俺はアーシアの救出を終えて、レイナーレと祭、いのりを連れて家に帰ってきた。レイナーレは今だに床に座り込み、脚をガクガクと震えさせている。
「はあ~、帰ってきたね。まずはレイナーレは風呂に入れようか」
「・・・・・・え?」
俺はそう言うと、レイナーレは立てないのか、立とうとすると脚が今だに震えて座り込んでしまう。俺はレイナーレの膝裏と腰辺りに手を入れ、持ち上げる。周りから見たら、お姫様抱っこと呼ばれるあれだ。
「なっ、何するんですか! 私は1人で入れます!」
「いや、だってその様子じゃ無理でしょ? それに、その・・・・・・濡れたまま寝るっていうのも、寝るに寝れないだろうし、そのままじゃ気持ち悪いでしょ?」
俺がそう言うと、レイナーレは顔を赤くして俯いた。いのりはおなかが減ったのか、机の上に置いてあったおにぎりを食べている。祭は眠いのか、『もう寝るね』と言って上に上がっていってしまったので、止めるものはいない。
レイナーレを俺は抱えながら、リビングを出て、廊下を進んで脱衣所に向かう。風呂は部活に行く前に貯めていたため、暖かいお湯が張っている。
脱衣所につくと、俺は服を脱いで、洗濯機に放り込んだ。うん・・・・・・俺もレイナーレ風呂に入れてから入るとなると、眠くて保たないんだよ。だから、脱いだんだけど、レイナーレが俺の身体を見て顔を赤くしている。リアス先輩達も同じ反応だったし、そんなに俺の筋肉が凄いんだろうか? 確かに無駄な肉が無い身体だけど、そんな見るほどじゃないと思う。
レイナーレは諦めたのか、服を消した。それにより、レイナーレの綺麗な身体が全部見えるようになる。綺麗で大きな胸を、綺麗な腕で隠し、さらけ出された脚は脱衣所の床にぺたりとくっついている。
俺はもう一度、レイナーレを抱える。抱え上げると、俺は脱衣所から風呂場に入り、湯気が立ちこめたその空間に入る。レイナーレを俺は椅子に座らせ、シャワーをかけた。
「大丈夫? 熱くないか?」
「・・・・・・・・・・・・」
無言で睨み返してくるレイナーレに、騒がない限り、熱くはないのだろう。俺はそう思い、髪にもお湯をかける。レイナーレは目を瞑り、下を向いた。
ある程度かけると、お湯を止めてシャンプーを手つけ、レイナーレの髪に手を入れて丁寧に髪が手に絡まらないように洗い始めた。
それからはお互いに無言になり、俺はレイナーレを洗い続けた。無事に洗い終え、風呂を上がっても会話をすることはないのであった。
side《レイナーレ》
私は1人の男に命を拾われた。本当のことを言っても、信じない悪魔達・・・・・・そんな中で、私を堕天使であるにも関わらず、さらには殺そうとしたにも関わらず信じた馬鹿がいた。顔は良いし、性格も良さそうだけど、何で私のことを助けたのかわからない。もしかしたら、騙しているのかもしれないのに、殺そうとした私を助けた。恨みがあってもおかしくない。でも、この人は身体目当てで私を助けたのかもしれない・・・・・・そう思ったのに、風呂で襲われると思って諦めたのに、私の全部を見たのに襲ってこない。それどころか、彼に洗われると凄く気持ちが良かった。丁寧な手つきで髪を洗われて、身体を洗われ、風呂から上がれば丁寧に髪の毛を乾かされた。彼の無駄のない肉体は、少し男らしいというか格好良くて、見惚れてしまった。
そうして今はベッドの中なのだけど、隣には無防備に寝ている彼がいる。本当に全部を信じられているのか、私にベッドの空きがないから自分の部屋を貸して、リビングのソファーで寝ると言ってきた。私は遠慮して自分がリビングで寝ると言ったのだが、彼は『じゃあ、一緒に寝ようか』と言って疑うこともなく私と同じベッドに入った。本当に馬鹿と言うか、私が寝ている隙に殺そうとするかもしれないことを疑わないのだろうか? でも、そんな事はなかった。それどころか、頬をつついてみても起きる様子もない。
彼には優しい雰囲気が感じ取られて、私も何故か安心する・・・・・・それに、何処かで会ったような気もするのだ。私が彼を殺そうとするよりもずっと前・・・・・・でも、私は会った覚えなんて無い。私が寝るよりも先に寝たし、本当に馬鹿。少しは警戒心というものをもって欲しい。
少しの間は、この人を観察してみよう。この人がただの馬鹿なのか・・・それとも、私の身体目当ての性奴隷にするために私を庇ったのか・・・どちらも違って、本当に優しいだけの人なのか・・・どうせなら、私は優しい人だと信じたいな・・・・・・。そんな事を考えながら、私は眠りにつくのだった。
翌日、私は暖かいベッドの中で、美味しそうな匂いにつられて目を覚ました。隣には、もう既に彼はいない。私が彼を『彼』と呼ぶ理由? それは、少し戸惑いがあるから・・・・・・大好きな冥界で活躍中のアーティストと名前が被ってる、それが理由だった。あのミステリアスな仮面に、変幻自在の歌声は私の大好きな『EGOIST』の桜歌様はその声がミステリアスさを性別すらわからなくさせ、より一層ミステリアスさを出している。
──ガチャッ───!!
