がシッテムの箱を起動し、飛び出して行った3人に、サポートプログラムも送信し、彼女らが受託したタイミングで、シロコとセリカが前衛として、入り口直近の物陰に到着し各々の武器を構え、彼女らの後方でノノミが準備を終える。

 

 先生の補助を受け、初めて対策委員会の生徒がカタカタヘルメット団との戦闘を開始する。

 シロコが先生のサポートのお陰で、物陰に隠れるヘルメット団員の姿を透しして発見し、最初の目標を狙撃しようと構えた時。

 

 「えっ?!」

 先生とアヤネがいる対策室の外をピンク色の影が上から下に落ちていく。

 

 その影は、前衛であるシロコとセリカとヘルメット団の間に大きな着地音を響かせながら地面に落ち、付近には砂煙が立ち込め。

 突然の事態に混乱するヘルメット団。しかし、彼らにはそんな悠長な時間は残されていなかった。

 砂煙の中から鈍い銃撃音が響くと共に、一番正門に近かった団員が吹き飛ばされる。

 そしてまた1人、銃撃音と共に吹き飛ばされていく。

 

 砂煙が晴れた時、落下地点に落ちてきた物が、この学園の生徒であることに気がつくと、セリカが大声で叫ぶ。

 

 「コゥラ委員長!どこ行ってたのよ?!!遅いわよ」

 「いやぁごめんねぇ 少し野暮用で」

 委員長と呼ばれる少女。彼女の名前がホシノであることを知ったのは、全ての戦闘が終わった後の対策室だった。

 「じゃあみんな行くよ〜準備してぇ」

 

 

 

 

 「いやぁ〜まさか勝っちゃうなんてね。ヘルメット団もかなりの覚悟で仕掛けてきたみたいだけど」

 眠たそうにあくびをするホシノ彼女の後に、セリカ達3人も続くように対策室に戻ってくる。

 そして、カタカタヘルメット団の追っ払いに成功したお祝いも程々に、再度自己紹介を実施、今度はいなかったホシノも自己紹介もし終えて、今後の作戦を一同で考え始める。

 

 

 そんな彼らを少し、離れた位置で眺めている先生、だが、彼には先ほどシロコが話した先生の補助のお陰で勝てたと話していたが、その認識が異なっていた。

 

 確かに、指示はしたし、敵の数やタイミングも伝えたが、先生が補助したのは、シロコ、セリカ、ノノミの3人だけ。

 彼女ら3人だけでも、先ほどのヘルメット集団ならば、弾薬さえあれば、簡単に撃退できる技量を持っていた。

 

 それに加えて、戦闘開始直前、ホシノも指揮下に入るようプログラムを送ったが彼女は戦闘終了するまで、一切の反応を示さなかった。

 それにも関わらず、ホシノは前衛で全ての攻撃を一身に受けていたのだ。

 完勝と言って差し支えないだろう。

 そんな先生の内心を知るよしもない、対策室の生徒達は大人の力はすごいと騒ぎ、この勢いでカタカタヘルメット団の前哨基地を破壊しようと作戦を練り始めていた。

 

 「そういえば委員長は最初どこ行ってたのよ!!」

 「いやぁ、ちょっと上の階で寝ててさぁごめんねぇセリカちゃん」

 作戦直後、いなかった理由を問われ、困ったように後頭部を触るホシノ。

 まさか、四階から飛び降りて、戦闘に参加するとは、誰も思わないだろう。先生は作戦会議する彼女らの後方でホシノを盗み見るように視線を向ける。

 笑顔を見せ、惚けてみせるホシノ。シロコ達と笑い合っている姿におかしな点は何一つ存在しない。

 「おじさんはホシノって言うんだ〜よろしくね先生」

 自分から挨拶もしっかりしてくれて、トゲトゲしい様子もない。それなのに先生には、表現出来ない何かを彼女から感じていた。

 「…先生も作戦会議に参加して……」

 「分かった今行くよ」

 今後の作戦が固まったのだろう。シロコの声に頷き作戦会議に合流する先生。

 

