祭とのデートも終わり、夜になった。今からは夜の部活なのだが、部室の中は凄い険悪というか、少し嫌な空気が流れている。
俺の座っているソファーの右側には祭が、左側にはいのりが座っている。祭は心配そうにこの状況を見ており、俺の服の袖を掴んでいた。それに対して、いのりは冷静だった。リアス先輩の眷属全員も、この様子を静かに見ている。
朱乃さんは何時ものニコニコ顔で、ソファに座っている小猫は無表情でお菓子を食べ、木場はいつもの定位置の壁に寄りかかっている。
「イッセー、諦めなさい。悪魔が堕天使に手を出すことがどういうことか、わかってるわよね? 手を出したら、戦争にまた戦争に火がつくかもしれなのよ?」
「わかってます・・・・・・でも、アーシアは友達なんです!」
その原因は、一誠とリアス先輩の喧嘩であった。今も目の前で、一誠とリアス先輩の言い合いが行われている。何でも、俺と祭がデートしている間に、アーシアが堕天使に連れて行かれたそうだ。その時はアーシアと一誠で遊んでいたらしい。
「兎に角駄目よ! 堕天使のところに乗り込むなんて、私が許さないわ!」
「じゃあ、俺は部長の眷属を辞めてでも行きます! それなら、部長にも迷惑がかからないでしょう! それが駄目なら、行かせてください!」
凛とした姿勢で言い放つリアス先輩に、一誠は眷属を辞めてでも行くと言い出した。隣にいる祭は遂におろおろし出して、リアス先輩と一誠を交互に見ている。それに反して、俺は至って冷静な態度でソファーに座っていた。
いのりも冷静だし、特に驚くことなんてない。黒歌の件もこう言うのが糧になったんだ。もし一誠がはぐれになったら、黒歌のようなはぐれ悪魔になるだろう。・・・・・・いや、黒歌はもうはぐれじゃない。俺の使い魔だったな・・・・・・。
「それもダメよ! 私の眷属からはぐれ悪魔が出るなんて、前代未聞だわ。グレモリー家の名を汚すのは、許されることじゃないわ・・・・・・これ以上言っても無駄ね、私は用事が出来たから行くわ。朱乃、行くわよ」
「はい、部長」
リアス先輩はソファーから立ち上がり、朱乃さんがその横に立つ。その時、俺の隣にいたいのりも立ち上がって、リアス先輩達と並んだ。いのりも用事かな? 俺がそう思っている間にも、リアス先輩達といのりは魔法陣で消えた。
その後、部室に残ったのは俺と一誠、小猫に木場、あとは俺の横に座っている祭だけだった。一誠は直情型というか、真っ直ぐだからな。多分、一人でも行くだろう。
俺がそんな事を思っていると、一誠が歩き出して、部室から出る扉に向かった。思った通り、一誠は一人で行くつもりのようだ。
「待ってよイッセー君・・・・・・一人で行くのかい?」
「だって、仕方ねえだろ。俺が行かないと、アーシアが・・・・・・アーシアが一人になっちまうんだ」
突然、出て行こうとした一誠に木場が声をかける。それに答える一誠の表情は真剣そのもので、誰も止められる奴はいないだろう。
「何も一人で行くこと無いじゃないか。そうだろう? 桜歌君」
「最初からお前、行くつもりだったんだろ」
俺に問いかけた木場に、俺は軽く返した。表情は崩さないままで、笑顔でいる木場は軽く頷き、俺から目を離した。
「木場・・・・・・それに桜歌まで・・・・・・ありがとう!」
「・・・・・・喜ぶのはまだ早いです、礼を言うなら助け出してからにしてください」
お礼を言う一誠に、小猫が自分も参加する風に言う。何時も通りの無表情だけど、仲間を見捨てるような事を考える子では無いからな・・・・・・というか、優しいのであろう。
「ありがとう、小猫ちゃん!」
「・・・・・・その代わり、連れて帰ってきたら桜歌先輩の作ったお菓子でお祝いです」
「うん、わかった!」
あれ? 条件付きなの? しかも、俺がやるのか・・・・・・まあ、いいんだけど。せめて一誠は勝手に返事をしないでくれ。作るの俺だよね?
