犯罪獣人の処刑、それに関してはそれなりにすんなりと事は進んだ。
もちろん、犯罪獣人側も、逮捕や処刑の間際に言い訳やらの悪足掻きを色々やったが、それでも結局決定は覆らず。
「くくく、しかしそんなことを言ってもいいのか?
貴様らがそうはいっても、下々がその考えに従うかな?」
さらには、獣人側から村人へ懐柔策を行う宣言などもあったが、実際に村人が懐柔されるようなことは無かった。
ましてや犯罪獣人が脱走したり、まして村の人が懐柔されるような事態なんて発生しなかった。
「っふ、カワイイ女獣人の色仕掛けでやられそうになったが、イオ様のおっぱ……威光を考えれば、無事に耐えられたぜ!」
「甘いな、俺はお前と違って、大人だからな!
獣人を買うのはありだけど、それで不正を働いたら、二度と相手しないとイーパちゃんに言われたからあきらめたぜ!」
「ふん、2人とも実に甘ちゃん。
俺は、実際にとある獣人の彼女と一夜を過ごしたが……その時に獣化状態で噛みつかれたからな!
治療薬が欲しければ、言う事を聞けって脅されて、流石にやべぇと気が付いたぞ!
今度からおとなしく、プロにだけ相手してもらうわ」
「「何やってんだ、お前!!」」
なお、一部の守衛の中には、軽微ながら獣人に嚙みつかれたうえで呪術を使われ、ほんのり呪われた人もいたが、それもすでに治療済み。
さらには、獣人のこの悪事はどうやら、村長だけではなく娼婦ギルド側も警戒していたらしい。
なので彼女たちは、獣人が来た時点ですでに村長や守衛に忠告していたそうだ。
「すいません、イオ様。
お気に入りの嬢に、治療済みの証明貰うまでNGもらっちゃったんですけど。
ボスケテ」
「そこで兄弟子ではなく、私のほうに頼みに来るクソ度胸に免じて。
今回は特別に聖痕による浄化と電気魔法による殺菌殺虫消毒もしてあげましょう」
「ちょ、ま、前半はいいけど後半は……アババババババ!!」
かくして、少なくともギャレン村では獣人がそれ以上暴れることも悪だくみすることもなく、問題は終了。
もっとも、そのせいで問題のない獣人までギャレン村に居辛くなり、特に何かしらの繋がりがあった獣人は逃げるように別の場所へと避難。悪事は働いていないどころか犯罪獣人とは関係すらない獣人も、自然と新開拓村の方へと移住、あるいは生活の中心を移すことになるのでしたとさ。
「それはそうと!
私たちは何も悪さをしない獣人ですが仕事がありません!
だから、夜の仕事をしようと思うので、獣人化の予防薬を下さい!」
「……で、お布施は?」
「ふふふ、あるように見える?」
「……」
「そ、そんな目で見られても!な、なら勝手に夜のお仕事をやっちゃうよ?
それでもいいの!?」
「……」
「……ごめんなさい、前借で勘弁してください」
とりあえず、左手の紫色放電と右手の浄化入り放電のおかげで、獣人の移民団の説得は成功。
前借料金と、定期的な教会での奉仕活動を対価に、獣人化予防の結界とお守りを複数用意してあげた。
でも、彼ら彼女らの面倒くささから、なぜ一部の教会関係者や領主が獣人というだけで彼らを差別するのか、何となく理解できてしまったのであった。
☆★☆★
そしてそこから、さらにしばらく後。
獣人や新規冒険者、さらには晒壁尻騒動もある程度収まり、ギャレン村含めた3つの村も健全な活気を取り戻した。
私も、7つの教会全ての図面が完成し、教会建築関連も一区切り。
もちろん、完全にフリーハンドになるわけではないが、後は大工による建築がメイン。
祈祷業務やらもあるが、それだって、無数に招集した聖職者群にある程度やり方を教えてあるし、自分の手ですべてをやらなくていいのはそれだけで気が楽であった。
「だからこそ、のんびりとしようと思ったんだけどなぁ……」
しかし、それでも話はそれだけで終わらず。
特に、複数の宗派の聖職者が集まるなんて、それこそ、面倒ごとの前触れであるわけであり。
今回も、ルドー村長から、新しく聖職者が来たので挨拶してほしいと言われたわけだ。
「というわけで、是非俺と一緒に!
