翌日、俺はベッドの中で目を覚ました。目を開けると、視界には親しみのある天井が見えて、落ち着く・・・・・・。そして、俺の体の至る所には柔らかい触感が伝わってくる。俺の首には柔らかい腕が巻きつき、腹の辺りには柔らかい2つの果実が・・・・・・。
俺は首だけを動かして、状況を確認する。俺はまず、シーツをめくって、自分の体の状況を確認。・・・・・・うん、生まれたままの姿だ。
そして、俺の右腕には重量感があり、そこにはピンク色の髪の女の子が、スヤスヤと小さな可愛い寝息を立てながら、俺の腕を枕にして眠っていた。それも、一糸纏わぬ、生まれたままの姿で、体を押しつけるようにしている。
・・・・・・うん、いのりだね。別に驚くことではないし。昨日は一緒にベッドインした記憶もない。『日常茶飯事』とも言える・・・・・・が、しかし───。
ベッドインした記憶どころか、帰ってきた記憶すらない。・・・・・・いや、正確には昨日の記憶が曖昧だ。
ちょっとの間、俺は考えるというか、思い出すことに専念した。
確か、昨日は・・・・・・まずは、いのりと学校に行って。いのりがリアス先輩と朱乃先輩に連れて行かれた。その後は1人で教室に行って、一誠と挨拶。ここからは、放課後にとぶとしよう。そして、一誠がデートに行った。俺はそれをストーカーではなく、見守るという選択肢を取った。そこで、一誠の彼女から綺麗な黒い翼が生えて・・・・・・あっ!!
一誠がその堕天使、レイナーレだったか? そいつに殺されて、俺がその場に飛び出した。飛び出したはいいが、俺も殺される標的に・・・・・・いや、待てよ? あの後、俺は刺された。あの死の感覚は今でも覚えている。
俺はもう一度、自分の体を見た。だが、そのような傷は見当たらない。じゃあ、あれは夢だったのか? そんなはずはない。
兎に角、考えてても仕方ない。俺はそう考えて、ベッドからいのりを起こさないように、そっと抜け出した。そして、服を着て何時も通りにランニングに向かうのだった。
午前4時・・・・・・俺は携帯を片手に、川の横にある土手を走っていた。さっきまで、一誠に電話をしていたのだ。電話をしたところ、生きていたのだが、一誠もその記憶があるらしい。だから、話をするために、俺と一誠は川の横の土手に集まることになった。
「おーい、桜歌! 此処だここ!」
一誠が階段に腰を下ろして、俺を呼んでいる。俺はさらにスピードを上げて、一誠の隣に駆けていった。それにしても、暗いのによく見える。俺って、こんなに視力よかったか?
俺は一誠の隣に腰を下ろして、最初の確認をした。
「一誠、昨日のこと覚えてるか?」
「ああ、お前は夕麻ちゃんのことを覚えてるんだよな? あれ、夢じゃないんだとしたら、いったい何なんだ? それに聞いてくれ、桜歌。朝起きたら、隣で学園のお姉さま、リアス先輩が全裸で眠ってたんだ! それに、俺も全裸だった!」
「一誠、落ち着け。リアス先輩が全裸で寝てたのは知らないが、ちゃんと夕麻ちゃんについては俺も覚えてる。でも、俺達は死んだはずだよな?」
「ああ、俺も腹を刺された。でも、傷が何処にも無いんだよな~。何でだろ?」
「確かに、病院に運ばれたんなら、ニュースになるか、俺達の傷も残っているはずだ。完全に傷を無くす技術なんて、ないからな。でも、夢には思えないんだよな~」
俺と一誠は同時にため息をついて、星空を見上げた。4時とは言え、星の輝きは今だに見える。月も優しい光を放っているが、俺の心は晴れない。
そんなとき、俺と一誠の後ろから、男の声がかかる。
「おや、膨大な魔力を保有している奴がいると思って出て来てみれば、こんなに弱そうな悪魔でしたか。こんばんは、悪魔達。あなた方はどなたの眷族ですか?」
俺と一誠はゆっくりと後ろを振り返り、その姿を見た。そいつは黒い羽を広げて、俺たちを見下ろしている。昨日見た羽と似ている。多分、堕天使だろう。
一誠は驚いて階段から立ち上がろうとするものの、バランスを崩して転げ落ちていった。俺はすぐに男からする嫌な感覚から逃れるため、一誠の横に飛び降りた。
あれ? 体が何時もより軽い・・・・・・。というか、立ち幅跳び新記録?
