暗黒の滅竜魔導士   作:エルドラス

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仲間の為に

大魔闘演武一日目が終わり、妖精の尻尾のメンバーは惨敗記念と言って、酒場で飲み明かしていた。

 

途中に四つ首の番犬のリザーブ枠の選手『バッカス』とカナが飲み比べをし、カナが負けてしまったと言うことがあったが、その後は何事もなく、楽しく飲んでいた。

 

ふと、ナツが窓の外を見ると……この酒場を通り過ぎる影を見つけた。

 

ナツ「っ!」ガタッ

 

エルザ「ん?どうした、ナツ」

 

ナツ「今の……っ!」

 

ナツは何を思ったのか、すぐに酒場から外へと出ていき、その影を追った。

 

暫く追っているとその影は止まり、ナツもそれに合わせて止まった。

 

???「なんだ、ついてきたんだね……ナツ」

 

ナツ「あぁ、お前には聞きたいことがあったからな……ラルド」

 

そこにいたのは、ラルドだった。

 

 

 

二人は暫く互いを見ていると、ナツが痺れを切らしたのか、話しはじめた。

 

ナツ「なぁラルド。お前、なんで妖精の尻尾やめたんだ」

 

ラルドは、「やっぱりきたか」と言う様な表情を浮かべていたが、直ぐに答えた。

 

ラルド「……ごめんナツ。それは、『今は』言えない」

 

ナツ「っ!」

 

ラルド「でもっ!」

 

ラルドは、自分の妖精の尻尾についての思いをゆっくりと話した。

 

ラルド「妖精の尻尾が嫌になってやめた訳じゃない、それだけは信じてほしい。……妖精の尻尾の皆んなには、感謝してもしきれない恩がある、でも、それでも俺は辞めなくちゃならない理由が、俺にはあったんだ。だから、ごめん」

 

ラルドは頭を下げたが、ナツは黙り込む。

 

ラルド(やっぱりダメだよね「分かった」!)

 

ナツ「言いたくねぇんならこれ以上は聞かねぇ。それともう一つ、今年の大魔闘演武優勝は、俺達妖精の尻尾だ!」

 

ラルド「っ!……ふっ、臨むところだよ」

 

そう言ってラルドはその場を離れようとしたが、ナツが再度話しかけてきた。

 

ナツ「ラルド!」

 

ラルド「?」

 

ナツ「俺『達』はまだ!お前のこと仲間だと思ってるからな!」

 

ラルド「!……ありがとう、ナツ」

 

そして、二人はお互いに宿に戻って行く……その時の二人の背中は、少し晴れやかだった。

 

 

〜大魔闘演武二日目〜

 

チャパティ『さぁ!皆様お待ちかねの、大魔闘演武二日目が始まりました!二日目のゲストは、週刊ソーサラー名物記者、『ジェイソン』さんです』

 

ジェイソン『COOL!』

 

チャパティ『さぁ、競技パートはすでに始まっております。その名は!『戦車(チャリオット)』!この競技は、連結された戦車の上から落ちない様にゴールを目指すと言うものです。足下の戦車は常に動いている為、一瞬の気の緩みがミスへと繋がります。クロッカスの観光名所を巡り、此処ドムスフラウに一番に到着するのはどのチームか!会場の皆さんには『ラクリマビジョン』にて、レースの様子をお届けします』

 

ジェイソン『COOL!』

 

そうして、皆はラクリマビジョンに釘付けになっていたが、そこではありえない光景が映っていた為、観客達も唖然としていた。

 

ナツ「うっ、うえっぷ」

 

そう、ナツが乗り物酔いをしていて、今にも倒れそうになりながら前に進んでいたのだ。

 

それだけではなく、直ぐ隣では同じく妖精の尻尾Bのガジル、更には、剣咬の虎の『スティング・ユークリフ』までもが、グロッキー状態となっていた。

 

ナツ「あっ、あぁ」

 

ガジル「な、何故俺がぁ」

 

スティング「うっ、うぅ」

 

そんな様子で、三人は殆ど動けていなかった。

 

ラルド「辛そうだねぇ」

 

レイル「えぇ、ラルドを出場させなくて本当に良かったです。出てたら確実に酔ってましたからね」

 

因みに、今グロッキーになっている三人は全員が滅竜魔導士と言う共通点があるのだが、ラルドは知る由もなかった。

 

 

 

 

そして、映像は先頭集団の方に映った。

 

チャパティ『さぁ、先頭集団の方を見てみましょう。こちらは激しいデッドヒートが繰り広げられています!』

 

 

先頭から順に、大鴉の尻尾からは『クロヘビ』、青い天馬からは『一夜』、蛇姫の鱗からは『ユウカ』、人魚の踵マーメイドヒールからは『リズリー』、四つ首の番犬からは『バッカス』がやや離れた場所に、そして、はるか後方にいる先程の3人を合わせて8人である。

 

一夜「ぜぇ、はぁ、メーン!」

 

ユウカ「アンタらその体型でよくついて来れるな!」

 

リズリー「ポッチャリなめちゃ、いけないよ!」

 