あの獣人とかいう汚物を、いえ、汚物候補を一緒に消毒しようぜ!」
「とりあえず、お帰りはあちらで」
さて、今回やってきた聖職者もまたずいぶんとあれな人物であった。
挨拶するや否や、獣人たちへの敵意を隠さず、共同で消毒作戦を提案する危険人物であった。
「あ、名乗りが遅れたな!
私は、元王都の善神大神殿太陽寮出身、現イラダ地方首都『ブラック』太陽神大教会所属。
クミ・ムッカイっていうもんだ、とりあえず、よ・ろ・し・く!!」
口調は粗雑で、聖職者とは思えないエネルギッシュな雰囲気に、ラフな格好。
しかしながら、その大きな胸から彼女が女性であることは明らかであり、さらには胸元や服装には太陽をモチーフにした装飾と二輪の聖印がつけられていることから、彼女が太陽神神官の二輪神官なのだろうことがわかった。
自分クラスにでかい胸は久々に見たな。
「ん?胸が気になるか?
なら触ってみるか」
「……いいの!!??」
「代わりにそっちも触らせてくれたらだけどな!」
「……なら結構です。」
というか、彼女の存在やオッタビィアも自分や彼女ほどではないが胸が大きいことを考えると、もしかして彼女が来たのも、ルドー村長の趣味の可能性があるのか?
いや、流石にそれは邪推か。
「あ、先に言っておくと、一応私はあくまで、首都の教会からの連絡役ってだけだからな。
あまりここに長居する気もないし、仕事が終わったら首都のほうに戻るつもりだ」
「……連絡というのは、ルドー村長に向けてってこと?」
「それもある。
が、それ以上に、今回の一連の騒動でようやく王都にある太陽神教会にいる司祭たちも、あんたに連絡を取りたくなったって話だ」
クミ司祭は、手を組みながらこちらを見やる。
どうも厄介ごとの気配しかない。
「まず大前提として聞くが……。
あんたは、獣人にどこまで肩入れするつもりだ?」
「どこまで、というと?」
「ああ、言い方が悪かったな。
実は今、首都やその周辺では、獣人による調略やら感染が進んでいてな。
もちろん勢力こそまだ小さいが……それでも彼らの存在は首都でも大いに問題になっている。
なぜなら、奴らの中心には『邪神教団』と呼ばれる邪神を信仰する集団がおり、その存在は当然、太陽神の司祭である私達には許せないものだからだ」
クミ司祭が、彼女の聖印を見せつけながらそういった。
そして、彼女の話から同時に、いくつか気になることが聞こえてきた。
「……なら、あの先日来たカルティストは……」
「もちろん、私やその知り合いが、直接それに関わっているわけではない。
が、首都にいる太陽神教会の大司祭の一人が、このイラダ地方にいる獣人を
そんな話も聞いたりしているな」
「……」
「あ、一つだけ、安心していいというのには違うが……。
先日、この村で獣人が処刑されただろ?
その話を聞いて、首都の太陽神教会でもこの村が完全に獣人に乗っ取られているわけではないと判断してな。
だからこそ、件の妨害も
実に遠回しな言い方だ。
つまりは、このカルトと通じている司祭的には、先日の襲撃やらなんやらはあくまで獣人云々が原因であり、それ以上のものではない。
互いに不幸なすれ違いで起きたものだと言いたいらしい。
「でも、それだけじゃないんだろ?」
「……」
「明らかにポータル周辺を執拗に狙う行動。
獣人を言い訳にしているにしてはやけに殺意が強い襲撃。
そして、こちらの聖印を見ても、なお否定してくるほどの怪しげな信仰。
あの行動を獣人排除のためだけ、というには少々乱暴が過ぎる。
それこそ、別の思惑があると確信できる程度には」
自分の発言に、クミは気まずそうに視線を逸らす。
しかし、こちらをもう誤魔化せないことを悟り、彼女は溜息を吐きながらこう答えるのであった。
「そのことについて、詳細に話すと少々話が長くなるんだが……。
かまわないよな?」
「いや、かまうし、この後別の仕事があるから。
できるだけ手短に、でもわかりやすく頼む」
さもあらん。