無惨の忠臣   作:十二茶柱

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 この場に恋雪が居る理由を描写するために『狛治と忠臣』を先に投稿していましたが、今のところ時系列的には(完全過去回想場面を除き)『2』『4』『5』『1』『3』の順になっております。
 つまり『5』の現時点ではまだ、太陽克服の糸口は掴めていません。
 


紫と童磨、カナエと珠世(2)

 

「──で、貴様らは何故茶会を始めている……? 童磨の申請は却下した筈だが」

「は。僭越ながら、私の血鬼術で敵意が無いことを確認した上で事情聴取を行い、拷問するより効率的に鬼狩りの情報を引き出すことが可能だと判断したためです」

「……そうか。お前がそう判断したなら、それでいい」

 

 狛治の言葉であっさり矛を収めた紫を見て、カナエは肩の力を抜いた。

 そんなカナエに、珠世は音に出さず『ほ』『ら』『ね?』と言って、笑った。

 

 そして紫は空いていた椅子に腰掛け、恋雪がカップを用意し紅茶を注いだ。

 

「童磨、再生を許可する。お前も席に着け」

「……御意」

 

 童磨がカナエを連れて来てから、四半刻ほど。ようやく全員が着席した。

 紫はカップを傾けて一息つくと、狛治の方に向き直った。

 

「それで、何か有益な情報は得られたか? 狛治」

「は。この(むすめ)、どうやら例の『藤の毒』を使う者の姉らしく……」

「ほぅ。正直今更柱の一人なんぞ捕まえたところで、何か得られるとは思っておらなんだが……存外に有意義な茶会になりそうではないか。

 すまなかったな、童磨。貴様が此奴を連れて来たのはコレが理由だったか」

 

「いえ、その()が『鬼と仲良くしたい』と言っていたので」

 

「……は? 貴様、何を言っておる? 其奴、鬼殺隊の柱ぞ? 本気でそんなことを願う因果があるとでも────」

 

 ……紫の能力は『過去改変』にばかり目が行きがちだが、『過去観測』と『擬似的な未来視』も、忘れてはならない強力な能力だ。

 

 彼女は観た。カナエの因果を。

 

「……いや、そうか。貴様は本気なのだな。ならばこれまで通り励むが良い。さすれば、貴様の夢は叶うだろう。()()()()()()()()()()()()

「……! 本当ですか!?」

 

 星のように眼を輝かせる彼女の──その身に纏わり付いた、猛毒の因果を観た。

 

 

『姉さんに手を出したら、殺す』

 

 

「あぁ、本当だとも。

 ──だが、勘違いするでないぞ? 貴様は家に帰ったら、真っ先に妹へ感謝しておけ。妾が認めたのは貴様ではなく、貴様の妹だ」

 

「……? えっと……妹に、会ったことがあるんですか?」

 

「いいや? 妾が一方的に知っておるだけだ。が──()()()()()()()()()()()()()()()と思っている」

 

(毒に精通しているということは、薬学に精通しているということ。その上で、()()()()()()()()()()()()()()()()()()ほどの因果……!! ようやく見つけました。行き詰まった現状を打開し得る者……!

 ────絶対に、何としてでも手に入れます)

 

 

 この時点で紫は、完全に意識を『非戦闘時』のものに切り替えた。

 

 ──瞬間、彼女の瞳を見ていたカナエは息を呑んだ。

 

 

「…………『月模様の瞳を持つ鬼とは戦っちゃいけないよ』」

 

「……何?」

 

「私、お館様から聞いたことがあるんです……初めての柱合会議、柱の就任式の時……終わり際に、私だけ残るように言われて……『もしかしたら、仲良くできる鬼がいるかもしれない』と──貴女のこと、だったんですね」

 

「…………ふむ、なるほど。こちらの立場には初めてなったが……あまり良い気分ではないな。一方的に知られている、というのは」

 

 そして不機嫌そうな顔のままカップを傾け、一息。

 

「まぁいい。何はともあれ、妾は貴様の願いを聞き届けた。まずはそれを、言の葉のみではないと証明せねばなるまい」

 

 そう言うと紫は、爪で指を軽く切って血を流し──半月状の櫛を作った。

 

「それは……?」

「本来殺し合う仲の我らが『仲良く』しようと言うのだ。まさか今回限りで対話が終わるとは思っておるまい?

