TS転生ド田舎ネクロマンサー聖女   作:どくいも

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第96話 豚狩り

――さて、あれからさらに幾日か。

 

大災害により、教会という都市防衛システムが機能不全に陥った首都は、当然そこに住む住民にある程度の変化を強要することになった。

 

例えばそれは、単純な防衛力の強化、例えばそれは、転職やインフラの安定化、例えばそれは、新たな聖職者の誘致など、さまざまである。

 

――しかしそれでもその中で一番初めに来るのは、移住や引っ越しであるのは間違いないだろう。

 

なぜなら、教会の機能不全とは、それはすなわち都市の防衛力兼衛生兼治安すべてを担っている機能が破壊されたといっても等しく、もちろんそれだけで都市がつぶれるとまではいかないが、それでも都市機能の大幅低下は避けられないわけで。

 

だからこそ、その土地にそこまで執着のない人はもちろん、たとえ執着があったとしても、余裕さえあれば引っ越したい。

しかしそれでも、この地は野生の魔物が多いわけで、移動もそう簡単でもなく。

そもそも周辺の村々は未だ開拓途中の村ばかりなため、移動先にすら難儀する。

それが今のイラダ地方の首都【イーゴ】の状態であった。

 

「大教会自体は触れたくないし、関わりたくない。

 でも、そこに住む住民を見捨てるのは違うので、ある程度の援助はしていこうと思う」

 

「でしょうね」

 

だからこそ、このイラダ地方の開拓及び治安の一端を担うギャレン村としては当然、イーゴに対して支援すると村長であるルドーが宣言したのは至極自然な流れであり。

 

「それ以上、ただでさえ、難民や移住者がな。

 もう、あの祭り以降、勝手に住み始める奴らが後を絶たないし。

 一応炊き出しをしているし、仕事自体も多いからすぐに何か問題が発生するわけじゃないが……。

 一部閉鎖的な人は当然、嫌がっているし、そもそも家が足りなさすぎるからな」

 

この村、いつも家不足に陥ってるな。

いやまぁ、今は教会建築のおかげで大工が無数にいるため、時間さえ経過すれば住宅不足は解消するだろうが。

 

「つまりは、今もただでさえ難民でパンク状態なのに、これ以上首都からの難民が来られても困る。

いや来てもいいけど、せめて少しでもこっちに来るまでに時間を稼いでほしい。

 そういう話というわけだね?」

 

「そうだ。

 というわけで、今回は向こうへの偵察も兼ねて、そこそこの規模でイーゴに支援部隊を送るからな」

 

「そして、間違いがあると困るから、今回はイオなどの有能な冒険者や聖職者も、護衛として向かってほしい。

 ……頼めるか?」

 

かくして、こちらに腕を組みながらそういうルドーに対して、笑顔で返事を返すのであった。

 

 

★☆★☆

 

 

「と、いうわけで、首都に行く前に手土産代わりに、豚狩りをはっじめっるよ~!!」

 

「「「「「おお~~!!」」」」」

 

というわけで、場所はギャレン村郊外の不帰の森。

今現在、そこでは無数の冒険者を引率しつつ、狩りを行っていた。

 

「と、いうわけで、今回は元カルトというか、背信者というか。

 まぁそういうのが、この辺に豚になって結構な数潜んでいるっぽいので。

 首都への移動前にここで回収してあげようかなって」

 

なお、今回の豚狩りは当然捕食目的ではないため、一応武器は網などの非殺傷道具がメイン。

本来なら、呪術や魔法で捕まえたほうが効率がいいんだが、あいつら聖痕がついているせいで、呪術も奇跡も効きにくい。

実にめんどくさいと言わざるをえない。

 

「イオ先生~質問です。

 なんでわざわざ、件の豚達を生きたまま捕まえる必要があるんですか?」

 

「ばかやろう、やっぱあれだろ。

 最近は豚による畑の食害が急にひどくなったからとか、そういうのだろう」

 

「え?そこは生け捕りのほうが、捌くとき、おいしく食べられるからとかでは?」

 

「死霊術の素材でしょ!

 私知ってるんだから!」

 

こいつらは、私を何だと思ってるのだろうか?

一応、なぜ件の豚を生け捕りにするかといえば簡単に言えば保護のためである。

おそらく今回の騒動では、悪人とはいえ、それなり以上の人材が豚化あるいは豚の獣人化をしてしまったのは間違いなく、ともすれば、このまま放置すれば豚のまま死んでしまう元人間が大量に発生するのは目に見えている。

なので、せめて首都に帰る前に、ここでできる限り豚化した人たちを回収し、首都に送り返す事ができれば、少なくとも恩赦であるダンジョン攻略中はすぐに死ぬ事はないだろうし、ワンチャン元に戻ることができるかもしれない。

もちろん、最終的には手遅れになる可能性も十分にあるかもしれないが、それでも生きている間に罪を償える機会があるのなら、このあたりの治安改善を含めて、回収してやるのが慈悲というものだろう。

 

「……いや、流石に甘すぎでは?」

 

「失礼ですが、イオ様は死霊術師で間違いないですよね?」

 

「甘ちゃんすぎて不安になってくる。

 絶対土下座したらやらせてくれる」

 

自分の反応に対してなぜか多くの冒険者たちの反応は微妙。

なんでや、開拓地は基本助け合いみたいなもんやろ。

自分の意見には微妙な反応ではあったが、報酬をはずむといえばイエスと言ってくれるのが冒険者のいい所。

 

「でも、殺さず、傷つけず豚を捕まえるのって難易度高くね?」

 

「しかも、豚が怪我をしても、本当の豚なら奇跡魔法で治せたりはするけど……。

 確かアイツら、聖痕とやらのせいで回復の奇跡が効かないんだろ?

 これ、無理じゃね?」

 

だが、それと同時に件の豚の捕獲が思ったよりも難しいということが、行っていくうちに判明する。

というのも、そもそも豚という生き物自体それなりに力の強い生き物だ。

しかも今回はむやみに傷つけてはいけないという縛りつきなのだ。

その難易度は、少なくとも初心者や駆け出し冒険者が簡単にできるものではない。

 

「しかも、半端に人間だったころの記憶が残っているのか、普通の獣用の罠が効かないんだよなぁ……。

 何かいい方法はない?」

 

「いや、人間のころの記憶が残っているのなら、呼びかけたらいいのでは?」

 

「あ……」

 

というわけで、途中からは物理的にではなく、呼びかけにより豚を集めることに切り替えてみる。

こちらの方法はさっきの物理的な方法よりも効果はあるようで、それなりの数の聖痕付きの豚の捕獲(保護)に成功したのでしたとさ。

 

「でも逆に、逃げる奴らもいると」

 

「多分、奴らは捕まったら殺されると思ってるのでしょう」

 

「首都に送り届けるって言ってるのに?」

 

「いや、普通に考えて元盗賊とか、元背信者とかなんですよ?

 騙されて、処刑されると思うのが普通でしょう」

 

さもあらん。

 

 

 

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