「あんた、誰だ?」
「おっと、これは失礼。私はドーナシーク。見ての通り、堕天使だよ。まあ、自己紹介を先にしなかったのはこっちだしね。次は君たちの番。君たちは、誰の眷属なのか教えてくれないか?」
「眷属? 俺は誰の眷属でもないぞ? 従うために誓った覚えもない」
「なるほど・・・・・・では、はぐれ悪魔と言うことか。ならば、楽しい楽しいはぐれ悪魔狩りをしよう。
楽しませてくれよ、はぐれ悪魔君」
俺は嫌な予感がして、一誠の服の襟を掴んで、後ろに跳んだ。軽く跳んだはずなのに、俺は10メートル近く後ろに跳んでしまって、川に落ちそうになる。
「おわっ!! いってえ! なにすんだよ桜歌!! ───ってあれ!?」
さっきまで俺と一誠がいた場所には、光る槍が二本突き刺さっていた。兎に角、俺の頭が訳の分からない奴から逃げろと警戒音を鳴らしている。
「兎に角、逃げるぞ一誠! このままだと、死ぬぞ!」
「お、おう!」
俺は一誠を立たせて、走り出した。俺の後ろを一誠が走り、その後をあの羽を生やした奴が追いかけてくる。というか、飛ぶって卑怯だろ!? こっちは体力の限界があるんだぞ!? それに、一誠は部活に所属してないから、俺よりは体力がない。
「さあ、逃げろはぐれ悪魔共。今宵は楽しもうじゃないか」
「今宵って、もう朝だろ!?」
「なにこのリアルな鬼ごっこ!? 誰得なんですか? というか、女子相手にやる鬼ごっこより怖いじゃねえか!」
「一誠、それはお前が覗きばっかりやってるからだ! 俺にはその恐怖がわからん! もうちょっと一般的な例え方をしろ!」
俺と一誠は文句を言いながら、夜の道を走っていく。辺りは今だに暗いが、はっきりと見えているので、それほど困らない。
俺は音楽をやっているために、フルマラソンする自信はある。いのりもフルマラソン出来るらしいが、フルマラソンしたとこは見たことない。
あっ、良い歌詞を思いついた・・・・・・って、そんなことしている場合じゃないな。
俺はそんな事を思いながら、走りつづける。一誠は俺に必死について来て、後ろを気にしている。
正直、そんな事してたら、転ぶ。
「どわっ───!!」
いや、転んだ。それを見て、堕天使は手に光の槍を出現させて、一誠に狙いを定める。このままじゃ、一誠が殺される。俺は咄嗟に方向転換をして、ドーナシークとかいう堕天使に突っ込んでいった。ドーナシークは俺に途中で狙いを変え、俺に光の槍を放った。
「なっ!? はぐれ悪魔があの距離で槍をかわしましたか!」
俺は光の槍の軌道を見極めると、体をひねりあげてジャンプした。そして、俺の背中の下を光の槍が通過していき、俺はそのままドーナシークに突っ込んだ。
「悪いけど、死ぬわけにはいかないんだ」
俺は空中で体をもう一度捻って、回し蹴りを放った。それは見事にドーナシークの首に直撃して、
吹き飛んでいく。音楽のために鍛えていたのが幸いしたのか、力は結構ある方だ。
「グアッ───!? ほう、やはり狩りはこうでないとな。もうちょっと遊んで──っ!?」
「そこまでよ。私の眷属にこれ以上、手を出さないでくれるかしら?」
「なるほど、その紅い髪・・・・・・グレモリーか。通りで、良い眷属をお持ちのようだ。ですが、放し飼いはどうかと思いますが?」
「これ以上、私の敷地で悪さは許さないわ。全く、何時の間にかいないと思ったら、こんなとこにいるなんて思わないわよ。でも、あの子のお陰で助かったわ」
現れたのはリアス先輩なんだが、何時もと様子が違う。その顔は自信で溢れ、それでいて呆れているようだ。呆れている理由は俺らのような気がする。
「これ以上、放し飼いはオススメしない。間違って、私が殺すかもしれないからね」
「ご忠告ありがとう。でも、その心配はないわ」
「ならばいい・・・・・・」
ドーナシークという男は、そう言うと羽ばたいていった。それを見送ったリアス先輩はこっちに向き直り、ため息をつく。
「はあ~・・・・・・いい、あなた達。今日の放課後、私が使いを寄越すわ。あなたたちが知りたがっている情報なら、私が教えてあげる。それまでは大人しく学校で授業を受けなさい」
とりあえず、頷いていた方が得策だろう。俺はそう思って、一誠の方をみる。見ようとした瞬間に一誠から大きな声が聞こえた。
「教えてくれるんですか!? あれがなんなのか、夕麻ちゃんがなんなのか、教えてくれるんですね! というか、何で知ってるんですか!」
「一誠、何を言っているかわからん。少し落ち着け。殺されかけて動揺するのもわかるが、今日は解散しよう。リアス先輩、俺はいのりに朝飯を作らなきゃいけないんで、失礼します」
俺は混乱する一誠をリアス先輩に押し付け・・・・・・ではなく、任せて。俺は朝のトレーニングの続きをするために、家に走っていった。
俺はリアス先輩、一誠と別れて、家に帰ってきた。そして、何時も通りに筋トレをしようと庭に歩いていき、筋トレをしようとした瞬間、大きな音を立てて、家の玄関のドアが開く音がした。
ガチャ────バタンッ!!
