TS転生ド田舎ネクロマンサー聖女   作:どくいも

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第19話 関係ないけど、身嗜みを整えるために、一緒に洗い合いもry

「は~い!というわけで、皆さんお疲れさまでした~!

 というわけで、お守り完成を記念して、ちょっとした炊き出しも準備しましたよ~!」

 

「狐とキノコのスープです!

 狐はベネさんが、キノコはイオ司祭が準備してくれました~!」

 

さて、ミサとチャーム作成も一段落、思ったよりも時間が遅くなってしまった。

流石にこの後のお守りに奇跡の力を与える祈祷の時間を含めると、帰ってから料理を作るのも大変であろう。

というわけで、事前にシルグレットにもしもの時にと頼んでおいたが、どうやら今回は正解だったようだ。

 

「ふはぁ~おいしい~!」

 

「ん!骨のだしに塩、それにこれは……辛子茸とルマ茸か!

 結構珍しいはずのキノコなのに、こりゃぁごちそうだな!」

 

おいそうに食べている住人をみつつ、どうやらこれらのキノコの品質に問題がなさそうなのを確認。

これなら今度から教会や個人として販売していくのに問題なさそうで何よりである。

 

「っふ!事前にこっそり持ってきておいた保存用のかた~い黒パンでも!

 このスープに浸してからやわらかくすれば……うまい!!」

 

「あぁ!村長ずっけぇ!

 事前に炊き出しがあるのを知ってたんだな!」

 

「ふははははは!これが村長特権だ!元騎士の力だ!

 お前らも悔しかったら、武功の1つでもあげるんだな!」

 

そして、またしょうもないところで子供相手にマウントを取っている村長。

色々突っ込みどころがあるがそれでもなお、なぜ今回のミサに参加したのかを聞いておく。

 

「ああ、それに関しては村のみんなと交流を深めるためと……。

 それと、今回どうしてもお前に頼みたいことがあったからだな」

 

貴族とは思えぬ、がつがつとした食事の摂り方をしながら、村長はこちらに話しかけてくる。

 

「それは今ここで話しても大丈夫な類の話ですか?」

 

「ん~、それに関しては大丈夫なんだが……。

 その……」

 

自分の発言に、村長は気まずそうに視線をそらす。

そして、そのまま視線を炊き出しの鍋のある方へと向け……。

 

 

 

「あ、あの、私にも一杯……」

 

「く、くせぇええ!!こんなところになんでお前が来るんだよぉ!

 お前は仮とはいえ、太陽神の司祭なんだろ?

 さっさと帰りやがれ!」

 

「司祭の癖に他の神のミサに、飯の時だけ参加するとか、恥とかそういう思いはないんか?」

 

「いや、その……おいしそうな匂いだったので……」

 

「卑しい……卑しすぎる。

 こんなのでも司祭になれるとかマジかよ……」

 

「汚豚に絶望しました。

 太陽神の信徒やめます」

 

なんと、そこには炊き出しだけもらおうとして、村人から総批難されているオッタビィア嬢の姿が!

 

「とりあえず、あいつ……いや、あの()()を、見れる程度まで戻してくれると助かる。

 でないと、このままではアイツが死ぬか、もしくは太陽神教会がつぶれてしまうからな」

 

かくして、私は溜息を吐きつつ、村人から総叩きにされて涙目にされている太陽神司祭を回収するのでした。

 

 

☆★☆★

 

 

ギャレン村太陽神教会在住、太陽神司祭オッタビィア・ディ・ヴァンサン。

彼女が初めて自意識を持った時は、すでに彼女は孤児であった。

地方の田舎都市にて、差別をされながら、日々人目を避けながら生きてきた。

飢えもしたし、奪いもした。

それにより恨みを買い、棒叩きにされることもしばしば。

自他ともに認める卑しい生まれであった。

そんな彼女にとっての初の転機は、とある貴族の子息の目に留まったことであった。

 

『盗みをしなければ生きていけない?

 ならば俺についてこい!俺の部下になったら、そんなことをせずとも生きていけるはず!

 そして、俺とともに陽の道を歩もうじゃないか!』

 

彼の名はルドー。

騎士上がりの貴族であるルノー家の次男であり、名もなき獣である自分を拾ってくれた優しい王子様であった。

彼のおかげで彼女は心を知り、礼節を知り、そして、名前ももらった。

彼女は獣から人へと生まれ変わったのだ。

だからこそ、彼女は彼への恩を返すために、あるいは無学な自分でも少しでも役に立つために、日々できることをしようとした。

少しでも彼の顔を汚さぬように礼節を積み、神への祈りを捧げ、礼儀作法を覚えた。

自分の地位を失わぬように、周囲の貴族や家内には失礼のない様に過ごす術を学んだ。

そして、そんな努力が実ったのだろう。

 

『おぉぉ!?それは……奇跡!?まさか、神から奇跡を授かったのか!』

 

