TS転生ド田舎ネクロマンサー聖女   作:どくいも

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第52話 おだいじん

「……こうして、私達とお父さんの活躍により、無事に恐るべき亜竜達は、谷底へ真っ逆さま!

 まぁ、それでも運よく数匹は生き残っていましたが、一匹でも欠ければ、あとは私たち死霊術師の土俵。

 師匠が見事のその亜竜の死体を操り、同士討ち。

 恐るべき聖獣と言えども、私達の前では敵なしだったというわけです!」

 

「「「おぉ~!」」」

 

というわけで、時間はあれから早数日後。

現在私たちはあの亜竜の巣窟から無事に脱出し、ギャレン村へと戻ってきていた。

なお、あの森に関しては基本、亜竜達のテリトリーであったおかげか、亜竜達さえ攻略すれば、後はほとんど強敵のいない実に平和な場所であったと言えよう。

 

「ふふふ、やっぱりこう見ると私が冒険者としても一歩先を行っちゃったみたいですね!

 すいませんね!やっぱり親と師匠が違うんで!」

 

「てめ~!そんなこと言いながら、どうせ師匠におんぶにだっこだったくせに~!!」

 

「はぁ!? 師匠が最強なのは認めますが、今回は私も大活躍でしたよ!?

 お父さんを最強の不死者として蘇生し、あの恐るべき亜竜達をバッタバッタとなぎ倒していく!

 あの姿を見せられないのは残念だな~」

 

そして、現在私たちがいるのはシルグレットの酒場。

事前に伝書鳩ならぬ伝書霊を飛ばしていたため、そこまで問題にはならなかったが、やはり亜竜の体やその素材を複数匹分持ち帰るともなると、それなりに騒ぎになる。

というわけで、現在は宴を開きながら、報告会兼アリスによる冒険発表会が行われていた。

 

「……直接見たわけじゃないのか、なら眉唾だね」

 

「はぁあああ!!!!???

 私のお父さんなら、正面からでもあの程度の亜竜を倒せますよ!

 ね!お父さん!!」

 

『ははは、我が娘アリスよ。

 ……さすがに無茶ぶりはやめてくれ』

 

もっとも、アリスが一番話しているのは、彼女と同じ村出身である大半が孤児で構成された愉快な新人冒険者パーティ相手。

やはり同郷の出身として、それなりに話しやすいのであろう。

 

「それにみてください!!!

 今回私はこれをもらったんですよ!」

 

「おおおぉぉ!!こ、これは、卵!?

 もしや!?」

 

「そう!これはあの亜竜達の巣にあった卵です!」

 

「……やっぱりおいしいの?」

 

「な!ば、馬鹿なことを言わないでください!

 ほら、耳を当てて!」

 

「……あ!ちょっぴりだけ音が聞こえる!?

 これってもしや!?」

 

今回の報酬の一部として、亜竜の卵の一つがアリスの手に渡った。それを誇らしげに見せびらかすアリスに対し、皆で驚いたり喜んだりしている。

ある意味では年相応のアリスの姿がそこにはあり、実に微笑ましい光景といえるだろう。

 

「というわけで、この亜竜の素材や卵、さらには地図にはない廃村周囲の情報。

 いくらで買い取る?」

 

「……ふ、ふぇぇぇ、お、お財布、こ、壊れちゃうよぉ……」

 

そんなしょうもないネタをやってもびた一文負けんぞシルグレットよ。

まぁ、そんな風にアリスちゃんたちが微笑ましい会話を繰り広げているのを背景に、こちらも微笑ましい金銭交渉をしようではないか!

 

「正直、亜竜の素材やらなんやらは俺も欲しい!!!!

 あの頭部を額縁に飾って、酒場や宿の飾りとして活用したい!

 でも、ただの酒場兼宿屋の店主に、そんな金はないんだ……ないんだ」

 

悲しそうに首を垂れるシルグレット。

うんうん、わかるよ。男なら亜竜の剥製とか飾って、どや顔したいもんね。

 

「でも、まぁないもんはしょうがないから、こ、今回は涙を呑んで諦める……うぐああぁああ!!!あ、あぎらめ゛る!!が!!!

 それでも、今回の開拓情報の地図情報や周辺情報はちゃんと適正な値段で買い取らせてもらうぞ。

 特に廃村の周辺は」

 

というわけで、シルグレットには今回わかった廃村やその周辺情報について話すことにした。

え、あそこを安全な場所として、開拓を進める予定?まじで?