 これから、彼女たちのことを知っていけばいい。

 先生は気合をいれ、彼女らの会議に自分も参加しようと歩みを進め………

 

 

 視線の端、今までなかった何かが見えた……気がした。

 

 

 歩みを止め、視界の端に見えたものを探すが、自身が歩みを止めた理由になりそうなものは見当たらない。

 確かに存在していた何か……その正体を必死に探していると。

 

 「どうしたの?先生?何か気になるものでもあった?」

 

 下から聞こえてくる生徒の声。先生が視線を向けるとそこには、不思議そうに首を傾げるホシノの姿があった。

 

 「いや、そこに何かあった気がしたんだけど」

 先生が指し示すのは、対策室の端、何も置かれていない場所。

 

 彼の声に反応し、部屋にいる生徒全員が、先生の指し示す方向に視線を向ける。

 

 「気のせいじゃないですか?だってほら何もないですし!!」

 アヤネが先生が指し示した場所に移動し、壁際を触り何もないことをアピールしてみせる。

 他の生徒もアヤノと同様に回答をするし、何度見ても其処には何も存在しないことから、自身の目が疲れていただけかと考え直し、一言謝り、生徒達がいる机に先生が歩みを進める。  

 「じゃあ、まずはここを攻めようか」

 

 

 

 

 

 

 会議に参加し、戦略を伝える先生。そんな先生を後ろから見つめるホシノの視線に気がつくものは誰もいない。

 

 ホシノはゆっくりと先生が指し示した箇所に視線を向ける。

 

 彼女の瞳には、そこには昔と変わらず、業物の刀が一刀、壁に寄りかかっていた。 

 

 

 

 

 

 ホシノの考えていた電撃作戦。撃退したヘルメット団を追撃し、壊滅とは言わないものの、先生のサポートもあり、あっという間にカタカタヘルメット団の前哨基地を崩壊させ、大打撃を与えたアビドス一同。

 

 対策室に戻るホシノ達。

 彼女らに労いの言葉をかけるアヤネ。

 彼らが異常なほど、装備を充実させていたこと、兵士の数が多かったこと悩みの種は増えたかもしれない。

 それでも頭痛の種であったカタカタヘルメット団に関しては一区切りつくことが出来た。

 その事を考えると、疲労した甲斐はあったのだろう。

 生徒達が落ち着いた表情を見せた後、ホシノは笑顔で先生を振り向き、先生に頭を下げる。

 「いやぁ、先生のお陰でなんとかなったよぉ〜ありがとね〜」

 

 

 朗らかに終わると思われたが、セリカの不意な一言からこの学園が大きな借金を抱えていることがわかる。

 「借金返済って?」

 詳しく事情を聞こうとする先生。彼は、生徒達のために全力で動こうとする。

 生徒達も関わった時間は短い間だが、先生をある程度信用したようである。

 それでも、まだ、先生を信用していない。信用していても、相談するべきじゃないと躊躇う生徒もいた。

 「いいんじゃない?セリカちゃん。隠すようなことじゃあるまいし」

 「かといって、わざわざ話すようなことじゃないでしょ!」

 話してもいいんじゃないかとホシノはセリカを説得するが、セリカは大人達が今まで自分達を見て見ぬふりをしていたと反対する。

 

 

「別に罪を犯したとかじゃないでしょ? それに、先生は私達を助けに来てくれた大人だよ――アドバイスしてくれるかもよ?、ねぇ先生?」

「よければ話してくれないか?」

 

しかし、セリカは先生の言葉を退ける。

 「私は絶対に認めないから!!」

 終いには、大声で叫び、部屋を飛び出しいってしまった。

 「私、様子を見てきます」

 セリカを追いかけ、ノノミが対策室を出ていく。

 

 

 