彼女の人生の第二の転換期は、神により与えられたのであった。

限られた謙虚な信者にしか目覚めぬはずのその祈りと信仰心は、奇跡という証拠を以て、証明されることになった。

そこからの彼女の人生は上り調子であった。

洗礼名をもらうことで、ただの拾い子から、貴族の家付き聖職者としてランクアップし、その地位によりとある商家から養子として迎え入れられることにもなった。

残念ながら、彼女にはルノー家へ迎え入れられる妻としては格も生まれも足りないが、それでも彼の横に立つのには申し分ない程度にはなれたと胸を張って言えるようになった。

その時彼女はすべてが上手くいくと思っていた。

日々強くなる司祭としての力や、改善されていく周囲との関係性。

自分がかつての名もなき乞食ではなく、最高神により保証された高貴なる血を持つ一族へと近づいていく実感を得ていた。

だからこそ、次の人生の転換期は、彼女にとって計り知れないほどショックなものであった。

 

『とうとうルノー家に対しても、イラダ地方の開拓及び居住区の建設指令が王より発せられた。

 現在まで多くの貴族や騎士の子息が挑戦し、そのほとんどが失敗しているが……それでも、王命は絶対だ。

 やり遂げねばならんだろう』

 

そう、それは開拓指令。

王国が近年ようやく獲得したのに、一向に開拓が進まぬ土地。

呪われ、血に濡れ、魔に魅入られた地方イラダ。

そこを開拓するため、あるいはその地の呪いが溢れぬ様に、開拓者という名の生贄を選ぶ命令が、このルノー家へにも下ってしまったのだ。

 

『なら、その王命には俺が行くことにする。

 兄貴は当然家を継がないといけないし、弟に関しては体が虚弱だからな。

 なら俺が行くしかないだろう』

 

『え、えっとその、普通の家では代理人をつかって、その方に開拓を頼むのが常です。

 だから、わざわざルドー様自らがそこに出向く必要は……』

 

『いや、最近は代理人を使用することの多さに王が苛立っておられると聞く。

 特に騎士上がりの貴族の場合は、それを理由に家が取り潰された場合もあるそうだ。

 なればこそ、今回は俺が行く。

 いや、行かねばならないのだ!』

 

そして、3回目の人生の転換期。

それこそが彼女の恩人であるルドーが、開拓村へ出向することを決めたことであった。

そうして、彼女は悩んだ。

確かにルドーは彼女の恩人ではある。

拾ってもらった恩もあるし、あこがれや恋に似た感情もある。

しかしながら、それは自分の命を賭けるのに足るものなのか?

今の彼女は、すでにルドーやルノー家を頼らずともどうにかできるだけの立場にいた。

貴族付の商人の養子であり、太陽神の正当な聖職者としての立場をもった。

更には貴族間との豊富なコネクションなどもあった。

しかし、結局彼女は、悩みぬいた末に、ルドーについていくことにした。

自身の借りた恩を返すため、あるいは太陽神の信者としての正義感。

さらには、ここで日和ることにより、周囲から失望される事を恐れて、彼女はルドーのお付きの聖職者としてこの開拓事業に協力することにした。

 

『……こうなれば、確実にルドー様だけでも生存させなければ』

 

しかし、それでも彼女の目的は、別にあった。

新しく開拓を成功させると息巻いている彼女の恩人や知り合いを尻目に、ただただルドーの生存のみを考え、いかにこの開拓業を安全に失敗させるかを考えていた。

そう、なぜなら、今回彼女がこの開拓事業に参加したのは、村長であり恩人である、ルドーの身の安全を確保させる、そのためだけなのだから……。

 

 

 

「それなのにぃ、私はすっごく頑張ったのにぃ!

 よりにもよって、ルドー様に嫌われちゃうなんてぇえええ!!!

 うわぁああああああああん!!!」

 

「はいはい、泣け泣け。

 とりあえず人払いは済ませているから」

 

かくして現在自分たちがいるのは、太陽神の教会の一室。

そこで、泣きじゃくるオッタビィア嬢を全力で慰めていた。

 

「わだくじだってぇ、心が痛まないわけではなかったんですよ?

 でもぉ、ルドー様を死なせないためには、ごうするじかながったんですよぉ!」

 

そうして、彼女を慰めつつ聞くと次から次へと、無数の悪事を露呈していく。

例えば今回の村長の遠征がやけに帰ってくるのが遅かった理由とか、ゴブリンごときで交通が止まった理由とか。

そもそも領主からの命令で、村の防衛を担当していた若い男をほとんど連れて行った理由とか。

そのほとんどの原因が、このオッタビィア嬢にあったのだ。

 

「だって、だって、仕方ないでしょう!

 万が一それでルドー様が大怪我でもしたら……。

 そもそも、ルドー様はこんな危険な場所にいるべき御方じゃないんですよぉ!

 それなのに、なんで……どうして……」

 

それでも不幸中の幸いとか、最後の良心のおかげか、彼女は直接この村に害を与えることだけはしなかったようだ。

具体的には、この村に到着したときの盗賊騒ぎとか、ゴブリンの発生そのものには彼女は関わっていないとのこと。

よかった、そこまでやっていたら、マジものの縛り首になるところだったぞ?

