翌日、俺は朝の特訓を終えてキッチンにいた。昨日はあの後、白音に一緒に寝ることをせがまれて部屋があれだから無理だと言ったら、リアス先輩がもう一部屋用意して、『私が1日桜歌を好きにして良いと言ったんだもの。これくらい当然よ』とか言って、俺と白音を一つの部屋に二人きりにした。何の責務か知らないが、元凶はリアス先輩だ。役得であったとはいえ、感謝していいものかわからない。
まあ、それは置いといて俺は今、1人でご飯を作っている。それも、グレモリー眷属といのりの眷属の全員分なのだが、やっぱり1人でやった方が早い。今日のメニューは簡単に目玉焼きにウィンナーとレタス、パンかご飯は自由ということにしてある。当然、いのりはおにぎりを選ぶだろう。
「桜歌、ごめんね1人でやらせて」
「ああ、おはよう祭。昨日は特訓で疲れたんだから休んでてもいいよ? 祭は初めてなのに、そんなすぐに対応できないだろ?」
キッチンに最初に降りてきたのは祭で、寝起きなのか少々寝癖が出来ている。女の子なのに、俺の心配より自分の心配をしてほしい・・・・・・まあ、嬉しいけど。
「そう言うわけにはいかないよ。桜歌も修業で疲れてるでしょ」
「祭、俺のことはいいから、寝癖を直してこい」
「えっ? わっ、ホントだ!」
祭は自分の頭に触れて確かめると、急いで何処かに走っていった。道具とかは俺が持ってるのに、
何処に走っていったんだろうか?
俺が祭もいなくなったキッチンで調理をしていると、いのりが濡れた髪でキッチンに入ってくる。
どうやら朝のランニングを終えて風呂に入っていたようで、髪は乾ききっていない。俺は出来たご飯を放置して、いのりの後ろにドライヤーと櫛を持って近づく。
「ほら、いのり座って。髪を乾かすから」
「桜歌・・・おはよう。今日も頑張る・・・」
いのりはそう言って椅子に座り、俺はそんないのりの髪を乾かす。出来れば自分でやってもらいたいが、俺もこれはこれで気に入っている。自分で言わないところを他からみると、確実にラブラブとかそう言うことを言われるだろう。
櫛で髪をとかしながらドライヤーをかけていると、すぐにリアス先輩達が全員キッチンに入ってくる。リアス先輩達はこの光景を見て、少し驚いている。
「あら、おはよう桜歌、いのり。良い匂いね・・・・・・こんな匂い、グレモリー家では無理ね」
「おはようございます、リアス先輩に朱乃さん、木場に一誠にアーシア、白音」
「おはよう・・・リアス、朱乃・・・みんなも」
俺とリアス先輩、いのりが一度だけ目を合わせて挨拶をする。一誠は困惑しながら、わけがわからないというような顔をしている。
「白音って誰だよ? そんな奴、ここにはいないけど? 桜歌、もしかして夢の中で沢山の女の子とよろしくやってそのうちの───」
「違う。白音は小猫のことだ。朝から変な妄想をするな。見るとしたら、いのりに似た女の子と会う夢なら見るぞ? まだ2回しか会ってないけどな」
一誠は変な妄想を膨らませ、俺に変な疑惑をたてようとする。俺はそれを否定し、ついでに真名のことを喋った途端にリアス先輩と朱乃さん、いのりの空気が変わった。どういうことかわからないけど、話しちゃいけなかったようだ。
「桜歌、そのいのりに似た子って名前を言ってなかったかしら?」
「さあ? どうでしょう? 俺も夢の中の出来事なんて覚えてないので。それより、朝ご飯を早くテーブルに運んできてください。後、昼食は冷蔵庫に入ってますので、お昼は皆さんでご自由に」