「はあ~、わかったよ、作るよ」
「桜歌って・・・・・・大変なんだね」
「いや、そうでもないよ。これより地獄を知ってるから」
「地獄・・・・・・?」
祭が同情してくれて、少し嬉しい。だがコレくらいは序の口というか、軽すぎる方なんだよな。俺の地獄発言に、祭が『どういうこと?』と言う風な顔をしているが、教えないでおこう。
それから俺たちは各々の武器を手に、廃墟? のような教会の前に来ていた。俺の右手には、木場から借りた剣が一本ある。それと同時に、左腕には、祭から取り出したヴォイドの《すべてを癒す包帯》が巻き付けられていた。
「ところで、桜歌君。君は何で小猫ちゃんからヴォイドを取り出さないんだい? 小猫ちゃんのヴォイドは、取り出せるはずだよね?」
「うん、取り出せるよ。でも・・・・・・小猫のヴォイドは、何か違和感がするんだ。このまま使ったら危ないし、内容とか解るまでは、使わない方がいいと思うんだ。それに、祭にそれが問題で怪我して帰ったら何言われるかわからないよ」
俺は木場の質問を返して、歩き続ける。木場の言ったとおり、俺は小猫からヴォイドを取り出していない。初めて小猫からヴォイドを取り出したとき、違和感があった。命を懸ける場では、そんな未知のものを持って来たくないという理由だった。その所為で、他のみんなが傷つくのも、あまり見たくない。
俺達は一誠を先頭に歩き続け、教会の目の前まで来た。近づけば近ずくほど、教会の廃墟感が大きくなった。それに、中から怪しい音がする。周りは木々を切る風の音が聞こえるが、俺の耳は正確に中の情報を読み取ろうとしている。
「来てくれてありがとう、みんな! 悪いけど、ここから先も付き合ってもらうぜ! じゃあ、入るぞ」
そう言って一誠が扉を開けた。そこには、誰もいない教会があり、アーシアの姿はない。となると、下から聞こえてくる音は、地下からの音か・・・・・・しかも、結構な数だ。この部屋じゃなく、地下にも部屋が存在するようだ。教会って、地下あるんだな・・・・・・。
「地下に何人もいるみたいだよ。一誠」
「えっ? お前、わかるのか?」
「イッセー君、女王ならこれくらい出来ないとダメだよ───『50人くらいだな』・・・・・・ごめん、
それ以上の分析能力だ。というか、どうやって桜歌君はそれを調べているんだい?」
「えっと・・・・・・音が聞こえる。大きさからして、大体50人」
「・・・・・・桜歌先輩、耳がおかしいです」
俺は自分の耳で大体を割り出していると、小猫に罵倒された。俺の耳ってそんなに異常かな? 大体普通ぐらいだと思うんだけど、小猫はそれを受け入れないようだ。というか、一誠と木場まで俺の事を呆れたような目で見てる。
「まあ、兎に角・・・・・・その前に、先客が来た」
俺は祭を背に隠して、割れている窓ガラスを見た。本当なら、祭を連れて来たくなかったが、来たいと言ったので、連れてきた。そして、その窓があった場所であろうところには、白い髪の男が立っていて、狂気の嗤いを浮かべ、俺たちを見下ろしていた。
「テメエ! フリード!?」
「ハイハイ、悪魔御一行さんこんばんは? それにあの時のデザートに、心臓ぶち抜かれたはずの奴までいるじゃねえか! これは最後の晩餐をもう一度って奴ですね! ついでに言うと、そこの教壇の下から地下にいけるぜ? まあ、その前におまえ等は俺に喰われるけどな!」
「丁寧に行き方まで教えてくれるなんて、どういうつもりだい?」