突然扉が開き、彼がこっちに開いた扉の間から顔を覗かせてきた。
「レイナーレ、おはよう。ご飯出来たから降りてきて」
「・・・・・・おはようございます。私の分もあるんですか・・・・・・?」
「えっ? そりゃあ、そうだろ? レイナーレもこの家に住むんだし」
彼は当然とでも言うかのように言い放ち、『先に行ってるよ』と言って、部屋から出ていった。どうやら私の朝食も用意されているようで、堕天使相手でも優しいのだろうか? 私はそんな事を考えながらも、部屋から出た。
廊下を歩いて、階段を下り、リビングの前の扉に立つ。そうして扉を開けると、中から美味しそうな匂いが流れてきた。それにつられて私のお腹は鳴り、部屋の中にいるみんなが私の方を見る。
「あはは! 昨日は何も食べてないのか? 早く座りなよ」
「レイナーレさん、おはよう。桜歌のご飯って凄く美味しいんだよ」
「レイナーレ・・・早く座って・・・?」
私は顔を伏せて、急いで空いている席に座る。多分、私の顔は赤くなっているだろう。みんなは私を待っていたようで、まだ食べ始めていなかった。
私が座ったのを確認すると、みんなは口々に『いただきます』と言って、箸を使ってご飯を食べ始めた。私も『いただきます』と小さい声で言って、箸を手に取る。・・・・・・もしかしたら、このご飯の中に毒薬とか入っているんじゃないだろうか? いや、もしかしたら媚薬かも・・・・・・。そんな事を思いながらも、私は恐る恐る口にご飯を運ぶ。
「・・・・・・美味しい」
「でしょ! 桜歌のご飯って、今まで食べたどのご飯よりも美味しいんだよ? 私が作ったご飯なんかじゃ、勝てないよ・・・・・・」
私の口からは料理を褒める言葉が漏れ、それを聞いた少女に自慢されながらも、落ち込まれる。どういう反応をしていいかわからないし、名前もわからない。私が戸惑っていると、それを察したのか彼が箸を置いて私を見てきた。
「そうだ、自己紹介してないよね。俺の名前は瀬戸 桜歌」
「私は校条 祭だよ、レイナーレさんよろしくね」
「私は・・・いのり。一応、桜歌の王だよ・・・?」
最初に彼、次に祭さん、その次に王であるいのりさんが自己紹介をした。みんなは私を見ていて、
私が自己紹介するのも待っているようだ。
「私は・・・・・・レイナーレ・・・・・・です。あの・・・何で私に明るく接してくるんですか?」
私がそう聞くと、いのりさんと祭さん、彼は不思議そうな顔をした。私の質問に変なところがあったのだろうか? そんな事を思っていると、いのりさんが話した。
「桜歌・・・優しいから。それに、嘘なんてすぐに見抜く。レイナーレを助けたのも、後悔はしてないと思う。それに・・・桜歌は綺麗とか、可愛いものが好き・・・レイナーレもそうだと思う」
「昔っから桜歌はそうだもんね。確か、部屋の中にぬいぐるみあったし・・・・・・あれ、綾瀬さんのプレゼントだったっけ?」
「ああ、あれか・・・・・・まあ、綺麗なものとか可愛いものは大体好きだからな。というか、話それた気がするけど、俺がレイナーレに明るく接する理由か・・・・・・俺の事は信じられない?」
みんながみんな、答えになっていなかった。いのりさんは彼を信じているようで、それで私を疑わないということだろう。祭さんは話を逸らした張本人、元はいのりさんの所為だと思うけど。そして一番気になる彼は、逆に聞き返してきた。