自分もここまで知り合った相手が処刑台に行くのはさすがに心が痛い。

 

「そもそもぉ!あなたも、少しは……いや、ほんのちょびっとは責任があるんですよ!

 私が、こんな風になったのはあなたが少しくらい関係がありましてよ」

 

「そうだね。

 初めに出会った時、ちゃんと自分が三輪司祭だって自己紹介したほうがよかったかもしれないからね。

 正直ちょっと聖職者マウントになりかねないから、抑えていたんだけど……。

 今回に関してはむしろ逆効果だったね、ごめんね?」

 

「ごめんなさいすいません。

 悪いのは私なんです、だから見捨てないで謝らないでごめんなさいごめんなさい」

 

びっくりするほど腰低いな!

おそらく今回の件で、彼女は想像以上に心が折れてしまったのだろう。

流石にこのままでは不憫なので、大丈夫であると安心させるためにもそっと彼女を抱きしめて、頭をなでた。

 

「うぅ、うぅ……。

 元凶で憎いはずなのに……。

 彼女も私のことを嫌ってもおかしくないのに……。

 すごく優しい……好き……」

 

どうやら、ある程度正気に戻ってくれたようだ。

というか、彼女も結構ふくよかな女性であるため、元男の自分としては結構役得感が強い、もうけもうけ。

 

「ところでイオさ……イオ司祭様は、どうして私の事を嫌わないのですか?

 聖痕の影響で、この村のみんなは、そして、あのルドー様ですら私を嫌っているのに……」

 

「それに関しては、私が冥府神の司祭でもあるからかな?

 冥府神の加護は一部の神聖術の影響を無理なくはねのけることができるからね。

 例えば、それが聖痕だとしても……ね」

 

「はえー、冥府神にそのような加護が……」

 

なお、冥府神の加護の効果は、このようにかな~り限定的で使いにくいのが本音だ。

一応、より詳しく言うのなら、冥府神の加護により、魂に干渉する奇跡や呪いが普通の聖職者よりもさらに効きにくくなるというものがあるのだ。

一見この加護はクソ強く聞こえるが、その実、そんな呪いや奇跡に遭遇することはかなりまれである。

それに、聖職者なら、大なり小なり神からの加護をもらう上で魂の保護効果は付与されていたりするのだ。

だからこそ、こんな事態でもない限り、基本的にこの効果は蛇足。

一般人的には信仰するうま味の薄い神様であることには間違いないのだろう。

 

「つまりは、あくまでイオ司祭様が私を優しくしてくれているのは、冥府神の加護のおかげで……」

 

「いや?どうやらオッタビィアちゃんは根はいい娘みたいだからね。

 あなたが優しい娘なのはわかっているし、個人的に応援したいと思っているよ」

 

「……~~~っっっ!!!」

 

自分の言葉を聞くや否や、改めてこちらを強く抱きしめてくるオッタビィア嬢。

流石にちょろすぎでは?と思う反面、この田舎という閉鎖空間で自分以外味方がいなくなってしまったら、こうもなるかという嫌な納得感がある。

一瞬このまま自分にドロドロに依存させて、エッチな関係にでもなってやろうかという変な野心が生まれかけたが、流石にそれは良心でなんとか収める。

太陽神の聖痕という名の見張りもこわいし。

 

「それに、オッタビィアちゃんはルドー村長が君を見捨てたみたいに言っていたけど……。

 どうやら、あの人はまだ君を完全には見捨てていないとは思うよ?

 ちょうど、さっきのミサ終わりにルドー村長にあなたの事を頼まれたから」

 

「え、えぇ!そ、それは本当ですか!

 よ、よかった、とうとう名前すら呼ばれず、家からも追い出されてしまい……。

 完全に見捨てられたと思いましたが……本当によかった」

 

もっとも、あくまで村長のオッタビィア嬢に対する言い方は、あのごみをいい感じに処分とか。

やっかいな浮浪者に、あとくされなく見えなくしてくれとかそんなニュアンスを感じなくもなかったが。

それは言わぬが花だろう。

 

「それに、オッタビィアちゃんはまだ神に見捨てられていないみたいだからね!

 だからこそ、これからしばらくちゃんと品行方正に過ごせば、その聖痕の導きに従い、正しく贖罪すれば、すぐにでも元通りに!

 つまりは聖痕を治すことができるはずだよ」

 

「そ、それは本当ですか!?

 毎日太陽神への祈りを続けても、懺悔を続けても一向に減らなかったこの聖痕を!

 このような地獄から、脱出する方法があるのですか!?」

 

オッタビィア嬢がすがるような眼でこちらを見つめてくる。

その眼は潤み、頬は赤くなっており、強い期待と哀愁が見え隠れしている。

そんな彼女の様子に、少々あきれ果てつつも、彼女の顔を見つつ、こう宣言するのであった。

 

 

 

「というわけで、聖痕を治すための第一歩として。

 とりあえず、働こうか」

 

「……え」

 

さもあらん。

 

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