そして、勢いよく扉が閉まる音とともに、ピンク色の物体が俺に飛んできた。それを俺は何だか理解すると、優しく受け止めた。
「桜歌っ!!」
飛んできたのはいのりで、目から涙をこぼしている。いのりは俺に抱きつきながら、俺の胸に顔を埋めている。俺は訳が分からないまま、抱き締めて頭を撫でる。
「どうしたの、いのり?」
「桜歌が・・・朝起きたら、いなくなって───。何時もより早いから! もしかして、また死んじゃうんじゃないかって思って───!! そんなの、私は嫌・・・・・・!」
そうか・・・・・・。リアス先輩といのりの関係。今、やっとわかった。俺が死にかけたのをいのりは知っている。それに、冥界も本当に悪魔の巣窟だったのか。今まで、気づく要素は十分にあったのに、知らない振りをしていた。いのりが何かを知られたくないと思っているのなら、自分もそれに気づくのは、聞くのは止めようと───。
「ごめん。何があっても、俺はいのりを受け入れる。いのりが何であっても、俺はいのりの側にいるからさ。そろそろ、学校の準備をしよう? 話すのは、リアス先輩が一緒で良いから」
「今まで、黙っててごめんね。ありがとう・・・桜歌」
それから俺は出来るだけ早く筋トレを終わらせて、風呂に入った。そして、上がったら何時も通りにいのりと俺の分の朝食とお昼ご飯を作って、何時も通りにいのりと一緒に家を出た。
今、俺といのりは通学路を歩いている。二人で手を恋人つなぎのように、一つ一つの指を絡め合ってお互いの手を握っている。こうしたのも、いのりの雰囲気が暗かったからなのだが、今は大分落ち着いている。
この状況でも、俺の頭には歌詞が浮かんでくる。経験談を歌詞に入れたら、生きた歌詞が生まれてくる。それこそ、イメージが大事だが、俺にはイメージだらけで問題ない。これは悲しい物語の歌詞として、売れるだろう。まあ、俺が歌にしたいだけだけど・・・・・・。
「あら、桜歌君。いのりとは朝からイチャイチャしているのね」
「リアス先輩、あなたも変わりませんよ? 一誠と一緒にいるからか、あなたも相当な注目を浴びていますし、変わらないじゃないですか」
声をかけてきたのは、リアス先輩だ。リアス先輩と一誠が一緒に登校しているのは、今朝の事が絡んでいるのだろう。それに、俺といのり、リアス先輩と一誠に対する視線が凄い。
「嘘・・・・・・! 獣とリアス先輩が一緒に登校よ!」
「くそっ! ありえねえ! 瀬戸ならわかるが、兵藤なんてあり得ねえよ!」
「今日は瀬戸君と楪さん、何時もよりラブラブよ!」
「あの繋ぎ方・・・・・・昨日、熱かったに違いないわ!」
こんな風に、俺と一誠には嫉妬や怒り。リアス先輩やいのりには熱い視線。そして、俺といのりの手にはいろんな疑惑がかかるのだった。
「なあ、一誠。兎に角、死なないように頑張れよ」
「どう言うことだよ、桜歌?」
「いずれ、わかるさ。せめて、放課後までは生き延びろ」
「変なフラグ建ててくなよ!? というか、待てよ桜歌!!」
俺はいのりをお姫様だっこして、一誠から逃げるように去っていく。
この後、放課後まで一誠が学年中の男子に命をねらわれたのは、言うまでもない。
はい、能力説明まではいきませんでした。
次こそは、能力の詳細が書ければいいな。