TS転生ド田舎ネクロマンサー聖女   作:どくいも

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第46話 退職&入職

結果だけ見れば、概ね全てがよくなったといえるだろう。

ポータルが贈与されたことにより、この村からストロング村に行きやすくなったことは、すなわちあの周辺の地区への移動のしやすさが増したことでもあり。

ともすれば、あの危ないんだか危なくないんだかよくわからない月女神のダンジョンにも新米冒険者達を送れるわけで。

そうなれば、吸血鬼化治療に必要な月光草採取やダンジョンの見回りなどの雑務をこちらがする必要がなくなるわけだ。

それ以外にも、ポータルという爆弾的存在により、魔導学院にそれとなく情報を流すことにより、この村に来る技能持ち人員の底上げも可能に。

まぁ、どれもがすぐにというわけではないが、確実にこちらにかかる負担は前よりは少なくなり。

ようやく、私も自分のための時間、すなわち死霊術師としての時間をとれるというわけである。

 

特に今回は、聖痕という特大死霊術デバフが取れた上、おそらく聖痕とともに付与していたであろう神の見張りも薄れたのを何となく感じることができた。

そうだ!今なら多少は無茶な死霊術や違法な死霊術もできちゃうかもしれないというわけだ!

特に最近は鎧霊であるトガちゃんの鎧も、出来合いの物や持ち込みの物をそのまま使用していたことが多かった。

だからこそ、彼女には万全の力を発揮させられなかっただろうし、そろそろ改めてトガちゃん用の魔導鎧を用意してもいいかもしれない。

ああ!もちろん最近増えていた旧ストロング村や盗賊団に殺された亡霊たちにも、何ができるか確認しなきゃね!

 

「というわけで、ようやく私の死霊術師としてのほのぼのスローライフが始まるってわけ!」

 

 

 

『あ、おいらは、ストロング村の知り合いの子供が救われたのを確認したし。

 遺品も整理してくれたから、もう未練なく成仏するつもりっす。

 ここまで面倒見てくれてありがとうございやした!!!

 大感謝っす!』

 

『あ、それなら私も。

 イオ様、残った私たちの子をお願いします』

 

『俺もな~、あの盗賊どもをぶっ殺せた時点でもうすっきりしたかなって。

 あとは成仏させてくれれば文句はねぇや』

 

なお、それと同時に、大体の問題を解決したせいで、今回新しく手に入れたはずの使役霊はほとんど未練がなくなってしまったわけで。

せっかくいくらかの技能持ちの霊に目を付けていたのに、実にいい笑顔で成仏の道へと進んでいってしまうのであった。

 

畜生め!!!!

 

☆★☆★

 

かくして、場所は兄弟神の教会近くの空き地。

そこに、ダンジョンから持ってきた岩に清浄の魔法をかけて、準備を整える。

 

「と、いうわけで、ここが君たちのお墓、いわゆる共同墓地ね。

 本当は一人一人ちゃんとしたお墓を用意してあげたかったけど、まぁ、流石に敷地と墓石の数の問題でね。

 名前はちゃんと職人さんに刻んでもらったし、だから、君達でもこの墓石で魂を落ち着けたら、順番に成仏できるはず……」

 

『お~、天の国への道が見える~行ってきま~す』

『う……あああ……!!』

『今までありがとうっす~!

 それじゃぁ、逝ってきま~す』

 

はえーよ、ちょっとくらい未練とか無いのかないのかよ。

いやまぁ、この世界は半端に未練を残して死後もこの世界にとどまり続けると、ろくでもないアンデッドにしかならないから正解といえば正解なのだが。

せめて、一人くらい現世にとどまって、何か成し遂げてから死にたいとか、残したいものがあるとかないの?

 

『いや、自分すでに冥府神の声が聞こえていて……今のうちに冥府に来てくれたら仕事を紹介できるって言われていて』

 

『あ、私も似たようなものなので。

 早く成仏したら、娘に神聖魔術の奇跡を与えてくれるって言っていたから!

 なら、早いところ成仏しなきゃねって』

 

『はじめは未練があったけど……すでに元カノが結婚していたって知ったから……むしろ、半端に残り続けちゃうと心が荒みます』

 

『というか、今ならイオ司祭に使役されているからいいけど、フリーになったり、吸血鬼に使役されると一気に闇落ち不可避だから……。

 神様の推薦があるうちに成仏したいなって』

 

『それな』

 

は~、この使役し甲斐のない亡霊共め!

中には大工やら釣り人やら、馬借などのスキル持ちの亡霊も多くいたため、さっぱり成仏されると惜しい気持ちもある。

が、それでも未練のない亡霊を縛り続けることほど悪いこともないので、涙を呑んで冥府や天の国へと送り出していくことにした。

 

『……我らのために、泣いてくださってくれてありがとうございます』

 

『うう、イオ司祭……最後までお世話になりましちゃ!』

 

『っく!こんな死してなお、最後まで我らを思ってくださるなんて、我ら一生の悔いなし!

 イオ司祭とギャレン村の人々に幸あれ!!』

 

うわぁあああん!!レア技能亡霊~!

せめて、一人くらい残ってくれてもいいじゃないかさ~!

まぁ、それを口に出したら、冥府神司祭として失格なので口には出さないが。

それでも、視界が潤んじゃう。

死霊術師だもん。

 

『う~ん、こういうの見ると私もな~、今のうちに成仏したほうがいいかもとか思っちゃうな~』

 

「お、お父さん!!」

 

『あぁ、安心しろ。

 パパはまだ成仏しないぞ?

 少なくともアリスが結婚するまでは』

 

そして、愛弟子とそのパパ霊コンビよ。

そのセリフはいろいろとまずいぞ、少なくともアリスの行き遅れフラグ的に。

まぁ、まともな結婚をあきらめている自分ほどではないが。

 

「ふん、まったくお前は相変わらず甘ちゃんだな。

 成仏させるのが惜しければ、契約なりなんなりで縛ればいいものを。

 そんなんだから、お主のまともな使役霊は一向に増えないのだ」

 

そして、持ち霊たっぷりの兄弟子は、こちらの内心を見透かしながらそう言ってくる。

でも、兄弟子、その手段はよっぽど実家が太いとか、特別な家庭事情でもないとできませんよ。

 

「しかし、それでもまぁ、雑に使える使役霊が増えただけまだよかったではないか。

 それに、そこそこ有能そうではないか」

 

「あぁ~、あいつかぁ……」

 

そうして自分は、しぶしぶその自分の持ち霊のいる方向へと視線を向ける。

 

『あああぁああ!!なんで、なんで私は天の国に行けないのよぉ!!!』

 

『冥府でもなんでもいい!!さっさと私を楽にさせなさいよ!

 もう十分地獄は見たでしょ?』

 

『え?流石に余罪が多すぎて、冥府ですらお断り?

 折角だから、使役霊として、罪を浄化しろ……ですってぇ!?』

 

『いやよいやよ!

 人のために働くのはまだしも、こんな王国民の利益や私達を殺した奴の言いなりになりたくは……ぎゃああぁあああ!!!!!』

 

かくして、死してなお天罰を喰らったことで、霊体そのものに聖痕の付けられた亡霊。

いつぞやの女盗賊と女騎士の合いの子的な何かが、自分の使役霊にさせられてしまったのであったとさ。

 

『っく、こんな恥辱を受けるくらいなら、ころせ!!』

 

「いや、あなたはもう死んでいるでしょう」

 

「……クーリングオフしたい」

 

さもあらん。

 

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