因みに、バッカスはと言うと……

 

バッカス「ヒック!あぁ、参ったなぁ、昨日の酒が抜けねえやぃ」

 

…昨夜カナと飲み比べを行う際に飲んだ酒が抜けきっておらず、少し酔っていた。

 

そして先頭では、ユウカが自身の技である、『波動ブースト』を使って、加速していた。

 

ユウカ「『波動ブースト』!この衝撃波の中で、魔法は使えんぞぉ!」

 

リズリー「ポッチャリなめちゃ、いけないよぉ!」

 

リズリーは波動が来る前に戦車の側面を『重力操作』の魔法を使って走り、波動ブーストを避けた。

 

一夜「魔法をかき消す波動か…ならば!『俊足の香り』零距離吸引!」

 

一夜の魔法は、『香りの魔法(パルファムマジック)』。様々な香りによって特殊な効果を生み出す魔法だ。

 

一夜はその中の一つ、『俊足の香り』をなんと、鼻に試験管を突っ込み、魔法を無力化されることなく、物凄い速さでユウカを抜いた。

 

それを見ていたバッカスは、面白そうにしていた。

 

バッカス「ほぉう……頑張ってるなぁ……魂が震えてくらァ……俺も少しだけ頑張っちゃおうかなぁ!……よいしょオオオオオオオオ‼︎」

 

そしてバッカスが四股を踏むと、なんと戦車が、崩壊してしまった。

 

チャパティ『こ、これは‼︎バッカスのパワーで戦車が‼︎崩壊‼︎』

 

するとバッカスは、先程の二日酔いが嘘のように物凄い勢いで走り出した。

 

バッカス「おっ先ぃー‼︎落ちたら負けだぜ‼︎」

 

そして、そのままどんどんとスピードを上げていき、最終的には先頭にいたクロヘビをも抜かし、そのまま一着でゴールした。

 

バッカス「震えてくらァ‼︎」

 

チャパティ『四つ首の番犬10p獲得!続いて2着!大鴉の尻尾クロヘビ!三着リズリー!四着ユウカ!五着一夜!』

 

先頭を走っていた者達が次々とゴールしていき、残すは最下位争いをしている残りの三人だけとなった。

 

ナツ「うおぉぉぉぉ!前へ、進む……!」

 

ガジル「ぬぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

スティング「…カッコ悪ぃ…力も出せねぇのにマジになっちゃってさ……」

 

必死になりながら前に進もうとしているナツとガジルに、スティングはバカにした様な視線を向けていた。

 

ナツ「うぁぁぁぁぁ!」

 

ガジル「ぬぉぉぉぉぉぉ!」

 

しかし、二人はそんなものは知ったことかと前へと進んでいく。

 

スティング「良いよ…くれてやるよその勝負…俺達はこの後も勝ち続ける…たかが一点二点いらねぇっての」

 

スティングがそう言うと、ガジルがニヤリと笑みを浮かべながら言った。

 

ガジル「その一点に泣くなよ坊主!」

 

そして再び進み出す二人に、スティングは質問をした。

 

スティング「……一つだけ聞かせてくんねーかな……何で大会に参加したの?あんたら…昔の妖精の尻尾からは想像できねーんだわ。ギルドの強さとか、世間体的な物気にするとか……俺の知ってる妖精の尻尾はさ、もっとこう……マイペースっつーか、他からどう思われようがきにしねーつーか……」

 

それは、ラルドも密かに思っていた。確かに、彼が妖精の尻尾に所属していた時も、そんなことは気にする様な者達は殆どいなかった。なのに、何故今回の大会に参加したのか、ラルドはそれが分からないでいた。

 

すると、ナツが答えた。

 

ナツ「… 仲間の、為だ」

 

ラルド「っ!」

 

ナツ「7年も…ずっと、俺たちを待っていた……どんなに苦しくても、悲しくても……バカにされても耐えて耐えて……ギルドを守ってきた……仲間の為に、俺達は見せてやるんだ。妖精の尻尾の歩き続けた証を!だから前に進むんだ!!」

 

ナツのその言葉に、ラルドは少しばかり涙を流していた。

 

ラルド(あぁ、ほんと、変わんないなぁ、ナツは……)

 

そして、ナツとガジルはそれぞれゴールに着いた。

 

因みに、スティングは途中でリタイアした。

 

チャパティ『ゴール!!妖精の尻尾Aナツ!6位!2P!妖精の尻尾Bガジル!7位!1P!』

 

そして、先程のナツの発言で、少し前まで妖精の尻尾を笑っていた観客からも称賛の拍手と歓声が響き渡っていた。

 

これにより、ランキングはこの様に変動した。

 

一位 大鴉の尻尾 26ポイント

 

二位 剣咬の虎 20ポイント

 

二位 蛇姫の鱗 20ポイント

 

四位 青い天馬 17ポイント

 

五位 四つ首の番犬 12ポイント

 

六位 人魚の踵 9ポイント

 

七位 妖精の尻尾Bチーム 2ポイント

 

七位 妖精の尻尾Aチーム 2ポイント




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