 ホシノは、一息ついたのち、先生に視線を向け内容の説明を始める。

 「……えーと、簡単に説明すると……この学校、借金があるんだー。まぁありふれた話なんだけどさ。」

 「でもって、その金額が7億円くらいあるんだよねー」

 「正確には6億9855万、です」

 ホノカの話をアヤネが補足しつつ、実情を先生に説明する。 

「これはアビドス、いえ、私達対策委員会が返済しなくてはならない金額です――これが返済出来ないと、学校は銀行の手に渡り、廃校手続きを取らざるを得なくなります」

「……大きな金額だね?」

「……はい、事実完済できる可能性は零に等しく、殆どの生徒は諦めて、学校と街を去ってしまいました」

 

「そして私達だけが残った」

 

 シロコの悲しそうな呟きに、アヤネは目を伏せた。

 

 一方ホシノは、他の生徒とは異なり、何を考えているか分からない表情を見せる。

 

「学校が廃校の危機になったのも、生徒がいなくなったのも、街がゴーストタウンになりつつあるのも、全てこの借金が原因です……借金をする事になった理由ですが……」

 

 アヤネが語り始めたのは数十年前のアビドス高校からの話。

 始まりは、学区郊外の砂漠で砂嵐が起きた事だった。

 それもただの砂嵐ではない、想像を絶する規模の砂嵐だ。学区の至るところが砂に埋もれ、砂嵐が去ってからも尚、砂が溜まり続けてしまう程の。

 その自然災害を克服する為に、アビドス高校は多額の資金を投入し、災害の回復に力を入れた。

 しかし、土地だけが広い片田舎の学校に、巨額の融資を許す銀行は中々見つからず、

 

 「最初はすぐに返済できる算段だったと思います」

 「ただ、砂嵐はその後も毎年更に巨大な規模で発生して、学校の努力も空しく、学区の状況は手が付けられない程悪化の一途を辿り、結局アビドスの半分以上は砂漠に呑まれ、その度に借金も、その……」

 「それで今の金額になったと」

 先生の相槌に頷く一同。

 「そ、この世界ではよくある残酷な話。先生のお陰で直近の問題は解決出来たから、私たちはこれから本命に着手出来るってこと」

 この世界では当たり前にある悲劇だとホシノは言う。

 「大人は狡猾で意地汚い。誰も大人は助けようとはしない。私から……私達から何もかもを奪っていくんだ」

 今まで話した中で、一番感情が乗っているホシノの声。先生は勿論、普段から一緒に生活しているシロコ達ですら、目を見開き、ホシノを見つめている。

 

 「あ、ごめんね、別に先生のことを言ったわけじゃないんだぁ〜もし、この委員会の顧問になってくれるとしても、借金のことは気にしなくていいからねー話し相手になってくれるだけでもありがたいよ〜」

 さっきまでの声色とは異なり優しいいつもの口調に戻るホシノ。

 たとえ、彼女らが、協力しなくていいと言っていたとしても……いろいろ説明してくれたホシノのが何を考えているか分からずとも……

 彼女らが先生に相談してきた事実は変わらない。

 それならば、何があろうと彼の解答は決まっていた。

 「私は生徒みんなの先生なんだ。対策委員会を見捨てて戻るなんて選択肢はありえないよ」

 

 




誤字脱字多くてほんとすいません。

エピローグで終わる予定でしたが、書けと言われたので、マイペースで対策委員会編を書いて終わりにします。
関係ないところはバサバサ削っていきます。
主人公以外は3人称視点で書こうとしていますが、先生を話させるのが難しく苦戦中
補足
 ホシノの攻略の難易度はナイトメアです。
 一つ解答を間違えればそこで、ルートが消滅し、寝てる主人公に勿論たどり着くことができなくなります。
 頑張ってください先生。

高評価くださった方、感想くださった方々、ありがとうございます。貴方がたのお陰で続きを書くやる気が出ました。



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