俺がそう言うと、みんなで料理を運び出す。真名の事を話そうと思ったけど、やっぱり何かあるみたいだ。名前を覚えていないと言ったら、3人は空気を変えなかった。それどころか、何かを警戒するような表情を浮かべている。
みんなが料理を運び終えた頃に祭が帰ってきて、俺もいのりと一緒にテーブルに着く。リアス先輩と朱乃さん、いのりは空気を変えたようだ。
「それじゃあ、食事を始めましょうか。それと、今日の練習メニューを考えるわよ」
リアス先輩がそう言うと、それぞれ『いただきます』と言って朝食を食べ始める。俺も朝食を食べながら、真名のことを考えた。
『呼んだ? 桜歌』
突然、俺は聞き覚えのある声を聞いた。俺は周りを見て、聞き覚えのある声を探す。どうやら俺以外には聞こえていないようで、周りは何も反応無し・・・・・・。
『あなた以外には聞こえていないわ。久しぶりね、桜歌・・・数日ぶり? あっ、それと考えただけで話せるから気にしないで良いよ』
『真名か・・・・・・?』
『そう、正解よ桜歌。・・・・・・で、私の事が気になるんでしょ?』
真名はそう言って、クスクスと笑いながら俺の頭の中に話しかける。確かに気になるが、それはそれで真名の事だから話すのも話さないのも自由だ。
『そうだけど、俺は真名が自分で言ってくれるまで待つよ?』
『ふふっ、やっぱり覚えてないのね・・・・・・まあ、今は教えないわ。あなたが自分で思い出す。そうじゃないと、私が嫌だもの。それじゃあ、待たねー桜歌、次は夢の中で会いましょう?』
真名はそう言って、俺の頭の中から消える。そのとたんに、俺は周りの音が今まで聞こえていなかったような感覚に襲われた。
「俺はこの技を完成させて、ライザーに勝ちます!」
「そう、秘密なのが残念だけど・・・・・・まあ、いいわ。次は小猫ね」
何時の間にか何人かの目標は話し終えていたようで、次は白音の番になった。白音は迷ったような顔で、俺の方を見てくる。リアス先輩はみんなの目標を聞いて楽しそうで、残りは俺と白音だけのようだ。
「私は、桜歌先輩に柔の武術を教えてもらおうと思ってます。その・・・桜歌先輩が暇で、祐斗先輩との剣術修業が終わってからでもいいので・・・・・・桜歌先輩、ダメですか?」
白音はそういい、俺の方を見てくる。ただでさえ可愛いのに、それは反則だ。本から今日のうちに黒歌に会わせるつもりだったし、木場の相手は明日でいいだろう。
「リアス先輩、俺に白音を任せてくれませんか?」
「あら、いきなりの告白かしら? 私は親の立場で聞けばいいの?」
「リアス先輩・・・・・・両親への挨拶じゃありませんよ・・・・・・。じゃなくて、この一週間で強くなるために修業してくるんです。やっぱり、ここじゃ無理ですので。あっ、勿論夜は帰ってきますよ」
結婚のご挨拶? いや、そうじゃない。一誠が後ろで『結婚!?』とか言っているが放っておこう。どうやら仙術の修業が出来ないこの場所じゃ無理だし、黒歌に会わせるのも好都合だし、切り出したが一誠が今だにうるさい。
「もしかして・・・・・・お前は小猫ちゃんと朝までなにをやるつもりだぁぁーーーー!!!!」
「一誠、ちょっと黙ってくれ。俺は別にそう言うことをする訳じゃない」
「あら、じゃあ私もついて行っていいかしら?」
「ダメです」
一誠とリアス先輩の申し出を断り、俺は沈黙する。一誠の妄想力は凄いというか、そんな事したらいきなり後ろから黒猫に首を刈られるぞ?