 ──コレは、『護符』だ。宿っておるのは神仏の加護ではなく妾の呪いだが、そこは気にするな。

 身の危険を感じたら、この櫛の歯を折るがいい。()()()()()()()()()()()()

 

「ぇ──」

 

 そうして『受け取れ』という言葉と共に無造作に放られた(それ)を、カナエは割れ物を扱うように両手で受け止め、胸に抱いた。

 

「──大切に、しますね」

 

「フン。そう有り難がるな、むず痒い。そも、その程度の代物はこの場に居る全員に持たせている」

 

「ふふ、お揃いですねカナエさん」

「普通の櫛としても使えますけど、日光には当てないでくださいね」

 

「俺のは扇子。カナエちゃんをここに呼ぶ時使ったから、骨が一本折れてるけどね」

 

「……俺のは数珠だ。引きちぎるか珠を砕いて使う」

 

「…………」

 

 それはもう、部下想いというか、過保護というか……身内に対する、愛が重い。

 カナエはこの時点で、心の底から珠世の言葉が本当であると納得した。

 

(悪ぶってるだけの、良い()なのね)

 

 まるでどこかの『傷だらけな誰かさん』みたいだ──と、彼女はなんだか可笑しくなって、笑った。

 

 

「……えぇい、なんだ貴様? その生暖かい眼は……!」

 

「紫様、そろそろ素を出していいんじゃないですか? カナエちゃんもすっかり警戒心を無くしたみたいですし、もういいと思いますよ?」

 

「──口の利き方に気を付けよ、童磨。今一度床を舐めたいのか貴様」

 

「カナエさんカナエさん、紫さんはこう見えて大の猫好きでして。ウチの茶々丸()の前だと──」

 

「それ以上喋ったら天日干しにしますよアナタ!?」

 

 紫は顔を真っ赤にして円卓を叩き、珠世は口元を隠して優雅に笑う。

 

 この気がおけないやり取りが、普段の彼らなのだろう。

 その様子は、鬼殺隊の仲間達と過ごした平穏と……何も違わないもので。

 

 あぁ。彼女達となら、きっと分かり合えると──カナエはそう確信するのだった。

 




 
 *


 ちょっといつもより短いので、オマケです。

 紫→上弦の印象。

 黒死牟:規律は自然。よく解っている部下その1。お気に入り。

 童磨:ムカつくが、決して嫌いじゃない。『感情』『執着』を得た後の伸び代に、高い期待を寄せている。育てがいがあるのですね。

 狛治:真面目な働き者。よく解っている部下その2。お気に入り。

 半天狗:…………ロクな死に方をしないぞ? 貴様。(『死にたくない』という気持ちは解るものの、度が過ぎる。あんまり好きじゃない。別に能力もそんなに優秀じゃないし)

 玉壺:『ぶっ殺す』と思った時には既に行動が完了していた。(命を粗末にする奴は嫌いだ)(何気に紫が捕食せずに『ただ殺した』唯一の相手)

 妓夫太郎:よく知らない。が、無惨様が気に入っているので優しくする。実は数字が伍になってたりする。(見た目? わたしにとって男の美醜は『無惨様』か『それ以外』ですので気にしません)

 梅:貴重な情報を取れる優秀な娘。油断しやすいのは玉に瑕だが、空間系血鬼術も優秀。超お気に入り。数字は末席のままだが、上弦の中では一番期待している(強さについては『既に過剰戦力』故にあまり評価していない)(地味に『紫が気に入っている』ので無惨からの評価も高くなっていたりする)


 オマケのオマケ。

 恋雪:風(気圧操作)の血鬼術を使う。実は血を飲むだけで、一度も人を食べていない。(狛治は剣道道場の死体を四人分喰っている) 聞き上手な可愛い娘。お気に入り。


 ??&??

『──人の親というのは子を愛するものです。だから親は子がいなくなったら泣き叫ぶし、名前に〝芥〟なんて文字は入れないんです。
 そして、鬼は……どうしようもなくお腹が減ったら、それがどれだけ愛しい者でも、襲って、食べてしまえる生き物です。……覚えてはいないのですが……おそらくわたしも、そうしたのでしょう?
 ですのでこれは、ごく自然な状況です。何も不自然なことはありません。
 ですが…………これきりにしてください。どうか、わたしの前で──〝真っ当な親子〟を、引き裂かないでください』
 
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