不届き者のカルト(壁尻)が発生してしばらく後。
初めから騒動まみれではあったが、壁尻をさらし者にしてからは直接的な妨害被害はぐっと減り、ポータルの稼働や人材誘致も成功。
教会の建設は順調だといえるだろう。
「あくまでこれは、教会建設のために、間接的に必要な資材だから!」
「無人の教会とかそれこそ、問題だからね!
そんな人材確保と維持のため必要なこと!!
ゆえにセーフ!」
それに付随して、開拓村及びストロング村の開発も爆速で進んでいく。
木材や資材だけではなく、人材まで高速で動けるため、資材の循環は通常時とは比較にならず。
さらには、資材を供給する基になる【ダンジョン】までもが活性化しているのだ。
「どうやら、月女神様も神殿建築には好意的なようでね。
おかげで、いつもよりも試練となる魔物こそ多いけど、それ以上に薬草類に資材となる石材のドロップも大量に発生しているのよ。
それこそ、熱心なニーラ様信者やダンジョン攻略が趣味な冒険者が、頻繁にこの村に訪れるほどよ」
「いや、もちろん、神殿の建築は忘れてはいないぞ?
でも、人々を救うため、家の建築も進めなければならないからな!
どちらも並行してやっているというわけだ」
おかげで、兄弟子の建築スケルトンも、人目を気にせず全力稼働。
慣れた人にとっては牧歌的な光景、見知らぬ人からは地獄のような光景が繰り広げられる今日この頃。
そして、そんな状態で唯一の懸念点が、人手不足だ。
残念ながらここがいまだ僻地であるのには変わりないし、たとえ仕事があっても、人が来るまでに時間がかかる。
「それに相変わらず、クソみたいな吸血鬼や盗賊、魔物も多いからね。
おかげで、護衛任務だっていつだっていっぱいいっぱいさ」
「最近だと件のカルトが遠方からの妨害というので盗賊に肩入れしているらしい。
獣人の盗賊や獣人の奴隷を引き連れた盗賊が増えているとか、そういう話もよく聞くよ」
護衛任務で大忙しなヴァルターが、汗を拭きながらそういう。
そんなカルトの地味な嫌がらせを受けつつ、人材不足が深刻な中、その問題をある程度解消する話がやってきたわけだ。
「ここに、同胞がいると聞いてやってきました。
どうか我らの話を聞いていただきたい」
そうして現れたのは、人であって人でない種族、獣人。
そんなケモミミがあったりなかったりする集団が、この村へ集団で移住しに来たのでした。
☆★☆★
そして、ギャレン村の自宅にて。
「反対」
「反対」
「え~」
獣人の集団が新たにこの村に住み着く。
おそらく獣人についてそれなり以上に詳しいであろうベネちゃんとマートに、そう説明した時の反応がこれであった。
「そ、そもそも、獣人は基本的に自身の素性を隠して生きていくんですよ?
それなのに、それをわざわざ公表して、集団でやってくるとか……。
た、多分ろくでもない連中に決まっていますよ」
ぐるぐると喉を鳴らしながらベネちゃんが文句を言う。
でも、頭から獣耳をはやしながらそう言われても、微塵も説得力がない件について。
「……まぁ、こういう言い方はあれだが、私も反対だな。
獣人は基本的に呪われた種族であるのは間違いないからな。
それでも邪教信仰が多いのは間違いない」
「せめて、そいつらの信仰が何かを確認してからほうがいいっていうのが本音だな」
マートも同じはっきりと見てわかる獣人でありながら、彼女自身も反対なようだ。
個人的には同じ獣人同士の人がいたほうが居心地がいいかもと思ったのだが、どうやら彼女たちに限ってはそうではないようだ。
「……正直、お母さんの仇ですので。
その娘含めて」
まぁ、ベネちゃんに関しては確かにそうである。
というか過去を考えると、獣人スレイヤーになっていてもおかしくなさそうだし。
なっていないのは、彼女の母への愛ゆえか、それとも性格によるものか。
「私は言うほど獣人は嫌いじゃないぞ?