「・・・・・・信じられません。だって、私はあなたを殺して・・・・・・それなのに私を助けるし、最初は私の身体目的だと思ったけど、襲わないし・・・・・・わけがわかりません」
私の言葉に、彼はキョトンとしてきた。そうして数秒の沈黙の後、彼はこっちを見てきた。その瞳は真っ直ぐで、私を微塵も疑っているような眼じゃない。
「確かに、俺は君に殺されかけたね。でも、嘘かどうかをわかるのに、ただ殺されるところを放っておくってのは俺には出来なかったんだよ。レイナーレは泣いてたし、嘘じゃないことはわかったし、
確かにレイナーレは可愛いし、襲っても良いかな? それに正直言うと、守る力を得られたし、悪魔になって良かったと思うんだ。祭とも会えたし、別に殺されたことに後悔はないよ」
襲っても良いという彼に、私は少しドキドキしてしまった。それに、可愛いって・・・・・・悪魔になったことも後悔してないようだし、私を疑わない理由がまだわからない。助けた日に一緒にベッドに入るって、何時襲われてもおかしくないのに・・・・・・それは私もだけど。
「あっ、そうだ、あとで日用品を買いに行こうか。レイナーレの歯ブラシとか、コップとかいろいろいるだろ? 女の子なんだし・・・・・・」
彼は笑顔で私に言い、笑いかけてきた。これはデート何だろうか? というか、お誘い? それに捕虜とかわらない私の使うものを揃える? いよいよ訳が分からなくなってきた。
それから彼を見ていたけど、黒猫が訪問してきたり、修行をしている彼を見ていたけど、結局のところわかったのは優しい? ということだけだった。
それから時間が過ぎ、1時頃・・・・・・あれから彼は黒猫との修行、祭さんは家事、彼は黒猫との修行後に昼食を作って時間が過ぎ、今は彼と私だけで外にいる。まさか、こんなすぐに外に出られるなんて思ってなかった。ずっと監禁されると思ってたのに・・・・・・。
「・・・・・・何で、監禁しないんですか? 買い物なら、あの二人に聞けば私を外に出す必要なんてなかった筈です。私は捕虜ですから・・・・・・」
「捕虜? 俺は縛るつもりなんてないし、縛り付ける趣味もないよ。何のために助けたと思ってるのかはわからないけど、俺はレイナーレの事好きだよ」
突然の告白に、私は動揺する。どういう意味だろうか? 好きって・・・・・・好きって、初めて言われた気がする。あいつは告白されたからってパターンだったし。あぁもう、何でこんなにドキドキするんだろう?
そんな事を思っていると、目的地についたようだ。目の前にはいろんなものが取りそろえているであろうお店、服とかも売っているようだ。
まずは歯ブラシにコップ、それから個人的なものを買い揃え、服以外は殆ど集まった。
それから今は洋服屋にいるのだが、服を選んでいる。彼は私にお金を渡して、外で待つと言った。
だから今は1人で、下着などの服を選んでいる。渡されたお金は20万円ほどで、明らかに渡しすぎだと思う。一体、どこからそんなお金が出てくるのだろうか? まあ、全部使って、洋服は一式揃えてきてと言ってたから、揃えるけど。
下着を買い、服を買って外に出ると、外に彼はいなかった。一体、どういう神経をしているのだろうか? 見張りはしないのかな? まあ、逃げる気も無いけど。本当に警戒する気ゼロ? 私を1人にしておくなんて、逃げると言うことを考えなかったのだろうか?