「あら、じゃあ修業の内容を聞かせてくれるかしら?」
「ええ~・・・・・・俺はリアス先輩とかをビックリさせたいんですが・・・・・・ダメですか?」
「そう言うことなら仕方ないわね。いいわ。帰ってきたときが楽しみね」
どうやら許可は下りたようで、リアス先輩は楽しそうにする。俺は『ありがとうございます』と言って、後片付けに入るのだった。
それから数時間後、俺と白音は京都にきた。転移の魔法陣にいろいろな細工を施し、転移場所が割れないようにしたのだ。リアス先輩はああ言ってたけど、後で小声で朱乃さんに話してたのはもろバレなんだよ。それに、悪魔が無断で京都に入ると、生きて帰れるかわからない。俺といのりは例外だと言うこと以外でだが・・・・・・。
「さて、小猫。追跡もされない、ちゃんとバレないようにしたけど・・・・・・準備は良いか?」
「桜歌先輩・・・・・・すぐに捕まりますよ? 妖怪の領域に悪魔は入ってはいけないと部長に聞きましたけど・・・・・・?」
「いいんだよ。俺と白音、いのりは特別にそういうの無しで通れるんだ。・・・・・・別の意味で捕まるのは逃れられないけど」
俺はそう言い、鳥居をくぐった。それに続き、白音もゆっくりと訝しげに鳥居をくぐる。するとそこには、俺と白音を取り囲む妖怪たちが・・・・・・そして、その中の着物女性とその子供のような可愛い金髪幼女が俺に飛びついてきた。俺はそれを抱き留め、二人にされるがままになる。
これは俺が京に入る条件? 的なもので、毎回飛びついてくるのがこの二人・・・・・・しかも、二人とも獣の耳と尻尾を持っている。
「おぉ~、よう来たの。久しぶりの桜歌の匂いじゃのう」
「母上! 久しぶりの桜歌なのじゃ! 妾、凄く嬉しいのじゃ!」
二人で俺に頬ずりしたり、ペタペタと顔を触ったりしているこの親子は俺のファンであり、俺の使い魔・・・・・・訂正、式紙です。でも、親の方はたまに発情してくる。
「久しぶり、八坂さん、九重・・・・・・元気だった?」
「勿論、元気に決まっておろう。妾はお前に会えなくて寂しかったぞ?」
「妾も元気じゃ! 桜歌が来るのを楽しみにしとったのじゃ!」
「八坂さん、九重、俺の使い魔───『式紙じゃ』・・・なんだよね?」
「そうじゃぞ? 妾も桜歌が悪魔になったことはビックリしたが、ちょうどよかったのぅ。これで晴れて本当の式紙じゃ」
「本題だけど、黒歌はいる?」
「ああ、おるぞ。それより桜歌、妾と楽しまぬか?」
この親はこの前であろうと発情して、着物をはだけさせる。全く、九重の教育に悪い妖怪が二人もいることはあれだが、黒歌を早く呼ばないとな。今は八坂さんは俺の腕に胸を押し付けて、凄い誘惑してくる。まあ、俺も突き放したりしないけど。
「八坂さん、少し修業に付き合ってほしいんだ。・・・・・・ダメ?」
「まあ、聞いておるから良いが・・・・・・お礼はしてもらうのじゃぞ?」
「うん、それで良い。じゃあ、早く行こうか」
「妾も桜歌と修業するのじゃ!」
俺と白音、八坂さんに九重はそう話して移動を開始する。使い魔がどう言うものか知らないが、俺と使い魔はある程度の御恩と奉公? によって成り立っている。つまり、歌を歌ったりすると手伝ってくれる。もしくは、好き勝手に手伝ってくれるのだ。
屋敷の門をくぐり、中庭に入る。白音は周りを見回しながら、楽しそうにしている。さっきまで少し殺気を持っていたが、機嫌を直してくれたようだ。そうして中庭を進むと、いきなり俺の首に黒い何かが飛び込んでくる。
「にゃ~、桜歌の匂いがするにゃ・・・・・・それに・・・・・・白音にゃ!?」
「姉様、お久しぶりです」
黒歌が俺に頬ずりしてから白音に気づくと、逃げる為に俺から飛び退こうとしたので、軽く抱きしめてそれを止める。なぜ逃げようとしたかというと、俺が黒歌になにも知らせていなかったからだ。
要するに、俺のドッキリ精神がそうさせた。ごめん、黒歌・・・・・・。
「にゃ・・・にゃ・・・桜歌、何時になく激しいのにゃ。積極的になったのかにゃ?」
「ああ、黒歌には何時でも触りたいよ? でも、今日はそうじゃなくて、白音と和解したらどうかな~、なんて思ってさ」