どうやらあの男はフリードと言うらしい。祭は俺の後ろでぎゅっと服の袖を掴んでいる。その捕まれた俺の服の袖から、祭の身体の震えが、俺の身体に伝わってくる。それと同時に、いろんな感情も伝わってきた。
木場はあざけ笑うフリードに、冷静に聞いて、剣を構える。それに対して、フリードは簡単に答えた。
「そんなの決まってるだろ? お前等が此処で・・・・・・バットエンドだからですよ!」
そう言って、フリードが窓から飛び降りて、俺たちの方に剣を構えて接近してくる。それを木場が剣で防ぎ、斬り合いを始めた。
そしてその途中に、小猫が教会内に置いてあった長椅子を掴んで持ち上げ、フリードに向かって投げる。それはフリードに直撃し、並べられた長椅子にフリードを吹っ飛ばした。
「イッテェェーー・・・・・・うん、ちょっと俺っち劣勢? 仕方ない、退散と行きますか。悪魔君どもに言っておくけど、俺は負けたつもりはないんでその辺はよろしく~!」
瓦礫の山から出てきたフリードは、そう言って窓から出て行った。
後に残された俺達は、静かになる。出来れば殴っておきたいところだったが、祭もそんな怨みとか復讐を考えているようではないので、放っておく。もし俺が祭の代わりに復讐に走るとしたら、全力で止めるだろう。
俺たちは無言になりながらも、消えたフリードの窓を見てから地下に向かって進むのだった。
side《いのり》
私は今、リアスと朱乃と一緒に教会の廃墟の裏に来ていた。桜歌は確実に一誠の手助けをすると思うけど、リアス達もそれをわかっているから心配ないだろう。怪我をしたとしても、祭の”聖母の微笑”があるから大丈夫なはず・・・・・・多分だけど。
私達が向かっているのは、裏で動いている警備役の堕天使を消すため・・・・・・。リアスも一誠が心配なようで、裏方に回っているらしい。
そして此処は森の中、廃墟の裏だけど、凄く感じが出ている。ライブのステージも一度こんな風にしたら、面白そう・・・・・・でも、今はそれどころじゃない。
「はあ~・・・・・・ごめんなさいね、いのり。私の眷属が勝手なことして、それに付き合わせちゃって。
本当だったら、桜歌の側にいたでしょう?」
「リアス・・・私も桜歌が心配なの。桜歌って臆病じゃないけど、正義感が強いから・・・。それに、桜歌は優しいから私も好きになった。だから、大丈夫。桜歌は絶対に私を置いてったりなんてしない。それに私は桜歌に奇襲する堕天使がいないよう、潰しておかないといけない・・・」
私は桜歌が心配・・・でも、桜歌は優しいからなんでもする。私の我が儘だって、簡単に聞いてくれる。それに、桜歌は私を守るためなら、強くなろうとする筈・・・最初は望んでなかったけど、桜歌が私のことを本気で思ってくれるのは嬉しい・・・。
「あらあら、いのりさんは本当に桜歌君にデレデレですわね。まあ、それだけ信頼があるのが桜歌君なのでしょうけど、あれは才能の固まりと言っても過言ではありませんからねぇ~。それでは部長、
そろそろ出て来てもらっては如何でしょうか?」
「へぇ~、バレてたんだ。でも、あなた達ごときに負けないわよ」
そう言って、私達の前に現れたのは3人の堕天使。それぞれ黒い羽を羽ばたかせ、森の中から出て来る。桜歌が羽とか見たら、気に入りそうだけど・・・大丈夫かな? その前に、この子達は潰しておくけど、リアスも少し怒ってる。
私も少し、桜歌を傷つけた堕天使を許さないけど・・・。
「桜歌を傷つけたのは・・・誰?」
「桜歌? 知らないわよ、そんな奴。ただの音楽悪魔如きと、グレモリー家の次期当主風情が私たちを倒せるなんて、思わないことね」