むしろ、同じ強き血として同族意識はもてる。
……が、わざわざこの村にやってきて
一番に、イオのところに挨拶しに来てるっていうのが、いやな予感がするからな」
「……あいさつしに来た時、なにかこう、特徴的なことはなかったか?」
「いや別に?しいて言うのなら、やけに顔のいい男獣人が多いのと……。
ああ、後子供の獣人もそこそこいたかな?
個人的には、女の子獣人がもっと見たかったけど、やっぱり警戒されていたのかねぇ?
ルドー村長からは、むしろ、女獣人が多かったって聞いたけど」
自分の発言を聞いた瞬間、明らかにベネちゃんとマートの警戒が一段階上がったのを感じた。
耳がピンと立ち、毛と魔力が逆立っている。
「イオさん、今度獣人のその集団に会うときは、私もつれてって、いいね?」
「え~、でも……」
「……」
「うん、わかったよ」
一瞬とはいえ、涙目でこちらに訴えかけてくるのは卑怯だって。
「……少なくとも、この家に上げるのはやめたほうがよさそうだな」
「なんで?」
「えー、あー……。
そ、そうだ!ほら、私って邪獣人だろ?
この邪獣人の呪いは同じ獣人なら、より感染しやすいんだ。
もちろん、この家の結界は信用しているが、万が一があるだろ?」
「あぁ、そっか。
それに、向こうからしても、この家の結界云々は知らないだろうからねぇ。
マートがいまだ邪教徒なことを考えて、礼節的にもやめたほうがいいかぁ」
マートが邪教徒である自身の素性を合わせて、今後の彼らの対応の仕方について、助言をしてくれた。
マートって、結構尊大で大雑把なイメージがあったけど、意外にこういう繊細な気遣いもできるのか。
獣人についてあまり詳しくないが故、色々とありがたいのが本音だ。
そのマートの発言に、何故かベネちゃんもにっこり顔であり、マートも誇らしげである。
やっぱり、姉妹仲はいいんだな!
「で、結局どうすればいい?」
「まぁ単純に、獣人だからって、優遇しない。
あとアイツら、場合によっては恐喝とか誘惑とかもするからその辺を気を付ける。
そんな感じでいいだろ」
「あ、あと、件の獣人の集団、私もチェックさせてください!
べ、別に深い意味はないですけど」
色々ベネちゃん姉妹から注文こそ受けてしまったが、獣人を街に受け入れること自体はおおむね成功。
そして、後は最後にベネちゃんが件の獣人を軽くチェックするという結論にいたった。
「……でも、ベネちゃん。
本当にいいの?」
「……思うところがないといえば嘘になりますが、それでも、前を向いていかなきゃいけないから。
それに、今はイオさんやヴァルターのように、私の素性を知ってなお、受け入れてくれる、そんな家族がいますから、ね!」
過去を乗り越えて、先に進む。
そのような決意をした彼女の顔は、とても凛々しく、また美しいものであった。
☆★☆★
なお、後日獣人集団と再面会した際。
「あ、あの獣人、元教団員だ」
「え」
「うん、あいつは、私たちの母さんを、教化と称して肉体的にも精神的にも虐待していたクソ野郎ですね。
肉体的にも性的にも」
「……やっぱり今すぐにも殺しておくべきかぁ」
「い、いやいやいや!流石にこの場で殺すのはやばいでしょう!」
「い、一応子供や無関係な獣人もいるから、な、な?」
標的を呪術で速殺しようとするも、マートとベネちゃんに食い止められてしまった。
その後どうやって殺すかと考えるも、それよりも先に件の獣人とその取り巻きは、村で恐喝や窃盗などの複数の犯罪を実行。
かくして、自分が手を下すよりも先に、ルドー村長や守衛によって、逮捕、および処刑されてしまうのでしたとさ。