私がそんな事を考えていると、如何にもチャラい男達・・・・・・彼とはかけ離れた、如何にも馬鹿そうな男達が私を囲む。
「あれ~? 君、可愛いね?」
「お兄さん達、君と同じで暇なんだよ~」
「だから、あっちで楽しいことしない?」
「楽しませてあげるよ?」
嫌らしい視線で私の身体を舐め回すように見て、汚い言葉をかけてくる。本当に気持ち悪い、今すぐに殺してしまいたいくらい。
私はその感情を堪えて、出来るだけ笑顔で返す。
「すみません、彼がいるので・・・・・・」
私はそう断り、彼らから顔を逸らすと、その内の1人が私の腕を汚い手で掴んできた。
「まあまあ、そう言うなって、彼氏よりも楽しませてあげるからさ」
「彼氏持ちでも、忘れられるくらい楽しませてあげるよ」
薄汚い眼で、私の胸やお尻に視線を這わせる男共。こんな奴らに抱かれるくらいなら、彼に抱かれた方がマシ・・・・・・いや、比較するほどじゃない。マシどころかがそっちの方が断然いい。
「いや・・・・・・! 離してください!」
「もういいや、このまま連れて行こうぜ。どうせヤったら、ノリノリになるんだしさ」
テンプレのような言葉を放ち、私を路地裏に連れて行こうとする。路地裏に連れ込まれたら、光の槍で串刺しにしてやろう・・・・・・そう決めて、私は少しの抵抗をしながら引っ張られていく。路地裏に入ったが最後、鳴くのはおまえ達・・・・・・。
「人の彼女に何してるんですか?」
路地裏に入れられようとするところで、そこに彼が現れた。彼女というのは狂言で、言葉のあやとかそういうものだろう。
何処にでもいそうな馬鹿な男達は、彼を見て舌打ちをする。
「チッ・・・・・・うるせえな、俺らと彼女は遊ぶんだよ。お前は用済み、痛い目見たくなかったら帰れ」
「ああ、ただの馬鹿か・・・・・・そっちこそ、痛い目見たくなかったら、消えた方がいいですよ」
彼はあざ嗤うように笑顔をくず共に向け、注意をする。それが気に障ったのか、バカ達は彼を取り囲み、腕を掴んだ。
そしてそのまま、前からもう1人の男が彼を殴ろうとすると、彼は掴まれている腕を動かして、殴りかかる男に、腕を掴んでいた男をぶつけた。
そうして数秒で鳩尾に拳を叩き込んで、三人ほど再起不能にする。あとは1人だけで、そいつは馬鹿なのかナイフを取り出して彼に向けて突っ込んでいった。
彼はナイフの突きをかわして、馬鹿男のナイフを持っている腕を掴み、投げ飛ばした。地面を転がり、起きあがるとそいつは逃げていく。
「はあ~、大丈夫か? 先に言っておくけど、もし連れ込まれたら好きにしていいからな。自分の身が第一に考えろ。じゃないと、傷つくのはレイナーレだからな」
「えっ? 私があいつらを殺そうとしたのを注意するんじゃないの?」
どうやら、彼は私を心配しているようで、バカ共の心配はしてなかった。注意するどころか、逆に私があいつらを始末するのを勧めてくる。
「う~ん、だってレイナーレには傷ついて欲しくないしね。レイナーレが無事なら、別にそれはそれで良いだろ。俺はどっちかと言うと、可愛い方の味方だから。まあ、理不尽に力を奮うんだったら、
それはダメだけど」
なんでそんな事を考えられるのだろうか? 私が無事なら、それでいい? 私は彼を殺そうとしたのに、私の心配を先にするの? 本当だったら、私を恨んでいるはずなのに・・・・・・。
それから買い物は終わり、私と彼は家に帰ることになった。その際に何で居なかったのか聞いたところ、私の部屋に置くテレビやベッドを注文しに行っていたらしい。やっぱり変な人だなと思いながら、私は彼と一緒に帰り道を歩くのだった。
微妙なデート? でしたね。
そして街をうろつくナンパ男。
簡単に転がされてしまいました。
これは執事修行の護身術ですね、
グレイフィアさんに叩き込まれたんですよ。