「でも、あれは傑作でしたよ。確かあのレイナーレ様にデレデレだった小僧・・・・・・死に様は面白いものだった。私達、腹がよぎれそうでしたよ! レイナーレ様も罪な人だ。あの小僧に夢を見せてから殺すなんて、誰も思いつくことではない」
堕天使の3人が笑い、それを聞いていたリアスから魔力が溢れ出す。見た感じ凄く怒ってるし、話しかけない方が良さそう・・・。多分、一誠を・・・眷属を馬鹿にされたことを怒ってる。リアスって眷属のことになると、凄く感情的だから。
それを知らない堕天使は、今だに笑い続けている。私も桜歌を傷つけた奴が笑うのなら、そいつを迷わず殺そう・・・あれ? 何でこんなこと考えるんだろう? 桜歌だったら、そんな事望まない。それをわかってるのに、怒りが出て来る・・・。
「あらあら、部長。少し怒っていますわね」
「朱乃、いのり。悪いけど、全部私が始末するわ。いいわね?」
「うん・・・桜歌を殺そうとしたんじゃないのなら」
「決まりね。それじゃあ、あの3人には消えてもらいましょうか」
リアスは前に出て、魔力を溜めた。それを見た堕天使は、笑いをこらえながらも、リアスを見ている。そしてその1人に、リアスは滅びの魔力を放った。
魔力が晴れると、そこには堕天使の姿がない。それを見て恐怖を感じたのか、堕天使の残り2人は狼狽えだした。
「カラワーナ!? くそっ! この悪魔め! まさか、”紅髪の滅殺姫”か!? その紅い魔力に紅髪は・・・・・・仕方ない、レイナーレ様に報告して引き上げるぞ!」
「悪いけど、そうはさせないわ。───消えなさいっ!!」
逃げようとした堕天使に、リアスが滅びの魔力を放った。それは2人の堕天使を包み込み、中から断末魔が聞こえ、魔力が消えると、そこには誰もいない。あるのは、あの黒い羽だけ・・・。
「ふうっ・・・・・・こっちも終わったし、そろそろ中を見に行きましょ? そろそろあっちも終わってる頃だわ」
リアスは一度息を吐いて、そう言った。私と朱乃は歩いていくリアスの後に、ただついて行くだけだった。
教会の中に入ると、部活のメンバーが全員揃っていた。一誠が特にボロボロで、桜歌は怪我が無く、祭と一緒にたっている。その近くには小猫と木場も傷がない状態で立っている。一誠の変わったところと言えば、籠手が少し赤くなっていること・・・・・・?
「あっ、部長!」
「どうやら終わったみたいね。それに、それは”赤龍帝の籠手”じゃない・・・・・・! やったわね、一誠。それがあなたの本当の力よ。10秒ごとに、力を倍にする力。それは神滅具と呼ばれていて、神をも越える力を持てるわ」
一誠が気づき、リアスに後ずさる。桜歌は左腕に包帯のようなものを巻いているが、あれが祭のヴォイドなのだろう。綺麗な白色・・・・・・優しい感じがする。
私が桜歌の隣に行くと、桜歌は優しく声をかけてくれた。どうやら外でやっていたことは、全部バレていたみたいだ。
「大丈夫、いのり? 外で戦ってたんでしょ?」
「うん・・・全部リアスがやったから平気。それより、桜歌は大丈夫?」
「まあ、平気かな・・・・・・可哀想と言えば、あの堕天使なんだけど。小猫が怖いよ、ズルズル女の子を引きずるなんて・・・・・・あっ、朱乃さんまで冷水を頭からかけるって・・・・・・せめて、怪我人は大事にしようよ」
どうやら何時も通り優しい桜歌のようだ。自分を殺そうとした堕天使の心配も、やってのける。リアス達なら怒りそうだけど・・・・・・桜歌が許すなら、私もあの堕天使を許しても良いかな?