「それは・・・白音にはわかって欲しかったけど、桜歌は見守って置いてくれる約束だったにゃ」
「ごめん、お節介で・・・・・・でも、黒歌の口から直接に話した方がいいよ?」
俺がそう言うと、黒歌と白音は黙り込む・・・・・・。八坂さんと九重も俺に協力するために黒歌を此処に置いてくれていたのだ。その八坂さんと九重は、俺の後ろで俺の服を引っ張っている。
「白音、聞いてくれるのかにゃ・・・・・・?」
「はい。桜歌先輩のお陰で心には余裕があります・・・・・・」
黒歌はさらに黙り込むと、ポツポツと喋り出した。過去に起きたことを・・・・・・それも、俺に打ち明けてくれたこと全部を話し始めた。
「白音、私は許せなかったの。私の主は私が眷属になるかわりに、路頭に迷っていた私と白音を拾ってくれたにゃ・・・私は悪魔になったことで力を付け、主を超えた・・・それを主が喜び、約束した筈だった『白音には手を出さない』という条件を破り、私に主が白音に仙術を教えるように言ったにゃ。私は反対したけど、主はそれを許さなかった。仙術は拾得するのに危険を伴う・・・・・・例外はいるけど、
幼い白音には教えれない物だったにゃ・・・。そしてある日、私は日々の不満も全部・・・今までの理不尽な命令も受けた分、耐えられなかった・・・それが私を暴走させたにゃ。魔力弾は主に当たり、致命傷を負わせた。それによって主が死んで、私は白音を置いて逃げることしか出来なかった・・・・・・一緒に逃げようともしたけど、追っ手相手に逃げ切る自信がなかったのにゃ・・・」
黒歌は話し終えると、下を向いて俯いてしまった。俺はそんな黒歌の肩を抱き、慰めるように頭を撫でる。それに対して白音は悲しそうな顔で、黒歌を見ていた。自分が姉に救われていたこと、それが今になってわかったのだろう。白音は知らなかった。なんで姉が主を殺したか、それに姉が眷属になった理由が自分であることも・・・・・・。
「黒歌・・・・・・悪いけど、ヴォイドを借りるよ」
俺がそう言うと、黒歌は訳がわからないと言うような顔で、俺を見上げた。目を合わせた事で、俺は無言で黒歌の胸の中心に手を入れる。八坂さんが『大胆じゃのう・・・・・・』とか言っているが、そう言うつもりで手を突っ込んだ訳じゃない。俺の手と黒歌の胸が光、腕を引き抜いたときには俺の手には白い刀が握られていた。《妖刀 白銀》・・・・・・黒歌のヴォイドだ。
「白音・・・・・・黒歌のヴォイドがなんで白い刀かわかるか?」
「わかりません。ヴォイドは心の強いところと聞きましたが・・・・・・?」
白音は黒歌の白い刀のヴォイドを見ながら、『綺麗・・・・・・』と声を漏らしていた。このヴォイドは姉からの思いの結晶・・・・・・そう思っている。
「実はさ、ヴォイドってコンプレックスやトラウマなど、心の一番強く残っていることが武器となって出て来るんだ。このヴォイドを白音が綺麗って言ったでしょ? それは、黒歌がずっと白音の事を忘れなかった・・・・・・思い続けてたことを表しているんだと思うんだ。それに、この能力は・・・・・・」
俺はそう言って、《妖刀 白銀》で誰もいない場所を斬る。その斬撃は軽く空気を裂いて、中庭にあった木を一本斬り倒した。それをみた白音と黒歌は、斬撃が木に届いていたことにビックリする。
「この能力は、空間を越えて相手を斬り裂ける・・・・・・つまり、黒歌のこの能力は、白音の事を何処からでも見守ってる。そんな思いが作ったと思うんだ」
白音はそれを聞くと、黒歌の刀と黒歌を交互に見た。許したかどうかはわからないが、わかってくれればそれで良いと思う。俺は刀から手を離して、黒歌の胸にヴォイドが戻っていくのを確認する。
そしてヴォイドが黒歌の胸の中に収まりきると、白音が口を開いた。
「・・・・・・姉様、私の所為で・・・・・・」
「違うにゃ・・・・・・! 白音は悪くないにゃ!」
「でも、私の所為で・・・・・・ひっく・・・・・・」
白音は泣き出し、黒歌がそれを見て白音に近寄って抱き締めた。俺と八坂さん、九重はそんな姉妹を見て、姉妹っていいなと思うのだった。
ヴォイドの能力を和解に活用・・・・・・。
真名さん、頭の中に話しかけてきました。
真名さんもいろいろと退屈なんですよ?