 

「そりゃ、強力なモンスターが存在せず、廃村とはいえ、近くに綺麗な水源や廃畑なども残っている。

 その上、周囲に盗賊団や吸血鬼もいないとくれば、開拓団としては喉から手が出るほど欲しい土地だろうよ」

 

う~ん、いわれてみればそうなんだが、直前まで戦神の聖獣である亜竜が暴れ回っていた場所なのに、そこに移住させられるとは何とも難儀な話である。

いや、むしろもともと聖獣が保護していた土地と考えれば、プラス要因なのかもしれないが。

 

「で、今回持ち帰ってきた亜竜の素材については……どうするつもりだ?」

 

「それに関しては、いくらかは死霊術の素材にするつもりだけど、半分くらいは売り払うつもりだよ。

 幸い、どこかの吸血鬼やら最近増えた旅商やらで買い手は多いだろうし」

 

「だろうな」

 

そうだ、最近ではこの村にもダンジョンで発見されたアイテムや素材狙いで、そこそこ商人が在住しているし、何なら各ギルドもこの村には注目しているとのことだ。

亜竜の素材に関してはもちろんだが、それ以上にストロング村にある安全性が保障されている善神のダンジョンにすぐ行けるというのが大きいのだ。

善神のダンジョン自体はまぁ珍しさで言うとそこそこ程度ではあるが、それでも件のダンジョンは、10層以上あるのは確実であり、それほど深い善神のダンジョンは珍しいため、王都や魔導学園でも話題になっているそうな。

 

「亜竜の剥製はいろいろ惜しいが、それでもこの立地ならそれ以上のものが手に入る可能性もあるからな。

 それこそ前みたいにドラゴンが飛翔してくるかもしれないし」

 

「私としては来てほしくないかな」

 

「おやおや、ギャレン村の聖女とあろう人が、実に弱気な発言だな」

 

「ははは。

 ……冗談でも言っていいことと悪いことがあるよ?」

 

「え?今俺そんな悪いこと言ったか!?」

 

悪いか悪くないかで言えば、悪いし、村の酒場とかいう耳が多い所でそんなこと言われると、営業妨害以外の何物でもない。

こちとら本業は死霊術師だし、野生の恐竜とはいえ聖獣を殺したばかりなのに、聖女とかいわれると宗教的に面倒くさくなるからだ。

戦神の教徒相手に喧嘩とか売りたくないし。

 

「俺としてはむしろ、戦いの中で敗れたのなら本望だとは思うがな」

 

う~んこの頭戦神の信徒並みの感想よ。

なお、勇神と戦神は一応は同一の神であるため、領主であるルドーも今回は彼の信仰する神の聖獣をやられたというのに、むしろ誇らしげだったのは、信じる神の違いなのかもしれない。

まぁ、もしかしたら、亜竜の素材を使ったお守りだと戦神の加護性能が格段にアップするからという、実に現金な理由かもしれないが。

 

「でもまぁ、今回の探索では、わが身の未熟さをいやという程痛感したからさ。

 ここは一度、原点に返って死霊術師としてちゃんと準備してから、冒険に挑もうと思うよ」

 

今回の冒険は、結果的にはうまくいったが、それでももう少しきちんと準備しておけば、もっと楽に行ったのは間違いない。

それこそ、いつもの仲間とともに冒険すれば、事前に準備をすれば。

そして、もう少し死霊術師として、強い死霊を召喚できる準備をしていれば、などだ。

 

「というわけで、ここのところ少し働いてばかりで、自己鍛錬が少なかったからね。

 ちょうどいい素材も手に入ったし、しばらくは自己強化に努めるさ」

 

「……それ以上強くなってどうするんだ?」

 

かくして、シルグレットの何とも言えない視線を尻目に、報酬を受け取り、私はアリスを引き連れて、酒場を後にするのでしたとさ。

 

☆★☆★

 

なお、翌日。

 

「というわけでぇ!今から死霊術師としてのパワーアップのために、自作のアンデッドを作ろうと思います!」

 

「わーい!!」

 

「今回作るのは、この度討伐できた亜竜の群れ!

 彼らの遺体を使った、ドラゴングールやドラゴンスケルトンを作りたいと思います!」

 

「わ、わ~い?」

 

「もっとも、この亜竜の遺体にただただ霊を憑依させるだけでは、そこまで強いアンデッドは作れないため、この死体を加工して、グールやスケルトンの依り代にする必要があるんですね」

 

「……わ、わ~い……」

 

「というわけで、今回加工素材として使うのは、この卵」

 

「……」

 

「この亜竜の卵は、この亜竜の遺体とは親子関係にあるため、親和性は抜群!

 さらに、この卵を親である竜の目の前で殺すことにより、聖獣であろうと怒りにより陰の魔力との親和性が増し、効果が倍!」

 

「……」

 

「さらには、その卵をつぶすのに、この親竜の骨を使った槌を使えば、神からの義罰と背信により、さらに死霊術の相性もアップ!

 最終的に、子竜の卵で親の竜の骨の加工を行うことで、アリスちゃんのような初心者でも、手ごろながら強力なドラゴンスケルトンを作成することが可能に……」

 

「ヤダ―!!!!!!

 私はこの卵を育てます!!!!!育てるんです!!!!

 壊しちゃダメ―!!!!!」

 

「え?でもアリスちゃんは死霊術師として強くなるんでしょ?

 なら、これくらいはできるように……」

 

「キシャ―――!!!!」

 

アリスと一緒に仲良く、死霊術師としてのレベルアップをしようとするも、まず第一歩目から困難に直撃。

亜竜の卵を抱えて、こちらを威嚇するアリスをどうなだめるか四苦八苦するのでした。

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