目の前では、桜歌の言ったとおりの事が行われていた。小猫がリアスに言われたとおりに堕天使を奥から引きずってきて、さらに朱乃は水を頭に思いっきりかぶせる。知らない人が見たら、苛めているように見えるだろう。
「こほっ・・・こほっ・・・! グレモリーか・・・・・・それに、そっちは・・・・・・アンドロマリウス」
「ん? 何を言い掛けたんだろう?」
咳き込む堕天使を見ながら、桜歌が1人呟く。確かに、さっきの間は不自然だった。私の名前は知名度が低くて、知っている堕天使なんて少ない。だとしたら、アーティストの私を知っているということだろう。現に悪魔側では悪い噂・・・・・・まあ、最弱説しか無いけど。
「ご機嫌よう、堕天使レイナーレ。早速起きて悪いけど、あなたには消えてもらうわ」
「残念だけど、私は助かるわ。外には、私の仲間が───『これのことかしら?』───っ!?」
外の増援を希望としているレイナーレに、そう言ってリアスは3枚の黒い羽を手から落とした。それを見たレイナーレは顔を恐怖に染め、頭を抱える。
「あなたならわかるわよね? これが誰の羽か、同族であるあなたならね」
「そんな・・・・・・! 私は、コカビエル様に言われて・・・・・・命令よ。コカビエル様が言ったのよ、私はやりたくなんて無かった! お願い、信じて・・・・・・!」
命乞いをするレイナーレは、堕天使の幹部の名前を出した。確か、大昔の大戦を生き残った堕天使で、幹部の1人だったはず・・・・・・。
それを聞いているリアスは、少し怒ったような顔をしている。手には紅い滅びの魔力を溜めて、レイナーレを凛とした眼差しで睨んでいる。
私の隣にいる桜歌は、少しだけ何処か悲しそうな眼で、レイナーレを見ている。・・・・・・いや、正確にはリアスを見ているような気がする。
「何を言っているの? あなたは私の下僕をあざ嗤うようにイッセーを弄んだわよね? こんな事しているのに、あなたはまだやりたくなかったと言うの?」
「違う・・・・・・! 私は、一誠君にせめて夢を見せてあげようと・・・・・・一誠君助けて! 私はあなたを弄んだつもりはないの! お願い、一誠君!」
リアスの問いかけに、レイナーレは必死に答える。目尻には涙をため、一誠に視線を向けているが、一誠はそれを見て俯いた。
「部長・・・・・・やってください」
「わかったわ。じゃあ、この世から消えなさい! レイナーレ!」
一誠が目を逸らしながら、リアスにレイナーレを消すことを頼んだ。それを聞いたリアスは、手に込めた魔力を大きくして、レイナーレに向かって放つ。
「いや・・・いやあぁぁぁーーーー!!!!」
レイナーレは最後に悲鳴を上げて、リアスの放った魔力に飲み込まれる。
・・・・・・いや、飲み込まれるはずだった。
リアスが放った魔力は直撃するはずだったレイナーレの場所の前で別れ、左右に魔力が飛び散っていく。
そしてその魔力が晴れると、そこにいたのは私の隣でこの現状を見ていたはずの人。その手には白と黒で出来た細剣を持ち、振り下ろす構えをしていた桜歌だった。
side out
俺は何時の間にか、怯えているレイナーレの前に立っていた。手には白と黒で彩られた細剣・・・・・・これはレイナーレの心、レイナーレのヴォイドだ。咄嗟にレイナーレの前に飛び出して、レイナーレからヴォイドを借り、そしてそれでリアス先輩の魔力を叩き斬った。
レイナーレはぺたんと床に座り込み、股下辺りには水溜まりがある。相当怖くて、失禁してしまったのだろう。
俺はレイナーレの前にしゃがみ込んで、頭を撫で始める。レイナーレは啜り泣きながらも、俺の手の感覚に反応して、こっちを見上げた。
「大丈夫か? う~ん、どっちかと言うと大丈夫じゃないか・・・・・・」
「・・・・・・何で・・・助けたのよ・・・? 私は・・・あなたを殺そうとしたのに・・・!!」
レイナーレは啜り泣きながらも、俺に聞いてきた。俺は真っ直ぐとレイナーレの瞳を見て、その問いに答えた。
「だってさ、君は嘘をついてないだろ。君の瞳は嘘の色をしてなかった。それに心臓の音も、嘘をついて無いじゃないか」
俺はレイナーレの心臓のある胸の辺りに手を当て、そう答える。レイナーレは少し顔を赤くしながらも、慌てて俺を突き放した。何でだろうか?
