TS転生ド田舎ネクロマンサー聖女   作:どくいも

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第5話 ろくでもない秘策

この世界において『宗教』とは、こちらの世界以上の意味を持つ概念である。

なぜならばこの世界においては、【神】という名の超常的存在が自らの意思を持って、人知を超えた力で、こちらに干渉してくるからである。

聖神なら人々に加護と力を与え、邪神なら災いと呪いを与える。

そのため、この世界では人々を守護する神を祈ること自体が人間の力となり、もっとも簡単に力を得ることができる方法なのである。

そして、当然そんな神をたたえるための施設である『教会』も当然人々に直接的な恩恵を授ける。

そんな『教会』の恩恵の一つに、周囲の『魔物』を寄せ付けにくくなるというものがある。

これはそもそもこの世界における魔物が、人類へ害を及ぼすために作られたための存在であり、教会が讃える神々もこれを敵視しているからである。

だからこそ、どんな僻地の村でも『教会』があるだけで、一定以上の信頼がおけるものであり、そこに司祭なり神職がいれば倍ドンというわけだ。

 

「でもまぁ、ここは村の端っこだからなぁ」

 

もっとも現在自分がいるのは少々村の中心から外れた場所。

すなわち村の教会から離れた場所であり、同時に多くの魔物や賊に襲われやすい、そんな立地である。

まぁそれでもここは牧場であるため、その家畜臭などの関係で村の中心から外れてある必要があり、いろんな意味で仕方ない場所といえるかもしれない。

だが、当然襲う側にとってはそんな事情など知ったものではなく、当然単純に獲物が多く襲いやすいという認識になるわけで。

 

ともすれば、当然繁殖期にあたるゴブリンも、この牧場へやってくるのも当然の流れであり……。

 

「もぉぉぉぉぉ♥」

「ぐぎがぁぁあああ!!!」

 

「うあああぁぁあ!!お、おらのジェニファーがぁああ!!!」

 

なんと、そこにはゴブリンに性的に襲われる牝牛の姿が!!!

 

 

◆◇◆◇

 

 

「も、もぉぉぉ……」

 

「じぇ、ジェニファー、ジェニファー……!!

 おらが、弱かったばかりにぃ…」

 

「はいはい、まだ陰気や呪いが付いてるかもしれないから触らないでね~」

 

そうして、牝牛相手に性的な意味で国士無双していたゴブリンを無事討伐。

現在、ゴブリンに襲われていた家畜を診察中である。

まぁ、酪農専門家ではないため、魔物からの性的虐待が原因で感染する家畜の病気なんかは当然知らない。

が、それでもこちとら魔導学園の魔術師であるし、最低限の魔物についての知識もある。

そのため、最低限であり、同時に最悪を感知することぐらいはできるのだ。

 

「……ん~、やっぱり、中に出されているな。

 このままだと、ゴブリンの精……体液で、この牝牛の中にいる胎児が死ぬか魔物化するね」

 

「そ、そんな!」

 

「というわけで、ちゃちゃっと、ゴブリンの体液だけを死滅させるよ」

 

牧場主が不安そうに見つめる中、魔力感知と呪術を併用しながら雌牛の体内に、呪いを浸透させる。

標的はゴブリンの体液と呪いのみ、牝牛自身や中にいる幼い命の魔力は浸食しないように。

確かにゴブリンをはじめとする魔物は、陰の魔力を基にする呪術には最低限の耐性があるが、それでも自分の魔法を無効化できるほどではない。

 

「というわけで、治療完了。

 あとは、浅い所でもいいからある程度ゴブ液掻き出して、そのあとたっぷり休養させれば大丈夫だから」

 

「あ、ありがとうござぇます!

 ありがとうござぇます!」

 

かくして、頭を下げてお礼を言う牧場主を尻目に、ゴブリンの死体と牧場主からのお土産を持ち帰りながら、その場を後にするのであった。

 

 

 

「というわけで、今回の村の警備依頼では、牧場でゴブリンと戦闘した感じだね。

 そっちは?」

 

「こっちも、ゴブリン退治~。

 といってもゴブリンの巣の監視だけど。

 流石に繁殖期のゴブリンの巣に突っ込みたくない」

 

さて、そんなこんなで牧場のゴブリン退治から数刻後。

現在私たちは宿屋でもある酒場でヴァルター達とのんびり、食事を共にしていた。

会話内容は当然、今日互いに行った依頼について。

もっとも、その内容が大分偏っているのは確かだが。

 

「それにしたって、繁殖期?だかは、知らないけど、ちょっとゴブリンの数増えすぎじゃない?

 むしろ、これ絶対他の地域からも流入しているでしょ!

 どうなってるの!?」

 

「そうはいってもな、この辺ではいつもそうなんだから仕方ないだろ。

 巣に最適な洞窟が複数ある上に、獲物である獣もそこそこいる。

 それでも、他地域から流入しているのも間違いないと思うがね」

 

ヴァルターがゴブリン被害や依頼の多さに思わず文句を言うが、それをさらっと受け流すシルグレット。

まぁ、実際に文句を言ってもゴブリン依頼の数が減らないのは事実であろうし、シルグレットの受け流しもさもあらんといった所だ。

 

「まぁまぁ、で、でもこんなゴブリン依頼ラッシュも、他の冒険者さんが来れば多少はマシになるんですよね?」

 

「そうだそうだ!

 で、結局件の新しい冒険者はいつ来るんだい?

 そろそろ僕もまともな依頼や休日が欲しいよ!」

 

「……すまないが、それはちょっとわかりかねる」

 

「はぁ~~~!?!?」

 

怒るヴァルターに、気まずそうに目をそらすシルグレット。

 

「君はさぁ!

 この間の新居の件もそうだし、新武装の件もそう!

 その上、新任の冒険者すら入れられない??

 いつになったら、まともに物が仕入れられるんだい?」

 

「そ、それは仕方がないだろ。

 新しい冒険者が来るための街道も、ゴブリンの巣の横にあるんだから。

 せめて繁殖期を過ぎてからでなければ、安全に呼び出すことすらできん」

 

「ゴブリンの繁殖期ごときで馬車を止めるなよ!!

 村の人も、そのせいでピリピリしてるんだよ?

 それに、冒険者が乗った馬車ならゴブリン程度どうにかできるだろ!」

 

「俺だってそう思うが仕方ないだろ!!

 向こうがそう言ってるんだから!」

 

シルグレットとヴァルターの間に何となく流れるいやな雰囲気。

まぁ、でもお互い口で言い合ってるだけで、殴り合いにもなっていないし、物を投げつけてもいないため、それなりに理性的ではあるのだろう。

それにしても、このチーズ旨いな。

件の牧場主からジェニファーを助けたお礼にと渡されたが、これなら依頼内容外とはいえ、あの牛の治療をした価値があったというものだ。

 

「でもまじめに、今のところ冒険者の募集要項の内容がほとんど守られていないのは、真面目にどうかと思うよ」

 

「うぐ」

 

「だよね~。

 自称腕のいい鍛冶屋も、家や鍜治場がないからまともに活動できていないし。

 教会も中にいる聖職者や村長は別の村に行ってここにはいない。

 その上、家や依頼の優遇とやらも、まだ契約が履行されていないし」

 

「うぐぐぐぐ」

 

「……というか、真面目に考えれるなら、私達はこの村にとどまる必要はないですよね?

 ここから徒歩で数日かかるとはいえ、他にも開拓村はありますし。

 ゴブリンの巣の繁殖期程度で流通が止まる村なら、別の村での活動を視野に入れていいかもしれませんね」

 

自分の発言にヴァルターの追撃、さらにはベネちゃんのトドメにより、涙目になるシルグレット。

 

「そういえば、村の人に聞いたんですけど、ここから街道に沿って東に行けば、別の開拓村があるそうですよ」

 

「ああ、僕も聞いたよ~。

 たしか、もう村周りに防壁もできている立派な村、いやもう町なんだっけ?

 そろそろ僕もな~、ちゃんとしたところで剣を研いでほしいから、潮時かなぁ~」

 

シルグレットのしょんぼり顔をよそに、村人から集めた情報をもとに、どこの街に行くか雑談し始める2人。

まぁ、確かに2人の気持ちもわかる。

自分も履行されない様々な利権や特典よりも、多少遠くても別の村に行って新しく冒険者として再スタートするのも、イイかもと思えてきている。

 

「……う~~ん、でも私としては、この程度の村だからスルーされてるけど、死霊術師だからなぁ。

 ヘタに大きな村に行くと面倒ごとがなぁ」

「あ~」

「あ~」

 

同情してくれる仲間の2人と、ちょっとだけほっとした顔をするシルグレット。

もっとも、自分は一応死霊術以外も使える上、魔導学園に戻りさえすれば生活できないわけでもない。

まぁ、しかし後者は恥の上塗りになるからまずやらないが。

 

「でもまぁ、こんな状態だと、まともにこの村にいる理由がないのも確かだよね。

 私はよくても、ヴァルターやベネちゃんは、かわいそうだし」

 

「う、うぐ!

 お、俺もできるなら何とかしたいが……

 いかんせん、人手とゴブリンの巣がな。

 ……せめて、ゴブリンの巣穴になるあの洞窟を埋め立てることができれば……」

 

依頼書などとにらめっこしながら、うんうんと悩むシルグレット。

そんなシルグレットに苛立ちと同情を混ぜた視線を送る両名。

聞けばゴブリンの繁殖期もいつ終わるかもわからないとのこと。

ならば、この状況を打開するには多少強引な手段をとるべきなのかもしれない。

 

「……ねぇ、シルグレットさん。

 ちょっと強引な方法だけど、この状況を何とか出来るかもしれない方法がある!

 ……と言ったらどうする?」

 

「……聞かせてくれ。

 どうせこのままじゃ、この村が四方から隔離されて死んじまうんだ。

 こうなりゃ、邪神でも悪魔でも、何なら屍鬼に手でも借りてやる!」

 

かくして、自分はシルグレットにその作戦を伝える。

その作戦を聞いたシルグレットは当然はじめは苦々しい顔をしたが、作戦を行うにきちんと作戦で出た被害に責任を負う事と村から逃げ出さないことを条件に、その作戦を実行することを許可されたのでしたとさ。

 

 

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