「ちょっと・・・! 触らないで・・・!」
「あっ、ごめん・・・・・・」
レイナーレに少し突き飛ばされ、俺はしりもちをつく。周りには忘れてたけど、唖然としているリアス先輩達がいた。
「桜歌・・・何時の間にそこに移動したの?」
「いのり? ・・・・・・そうだね、俺もよくわからない」
いのりは驚いたような表情で、俺と俺がいた場所を交互に見ていた。リアス先輩達も同じようにその場所を眺めている。
「桜歌、あなたは何故庇ったの? その堕天使は、あなたを殺そうとしたのよ?」
「別に俺は恨んでませんよ? 俺を殺そうとしたのだって、理由があった。それに俺は死んでませんし、チャンスを貰いました。なら、俺はこの子にもチャンスをあげたいんです。俺が悪魔として転成したように・・・・・・それに、この子は嘘をついていません」
「あらあら、何故嘘じゃないと桜歌君は思ったのですか? 普通なら、嘘かどうかなんてわかりませんわ。それなのに、桜歌君はどうやってそう言いきることになりましたのですか?」
リアス先輩の質問に答えた俺に、朱乃さんは質問で返してきた。俺は一呼吸おいた後、その問いに答える。
「・・・・・・瞳を見たり、心音で大体わかりますよ。と言うか、知らず知らずのうちにそれが身についちゃって、グレイフィアさんにそれを指摘されて、完全にわかるようになったんです。まあ、離れてても心音とかは聞こえるけど、手で触れた方が正確ですから・・・・・・それで、俺から提案があります。
レイナーレを俺に引き取らせてください。このまま帰すのに問題があっても、それなら問題がないでしょう?」
リアス先輩は少し考え込んだ後、いのりの方を向いた。周りは俺の嘘発見法に興味深そうにしながらも、考え込んでいる。
「いのり、あなたはそれでいいの? 桜歌はこう言っているけど、嘘がわかるというのはあながち嘘じゃない。私はそう思うわ。でも・・・・・・あなたは、この堕天使を許せる?」
「桜歌が許すなら、私も許す・・・。桜歌は・・・嘘が全部わかる。それは本当だし、グレイフィアさんにその修行をさせられてた。それが無くても、私は信じる・・・堕天使を信じられなくても、桜歌は私に嘘をつかないから・・・」
「そう・・・・・・じゃあ、桜歌に任せるわ。その子が逃げたら責任は桜歌、あなたが取るのよ?」
「わかりました。じゃあ、いのり、祭、そろそろ帰ろう」
俺が二人を呼んで、隣に来たところで魔法陣を展開しようとする。そこでレイナーレが俺に、何かを渡してきた。
”聖母の微笑”・・・・・・祭の神器と同じ、アーシアの神器だった。俺はそれを受け取り、リアス先輩達に投げて寄越す。
「リアス先輩、どうせアーシアを転生させるんでしょ? アーシアの神器です」
「全く、あなたは・・・・・・まあ、最初からそのつもりだったしね」
俺はいのり、祭、レイナーレを連れてその場から魔法陣を使って消えて、家に帰るのだった。
やっと此処まで終わったね。
ライザーまであと何話か作るけど。